【資料3】資質・能力を基盤とした学校教育の創造 (奈須正裕氏(上智大学総合人間科学部教授)の発表資料)

Similar documents
「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

ICTを軸にした小中連携

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - aglo00003.学力の三要素

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

Microsoft PowerPoint - H29小学校理科

新学習指導要領の理念と カリキュラム マネジメント 2019( 平成 31) 年 1 月 16 日 文部科学省 3 階講堂 天笠茂 ( 千葉大学特任教授 )

PowerPoint プレゼンテーション

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

<4D F736F F F696E74202D20288E9197BF332991E F18D82926D8CA7918D8D878BB388E789EF8B608E9197BF816993DE907B816A2E >

PowerPoint プレゼンテーション

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

平成29年度 中学校英語科教育 理論研究

2021 年度入学者選抜について ~ ひとりひとりの個性と可能性を見つめる入試へ ~ 4 月 4 日 関西学院大学 関西学院の使命は キリスト教主義教育によって Mastery for Service を体現する世界市民 を育み 世に輩出することにあります 世界市民 とは 他者と対話し共感する能力を

Q1: 社会に開かれた教育課程 の実現とは, どのようなことですか? A: 教育課程を編成する際には, よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念とともに, 子どもたちにどのような資質 能力を育むのかについて学校と社会が共有することが求められています さらに, 社会と連携 協働することでそ

各教科 科目において 基礎的 基本的な知識 技能の習得とともに 知識 技能を活用する学習活動を重視すること 各教科 科目において 義務教育と高等学校との間の系統性を重視した円滑な接続を図ること 豊かな心や健やかな体の育成のため 道徳教育の充実や健やかな心身の育成についての指導の充実を図ること 生きる

資料2-1.教育課程企画特別部会 論点整理

資料1 審議のまとめ(素案)のポイント

教育課程企画特別部会 論点整理

資料3 文部科学省説明資料

愛媛県学力向上5か年計画

【学習指導要領改訂】 高等学校の新教科・科目構成(案)|旺文社教育情報センター

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

2、協同的探究学習について

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3


第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

造を重ねながら取り組んでいる 人は, このような自分の役割を果たして活動すること, つまり 働くこと を通して, 人や社会にかかわることになり, そのかかわり方の違いが 自分らしい生き方 となっていくものである このように, 人が, 生涯の中で様々な役割を果たす過程で, 自らの役割の価値や自分と役割

次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめのポイント

Microsoft Word - 医療学科AP(0613修正マスタ).docx

平成 30 年 4 月 1 日 平成 30 年度 第 70 回 日本連合教育会研究大会 桐生大会 大会主題 分科会研究協議題 等 Ⅰ 大会主題及び大会主題設定の趣旨 Ⅱ 分科会研究協議題 研究協議題設定の理由 研究協議の視点 (1) 第 1 分科会国語 (2) 第 2 分科会 社会 (3) 第 3

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

H30全国HP

第 1 章高校教育を取り巻く現状と課題 2 高校教育を取り巻く現状と課題 (2) 県立高校の現状と課題 4 不登校生徒や中途退学者の状況 そのため, 高校と中学校 特別支援学校 地域の保健福祉部門等との連携を強化し, 教育相談体制を拡充するとともに, 生徒一人一人の自己肯定感の涵養や自己実現を積極的

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

資料7 新学習指導要領関係資料

資料1 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第1~第3回)における主な意見等

スライド 1

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

H27 国語

入研協2019電子調査書

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

Microsoft PowerPoint - syogaku [互換モード]

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

PowerPoint プレゼンテーション

ライフプランニング学科ライフデザインコース 学科 専攻名ミッション ( 教育目標 ) 到達目標到達目標に対応する授業科目 年 年 3 年授業科目春春春春組織のミッション到達目標 ( 綱 ) 到達目標 ( 細 ) 科目区分 科目区分 科目区分 3 家庭を経営する専門的知識と能力を身につけている に関す

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

< F2D318BB388E789DB92F682CC8AC7979D F >

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

PowerPoint プレゼンテーション

メディアデザイン学科ディプロマ ポリシー メディアデザイン学科は 科学的市民 の育成という教育理念のもとに以下の資質や能力を身につけ 所定の授業 科目を履修して卒業に必要な単位を修得した学生に 学士 ( 工学 ) の学位を授与します 1. コミュニケーション力論理的な思考力 記述力 発表と議論の能力


