No.5 特定非営利活動法人遠野まごころネット ( 岩手県遠野市 ) No.1 被災地での 緊急支援 と 中長期の復興支援 を併せて実施 総合的な被災地支援の サポートセンターとしての役割を果たす 基本的復旧サポート 個人 地域社会 企業サポート 東日本大震災の検証に関して サポート体制を構築 1 団体の概要 東日本大震災で被災した山田町 大槌町 釜石市 大船渡市 陸前高田市といった岩手県沿岸部 の被災者の方々を支援するべく 遠野市社会福祉協議会 NPO 法人遠野山 里 暮らしネットワー ク 柏木平レイクリゾート ( 株 ) 社団法人遠野青年会議所 遠野の風土と観光を考える協議会 NPO 法人遠野エコネットで結成された被災地支援団体 東日本大震災以降 緊急支援 と 中長期の復興支援 を併せて実施しており 総合的な被災 地支援のサポートセンターとしての役割を果たしている 平成 23 年 7 月に NPO 法人化し 岩手県 から認証を受けている 活動開始年度 平成 23 年度 NPO 法人設立年度 平成 23 年度 主な活動分野 保健 医療 福祉 / 環境の保全 / 人権 平和 / 子どもの健全育成 / 経済活 動の活性化 / 連絡 助言 援助 / 社会教育 / 災害救援 / 国際協力 / 情報化 社会 / 職業能力 雇用機会 / まちづくり / 学術 文化 芸術 スポーツ / 地域安全 / 男女共同参画社会 / 科学技術の振興 / 消費者の保護 所在地 岩手県遠野市遠野町 28 地割 5 電話 0198-62-1001 FAX 0198-62-1002 E-mail tonomagokoro@gmail.com URL http://tonomagokoro.net 代表者 多田一彦 会員数 96 名 ( 正会員 ) 133 名 ( 賛助会員 ) スタッフ数 常勤 ( 有給 )10 名 非常勤 ( 無給 )20 名 事業規模 約 24,000 万円 ( 平成 25 年度 ) 2 活動内容遠野まごころネットでは 復興支援活動の内容が 家屋整理や食品の配送等の緊急を要するものであった段階で 長期的な活動を見据えた上での活動指針とビジョンを策定 ( 平成 23 年 5 月 次ページ参照 ) し 各種支援に取り組んでいる 具体的なプロジェクトとしては 緊急支援 と 中長期の復興支援 を合わせ 5つのサポート体制を構築している ( 次ページ参照 ) 1 基本的復旧サポート では 瓦礫撤去 支援物資の配布 を 2 個人サポート では 個別ニーズ調査 ニーズ対応 自殺防止 よろず相談 電話相談 等を実施してきた 3 地域社会サポート では 人が集まることで避難所からの外出のきっかけをつくる まごころ広場 や地域住民に農園を提供する まごころの郷 の運営のほか 休耕 被災農地の復耕を図る 復耕支援プロジェクト 等を実施してきた 4 起業サポート では 起業の支援 や 直接的なりわいづくり を実施している 5 検証サポート では 東日本大震災の検証と政策提言 等を実施 38
している 現在は 3 地域社会サポート と 4 起業サポート の活動がメインとなっている 5 つのサポート事業の全体像 (2011~2012 年時点 ) 3 活動の特徴 (1) 活動の中で見られた工夫や活動が上手く進んだポイント コミュニティの再生と産業 雇用の創出の拠点となる複合施設を整備東日本大震災の発生から3 年以上が経過し 緊急支援の段階が過ぎた現在 被災地ではコミュニティの再生と産業 雇用の創出が重要な課題となっている 当団体が運営する 大槌たすけあいセンター は 被災者が気軽に集え 働ける場所を提供す 39
るため スイスに本部を設置し世界各地で起こる災害による被災者を支援する JTI Foundation からの支援を受け 平成 26 年 5 月に 8,500 万円をかけて 当団体が整備を行った施設である 同施設において当団体は カフェや手芸教室 英語や IT 講座などのコミュニティプログラムを提供するとともに レストランや食品加工 工房などの施設を活用して なりわい プログラムを提供する活動を行っている また 雇用創出のためのレストラン営業 海鮮餃子やハーブスティックを生産する六次産業化事業 内職の場の提供 コミュニティづくりのためのカフェやイベントの開催 中間就労支援 総合相談支援等 多様な事業を行っていく予定としており 今後 約 20 ~30 名の雇用が創出される見込みとなっている なお 六次産業化事業については 平成 25 年 5 月に農林水産省の六次産業化 地産地消法に基づく事業計画に認定されている 大槌たすけあいセンター JT グループの海外たばこ事業の中核を担う JT インターナショナル (JTI) が設立した財団 ブランド品づくりと地域の産業 雇用の創出当団体が農園として運営している大槌町のまごころの郷第三 はーぶの郷 は 大槌町とその周辺の住民のために開拓したコミュニティ ハーブガーデンとなっている ここでは 平成 24 年から継続して様々なハーブを栽培し 平成 26 年には特にラベンダーとバジルの栽培をこれまでにない規模で進めている ハーブの生産 + 加工 + 販売 = 六次産業を育て 地元に新たな産業と雇用を生み 地域を振興させ 復興に繋げていくことを目標にしている バジルソルト 被災地での就労と自立を支援平成 25 年 8 月には 障害を持った方が復興から取り残されないよう 一人ひとりにあった楽しめる作業を紹介し 就労と自立を支援するために まごころ就労支援センター を開設し 約 20 名の雇用を創出している 同センターでは ボランティアとともにラベンダーを栽培し サシェ を作成したり ネクタイを再利用し くるみボタンアクセサリー等を作成している 大槌町 釜石市 遠野市の被災されたお母さん達は 内職で手芸品 まごころねこぴんち ( 430 円 / 個 ) を作成しており 都内の百貨店で販売を行っているが 人気の商品となり 作成が追い付かない状況となっている くるみボタンアクセサリー サシェ 人気の手芸品 まごころねこぴんち 40
