局所麻酔による ペインコントロール 菊地 浩輔 1
今回の授業 全身麻酔 吸入麻酔 静脈麻酔 局所麻酔 浸潤麻酔 表面麻酔 脊髄クモ膜麻酔 硬膜外麻酔 末梢神経ブロック 2
今回の授業 全身麻酔鎮静 鎮痛 筋弛緩 全身の管理が必要 局所麻酔手術や患部など局所だけの除痛を図る 全身管理が不要 3
麻酔の 3 要素 先生達は 患者さんにやさしい手術をしてくれるのでしょうか?? 鎮静 患者が暴れたら手術できないんだけど 手術って痛くないのか?? 怖いっ 鎮痛 筋弛緩
全身麻酔の三要素 鎮静 鎮痛 筋弛緩
道具回覧 6
局所麻酔 麻酔を効かせたい部位に直接作用させる 浸潤麻酔 表面麻酔 麻酔をしたい部位の中枢側の神経に作用させる (= 伝達麻酔 ) 中枢神経ブロック ( 脊髄クモ膜下麻酔 硬膜外麻酔 ) 末梢神経ブロック 7
局所麻酔薬の特徴 エステル型 アミド型に分けられる 麻酔方法 希望する作用時間などで局所麻酔薬やその濃度を決定する 8 8
局所麻酔の合併症 手技に伴う合併症 局所麻酔薬中毒 使用総量の増加や血管内誤投与などにより 局所麻酔薬の血中濃度が上昇した場合 中枢神経 心血管系症状を引き起こす 症状 : 興奮 多弁 舌の痺れ 視覚 聴覚異常 意識障害 痙攣 呼吸停止 循環虚脱 アレルギー 神経や骨格筋への毒性 9
浸潤麻酔 手術をしようとする皮下組織や粘膜組織内に局所麻酔薬を注入する 簡便で安全 低濃度のものでよい 皮膚または皮下の小手術などが適している 10
表面麻酔 狭い範囲の粘膜や皮膚 皮下組織に局所麻酔薬を噴霧 塗布 貼付などして無痛を得る スプレー ゼリー パッチ 点眼 うがい薬など 高濃度のものを使用し 粘膜面からの吸収が速やかなので局所麻酔薬中毒に注意 鼻粘膜麻酔 点眼麻酔 気管内麻酔など 11
脊髄クモ膜下麻酔 脊髄のクモ膜下腔に局所麻酔薬を注入し 脊髄前 後根を遮断することによって 感覚 運動 交感神経を麻痺させる 下腹部以下の手術 ( 整形外科 産婦人科 ) 2 時間くらいの手術 患者の意識を低下させたり 全身麻酔にしたくない場合 ( 帝王切開など ) 12
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脊髄クモ膜下麻酔の利点 欠点 利点 : 簡便良好な無痛 筋弛緩 欠点 : 手術時間の制限麻酔範囲の限定が難しい患者の意識状態を考慮する必要 14
脊髄クモ膜下麻酔の方法 体位 : 側臥位か座位 腰を前屈させ 棘突起間を広げる 介助者は腹側に 穿刺部位 : 脊髄損傷を避けるために 第 2 腰椎 (L2) 以下 左右の腸骨稜を結ぶ線 (Jacoby 線 :L4 棘突起か L4/5 棘間に相当 ) が目安 使用薬剤 : 高 or 等比重麻酔薬 (0.5% ブピバカインなど ) 麻薬 ( フェンタニル モルヒネ ) を少量混合することもある 15
脊髄くも膜下麻酔 高比重麻酔薬 重力により 低い方へ薬液が広がりやすい 下腹部や下肢の手術に適する 等比重麻酔薬 重力の影響を受けにくく 注入部位付近にとどまる 下肢骨折手術で患肢を下にできない場合や 循環系の予備力が低下している高齢者などに適する ( 交感神経の遮断作用が弱いため血圧低下が起こりにくい ) 16
脊髄クモ膜下麻酔効果への影響因子 体位 注入部位 局所麻酔薬の種類 投与量 注入速度 患者因子脊柱の生理的彎曲 脳脊髄液の量 密度 年齢 体格など 刺入部から麻酔が効き始め 頭を下げると頭側まで上がりやすくなる 17
脊髄クモ膜下麻酔効果判定 温冷覚 痛覚 触覚 位置覚の順に遮断 知覚 運動神経遮断は下肢から下 上腹部に向かって拡がり 約 20 分で最高位に達する 酒精綿や痛み刺激などで 皮膚分節による麻酔域の確認 18
脊髄クモ膜下麻酔の禁忌 協力できない患者 中枢神経系の腫瘍 炎症など 穿刺部位の炎症 敗血症や菌血症 頭蓋内圧亢進 以下は十分に検討して適応を決める 出血傾向 穿刺困難 ( 奇形 高度肥満など ) 全身状態が悪い ( ショック 高度脱水 重症心不全など ) 19
脊髄クモ膜下麻酔の合併症 血圧低下 嘔気 嘔吐 呼吸抑制 高位脊麻 全脊麻 ( 局所麻酔薬が脳幹に達すると意識 呼吸停止 循環不全 ) 硬膜穿刺後頭痛 神経障害 ( 脊髄血腫 神経根損傷 馬尾症候群 髄膜炎など ) 20
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麻酔薬の注入 23