目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

2部.indd

成績評価を「学習のための評価」に

り込んで獲得するものではなく 探究の過程を通して 自分自身で取捨 選択し 整理し 既にもっている知識や体験と結び付けながら 構造化され 身に付けていくものである そして こうした過程を経て獲得された知識は 実社会 実生活における様々な課題の解決に活用可能な生きて働く知識 すなわち概念として形成されて

Taro-14工業.jtd

習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

Microsoft PowerPoint - H28小学校音楽 [互換モード]

1-澤田-インクル.indd

今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

Microsoft PowerPoint - (290710完成版)全ページ.pptx

札幌市教育研究推進事業のあらまし Ⅰ. 札教研事業とは 1. 経緯 札幌市教育研究推進事業( 札教研事業 ) は 札幌市教育研究協議会 ( 昭和 25 年 5 月創設 ) いわゆる 札教研 の研究 研修活動部分を引き継ぐ形で 平成 19 年度より新たに教育委員会の事業として推進されて今日に至る 2.

「標準的な研修プログラム《

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

目 次 1 設置の目的 1 2 設置の基本的枠組み (1) 課程 (2) 学科 (3) 入学定員 (4) 設置予定 3 教育理念 育てたい人物像 (1) 教育理念 (2) 育てたい人物像 4 教育課程について (1) スポーツマネジメント科教育課程編成の基本方針 2 (2) 教育課程表 4 5 その

<4D F736F F D20906C8AD489C88A778CA48B8689C881408BB38A77979D944F82C6906C8DDE88E790AC96DA95572E646F6378>

工業教育資料347号

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

新しい幼稚園教育要領について

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

自動車工学科ディプロマ ポリシー 自動車工学科は 科学的市民 の育成という教育理念のもとに以下の資質や能力を身につけ 所定の授業科目を履 修して卒業に必要な単位を修得した学生に 短期大学士 ( 自動車工学 ) の学位を授与します 1. コミュニケーション力論理的な思考力 記述力 発表と議論の能力を有

Taro-自立活動とは

Microsoft PowerPoint 奈良県学力

平成28年度 小学校外国語活動 2_研究の実際(1)方向性

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

Taro-H29結果概要(5月25日最終)

平成 30 年 1 月平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果と改善の方向 青森市立大野小学校 1 調査実施日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) 2 実施児童数第 6 学年 92 人 3 平均正答率 (%) 調 査 教 科 本 校 本 県 全 国 全国との差 国語 A( 主として知識

第4章 道徳

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

平成16年度小学校及び中学校教育課程研究協議会報告書

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

高等教育局主任大学改革官説明資料1

~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

<4D F736F F D20906C8CA08BB388E E646F63>

(2) 平成 26 年度からの研究社会の変化に対応し未来を拓くために必要な 思考力 を育成するための新教科 未来思考科 を位置付けた教育課程, 新教科の指導内容, 指導方法及び評価方法についての研究開発を行っている 本校が考える 思考力 とは, 平成 24 年度に出された国立教育政策研究所のプロジェ

基礎的 はんよう汎用的能力は 分野や職種にかかわらず 社会的 職業的自立に向け て必要な基盤となる能力であると考える 例えば 企業が新規学卒者に期待する力は 就職の段階で 即戦力 といえる状態にまで学校教育を通じて育成することを求めているわけではなく 一般的には コミュニケーション能力 熱意 意欲

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香

算数でも 知識 (A) 問題 活用 (B) 問題とも 全領域で全国平均を上回りました A 問題では 14 問中 12 問が全国平均を上回り うち8 問が5ポイント以上上回りました 下回った2 問は 直径と円周の長さの関係理解 と 除法で表す2 量関係の理解 でした B 問題では 10 問中 9 問が

Transcription:

