ポリブチレンテレフタレート樹脂
はじめに ノバデュラン (NOVADURAN ) は 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社のポリブチレンテレフタレート樹脂 (PBT 樹脂 ) 製品の商品名です PBT 樹脂は成形性 電気特性 耐熱性 耐薬品性 機械特性等に優れ エンジニアリングプラスチックスの中でもバランスの取れた特徴を有してます またPBT 樹脂は強化充填剤の配合により 機械特性 熱的特性の向上が容易な樹脂であり ノバデュラン は その特徴を活かし自動車分野 電気電子分野等で幅広くご採用頂いております ノバデュラン には 下表に示す標準グレードの他 難燃性 耐加水分解性 低反り性 良外観 高衝撃性 低ガス性 高耐電圧 柔軟性等 押出成形用グレード等用途に応じた特性を付与した種々グレードを揃えております 非強化 強化 一 般 5R 5CR 5G 5F 難 燃 5N 5GN 5GN2 5GN6
2 ノバデュラン の特徴 ノバデュランは 他のプラスチックや金属と比較して 次のような特徴をもっています () 機械的特性が優れています (2) 耐熱性が優れています (3) 結晶化速度が速く 流動性も良好で 成形性に優れています (4) 吸水率が非常に小さく 寸法安定性が良好です (5) 表面光沢に優れ 着色性も良好です (6) 耐油性 耐溶剤性に優れ ほとんどの薬品に侵されません (7) 電気的性質に優れています (8) 摩擦 摩耗特性に優れています (9) 優れた難燃グレードの供給が可能です 2
3 ノバデュラン の各種物性 プラスチックはその使用状況が様々であり その環境下での物性の変化があります ここでは ノバデュランの物性の温度依存性 耐熱老化性 耐候性等について説明します 物理的性質 図 3 吸水率 ( 水中 :mm 角 3mmt) 図 32 PVT 特性 (5R5 の圧力 比容積 温度の関係 : 等温測定 ) 図 33 5R5 の溶融粘度特性 3
機械的性質の温度依存性 図 34 引張強さの温度依存性図 35 引張弾性率の温度依存性図 36 曲げ強さの温度依存性図 37 曲げ弾性率の温度依存性 4
GF 含量と物性の関係 PBT 樹脂は耐熱性に優れていますが 樹脂をガラス繊維 (GF) で強化することによって これをさらに 改善することができます 下図は ノバデュランのGF 強化の効果を示したものです 一般グレードのGF 含有量と引張強さ DTUL および衝撃強さの関係を 図 38 39 および3に示します 図 38 引張強さの GF 含量依存性図 39 DTUL の GF 含量依存性図 3 衝撃強さのの GF 含量依存性 5
耐熱老化性 5G3 および 5R5 の 2 および 4 における引張強さの耐熱老化性試験の結果をそれぞれ 図 3 32に示します これらの図が示すように ノバデュランは耐熱性に優れています また 5R5 5G3の引張強さ5% 低下時間のアーレニウスプロットを図 33に示します 図 3 2 における耐熱老化性 図 32 4 における耐熱老化性 図 33 耐熱老化性 6
電気的性質 ノバデュランは 電気的性質に優れています 5R5 5N6 5G3 5GN3AM2 の電気 的性質の温度依存性を図 34 35に示します 5R5 5G3 5GN3AM2の誘電率 誘電正接の周波数依存性を図 36 37に示します 図 34 耐電圧の温度依存性 図 35 体積抵抗率の温度依存性 図 36 誘電率の周波数依存性 図 37 誘電正接の周波数依存性 7
耐候性 プラスチックの耐候性は多くの用途で重要になります 耐候性の試験には 加速試験ができる試験機器を使う方法と 成形品を屋外に曝露する方法の二つの方法があります サンシャインウェザロメーターおよび屋外曝露 ( 北九州市 ) により試験した 5R5 5G3 5GN3AM2の耐候性を図 38 39に示します これによると 非強化 HBグレードの5R5 は 引張強さの低下は少ないですが 伸びが急速に低下していることが分かります また GF 強化のグレードの5G3および5GN3AM2は 引張強さの低下は非強化 HBグレードほど大きくなく 伸びの低下も少ないことが分かります 図 38 図 39 サンシャインウェザロメーターによる耐候性試験 屋外曝露による耐候性試験 8
