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1 行政説明 2 いじめ問題 について 倉見昇一氏 ( 文部科学省初等中等教育局児童生徒課課長補佐 ) 1. はじめに昨年の秋以降, いじめ, またはいじめが原因ではないかと思われる児童生徒の自殺といったものが大きくマスコミにも取り上げられるようになり, 非常に社会問題化したところである また, 今年に入ってからも新聞に大きく出るような痛ましい事件が続けて起こっていることについては, 非常に残念な思いである このいじめの問題については, 特効薬みたいなものはおそらく見つけるのは難しいだろう したがって, 一つ一つの事案に, 一つ一つ丁寧に対応して, 事例を積み重ねて情報を共有し合い, みんなで対応していくといった方向でしか解決していく道がないのかなとおもう 非常にエネルギーが要るところであるが, よろしくお願いしたいと思う 2. いじめの現状について新聞紙上でも, いじめ, 昨年に比べて6 倍 とか 12 万件 というような見出しで大きく取り上げられたが, 文部科学省においては, 毎年 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査 といったタイトルで, いじめに限らず, 暴力行為とか高等学校の不登校の問題とか中退の問題といったことについて, 毎年, 前年度分のものを現場から数字を挙げてもらって集計した結果を公表している 平成 19 年 11 月 15 日に文部科学省が公表した 平成 18 年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査について では, 平成 18 年度の国公私立の小, 中, 高等学校及び特殊教育諸学校 ( 特別支援学校 ) におけるいじめの認知件数は 12 万 4,898 件, 小学校は6 万 897 件, 中学校は5 万 1,310 件, 高等学校は1 万 2,307 件, 特殊教育諸学校は 384 件あった 昨年のいじめの社会問題化に伴って, 学校でいじめが見つけられている数がきちんと文部科学省に報告されているのかといったようなことを国会等でいろいろ指摘され, 今回, いじめの定義や調査内容を見直している 平成 17 年度には, 全体としていじめの件数は2 万件という数字を発表してきた これが本当に実態をとらえている数字なのか, これまでのいじめの定義に問題があるのではないか, といったようなことが大きく問題になった 専門家の意見も聞いて, よりいじめられている児童生徒の立場に立ったとらえ方にすべきということになり, いじめの定義を変更した どういう点を見直したかというと, まずは調査範囲の拡大ということである これまでいじめについては, 公立の学校のみの調査だったが, 今回, 国立と私立を入れ, さらに中等教育学校も調査に加えた 国公立私立全部の学校を悉皆で取るようにした いじめの定義については, 従来は, いじめとは自分より弱い者に対して一方的に, 身体的, 心理的な攻撃を継続的に加え, 相手が深刻な苦痛を感じているもの と定義としていた ここで 一方的に とか, 継続的に, それから 深刻な苦痛 といったものがいろんな解釈をされて, いじめだとかいじめじゃないとかいうようなことになっている現状が - 1 -

2 あった また, いじめの実態も, いじめっ子, いじめられっ子といったようなはっきりした構図ではなくなってきたというようなことがある また, 継続的 といったようなことが, いったいどの程度のものなのかとか, 深刻な苦痛 といったものがどの程度のものなのかというのはあいまいであった それらのことを検討した結果, 新しいいじめの定義は, 本調査において個々の行為がいじめに当たるか否かの判断は, 表面的, 形式的に行うことなく, いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする というフレーズを最初に持ってきて, 基本的な考え方を示した その後に いじめとは, 当該児童生徒が一定の人間関係にあるものから心理的, 物理的な攻撃を受けたことにより精神的な苦痛を感じているもの と変更した さらに, ブレがないように,5つの注意書きも併せて記述した また, 学校がいじめを認知するに当たっては, アンケート調査など, 児童生徒から直接状況を聞く機会を設けるように といったこと, それから, いじめの態様についても, 昨今の携帯電話やインターネットを使ったようないじめの項目も新たに加えるなどして, 調査の中身も全面的に見直した この新しい調査方法によって今回, いじめの調査を行い, その結果, 国公私立で 12 万件といったような数字になった 実際, 子どもたちの間でいじめの件数が6 倍になっているかというと, おそらくそうではないだろうと思う そういったことを考えると, いじめの定義を変更したことに伴って, 先生方がよりいじめを積極的に見つけ, 