奈須正裕 ( 上智大学 ) 資料 3

学習指導要領改訂に係る議論に関するこれまでの経過と今後のスケジュール 平成 26 年 11 月 平成 26 年 12 月 中央教育審議会総会 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について 諮問 教育課程部会 教育課程企画特別部会を設置 平成 27 年 1 月教育課程企画特別部会 ( 第 1 回 ) 新しい時代にふさわしい学習指導要領の基本的な考え方や 教科 科目等の在り方 学習 指導方法及び評価方法の在り方等に関する基本的な方向性について 計 14 回審議 平成 27 年 8 月教育課程企画特別部会 ( 第 14 回 ) 教育課程部会 論点整理 をとりまとめ 平成 27 年秋以降 平成 28 年 平成 28 年度内 論点整理の方向に沿って教科等別 学校種別に専門的に検討 教育課程部会又は教育課程企画特別部会における議論を踏まえて 審議のまとめ 中央教育審議会として答申 ( 小学校は 32 年度から 中学は 33 年度から全面実施予定 高校は 34 年度から年次進行により実施予定 ) 2

次期学習指導要領改訂に向けた検討体制中央教育審議会教育課程部会考える道徳への転換に向けたワーキンググループ生活 総合的な学習の時間ワーキンググループ産業教育ワーキンググループ小学校部会中学校部会高等学校部会特別活動ワーキンググループ教育課程企画特別部会幼児教育部会特別支援教育部会高等学校の地歴 公民科科目在り方に関する特別チーム体育 保健体育 健康 安全ワーキンググループ情報ワーキンググループ芸術ワーキンググループ算数 数学ワーキンググループ理科ワーキンググループ家庭 技術 家庭ワーキンググループ高等学校の数学 理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チーム言語能力の向上に関する特別チーム国語ワーキンググループ外国語ワーキンググループ社会 地理歴史 公民ワーキンググループ総則 評価特別部会平成 27 年 8 月 26 日教育課程部会了承 3

これからの時代に求められる在り方 21 世紀が知的基盤社会であるという認識は 前回改訂と共通 グローバル化や情報化等の変化が加速度的となる中で 将来の予測がますます難しい時代に ( 現代的な課題 ) 社会的 職業的に自立した人間として 郷土や我が国が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野と深い知識を持ち 理想を実現しようとする高い志や意欲を持って 個性や能力を生かしながら 社会の激しい変化の中でも何が重要かを主体的に判断できること 他者に対して自分の考え等を根拠とともに明確に説明しながら 対話や議論を通じて多様な相手の考えを理解したり自分の考え方を広げたりし 多様な人々と協働していくことができること 社会の中で自ら問いを立て 解決方法を探索して計画を実行し 問題を解決に導き新たな価値を創造していくとともに新たな問題の発見 解決につなげていくことができること 4

これからの教育課程の理念 < 社会に開かれた教育課程 > 1 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ よりよい学校教育を通じてよりよい社会づくりを目指すという理念を持ち 教育課程を介してその理念を社会と共有していくこと 2 これからの社会を創り出していく子供たちが 社会や世界に向き合い関わり合っていくために求められる資質 能力とは何かを 教育課程において明確化していくこと 3 教育課程の実施に当たって 地域の人的 物的資源を活用したり 放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし 学校教育を学校内に閉じずに その目指すところを社会と共有 連携しながら実現させること 5

内容 ( 領域固有な知識 技能 ) 中心コンテンツ ベイス 何を知っているか A 問題的学力 資質 能力 ( 思考力 意欲 社会スキル ) 中心コンピテンシー ベイス どのような問題解決を成し遂げるか B 問題的学力 PISA 型学力 6

全国学力 学習状況調査 :A 問題と B 問題 6 年生算数の A 問題 ( 上 ) と B 問題 ( 右 ) ( 平成 19 年度全国学力学習状況調査より ) 正答率 :A 問題 96% B 問題 18% 7

不活性な知識 : 言語的な命題や事実として貯蔵 車両走行中にアクセルペダルから足を離したり低いギアにチェンジすることによって生じる制動作用をエンジンブレーキと言う 活性化された知識 : 条件 (IF) 節と行為 (THEN) 節の対として貯蔵 もし 急な下り坂や雪道ならば ( 条件節 ) 車両走行中にアクセルペダルから足を離したり低いギアにチェンジすることによって生じる制動作用 (= エンジンブレーキ ) を使って走行しなさい ( 行為節 ) 8

