目次 1. パラダイムシフト ~ 学術情報流通の逆転 ~ 2. 電子ジャーナル 3 重苦の神話と真実 3. 水面下で進む学生用図書コレクションの劣化 4. 悩ましきオープンサイエンス 5. これまでのリフォームではなく本当のこれからの学術情報システムに向けて 1

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かおりちとく
5 years ago
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1 大学図書館が抱える 5 つの今日的課題東京大学附属図書館事務部長尾城孝一

2 目次 1. パラダイムシフト ~ 学術情報流通の逆転 ~ 2. 電子ジャーナル 3 重苦の神話と真実 3. 水面下で進む学生用図書コレクションの劣化 4. 悩ましきオープンサイエンス 5. これまでのリフォームではなく本当のこれからの学術情報システムに向けて 1

3 1. パラダイムシフト ~ 学術情報流通の逆転 ~ 2

4 デジタル化の影響キャンパス ( 学生, 教職員 ) 提供図書館 ( コレクション ) 選書購入組織化外部情報源 ( 書店, 出版社等 ) デジタル前 ( 図書館を中抜きにしたアクセス ) デジタル後キャンパス ( 学生, 教職員 ) 教育研究成果発掘収集組織化新しい図書館 ( コレクション ) = 機関リポジトリ提供発信外部利用者 3

5 コペルニクス的転換 ( 受信発信 ) キャンパス ( 学生, 教職員 ) 提供図書館 ( 学外情報の受信 ) 選書購入組織化外部情報源 ( 書店出版社等 ) 購読購入オープンアクセス ( 図書館を中抜きにしたアクセス ) キャンパス ( 学生, 教職員 ) 教育研究成果発掘 OA 出版支援収集組織化図書館 ( 学内情報の発信 ) 提供 OA 出版 IR ハイブリッド図書館 = 受信 + 発信外部利用者 4

6 例えば雑誌業務の変容冊子体電子ジャーナル電子ジャーナル ( パッケージ ) OA ジャーナル選定選定選定選定契約契約契約契約受入受入受入受入目録目録目録目録支払支払支払支払供用供用供用供用 ILL ILL ILL ILL 製本製本製本製本保存保存保存保存 APC 管理? 5

7 NACSIS-ILL 複写 ( 終了分 ) の和洋別件数の推移佐藤義則氏 ( 東北学院大学 ) 提供データによる 6

8 情報リテラシー教育のシフト研究プロセス先行研究調査文献管理研究執筆発表出版評価本や論文の探し方各種検索ツールの使い方分野別文献検索法 EndNote RefWorks Mendeley 英語論文執筆セミナーテクニカルライティングセミナー Nature Masterclasses 論文執筆セミナー論文投稿シミュレーション (JCRとRefWorks を使って ) IOP 論文投稿セミナー Scientific Data ~ 研究データを公開するには研究力の測り方分析ツール (ESI/InCites) InCites Benchmarking 分析ツール SciVal/Pure 講習会情報リテラシー教育 7

9 ( 参考 ) 杉田茂樹. 学術情報流通の逆転. 大学図書館研究. 2016, 103. p

10 2. 電子ジャーナル 3 重苦の神話と真実 9

11 電子ジャーナル 3 重苦 1. 価格高騰? 2. 円安 3. 海外電子資料への消費税課税 10

12 自然科学系海外学術雑誌 ( 冊子 ) 価格の推移 Library Journal 誌に毎年掲載される Periodicals Price Survey による (JUSTICE 事務局作成 ) 11

13 人文社会科学系海外学術雑誌 ( 冊子 ) 価格の推移 Library Journal 誌に毎年掲載される Periodicals Price Survey による (JUSTICE 事務局作成 ) 12

14 自然科学系電子ジャーナル価格の推移 Library Journal 誌に毎年掲載される Periodicals Price Survey による (JUSTICE 事務局作成 ) 13

15 人文社会科学系電子ジャーナル価格の推移 Library Journal 誌に毎年掲載される Periodicals Price Survey による (JUSTICE 事務局作成 ) 14