硬膜外麻酔 硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し 脊髄前 後根を遮断する カテーテルを留置できる 穿刺体位 麻酔範囲判定 禁忌などは脊髄クモ膜下麻酔に準じる部分が多い あらゆる局所麻酔薬 麻薬を用いて作用時間延長や効果増強が可能 24
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硬膜外麻酔の方法 穿刺方法 : 穿刺針が硬膜外腔に入ったことの確認方法として 抵抗消失法が多く用いられている 抵抗消失法 注射器に生理食塩水を入れ 加圧しながら針を進めていくと 硬膜外腔に入ったとたん 生理食塩水が抵抗なく注入できるようになる 26
硬膜外麻酔の利点 血圧低下や呼吸抑制が軽度 カテーテル留置により持続的な鎮痛が可能 どの椎体間でも可能 穿刺部位や局所麻酔薬量により 効かせたい領域を麻酔できる ( 分節麻酔 ) 局所麻酔薬濃度により 運動神経を遮断せずに感覚神経のみ遮断できる ( 分離麻酔 ) 27
硬膜外麻酔の欠点 十分な無痛 筋弛緩作用を得るには大量の局所麻酔薬が必要になることがある 脊髄クモ膜下麻酔に比べて手技が難しい 効果発現が脊髄クモ膜下麻酔よりも遅い 持続硬膜外麻酔で局所麻酔薬を反復投与すると血中濃度が増加して局所麻酔薬中毒を起こすことがある 28
硬膜外麻酔の合併症 神経 脊髄損傷 血圧低下 尿閉 硬膜外血腫 膿瘍 硬膜 クモ膜穿刺 カテーテル血管内迷入 カテーテルから髄液や血液が吸引されないか? 少量の局所麻酔薬を注入し クモ膜下や血管内に入っていないか? 等を確認 29
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抵抗消失を確認 31
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脊髄クモ膜下麻酔と硬膜外麻酔の違い 硬膜の外に局所麻酔薬を注入して神経遮断するのが硬膜外麻酔 クモ膜 硬膜 硬膜 クモ膜を貫いて局所麻酔薬を注入して神経遮断するのが脊髄クモ膜下麻酔 33
末梢神経ブロック 目標とする末梢神経周囲に局所麻酔薬を投与する エコーや神経刺激装置を用いると リアルタイムに局所解剖や穿刺針の位置を確認でき より安全 部位によってはカテーテルを留置できる 例 : 上肢の手術 腕神経叢ブロック下肢の手術 大腿神経 坐骨神経ブロック下腹部の手術 腹横筋膜面ブロック 34
末梢神経ブロック 35
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アスペンジャパンの麻酔 web 大腿神経ブロック 第 2 回 37
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術後疼痛 外科的侵襲に対する生体の防御反応 痛覚刺激は皮膚 筋膜 骨膜 関節 腱 血管 腹膜 胸膜などにある痛覚 ( 侵害 ) 受容器を介して受容される この受容器への刺激は脊髄後角 視床 大脳皮質 大脳辺縁系へと伝わる 大脳辺縁系は自律神経調節 情緒 本能活動に関係する 術後痛は術後 24 時間以内が強く 2-3 日で軽減する 39
術後疼痛に対する生体反応 咳反射や深呼吸の抑制 喀痰排出困難 血圧上昇 頻脈 活動減少による深部静脈血栓症 消化管機能低下 ストレスホルモン増加による高血糖 蛋白異化 術後譫妄 40
術後疼痛管理 先制鎮痛法が基本 患者が鎮痛薬を投与する PCA(patient controlled analgesia) が注目されている 静脈内 硬膜外 皮下 神経ブロックなど PCA 装置を備えた持続注入ポンプの普及 鎮痛薬の経口 経直腸 筋肉内投与もある 41
国家試験対策 第 100 回 A さんに鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルを挿入した その直後 A さんに呼吸困難が出現した 最も優先される検査はどれか 1. 胸部 CT 2. 心電図 ECG 3. 気管支鏡検査 4. 胸部エックス線撮影 第 103 回鎖骨下静脈へ中心静脈カテーテルを挿入する際に起こりやすい合併症はどれか 1. 肺炎 2. 気胸 3. 嗄声 4. 無気肺
国家試験対策 解答 解説中心静脈カテーテルを鎖骨下静脈から穿刺した場合 位置関係から肺を誤穿刺し 気胸を合併する可能性がある 気胸による肺の虚脱を確認するために 呼吸音を聴取するとともに胸部エックス線撮影を行う 43