発見し, それに対応していただいた結果の数字だというふうに考えている 昨年の秋以降, いじめが多いとか少ないとかの問題ではなくて, いかにきちんといじめを見つけて, それにどう対応したかということの方が問題であって, いじめが多い学校が悪い学校, 少ない学校がいい学校というようなことではなくて, いじめはどこにでも, どの学校にでも起こるということで, むしろ積極的にいじめを見つけて, 早期発見, 早期対応をするといったようなことが大事ある, ということを機会あるごとに申し上げている いじめの状況についての説明に戻る 12 万件という認知したいじめのうち, 約 8 割が年度内に解消しているといった数字が出ている また, いじめを認知した学校は 22,159 校, 全学校数に占める割合は 55.0% ということである これを逆にみると,45% の学校ではいじめが1 件もないといったことになる これが本当にそうなのかということが, この調査を出したときにマスコミや各方面から疑問の声があがった この辺のことは, この調査結果を基に, 専門家のお知恵も借りながら分析していきたいと思っている いじめの認知件数を学年別に見ると, 中学 1 年生が 24,023 件と最も多い 中 1ギャップということもよくいわれているが, いじめの件数についても中学校 1 年生が一番多いといようなことになっている いじめ発見のきっかけについては, 小学校では, アンケート調査など学校の取り組みにより発見 というのが一番多く, 中学校, 高等学校, 特殊教育諸学校では, 本人からの訴え というのが一番多い 小学生ではなかなか自分で学校の先生に言い出せない場合が多いということで, アンケートなどで学校は把握しているといった実態が分かる さらに, 児童生徒の相談の状況については, どの学校種においても 学級担任に相談 が最も多くなっている いじめの対応については, どの学校種においても, ひやかしやからかい といったようなものが一番多い ちなみに, パソコンや携帯電話等で誹謗中傷や嫌なことをされる と - 2 -

3 いったいじめについては, 全体としては 3.9%, 約 5,000 件という数字が出ている これを学校種別に見ると, 小学校が 0.8%, 中学校は 5.2%, 高等学校になると 13.8% というように, 携帯電話の保有率が高くなるにしたがって, パソコンやインターネットでのいじめが多くなってきているという点に着目してもらえると思う 学校におけるいじめの問題に対する日常の取り組みについては, 各学校種で 職員会議等を通じていじめ問題について教職員間で共通理解を図っている といったものが最も多い 次に, 道徳や学級活動の時間にいじめにかかわる問題を取り上げた といったようなことが多くなっている さらに, いじめの日常的な実態把握のための具体的な方法としては, 小学校では アンケート調査の実施, 中学校, 高校校, 特殊教育諸学校においては 個別面談の実施 といったものが一番多くなっている 都道府県別の認知件数については, 都道府県によってばらつきが見られる この辺のとらえ方についても, さらに今後分析をしていかなければならないと思っている 今回, 新しく定義も見直し, 調査方法も変えたわけだが, これは調査上の話である いじめだからとか, いじめじゃないからというよりも, 子どもが困っていたら, まずは手を差し伸べてもらいたいと思っている 現場の対応は, いじめだから対応するとか対応しないとか, いじめだからこういう対応だとか, こういう対応じゃないという話ではない その辺, 調査から分かることだけでなく, 調査以外から見られることもきちんと把握し, 分析していきたいと思っている 3. いじめ問題への対応について文部科学省においては, 昨年の 10 月 19 日付で いじめ問題への取組の徹底について といった通知を出した これまでも, 昭和 60 年に大きなピークがあり, その後平成 6 年, 7 年に大きなピークがあった そのときにもこのようないじめ問題への取り組みに関する通知が何本か出された この通知の最初の部分に, いじめは決して許されないことであり, また, どの子どもにも, どの学校でも起こり得るものである, いじめの兆候をいち早く把握して, 迅速に対応する必要がある いじめの問題が生じたときは, その問題を隠さず学校 教育委員会と家庭 地域が連携して, 対処していくべきものと考える といった大事なことが書かれている 実際, いじめの問題には, いろいろな対応の仕方があるのだと思う どれが一番いいということはないので, いろいろな事例を積み重ねるというようなことを冒頭に申し上げた 大事なことは, 社会全体でいじめは決して許されないということをしっかりブレずに持つということ, いじめられる子どもも問題があるということは間違った考えで, いじめは絶対に許されない ということを社会全体でしっかりと認識することが一番大事なことだと考えている この通知では, いじめの早期発見, 早期対応について, いじめは, どの学校でも, どの子どもにも起こり得る 問題であるから, 日頃から, 児童生徒が発する危険信号を見逃さないようにして, いじめの早期発見に努めること 学校等における相談機能の充実し, 児童生徒の悩みを積極的に受け止めることができる - 3 -