16 為替レートの変動 15 JUSTICE 事務局作成

17 消費税課税 2015 年 10 月 1 日 ~ 海外電子コンテンツへも消費税課税リバースチャージ方式 ( 大学が申告納税 ) 16

18 リバースチャージ方式による消費税の支出予算 2016 年度 JUSTICE 契約状況調査より 17

19 電子ジャーナル問題は本当に存在するのか? 文部科学省学術情報基盤実態調査結果報告を基に作成 18

20 情報格差の是正 A: 大規模大学 (8 学部以上 ) B: 中規模大学 (5~7 学部 ) C: 小規模大学 (2~4 学部 ) D: 単科大学 19

21 3. 水面下で進む学生用図書コレクションの劣化 20

22 図書館資料費 21

23 図書購入冊数 ( 国公私別 ) 22

24 図書購入冊数 (1 大学当たり ) 23

25 電子ブック 24 加藤信哉国内電子書籍のビジネスモデルを巡って ( 平成 27 年度 JUSTICE 総会資料より )

26 提言や政策中央教育審議会 ( 平成 24 年 8 月 ) 学士課程教育の能動的学修 ( アクティブラーニング ) への転換が必要学生には主体的な学修に要する総学修時間の確保教員には教員と学生あるいは学生同士のコミュニケーションを取り入れた授業方法の工夫が必要教育振興基本計画 ( 平成 25 年 6 月閣議決定 ) 学生の主体的な学修のベースとなる図書館の機能強化 ICT を活用した双方向型の授業自修支援 25

27 アクティブラーニングスペース設置大学数の推移設置率 :52.8% * 文部科学省大学図書館実態調査 / 学術情報基盤実態調査による 26

28 学習研究サポートの内訳 * 文部科学省大学図書館実態調査 / 学術情報基盤実態調査による 27

29 i. コンテンツ図書館による支援学生用図書電子ブック電子化された教材講義のデジタルアーカイブ ii. 学習空間多様な学習形態に対応した場の提供 ( ラーニングコモンズ ) iii. 人的支援教員大学院生図書館員等による支援体制の構築学生同士が支援し合うピアチュータリングの促進アクティブラーニングを支援する専門職としての図書館員 28

30 4. 悩ましきオープンサイエンス 29

31 内閣府の検討会国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会設置母体内閣府総合科学技術イノベーション会議 ( 科学技術基本計画 ) 検討会の開催第 1 回 (2014 年 12 月 9 日 )~ 第 6 回 (2015 年 3 月 30 日 ) 趣旨オープンサイエンスに係る世界的議論の動向を的確に把握した上で我が国としての基本姿勢を明らかにするとともに早急に講ずべき施策及び中長期的観点から講ずべき施策等を検討する 30

32 オープンサイエンスの定義オープンサイエンスとは公的研究資金を用いた研究成果 ( 論文生産された研究データ等 ) について科学界はもとより産業界及び社会一般から広く容易なアクセス利用を可能にし知の創出に新たな道を開くとともに効果的に科学技術研究を推進することでイノベーションの創出につなげることを目指した新たなサイエンス内閣府我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について ~ サイエンスの新たな飛躍の時代の幕開け ~ (2015 年 3 月 30 日 ) 31

33 政策立案及び実施における相関図内閣府我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方についてから抜粋 32

34 大学図書館に対する期待学術情報委員会学術情報のオープン化の推進について ( 審議まとめ ) から抜粋 1. 論文のオープン化機関リポジトリを論文のセルフアーカイブの基盤として拡充オープンアクセスに係る方針の策定 2. 研究データのオープン化研究者のデータ管理計画作成の支援研究データの保管に係る基盤整備に当たってアカデミッククラウド (NII が構築 ) の活用を図る 3. 研究成果の散逸等の防止論文研究データの管理に係る規則を定め散逸等を防止論文及び研究データに DOI を付与 4. 人材育成技術職員 URA 及び大学図書館職員等を中心にデータ管理体制を構築機関リポジトリの構築を進めてきた経験等から研究成果の利活用促進を担う 33