耐薬品性 耐薬品性は 多くの用途で重要な要因 表 3 耐薬品性 となります ノバデュランの代表的グレード5R5 5G3 5GN3AM2 グレード 薬品名 ( 水溶液 ) 温度 ( ) 引張強さ保持率 (%) 7 日後 3 日後 重量増加 (wt %) 7 日後 3 日後 の アルカリおよび酸に対する耐薬品性 5% NH 3 97 95..2 を表 3に示します PBTのようなポリエステルは その化学的構造上アルカリ溶液にはあまり耐性がありません 当社の試験結果でも 5R5 % NaOH % HCI 36% H 2 SO 4 36% H 2 SO 4 5% NH 3 94 94 99 9 97 93 96 99 92 95.2.2..4..2.3..3.2 水酸化ナトリウム (NaOH)% 水溶液で引張強さの低下が最大になっています ガラス繊維強化グレードでは この強度低下はより顕著でした 5G3 % NaOH % HCI 36% H 2 SO 4 36% H 2 SO 4 5% NH 3 34 95 92 96 2 89 97 84 94.6...6..4....2 5GN 3AM2 % NaOH % HCI 35 94 2 88.8.2.5.2 36% H 2 SO 4 96.. 36% H 2 SO 4 92 84.6. 9
表 32 は ノバデュラン 5R5 表 32 耐油性 5G3 5GN3AM2の耐油性を示したものです 5R5で のブレーキフルイドで引張強さの若干の低下が見られますが それ以外は優れた耐油性を持っています グレード 5R5 5G3 5GN 3AM2 オイル ガソリン トランスミッションフルイド ブレーキフルイド シリコンオイル ( 東レSH2) 水溶性切削油 ( 共石ソルカットW) ガソリン トランスミッションフルイド ブレーキフルイド シリコンオイル ( 東レSH2) 水溶性切削油 ( 共石ソルカットW) ガソリン トランスミッションフルイド ブレーキフルイド シリコンオイル ( 東レSH2) 水溶性切削油 ( 共石ソルカットW) 温度 ( ) 引張強さ保持率 (%) 7 日後 3 日後 92 87 重量増加 (wt %) 7 日後 3 日後.3.3..2..3.2....3.2...3.5.6..2...5.4.2...5.4.2.4
4 ノバデュラン の成形 この章では ノバデュランの最適射出成形条件について説明します 原料樹脂の乾燥 ノバデュランは 原料樹脂中に少量の水分があっても射出成形で機械的性質が低下します 使用前には原料樹脂中の水分を除去することが重要です 一般的な乾燥条件は以下のとおりです 図 4 5R5 のペレット乾燥速度 熱風乾燥 4 で 4~6 時間 2 で 5~8 時間 図 4は 各種乾燥速度の影響を示したものです 乾燥温度は4 を超えないようご注意下さい また乾燥温度 未満では乾燥効果は期待できません
成形性および機械的性質への水分の影響 ノバデュラン成形品の機械的性質に対する 原料樹脂中の水分の影響を図 42に示します 原料樹脂ペレットの水分が3% を超えると 成形品の表面の異常および / または機械的性質の低下が起こることがあります 原料樹脂を前記の手順で完全に乾燥させることが極めて重要です 完全乾燥した原料樹脂は容易に吸湿します 図 43は5R5の吸湿性を示したものです 室内に3 分以上放置した原料樹脂の成形は避けて下さい 図 42 水分と成形性および機械的性質図 43 5R5 の吸湿性 成形機について ノバデュランの成形は スクリューインラインタイプの射出成形機の使用が一般的です 回の射出容量が最大射出容量の3~% となる射出成形機の使用をお勧めします ノズルについてはオープンノズルを用い ノズル温度をコントロールすることでほとんど問題ありません ただし 非強化低粘度グレードでは鼻たれを起こしますので シャットオフノズルを用いた方がよい場合があります 強化タイプ ( ガラス繊維または無機フイラー ) を成形する場合には スクリュー及びシリンダーの摩耗に対する配慮が必要となります 2
