第 42 回重要事項説明書とは?( 賃貸編 ) 掲載している記事 写真 イラスト 動画などのコンテンツの著作権は ( 一社 ) 大阪府宅地建物取引業協会ま たは正当な権利を有する第三者に帰属しておりますので 無断転載について禁止しております こんにちは 今度 部屋を借りる予定をしている A さんが 宅地建物取引士の人から重要事項の説明を受けるみたいなんだ 重要事項って言われると身構えてしまうけど どんなものですかという相談だよ 初めて不動産の契約をする場合 いろいろな専門用語などがあるので 戸惑うことも多いよね そうだね 難しいことがたくさん書いてそうだね 質問の 重要事項説明 ですが 宅地建物取引士がこれから契約し借りようとする物件のことや契約の内容を 重要事項説明書 という書面を作成して記名 押印をし 宅地建物取引士証を提示するもので 本当に借りるかどうかを検討して判断するためのものになるんだよ 1
初めての人でもわかるの? それをわかりやすく説明することが宅地建物取引士の仕事なんだよ ただ読み上げるだけではなく 借りようと思っている人が理解できて不安なく契約できるように説明することが重要事項の説明なんだ 説明を受ける方も 分からないことは理解できるまでしっかりと質問すればいいんだよ それなら安心だね ここでは 居住用の建物賃貸借の重要事項説明の内容を紹介しておこう 2
1 契約にかかる各種表示 1. 宅地建物取引業者の表示 2. 宅地建物取引士の表示 3. 取引態様 ( 代理か媒介なのかの説明 ) 4. 供託所等に関する説明 5. 貸主等の表示 6. 建物の表示 ( 所在地 構造 築年月日 種類 面積 ) 2 対象となる建物に直接関係する事項 1. 登記記録に記載された事項等 2. 法令に基づく制限の概要 3. 造成宅地防災区域内か否か 4. 土砂災害警戒区域内か否か 5. 津波災害警戒区域内か否か 6. 工事完了時の形状 構造 ( 未完成物件のとき ) 7. 石綿 ( アスベスト ) 使用調査結果の記録に関する事項 8. 耐震診断に関する事項 9. 飲用水 電気 ガスの供給施設及び排水施設の整備状況 10. 台所 浴室 便所その他の建物の設備の整備状況 ( 完成物件のとき ) 3 取引条件に関する事項 1. 借賃 借賃以外に授受される金銭の額及び授受の目的 2. 契約の解除に関する事項 3. 損害賠償額の予定または違約金に関する事項 4. 支払金又は預り金の保全措置の概要 5. 契約の種類 期間 更新等に関する事項 6. 定期借家契約の場合はその概要 7. 用途その他の利用の制限に関する事項 8. 敷金等の清算に関する事項 9. 管理の委託先 10. 建物敷地が借地の場合はその概要 4その他の事項 添付書類や特約条項 その他の補足説明などの事項 3
たくさんあるんだね そうだね でも これから契約して毎日生活をしていく住まいのことなのでしっかりと聞いておかなければ後で困ったことになってしまうよ 博士 特に気を付けて聞いておいた方がいいことってあるの? 1 契約にかかる各種表示の 4. 供託所等に関する説明は これからの契約で 何かトラブルがあった時に その金銭的な損害を弁済してもらえる制度の説明 なのでしっかりと聞いておいた方がいいね そうなんだね 他には? 4
それから 2 対象となる建物に直接関係する事項の 1. 登記記録に記載さ れた事項等では 所有権にかかる権利に関する事項 と 所有権以外の権利 に関する事項 についての説明がされます 所有権にかかる権利に関する事項 に差押登記や所有権移転仮登記など の記載があるときは 賃貸契約を継続できない場合があるので その物件の 契約をすることはやめた方がいいでしょう また 所有権以外の権利に関する事項 では 抵当権又は根抵当権の設定がされているかどうかを確認しておくことが必要だね 抵当権って何? 貸主がその建物を建てたり買ったりしたときに銀行などからお金を借りると その担保として設定される権利だよ 抵当権自体は一般的によく設定されますが 問題は もし銀行などへの返済が滞り競売にかけられた場合に その建物の借主へ影響が出てくるんだ どんなこと? 5
抵当権の設定以降に借りた入居者は 競売で競落した新所有者から立ち退きを迫られる可能性があります もし 新たに賃貸借契約をするにしても, これまでとは別の条件を提示される可能性があり 合意できなければ退去しなければなりません いずれも 猶予期間は 6 ヶ月間で その期間の賃料も支払わなくてはなりません また 以前の契約の敷金や預り金などの返還請求は新所有者にはできず 前の貸主に対して請求しなければならないのですが 返還される可能性は低いでしょう えーっ それは大変! これは 平成 16 年 4 月 1 日に改正施行された民法 395 条によるものなんだよ それ以前から比べると敷金等の相場が下がり建物を借りる方の初期費用がかなり少なくて済むようになってきています そうなんだね 6