35 国内リポジトリ公開機関数 NII 調べ (2016 年 4 月時点 ) 34

36 リポジトリ国別構築数実際の構築数は第 1 位 (681) 35

37 IR コンテンツ推移グラフ ( 日本全体 ) 学術雑誌論文 :26 万件 /174 万件 (15%) 36 NII IRDB コンテンツ分析 (2016 年 7 月時点 )

38 査読済み学術論文の捕捉率 ( 試算 ) 2014 年に出版された国内研究者による学術論文 (Web of Science 収録 ) は約 78,000 件日本の機関リポジトリに登録されている学術雑誌掲載論文 ( 本文あり ) のうち 2014 年出版の英語論文は 4,813 件 (NII の統計 2016 年 2 月 18 日現在 ) 捕捉率は約 6% 37

39 大学等のオープンアクセス方針 1. 北海道大学 : 北海道大学学術成果コレクション運営方針 [2007/11/22] 2. 北陸先端科学技術大学院大学 :JAIST 学術研究成果リポジトリ運用指針 [2007/5/29(2009/10/29 改正 )] 3. 岡山大学 : 岡山大学学術成果リポジトリ登録要項 [2006/4/24(2010/3/31 改正 )] 4. 名古屋工業大学 : 名古屋工業大学学術機関リポジトリ運用指針 [2007/3/9 (2012/6/6 改正 )] 5. 京都大学 : 京都大学オープンアクセス方針実施要領 [2015/4/28] 6. 筑波大学 : 筑波大学オープンアクセス方針 [2015/11/19] 7. 国際日本文化研究センター : 国際日本文化研究センターオープンアクセス方針 [2015/12/17] 8. 徳島大学 : 徳島大学におけるオープンアクセスに関する方針 [2016/1/19] 9. 九州大学 : 九州大学オープンアクセス方針 [2016/1/19] 10. 千葉大学 : 千葉大学オープンアクセス方針 [2016/3/10] 11. 東京歯科大学 : 東京歯科大学オープンアクセス方針 [2016/4/12] 12. 名古屋大学 : 名古屋大学オープンアクセスポリシー [2016/4/19] 38

40 IR コンテンツ推移グラフ ( 日本全体 ) データデータベース :5.35 万件 /174 万件 (3%) 39

41 IR コンテンツ推移グラフ (?) データデータベース :5.2 万件 /9 万件 (58%) 40 NII IRDB コンテンツ分析 (2016 年 7 月時点 )

42 科学方法論のパラダイムシフト 41 DRF/ShaRe 地域ワークショップ ( 北海道東北地区 ) 日時 : 平成 20 年 12 月 11 日 ( 木 )13:00-17:00 12 月 12 日 ( 金 )9:00-16:00 会場 : 山形大学 SCITA センター

43 コンテンツピラミッド 42 DRF/ShaRe 地域ワークショップ ( 北海道東北地区 ) 日時 : 平成 20 年 12 月 11 日 ( 木 )13:00-17:00 12 月 12 日 ( 金 )9:00-16:00 会場 : 山形大学 SCITA センター

44 CSI 第 2 期領域 2 プロジェクト e-science 基盤構築のためのデータキュレーション機能拡充の実証実験千葉大学リモートセンシング研究センターの衛星画像のキュレーションに関する実証実験を期待したのだが結局は植物標本の画像データに検索タグを付ける試みで終わってしまった 43

45 機関リポジトリ推進委員会国立情報学研究所国公私大学図書館協力委員会連携協力推進会議 (2010~) 大学図書館コンソーシアム連合運営委員会 (2011~) 機関リポジトリ推進委員会 ( ~) これからの学術情報システム構築検討委員会 (2012~) オープンアクセス方針の策定と展開将来の機関リポジトリ基盤の高度化コンテンツの充実と活用研修人材養成 44

46 オープンサイエンスに関する取り組み 1. 方針 ( ポリシー ) 助成機関学協会大学等の方針に関する動向把握調査共有大学における方針策定及びその実施に当たっての支援 2. 研究データ RDM トレーニングツールの開発研究データ対応メタデータスキーマの検討ケーススタディによる研究データ管理ノウハウの蓄積デジタルヒューマニティ論文付随データデータジャーナル 3. 国内学協会の著作権ポリシーデータベース (SCPJ) の拡充学協会への働きかけ 4. 公的研究資金による成果論文のトラッキングメタデータの整備可視化ツールの開発 KAKEN/IRDB との連携 45