ボランティアに参加した企業のネットワークを活かし物産の販路を開拓手芸品とともに 岩手県野田村が誇る のだ塩 とブレンドして作成した バジルソルト や大槌町の被災地でひっそりと育っていた3 株の稲から育てた 大槌復興米 など 被災地の物産について 当団体の東京事務所において販路を開拓し さらなる被災地での雇用創出に繋げる活動を実施している 具体的には これまでボランティアに参加してもらった企業のネットワークを活かして 直接 企業において物産販売会などを実施しており 1 回 15 万円程度 年物産販売会の様子間数百万円の売り上げに繋がっている Facebook を用いた情報発信活動状況やイベントの内容については Facebook を用いて 毎日情報更新しながら発信している また 取材については積極的に対応し 団体及び活動内容を広く PR している (2) 成長プロセスにおける特徴 平成 23 年 3 月 ~ 平成 24 年 9~10 月 事業実施中平成 25 年度 平成 26 年度 遠野まごころネット設立 支援物資の配布や瓦礫撤去を実施 釜石市鵜住居地区での活動をもって瓦礫撤去作業終了 かたづける ことが中心の活動から 創りあげる ことを中心とした活動へ本格的にシフト コミュニティスペースとして まごころ広場うすざわ (5 月 ) の開設と弁当販売 (12 月 ) 大槌町のまごころの郷第三 はーぶの郷 でハーブの栽培を開始 地域づくりサポート事業開始 手芸品 まごころねこぴんち を東京で販売 障害を持った方の就労と自立を支援する まごころ就労支援センター が開設 (8 月 ) 継続して販売中 コミュニティの再生と産業 雇用の創出の拠点となる 大槌たすけあいセンター がオープン (5 月 ) 41
(3) 事業実施の各段階における関係主体との関連 被災者 関係主体との関連 被災者ニーズの把握 各種支援の実施 実施中 ( 平成 23 年度 ~ ) 特定非営利活動法人遠野まごころネット 遠野市社会福祉協議会 柏木平レイクリゾート ( 株 ) 遠野の風土と観光を考える協議会 NPO 法人遠野山 里 暮らしネットワーク 社団法人遠野青年会議所 NPO 法人遠野エコネット ボランティアとして参加 協力 その他参加 53 団体 県外住民 地元住民 外国人 4 活動の成果 地域社会サポート により被災者の交流の場を創出 地域社会サポート により まごころ広場 という被災者が誰でも自由に立ち寄り 軽食も食べられる場を開設したことで多くの被災者の交流の場となった コミュニティの再生と産業の拠点となる施設整備により新たな雇用を創出被災地ではコミュニティの再生と産業 雇用の創出が重要な課題となっている中 大槌たすけあいセンター や まごころ就労支援センター の整備により 地域に新たな産業や雇用が創出されつつある また まごころ広場 で常連となった女性メンバーが5~6 名集まり 料理の腕を活かしたお弁当屋を開店した 雇用の創出の場となるとともに 復興に係る工事関係者からの評判も良く 250~300 万円 / 月の売上となった ボランティアに参加した企業等とのネットワークを構築東日本大震災以降 CSR や新人研修の一環として 被災地のボランティアに参加した企業との間でネットワークが構築され 百貨店での被災地の物産の販売及び企業内での物産販売会の開催等について支援を受けることができる関係性を構築できたことにより 当団体にとっては 新たな雇用の創出に結びつきつつある また 当団体の活動に対して 企業から寄附等の支援を受けることができる関係にも発展している 42
< 活動を通じて得た定量的な成果 > 事業を通じた成果平成 23 年度平成 24 年度平成 25 年度平成 26 年度累計 手芸品他 物産の販売額 雇用者数 9,672,773 円 12,964,748 円 11,764,292 円 4,464,328 円 38,866,141 円 0 人 227 人 50 人 38 人 315 人 ボランティア人数 56,895 人 25,811 人 12,188 人 4,545 人 99,439 人 5 活動の継続に向けた課題と今後の展望 (1) 活動の継続に向けた課題 自主事業の強化被災地では引き続き 産業 雇用の創出が重要な課題となっており 各種助成事業や補助金を活用しながら自主事業を実施していく 活動体制の強化と人材の育成 活動に携わるスタッフが減少傾向にあり 新たな人材を入れながら活動体制を整えていくとと もに 団体内部の人材育成を実施していく必要がある (2) 今後の展望 策定した活動指針とビジョンの継承平成 23 年 10 月に策定した活動指針とビジョンを継承し 5つのサポート事業を引き続き実施していく 東日本大震災を踏まえ ボランティアの受入に関するマニュアルを整備当団体では 熊本県や京都府の水害 栃木県や茨城県の突風による災害に際して支援を実施してきたが 改めて 東日本大震災を踏まえたボランティアの受入に関するマニュアルを整備し 緊急的な支援が実施できるようにしていく また 他の団体でも活用可能なようにマニュアルを整備していくこととしている 43