4 ような体制を整備すること 特定の教員が抱え込むことなく, 学校全体で組織的に対応すること 校長のリーダーシップの下, 教職員間の緊密な情報交換や共通理解を図り, 一致協力して対応する体制で臨むこと 保護者や友人関係等からの情報収集を通じ, 事実関係の把握を正確かつ迅速に行うこと 学校のみで解決することに固執してはならないこと 速やかに保護者, 教育委員会に報告し, 適切な連携を図ること 保護者等からの訴えを受けた場合には, 謙虚に耳を傾け, 関係者全員で取り組むこと 事実を隠ぺいするような対応は許されないこと などが書かれている いじめを許さない学校づくりについては, いじめは人間として絶対に許されない との意識を, 学校教育全体を通じて, 児童生徒一人一人に徹底すること いじめる児童生徒に対しては, 毅然とした指導が必要であること いじめられている児童生徒については, 学校が徹底して守り通すという姿勢を日頃から示すこと などが書かれている 普段から先生がいじめられている子を徹底して守るという姿勢が, いじめられている子どもに伝われば, そこに助けのサインを求めやすくなってくる そこで早期発見, 早期対応につながると考えている また, いじめ問題への取組についてのチェックポイント をこの通知と一緒につけている ここに, 学校での指導体制のあり方, 教育指導のあり方, 早期発見, 早期対応について, 家庭 地域社会との連携に関すること, それから, 教育委員会の取組として, 学校の取組の支援や点検, 教員研修, 組織体制 教育相談, 家庭 地域との連携など, 数多くのチェックポイントを掲げている こういうことを基に, いじめ問題への取組の点検をしていただければと考えている 4. 文部科学省の主な施策等について (1) 教育相談体制の充実これはいじめ問題への対応に限ったことではないが, 教育相談体制の充実として, スクールカウンセラーを現在, 全公立中学校約 1 万校に配置できるような予算を確保しているところである 現在, 平均すると週 1 回 4 時間程度であるが, 学校現場からは, 週に2~ 3 回とか, 週に1 回でも丸一日いてほしいという要望が多い 私どもも毎年予算を財務省に要求するときには, このスクールカウンセラーを最優先でお願いしている 小学校に対しては, 気軽に相談ができるような方ということで, 地域の人材を活用した, 子どもと親の相談員という事業も,910 地域で行っている (2) いじめ等の問題を抱える子ども等の自立支援今年から新規で 問題を抱える子ども等の自立支援事業 を始めた 各教育委員会が, 自分たちで企画したいじめ, 不登校, 暴力行為, 児童虐待, 高校中退といったことの未然防止や早期発見, 早期対応につながるような効果的な取り組みを, 文部科学省に申請して - 4 -

5 もらい, いい企画に予算をつけるといった事業である (3) 心の教育の充実等道徳教育の充実や体験活動の充実といった, 子どもたちの健全育成に対しても支援をしている 5. その他の対応について立場上, いろいろな方と話をする中で, これは大事なことだと思ったことがあるので, ここでお話ししたい まずは, 学級づくり ということである 小学校, 中学校, 高等学校は, 基本的にクラスといった単位で勉強し, 生活しているわけであるから, この 学級づくり といったものを年度当初にしっかりやっていただくのが大事かと思う 生徒指導の基本的なことなのかもしれないが, 年度初めの学級づくりをしっかりやるといったようなことが, 後の学習指導や, いじめ, 不登校にもかなり効果的な結果が出ていると聞く それと, 約 10 年前のいじめ問題の大きなピークを契機として, スクールカウンセラーといった心理の専門家を現場に入れた 今回では何が大事かというと, 子どもたち自身の取り組みといったことではないだろうかと思う つまり生徒会や児童会などで, 子どもたち自身がいじめをなくそうといったキャンペーンを, 子どもたち自身の手で企画し取り組むといった自主的な活動が大事になってくるのかなと感じている しっかりした学級づくりを行うといったようなこととか, 子どもたちの自主的な活動をうまく先生が誘導して取り入れていくということが, 今後大事になってくるのではないかといったようなことは, いろいろな方のお話を聞く中で感じているところで, 皆さま方の日ごろの取り組みの参考になればと思い, お話しをさせていただいた 6. おわりに以上, いじめの現状, いじめの問題への対応についての文部科学省の通知, 現在行っている主な施策, 私がいろいろな方から聞いた中で大事だと思ったこと2 点, をご紹介させていただいた メリハリのない話だったかもしれないが, お許しをいただき, 私の行政説明とさせていただきたい - 5 -