ミシェルが 186 人の 4 歳児に行った実験 (1970 年 ) 今なら 1 個 15 分待てたら 2 個のマシュマロがもらえる 1/3 の子どもが 2 個のマシュマロを獲得 1988 年に追跡調査 : 1 自制心の有無は持続していた 24 歳時点の結果が 大学進学適性検査 (SAT) のスコアを予測した 非認知的能力の重要性に加えて 幼児教育の質が生涯にわたる可能性を示唆 教育経済学 : 投資効果が最大になるのは幼児教育 その主要なターゲットは非認知的能力 9

育成すべき資質 能力の三つの柱 学びに向かう力人間性等 どのように社会 世界と関わり よりよい人生を送るか 確かな学力 健やかな体 豊かな心 を総合的にとらえて構造化 何を理解しているか何ができるか 知識 技能 理解していること できることをどう使うか 思考力 判断力 表現力等 10

内容 ( 領域固有な知識 技能 ) 中心コンテンツ ベイス 何を知っているか A 問題的学力 ( 不活性な知識でも正解に至れる ) 資質 能力 ( 思考力 意欲 社会スキル ) 中心コンピテンシー ベイス どのような問題解決を成し遂げるか B 問題的 PISA 型学力 ( 活性化された知識 思考力 ) + 非認知的能力 ( 意欲 社会的スキル ) 11

解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解ける力を育むだけでは不十分 蓄積された知識を礎としながら 膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し 自ら問いを立ててその解決を目指し 他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことができるよう そのために必要な資質 能力を身に付けることが重要 正解 から 最適解 へ 教育課程企画特別部会 論点整理 (2015 年 8 月 ) より 12

個々の事実に関する知識を習得することだけが学習の最終的な目的ではなく 新たに獲得した知識が既存の知識と関連付けられたり組み合わされたりしていく過程で 様々な場面で活用される体系的な概念等として身に付いていくということが重要 教育課程企画特別部会 論点整理 (2015 年 8 月 ) より 13

教育課程について 何を知っているか という知識の内容を体系的に示した計画にとどまらず それを使ってどのように社会 世界と関わり よりよい人生を送るか までを視野に入れたものとして議論する 認知的能力だけでは 問題解決はできない! 教育課程企画特別部会 論点整理 (2015 年 8 月 ) より 14

社会構造の変化 : 産業社会 知識基盤社会 知識基盤社会 = 知識を自在に 活用 したり 新たな知識を自力で生み出すことが求められる社会 1 産業界が求める人材の変化 : 定型から非定型へ 2 終身雇用 年功序列の崩壊 : 自分の生き方を独自に模索し 切り拓く必要性 キャリア教育 3 答えのないグローバルな課題の出現と深刻化 ESD 政治的 宗教的リテラシー 思考 判断 発想 構想 他者との協働 自己調整の能力がすべての人に求められる時代に 15

指導すべき個別の内容項目の検討に入る前に まずは学習する子供の視点に立ち 教育課程全体や各教科等の学びを通じて 何ができるようになるのか という観点から 育成すべき資質 能力を整理する必要がある その上で 整理された資質 能力を育成するために 何を学ぶのか という 必要な指導内容等を検討し その内容を どのように学ぶのか という 子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要 教育課程企画特別部会 論点整理 (2015 年 8 月 ) より 16

何ができるようになるのか : 資質 能力 何を学ぶのか : 内容 どのように学ぶのか : 教育方法 資質 能力 の育成という より高次な目的 内容 を通して 資質 能力 を育成 内容 それ自体にも もちろん意味はある教育方法の刷新 : アクティブ ラーニング コンテンツかコンピテンシーかという従来の対立図式を乗り越え より統合的な学力としての 資質 能力 の育成を目指す 17

学習指導要領改訂の方向性 ( 案 ) 新しい時代に必要となる資質 能力の育成 学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力 人間性の涵養 生きて働く知識 技能の習得 未知の状況にも対応できる思考力 判断力 表現力等の育成 何ができるようになるか よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し 社会と連携 協働しながら 未来の創り手となるために必要な知識や力を育む 社会に開かれた教育課程 の実現 各学校における カリキュラム マネジメント の実現 何を学ぶか 新しい時代に必要となる資質 能力を踏まえた教科 科目等の新設や目標 内容の見直し どのように学ぶか 主体的 対話的で深い学び ( アクティブ ラーニング ) の視点からの学習過程の改善 小学校の外国語教育の教科化 高校の新科目 公共 ( 仮称 ) の新設など 各教科等で育む資質 能力を明確化し 目標や内容を構造的に示す 学習内容の削減は行わない 生きて働く知識 技能の習得など 新しい時代に求められる資質 能力を育成 知識の力を削減せず 質の高い理解を図るための学習過程の質的改善 深い学び 対話的な学び 主体的な学び 高校教育については 些末な事実的知識の暗記が大学入学者選抜で問われることが課題になっており そうした点を克服するため 重要用語の整理等を含めた高大接続改革等を進める 18