成形条件 代表的な成形条件を以下に示します グレード 5R 5F 5G 5N 5GN シリンダー温度 ( 後部 ) シリンダー温度 ( 中央部 ) シリンダー温度 ( 前部 ) ノズル温度金型温度射出圧力スクリュー回転数射出速度 Mpa Rpm 5 24 25 245 6~8 2~5 8~5 中速 ~ 高速 24 245 255 255 8~ 2~5 8~2 中速 ~ 高速 5 24 25 245 6~8 2~5 8~2 中速 ~ 高速 5 24 255 25 8~ 2~5 8~5 中速 ~ 高速 ノバデュランの最適樹脂温度は 24~265 です 樹脂温度が 275 を超えると 樹脂の成形機内滞留時間が比較的 短くても 機械的性質の低下や焼けが起こることがあります 金型温度は 通常 6~ が適当です 成形品の表面状態や寸法によって 金型温度を調節する必要があります 強化樹脂を成形する場合 あるいは成形品の使用環境温度が高くなる場合には 金型温度は高い方が良好です 成形操作を中断する場合には シリンダー内に残っている樹脂をすべてパージすることが重要です シリンダー内の 樹脂のパージは 他のエンジニアリングプラスチックと同様に PE PP PS などを使用します 3
金型について 金型の表面仕上げ 強化樹脂の成形では 金型を焼き入れするか表面をメッキ加工して十分な耐久性を持たせる必要があります ゲートサイドゲートまたはピンゲートのご使用をお勧めします ゲート寸法の目安を下記に示します 外形 サイドゲート ピンゲート 成形品厚さ (mm) 3 5 <3 3~5 ゲート寸法 (mm).5..5~2. 2.5~3. 2.5~3.5 3.5~5..8~.2( ).~2.( ) ガス抜き成形品の焼けを防止するためにガス抜きを設けます ガス抜きには 厚さ2mm 幅 ~5mm 幅をお勧めします 4
流動性 ノバデュランの流動性を図 44 45 に示します 図 44 流動長の厚み依存性図 45 流動長の射出圧力依存性 溶融時の熱安定性 ノバデュランの熱安定性を図 46に示します 図 46で分かるように 樹脂を通常の成形温度で成形機で 時間保持しても 樹脂の固有粘度 [η] の低下は約 % で非常に安定しています しかし2 では3 分の滞留時間でも固有粘度 [η] は約 2% 低下し 高温での劣化が速いことを示しています 図 46 5 58 の 25 および 2 における熱安定性 5
成形収縮率 後収縮 図 47 5R5の成形収縮率の金型温度依存性 図 48 5G3の成形収縮率の金型温度依存性 図 49 5G3 の後収縮 ( 流動方向 ) 図 4 5G3 の後収縮 ( 直角方向 ) 6
5 ノバデュラン の用途 ノバデュランには多くの優れた性質があり 色々な用途に広く使用されています 現状および将来考えられる用途の例を以下に示します 電気機器および電子機器関係 コネクター スイッチ 絶縁材 端子 コイルボビン 蛍光灯キャップ 電話機の押しボタン TV フライバックトランス部品 ヘアドライヤーのノズル ヘアカーラーの櫛 マイクロスイッチ部品 マイクロモーターのハウジング 端子群 タイマー部品 シェーバー回路 および空調機の空気出口 リレー部品 自動車関係 電気コネクター ディストリビューター部品 ( ボディ キャップ ローター ) ワイパーギアケース ウィンドウウォシャーノズル ドアハンドル カップラー 点火装置部品 ギア ABS 装置ハウジング ドアミラー部品 コンソールボックス エアバッグの G センサハウジング 排気ガス処理装置のバルブ フロントスカート エアー入口ルーバー その他の工業関係 事務用機器の冷却ファンおよびファンハウジング ファクシミリおよび写真複写機の紙ガイド 光ファイバーケーブルの鞘 シーケンサーハウジング キーボードのキー 腕時計および時計の部品 カメラ部品 およびパイプ継ぎ手 その他の用途 繊維用途 ( パンティーストッキング 水着 ) フィルム およびポリマーアロイのブレンド材 7
