人間とエージェント間における性差の身体操作の比較検証

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みがねわかはら
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1 卒業研究発表会身体操作の性差を実装した対話エージェントとのインタラクション 2015 年 2 月 10 日大阪工業大学情報科学部情報メディア学科ヒューマンインタフェース研究室 C 久保愛彦 C 渡邊貴文

2 はじめに擬人化エージェントと人とのコミュニケーションバーバルコミュニケーション能力とノンバーバルコミュニケーション能力が必要とされる [1] バーバルコミュニケーション発言の意味, 内容ノンバーバルコミュニケーション身体動作 ( ジェスチャ, 表情 ), 対人距離, Ekman の身体動作の分類 [2] 表象, 例示子, 情感表示, 調整子, 適応子適応子 : 状況に適応するための動作身体操作 : 自分の身体に加える動作オールター調整子オブジェクト適応子 : 対人関係を調整するための動作 : 道具や機械を操作する動作 [1] 山田誠二, 人とロボットの < 間 > をデザインする, 東京電機大学出版局 (2007) [2] Ekman P,1980,Three classes of nonverbal behavior, Aspects of Nonverbal Communication,Swets and Zeitlinger. 1

3 身体操作 [4] 身体操作について身体のある部分を使って他の部分に何かをするという動作例鼻をほじる頭をかく等一般に, 身体操作は不快や不安のサインと解釈され, 人前ではタブーとされる動作も多い同時に, 非常にくつろいでいる時にも, よく行われるメッセージ性が低く, 対話内容との関連性が低い [3] 一般的には, しぐさと言われているもの癖としても生じ, 人同士の親しい間柄での会話において, 頻繁に行われている身体操作の実装エージェントの見かけの人間らしさ, 親密性の向上 [3] Waxer, P., Nonverbal cues for anxiety: An examination of emotional leakage. In Journal of Abnormal Psychology 86(3), pp [4]John Blacking,ed.,THE ANTHROPOLOGY OF THE BODY,Academic Press,London(1977) 2

関連研究くつろいだ対話での身体操作を実装した対話エージェントとのインタラクション評価身体操作 : 髪を触る顔を触る鼻を触る友人同士の対話で頻繁に行われていた身体操作 (4 組 ( 男性 1 組, 女性 3 組 ) の 5 分間の間に行われていたもの ) エージェントとのインタラクション : 日常会話を行う選択式の対話継続対話において,

4 関連研究くつろいだ対話での身体操作を実装した対話エージェントとのインタラクション評価身体操作 : 髪を触る顔を触る鼻を触る友人同士の対話で頻繁に行われていた身体操作 (4 組 ( 男性 1 組, 女性 3 組 ) の 5 分間の間に行われていたもの ) エージェントとのインタラクション : 日常会話を行う選択式の対話継続対話において, 身体操作を実装したエージェントでは, 人のエージェントに対する親近性の低下を防いだ [6] 女性エージェントのみを使用男女のエージェントの印象や評価をしたものではない元となる身体操作の洗い出しのためのビデオ分析の対象も少なかった 3 [6] 東野寛志神田智子, 身体操作を実装した仮想エージェントとの持続的インタラクション評価,HAI シンポジウム 2010 (2010)

5 目的実験目的男女の身体操作を男女のエージェントに実装する身体操作は性別によって異なるため [7], 対話の分析対象を増やし, 男女満遍なく分析し, 男女それぞれ特有の身体操作を洗い出す必要がある日本人大学生の男女の対話のビデオ分析エージェントの性別, 身体操作の性別を考慮したエージェントとのインタラクション評価を行う 4 [7] 荒川歩鈴木直人, しぐさと感情の探索的研究, 感情心理学研究,10,56-64(2004)

6 仮説仮説実験参加者とエージェント, 身体操作の性別がすべて一致していた場合, ユーザは最もエージェントを自然に感じ, よい印象を持つ男性参加者 + 男性エージェント + 男性の身体操作女性参加者 + 女性エージェント + 女性の身体操作最も自然でありよい印象 5

7 実験参加者事前調査実験参加者大学生のペア10 組 20 名 ( 男性 5 組女性 5 組 ) 同性の友人同士ビデオ分析組毎に20 分間の対話を撮影身体操作の種類やタイミング, 頻度を分析分析対象の合計時間 20 分 10 組 2 人 = 400 分 0.02 秒間隔で分析 6