47 NII オープンフォーラムでの報告学術情報基盤オープンフォーラム月 26 日オープンサイエンス推進と大学図書館 ~ 機関リポジトリ推進委員会の取組み~ アウトラインオープンサイエンス方針の調査と策定支援ツールの開発国内学協会のオープンサイエンス対応状況調査報告 : ポリシー策定の現状と課題 IR 学術雑誌論文登載状況調査 : オープンアクセスと著作権ポリシーの確認日本の研究成果の何割がオープンアクセスになっているのか?~ オープンアクセスモニタリングプロジェクトの挑戦 ~ 研究データ管理の理解促進に向けた教材の提供についてオープンサイエンスにおけるメタデータの検討消えゆくデータを供養する : 人文系研究データのケーススタディ国際コミュニティへの情報発信とその課題尾城孝一三隅健一松本侑子真中孝行林豊西薗由依大園隼彦天野絵里子南山泰之 46

48 サイズの問題粒度の問題分野の問題再現性の確保の問題研究データの難しさ 47

49 5. これまでのリフォームではなく本当のこれからの学術情報システムに向けて 48

50 これまでの学術情報システム今後における学術情報システムの在り方について ( 答申 ) ( 学術審議会 1980 年 1 月 ) 学術情報センター (National Center for Science Information Systems) の設立目録所在情報サービス (NACSIS-CAT/ILL) データベース形成と情報検索サービス (NACSIS- IR) 学術情報ネットワーク (SINET) 49

51 議論の発端大学図書館と NII との連携協力推進会議 ( 第 8 回 2014 年 7 月 ) 目録所在情報サービスの将来計画の検討は重要な課題検討を加速させるためにも2020 年には現在のような枠組みでの目録システムは終了していることを想定して議論していただきたい 50

52 これからの学術情報システム構築検討委員会国立情報学研究所国公私大学図書館協力委員会連携協力推進会議 (2010~) 大学図書館コンソーシアム連合運営委員会 (2011~) 機関リポジトリ推進委員会 ( ~) これからの学術情報システム構築検討委員会 (2012~) NACSIS-CAT/ILL の再構築 NACSIS-CAT/ILL の軽量化合理化検索機能の強化将来的な運営組織 51

53 NACSIS-CAT/ILL の再構築の必要性システムの維持及び運用のコストの問題相互運用性の欠如電子情報資源への対応が不十分 52

54 NACSIS-CAT/ILL の軽量化合理化の方向性書誌作成と書誌管理作業の軽量化外部機関作成書誌データの活用典拠レコードリンク形成作業の自動化自動登録対応機能の強化レコード調整の廃止データ構造の見直しによる合理化書誌構造リンクの廃止書誌作成単位の出版物理単位への変更 53

55 書誌作成単位の出版物理単位への変更 54

56 検索機能の強化これからの学術情報システム構築検討委員会 ( 第 11 回 ) 資料より抜粋 55

57 メタデータと識別子の基盤 56 大園隼彦オープンサイエンスの最新情報 : メタデータの相互運用性を中心に ( 第 12 回学術情報ソリューションセミナー ( 平成 28 年 6 月 14 日 ))

目次 1. 学術情報流通のコペルニクス的転換 2. 電子ジャーナル価格問題 3. 学生用図書コレクションの劣化 4. オープンサイエンスをめぐる問題 5. これからの学術情報システムに向けて 1

大学図書館の現状と課題東京大学附属図書館事務部長尾城孝一目次 1. 学術情報流通のコペルニクス的転換 2. 電子ジャーナル価格問題 3. 学生用図書コレクションの劣化 4. オープンサイエンスをめぐる問題 5. これからの学術情報システムに向けて 1 1. 学術情報流通のコペルニクス的転換 2 デジタル化の影響キャンパス ( 学生教職員 ) 提供図書館 ( コレクション ) 選書購入組織化