8 5R5 表 5 UL 規格認定値燃焼性 UL94 電気的性質衝撃あり衝撃なし HWI (PLC) HAI (PLC ) HVTR (PLC ) D495 (PLC ) CTI (PLC) 最小厚さ (mm) 94HB 94HB 94HB 94HB 94HB 94HB 94HB 94HB 94V 94V 94V 3 3 3 3 4 4 4 4 3 3 3 75 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 4 4 4 4 4 4 4 4 3 4 4 4 4 3 2 3 2 3 2 4 5 5 6 3.83.5 3. 6..8.5 3. 6..7.59 3. RTI( ) 機械的性質 5G3 5GN3AM2
主要単位換算表 力 圧力 応力 エネルギー仕事熱量 量 SI SI 以外の単位 N 5 9.8665 Pa 9.8665 4.325 5.33322 Pa or N/m 2 9.8665 6 9.8665 4 J 3.6 6 7 9.8655 4.865 kgf/cm 2.972 5.33.3595 3 kw h 2.77778 7 2.7778 4 2.7247 6.6222 6 dyn 5 9.8665 5 kgf/mm 2.972 7 2 erg 7 3.6 3 9.8655 7 4.865 7 atm 9.869 6 9.6784.3595 3 kgf.972.972 6 kgf m kgf/cm 2.972 5 2.972 3.698 5.972 8 4.26649 atm 9.869 6 9.6784.3595 3 cal 2.38889 4 8.642 5 2.38889 2.34385 6 仕事率工率動力 粘度 ( 粘度係数 ) 動粘度 ( 粘度係数 ) 熱伝導率 比熱 量 SI SI 以外の単位 W kgf m/s kcal/h 9.8665.6279 Pa s 3 4 m 2 /s 6 4 W/(m K).6279 4.864 3 kj/(kg K) 4.865.972.8572 cp 3 2 cp 6 2 cp 8.6 3.6 3 kcal/(kg ) 2.38889 8.5985 8.4337 P 2 P 4 2 P 2.3889 4 2.7778 4 9
ご注意 本資料に記載されているデータは 当該試験方法に準じた当社所定の試験法による測定値の代表例です 本資料に記載の用途例は 当社製品の当該用途への適用結果を保証するものではありません 本資料に記載の用途や応用にかかわる工業所有権や使用条件などについては貴社にてご検討下さい 当社製品の取り扱い ( 輸送 保管 成形 廃棄など ) に当たっては 使用される材料 グレードの技術資料や安全データシート (SDS) をご参照下さい 特に 食品容器包装 医療部品 安全器具 小児用玩具等の用途へのご使用の際は 別途ご相談下さい 日本国内においては 当社製品の各グレード着色品の場合 適用法令である労働安全衛生法第 57 条の 2 に基づく施行令 8 条の 2 中の別表 9 にある名称等を通知すべき化学物質を含有している場合があります 詳細は お問い合わせ下さい 当社製品の輸出及び当社製品を組み込んだ製品の輸出に当たりましては 外国為替及び外国貿易法等の関係法令の遵守をお願い致します 各国の化学物質管理制度により 当社製品に使用している化学物質が規制を受け 別途申請が必要な場合や輸出入ができない場合があります お客様が当社製品の輸出者又は輸入者となる場合は 該当国での規制適合状況をお問い合わせ下さい * 本資料の内容は 改訂のため予告なく変更することがありますのでご了承下さい 2