国家試験対策 第 106 回合併症のない全身状態が良好な患者に対して 全身麻酔のための気管挿管を行い用手換気をしたところ 左胸郭の挙上が不良であった 原因として考えられるのはどれか 1. 無気肺 2. 食道挿管 3. 片肺挿管 4. 換気量不足
国家試験対策 左胸郭の挙上が不良であった やさしイイ呼吸器教室 より
国家試験対策 第 100 回麻薬の取り扱いで正しいのはどれか 1. 看護師は麻薬施用者免許の申請ができる 2. 病棟での麻薬の保管は劇薬と同一の扱いにする 3. 使用後 アンプルに残った薬液は病棟で破棄する 4. 麻薬を紛失したら 麻薬管理者は都道府県知事に届け出る 46
国家試験対策 解答 解説 1. 看護師は麻薬施用者免許の申請ができる 麻薬施用者免許は薬剤師 医師が申請し 看護師はできない 2. 病棟での麻薬の保管は劇薬と同一の扱いにする 麻薬は他の薬物と分けて 鍵のかかる堅固な保管庫に保管する 劇薬の保管は鍵の必要はない 3. 使用後 アンプルに残った薬液は病棟で破棄する 麻薬の残液やアンプルは 薬局に返納する 4. 麻薬を紛失したら 麻薬管理者は都道府県知事に届け出る 病棟で麻薬の紛失があった場合は 麻薬管理者に連絡して麻薬管理者から都道府県知事に届け出る 麻薬管理者は病院の薬局管理者や院長が多い 47
国家試験対策 第 89 回新鮮凍結血漿の取り扱いで誤っているのはどれか 1. 冷凍庫で保存する 2. 容器のまま 30~37 で解凍する 3. 解凍後は静かに混和する 4. 解凍後は 5 時間以内に使用する 48
国家試験対策 新鮮凍結血漿とは 採血後分離された血漿を直ちに凍結保存したもの凝固因子の補充や循環血液量減少の改善と維持を目的 1. 冷凍庫で保存する -20 以下の保存で1 年間有効 2. 容器のまま30~37 で解凍する 高熱で解凍すると失活するので容器のまま30~37 で解凍し使用する解凍後 再凍結して使用してはいけない 3. 解凍後は静かに混和する 〇 4. 解凍後は5 時間以内に使用する 解凍後は3 時間以内に輸血セットを使用し輸液するが 外観に異常があれば使用しない 49 投与方法は投与目的によって異なるが 解凍すれば使用する必要があるため 目的に応じて必要十分な量を解凍する
国家試験対策 98 回酸素吸入濃度 50~98% に最も適した器具はどれか 1. 鼻カニューレ 2. 単純酸素マスク 3. ベンチュリーマスク 4. リザーバー付酸素マスク 50
国家試験対策 人工呼吸器学習サイト 第 98 回酸素吸入濃度 50~98% に最も適した器具はどれか 鼻カニューレ単純酸素マスクリザーバー付酸素マスク 高流量で鼻に痛み O2 1~3Lくらい 低流量だと逆にO2が薄くなってしまう O2 3~7Lくらい吸入 O2は40% 程度 マスクに風船をつけることで 吸いきれなかった O2 を再利用することで高濃度酸素吸入を可能に
国家試験対策 第 93 回状態と輸液との組合せで正しいのはどれか 1. 乏尿 維持液 2. 肝不全 総合アミノ酸製剤 3. 脳圧亢進 マンニトール製剤 4. 低カリウム血症 ブドウ糖液 52
国家試験対策 解答 解説 維持液 アミノ酸製剤 マンニトール アルブミン製剤 53
国家試験対策 GI 療法 ブドウ糖とインスリンを療法注射して 血中の K 濃度を下げる K ブドウ糖
第 94 回次の文を読み問題 2 に答えよ A さん 38 歳の初産婦 妊娠経過は順調であった 妊娠 37 週 5 日 7 年の不妊治療後の妊娠であり 骨盤位のため帝王切開術を選択し入院した 身長 155cm 体重 75kg 非妊時体重 65kg 手術の経験はない 問題帝王切開術は 脊椎麻酔で施行された 手術時間は 1 時間 20 分 出血量は 350 mlであった 手術中のバイタルサインは安定していた 手術直後の血液所見は Hb11.2g/ dl 血清総蛋白 7.0g/ dlであった A さんに起こりやすい術後合併症はどれか 1. 術後出血 2. 深部静脈血栓症 3. 子宮内感染 4. 縫合不全
解説 1. 術後出血術中の出血量や Hb は正常値であり 術後の出血を促すような危険性は見受けられない 2. 深部静脈血栓症帝王切開術後は静脈壁の損傷によるものや 麻酔による長時間臥床のために深部静脈血栓症をきたしやすい さらにこのケースは肥満傾向であるため 血流がうっ滞しやすく血栓症を起こしやすい 3. 子宮内感染子宮内感染や縫合不全を引き起こすようなリスクはみられない 4. 縫合不全子宮内感染や縫合不全を引き起こすようなリスクはみられない