8 ビデオ分析動画解析ツール ELAN4.7.2 分析対象 1 身体操作の種類回数身体の接触部分 ( 例 : 頭を掻く, 鼻を触る等 ) 反復回数速度 2 身体操作時のタイミング ( 話し手, 聞き手, 沈黙, 笑い ) 3 実験参加者の発話時間 4 発話内容タイムライン (0.02 秒間隔 ) 7

9 各部位の接触回数の割合 ( 男性 ) 各男性参加者が 20 分間で行った身体操作実験参加者男 A 男 B 男 C 男 D 男 E 男 F 男 G 男 H 男 I 男 J 身体操作の回数平均 :59 回 20 秒に 1 回胴部 26% その他下半身 3% 5% 膝手首服 2% 靴 1% 2% 爪太もも 0% 装飾品 2% 鎖骨 3% 1% 脇 0% 手 2% 胸肩腹 3% 1% 0% 0% 指 9% 鼻 19% 顎 11% 腕 9% 顔全体 0% 髪 2% 耳 3% 額 3% 口 3% 首 3% 頭 6% 頬 7% 目 10% 頭部 66% 8 n=587( 識別できた男性の身体操作の回数 )

0 3 額を掻く 6 4 頬を触る 5.1 4 顎を触る 6 5 鼻を擦る 4.

10 エージェントに実装する男性の身体操作表 2 男性の各身体操作の頻度が高く, 行った人数が多かった上位 5 種類 n= 名順位身体操作頻度 (%) 順位身体操作人数 ( 人 ) 1 鼻を触る頭を掻く 9 2 顎を触る鼻を触る 9 3 頭を掻く額を掻く 6 4 頬を触る顎を触る 6 5 鼻を擦る首を掻く 6 男性は鼻を触る, 頭を掻く, 顎を触るの 3 種類の身体操作の頻度が高く, 行った人数も多かった 9 鼻を触る頭を掻く顎を触る

11 各部位の接触回数の割合 ( 女性 ) その他 15% 各女性参加者が 20 分間で行った身体操作実験参加者女 A 女 B 女 C 女 D 女 E 女 F 女 G 女 H 女 I 女 J 身体操作の回数平均 :62 回 20 秒に 1 回下半身 20% 脛脹脛 1% 0% 踝膝 0% 5% 太もも 13% 手首 0% 服 14% 鎖骨 0% 爪腹 0% 0% 手腰 2% 腕 1% 3% 胴部 16% n=617( 識別できた女性の身体操作の回数 ) 顔全体 0% 指 8% 装飾品 1% 鼻 17% 耳頬額 0% 目 3% 0% 首頭顎 2% 眉 2% 2% 1% 1% 髪 12% 口 7% 10 頭部 50%

身体操作人数 ( 人 ) 1 鼻を触る 10.7 1 口を触る 8 2 前髪を整える 7.

12 エージェントに実装する女性の身体操作表 1 女性の各身体操作の頻度が高く, 行った人数が多かった上位 5 種 n= 名順位身体操作頻度 (%) 順位身体操作人数 ( 人 ) 1 鼻を触る口を触る 8 2 前髪を整える鼻を触る 7 3 服の袖を引っ張る髪を触る 6 4 口を触る前髪を整える 6 5 指を触る鼻を掻く 6 女性は鼻を触る, 前髪を整える, 口を触るの 3 種類の身体操作の頻度が高く, 行った人数も多かった鼻を触る前髪を整える口を触る 11

13 実験動画 ( 男性エージェント ) 男性の身体操作女性の身体操作 12

14 実験動画 ( 女性エージェント ) 男性の身体操作女性の身体操作 13

15 開発環境使用ソフトウェア Microsoft Visual Studio 2008 (C++ で開発 ) AITalk 声の職人, AITalk SDK Poser7 動作環境 OS:Windows7 Home Premium 64bit CPU:Intel Core i GHz メモリ :4.00GB 14