これまでの学習指導要領は 知識や技能の内容に沿って教科等ごとには体系化されているが 今後はさらに 教育課程全体で子供にどういった力を育むのかという観点から 教科等を越えた視点を持ちつつ それぞれの教科等を学ぶことによってどういった力が身に付き それが教育課程全体の中でどのような意義を持つのかを整理し 教育課程全体の構造を明らかにしていくことが重要 教育課程企画特別部会 論点整理 (2015 年 8 月 ) より 19

資質 能力と学習指導要領等との構造を整理するには 学習指導要領を構成する各教科等をなぜ学ぶのか それを通じてどういった力が身に付くのかという 教科等の本質的な意義に立ち返って検討する必要 教育課程企画特別部会 論点整理 (2015 年 8 月 ) より 教科等の特質に応じた見方 考え方 への注目 要素的な知識を教科の本質 その教科ならではの 見方 考え方 で整理 統合し 概念的理解 深い意味的理解へと高めていく 20

主体的 対話的で深い学びの実現 ( アクティブ ラーニング の視点からの授業改善 ) について ( イメージ )( 案 ) 平成 2 8 年 5 月 9 日教育課程部会高等学校部会資料 8( 会議後修正 ) 論点整理 におけるアクティブ ラーニングの視点 深い学び 習得 活用 探究という学習プロセスの中で 問題発見 解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか 対話的な学び 他者との協働や外界との相互作用を通じて 自らの考えを広げ深める 対話的な学びの過程が実現できているかどうか 主体的な学び 子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み 自らの学習活動を振り返って次につなげる 主体的な学びの過程が実現できているかどうか 総則 評価特別部会及び各教科等 WG の議論を踏まえ 以下のように整理できるのではないか 深い学び 習得 活用 探究の見通しの中で 教科等の特質に応じた見方や考え方を働かせて思考 判断 表現し 学習内容の深い理解につなげる 深い学び が実現できているか 対話的な学び 子供同士の協働 教員や地域の人との対話 先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ 自らの考えを広げ深める 対話的な学び が実現できているか 主体的な学び 学ぶことに興味や関心を持ち 自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら 見通しを持って粘り強く取組み 自らの学習活動を振り返って次につなげる 主体的な学び が実現できているか 21

現実の社会に存在する本物の実践に可能な限り近づけて学びをデザインするオーセンティック = 真正な 本物のオーセンティックではない授業 評価鶴亀算 鶴と亀の足の区別がつかないの? 60 人乗りのバスがあります 140 人を運ぶには何台のバスが必要ですか? に 2 と 1/3 台 と答える子ども音楽や体育のペーパー テスト 暗記で解ける社会科パフォーマンス テストへの移行 22

平成 25 年度全国学力学習状況調査 6 年生算数 割合 に関する B 問題 23

現実世界の複雑な文脈や不必要な数値が埋め込まれた B 問題 公式 さえ問題中に示される! 計算せずに数理的な 判断 が可能な問題 解答例手続きではなく 意味の理解こそが学力現実の世界と数理的処理の間の 変換 過程の重視 24

現実の世界 数理的処理 問題状況 数理的表現 解決に対する現実的評価 数理的解決 25

2 個入りと 4 個入りのトマト どっちがお買い得か? 4 個入りの方が 1 個あたりの値段が安いからお買い得 さらに 4 個入りのブランド トマト 9 個入りのミニトマト 高いけどリコピンが 1.5 倍だから栄養ではかえってお得 ミニトマトは 1 個あたりが安いけど 物足りないからダメ でも お弁当にはミニトマトが便利だからお買い得 うちはお母さんと 2 人家族だから 4 個だと余っちゃう うちとしては 2 個パックがむしろお買い得かも! 数理の手続き 数理の意味 数理のよさ 限界 答えが出たところから算数の授業が始まる 26