でも 抵当権や根抵当権が設定されている建物で競売にかかるのは全体から見ればごく少数なので 必要以上に心配することはないと思うよ ただ一般の方では そのあたりの判断が難しいと思うので 媒介してくれる宅建業者に確認してもらうのが良いでしょう 博士 他に気を付けておくことはある? 3. 造成宅地防災区域内か否か 4. 土砂災害警戒区域内か否か 5. 津波災害警戒区域内か否かは 地震などの災害が起きた場合に土砂崩れや津波の危険性が高い区域の内か外かということなので契約する際の判断基準になると思います しっかりと説明を聞いておいてください 防災は大事だもんね 7
設備関係ではガスの種類で都市ガスなのかプロパンガスなのかの確認をしておくことと 水道関係の設備の内容と料金の徴収方法などを確認しておくといいでしょう 生活に欠かせないものだからこれも大事だね 最近では テレビアンテナの設置やインターネットの接続方法を確認しておくことも大切だね 3 取引条件に関する事項では 何を注意すればいいの? 8
1. 借賃 借賃以外に授受される金銭の額及び授受の目的では この契約にかかる諸費用が記載されています 借賃 ( 家賃 ) 及び 敷金 礼金 保証金 解約引き 更新料 管理費 ( 共益費 ) 賃貸保証料 賃貸保証更新料 火災保険料 鍵の交換代 駐車場使用料 駐輪場使用料など 契約時にかかる費用及び今後継続して必要な費用全般についての説明です 全部でどれぐらいかかるか確認しておくんだね 特に 敷金 礼金方式と保証金 解約引き方式の関係が分かりにくいですね もともと 関西圏は保証金 解約引き方式だったのですが平成 7 年の阪神大震災以降に 敷金 礼金方式に変わってきたんだよ どうして? 9
もともと保証金は借主が入居に際して 家主に一定の金額を預けておいて 解約を申し出て建物を明け渡した時点で契約時に決めた解約引き ( 通常 20~ 30% 程度 ) を差し引いて その残金を返還するのが保証金 解約引き方式です それと地震とどういう関係があるの? 地震で建物が倒壊し 賃貸借契約の継続が不可能となった時に借主は自ら解約を申し出たわけではないので 保証金の全額の返還を求めます 貸主も地震に非がなく 建物の再建にも費用が掛かるので 契約の終了を解約として解約引きを差し引いた残金の返還を主張します お互いの主張が折り合わないのですが 交渉する時間がなく苦い思いをされた方も多かったと思います そんなことがあったんだね 10
一方 敷金 礼金方式は 敷金は借主が入居に際して契約時に一定金額を貸主に預けるのですが 解約時に賃料等の不払いや借主の負担すべき修繕費がなければ全額返還されます そして礼金は 契約成立と同時に貸主の所得となり解約時の返還はありません もし 以前のように契約中に地震などがあり賃貸借契約が解除された場合には 敷金は借主に賃料の滞納等がなければ そのまま全額返還されます それならスッキリしていてわかりやすいね 2. 契約の解除に関する事項 3. 損害賠償額の予定または違約金に関する事項は 借主から契約を解除する時の手続き方法 賃料の支払いが遅れた時や物件に損害を与えた時の負担義務などの説明です 5. 契約の種類 期間 更新等に関する事項 6. 定期借家契約の場合はその概要も大切なことなのでしっかりと聞いておきましょう はい! わかりました 11
7. 用途その他の利用の制限に関する事項では ペットの飼育の可否や重量物の持ち込みや楽器の演奏に関する制限などがある場合に記載されるので 入居後にトラブルが起きないようにしっかりと確認しておきましょう せっかく引っ越しても やりたいことが出来なければ意味がないもんね 物件に引っ越してから何か不具合があった時は 管理会社の仕事となるので 9. 管理の委託先の説明もしっかりと聞いておいてください 特に分譲マンションの賃貸の場合は 賃貸物件の部屋の管理会社とマンション全体の管理会社とが異なる場合が多いので注意しましょう これで全部なの? 12
ここまでが一般的なことで どの物件でも最低限説明しなくてはいけない事項なんだよ 最後の 4 その他の事項では 特約事項や 借主が契約するかどうかの判断に影響を及ぼすような事項があるような場合に記載があるので しっかりと最後まで聞いておくことが大切だね 契約するかどうかの判断に影響を及ぼすようなことって どんなこと? たとえば 自殺 事件 事故など忌避事項については 宅建業者は時期にかかわらず知り得たことは説明しなくてはならないし 暴力団事務所や その他の嫌悪施設 ( 火葬場 工場 風俗店 ) 等が近くにある場合には わかり得る範囲において説明することとされているんだよ 契約前に教えてくれていたら安心だね 13
もし 分からない点や不安に思うようなことがあれば 契約する前に大阪宅建協会をはじめ不動産関連団体が窓口となる相談所まで相談してくださいね ライター長尾敏春 ( 北摂支部会員 ) 14