16 実験概要実験参加者大学生 29 名 ( 男性 19 名, 女性 10 名 ) 実験方法エージェントからの質問に対する選択形式の対話 5 分程度の日常対話 ( シナリオ例 : 通学経路, 鍋で好きな具材 ) 対話制御は Wizard of Oz 法を用いた実験者がシナリオに沿って, エージェントの対話内容を適宜操作することで対話を進めていく実験条件エージェントの性別 ( 男, 女 ) 身体操作の性別 ( 男, 女 ) 実験参加者の性別 ( 男, 女 ) 教示エージェントとの対話を 4 回行ってもらう. エージェントとの対話終了後に印象評価のアンケートを行ってもらうしぐさの印象であることは教えていない 15

17 実験方法実験手順 1. 対話エージェントとの対話を行う 2. 対話終了後に対話エージェントの印象評価アンケートに回答 3. 実験条件を変え, 繰り返す印象評価アンケート (27 項目 ) 対人認知の特性形容詞尺度 [8] の 20 項目対話エージェントにおける人間らしさわずらわしさ自然さの 4 項目 [6] おしとやかさ丁寧さたくましさ女性的なについての 4 項目 6 段階評定 [8] 林文俊,1982, 対人認知構造における個人差の測定 (Ⅷ)- 認知者の自己概念および欲求との関連について, 実験社会心理学研究,22,1-9. [6] 東野寛志, 神田智子 : 身体操作を実装した仮想エージェントとの持続的インタラクション評価,HAI シンポジウム 2010(2010) 16

18 因子分析因子分析の方法主因子法 ( プロマックス回転 ) 3 つの因子を抽出因子 1 寛容性因子気長な, 丁寧親切な, 心の広いおしとやかな因子 2 社交性因子意欲的な, うきうきした自信のある, 社交的な因子 3 ジェンダー因子かわいらしい, 女性的なかよわい人が男女の対話エージェントを対人的に認知し, 印象評価する際には, 寛容性因子社交性因子ジェンダー因子が大きく影響している 17

19 要因 (3 2) 実験参加者の性別要因各因子についての分析男性の実験参加者と女性の実験参加者の2 水準 ( 男性, 女性 ) エージェントの性別要因男性エージェントと女性エージェントの2 水準 ( 男性, 女性 ) 身体操作の性別要因男性の身体操作と女性の身体操作の2 水準 ( 男性, 女性 ) 3 要因の分散分析寛容性因子実験参加者の性別要因とエージェントの性別要因と身体操作の性別要因の2 次の交互作用 (p<0.05) で有意差社交性因子有意差なしジェンダー因子エージェントの性別要因で主効果 (p<0.01) で有意差身体操作の性別要因で主効果がない参加者は身体操作の性差に気が付いていなかった 18

20 寛容性因子における分析と考察 (1) 実験参加者の性別要因とエージェントの性別要因の各水準における身体操作の性別要因の単純単純主効果検定の結果実験参加者の性別要因男性とエージェントの性別要因女性身体操作の性別要因女性 > 男性に有意差 (p<0.05) 実験参加者の性別要因女性とエージェントの性別要因女性身体操作の性別要因男性 > 女性の傾向がある (p=0.12) 19

21 寛容性因子における分析と考察 (2) 男女の対話エージェントとのインタラクションにおいて男性エージェントの場合, 実験参加者の性別身体操作の性別によって寛容性は変化しない女性エージェントの場合, 実験参加者の性別と身体操作の性別が異なっていたとき寛容性が高く, 実験参加者の性別と身体操作の性別が一致していたときに寛容性が低くなる男性参加者の場合女性参加者の場合 + = 寛容的 + = 寛容的男性の身体操作 + = 不寛容的 + = 不寛容的女性の身体操作寛容性因子において, 女性エージェントの場合, 実験参加者の性別と身体操作の性別の組み合わせにおいて逆に作用することが示唆された 20

22 ジェンダー因子の分析と考察 (1) ジェンダー因子はエージェントの性別要因において主効果で有意差 (p<0.01) 21

23 考察ジェンダー因子の分析と考察 (2) 実験参加者の性別や身体操作の性別によって印象は変化しない女性エージェントにおいて交互作用はないが男性参加者は女性エージェントが男性の身体操作をするより女性の身体操作の方が女性らしいと感じる有意差 (p<0.05) 女性参加者は女性エージェントが女性の身体操作をするより男性の身体操作の方が女性らしいと感じる傾向がある (p=0.63) ジェンダー因子は, エージェントの見た目 ( 性別 ) によって変化するまた, 女性エージェントの場合, 実験参加者の性別と身体操作の性別の組み合わせにおいて逆に作用することが示唆された 22

24 まとめ人が男女の対話エージェントを対人的に認知し印象評価をする際は寛容性因子社交性因子ジェンダー因子が大きく影響している実験参加者は女性エージェントの身体操作に敏感であり, 特に男性参加者は, 女性の身体操作のとき最もよい印象を持つ仮説実験参加者とエージェント, 身体操作の性別が全て一致していた場合, ユーザは最もエージェントを自然に感じ, よい印象を持つは支持されなかった身体操作の性別要因で主効果が見られなかった寛容性因子とジェンダー因子において, 参加者の性別によってエージェント性別と身体操作の性別の組み合わせに対する印象が逆に作用することが示唆された 23

25 今後の展望ニューハーフの人の身体操作を実装男性でありながら, 女性らしさを追求した人のため, 最も女性らしいしぐさをしているのではないかと考えられる口調の性別の実装女性らしい口調と男性らしい口調を実装し, 組み合わせることでより深いインタラクション評価が可能 24

26 関連発表渡邊貴文, 久保愛彦, 神田智子 : 身体操作の性差を実装した対話エージェントとのインタラクション, 電子情報通信学会学生ポスターセッション 2015/

27 補足身体操作のタイミング話し手役割聞き手沈黙笑い合計表 3 男性の身体操作のタイミング 1 組目 2 組目 3 組目 4 組目 5 組目 A B C D E F G H I J 合計始まり文節終わり各役割の合計表 4 女性の身体操作のタイミング話し手役割聞き手沈黙笑い合計 1 組目 2 組目 3 組目 4 組目 5 組目 A B C D E F G H I J 合計始まり文節終わり各役割の合計

28 補足寛容性因子における分析と考察実験参加者の性別要因とエージェントの性別要因の各水準における身体操作の性別要因の単純単純主効果検定の結果実験参加者の性別要因男性とエージェントの性別要因女性身体操作の性別要因女性 > 男性に有意差 (p<0.05) 実験参加者の性別要因女性とエージェントの性別要因女性身体操作の性別要因男性 > 女性の傾向がある (p=0.12) 27

29 補足ジェンダー因子の分析と考察 28

30 補足 4 つの因子を抽出因子 1 寛容性因子気長な, 丁寧親切な, 心の広いおしとやかな因子 2 社交性因子意欲的な, うきうきした自信のある, 社交的な因子分析因子 3 ジェンダー因子かわいらしい, 女性的なかよわい因子 4 自然性因子人間らしい, 自然な 29

31 各因子についての分析分散要因実験参加者の性別要因男性の実験参加者と女性の実験参加者の 2 水準 ( 男性, 女性 ) エージェントの性別要因男性エージェントと女性エージェントの 2 水準 ( 男性, 女性 ) 身体操作の性別要因男性の身体操作と女性の身体操作の 2 水準 ( 男性, 女性 ) 3 要因の分散分析寛容性因子実験参加者の性別要因とエージェントの性別要因と身体操作の性別要因の 2 次の交互作用 (p<0.05) で有意差社交性因子有意差なしジェンダー因子エージェントの性別要因で主効果 (p<0.01) で有意差自然性因子有意差なし 30

32 補足自然性因子の分析と考察 (1) 自然性因子の合成値で 3 要因分散分析を行った結果 31

33 補足自然性因子の分析と考察 (2) 自然性因子の合成値で 3 要因分散分析を行った結果どの要因においても有意差は見られなかった実験参加者はどのエージェントにおいても同じくらい自然に感じたことがわかった同じくらい自然に感じても実験参加者の性別や身体操作の性別の組み合わせによって印象が変化する 32

34 補足実験風景 33

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション卒研発表会個人の性格によって変化するパーソナルスペースの形状比較大阪工業大学情報科学部情報メディア学科ヒューマンインタフェース研究室 2012 年 2 月 16 日 C07-102 村田誠弥 C08-099 森原海里はじめにパーソナルスペースとは個人の身体を取り巻く目に見えない空間領域携帯用の縄張りパーソナルスペースの役割コミュニケーション相手と適切な距離を取ることによって, やり取りを円滑に行う