金融市場2018年12月号

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経済・物価情勢の展望(2016年10月)

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

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中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

金融市場2017年12月号

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

中国、家計消費の伸びは歴史的低水準に | 第一生命経済研究所 西濵徹

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

Economic Indicators   定例経済指標レポート

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

中国経済見通し-18年下期は6.3%前後へ減速、米中貿易戦争が激化すればさらなる下振れも

○ユーロ

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当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

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先行き高めの成長が持続 現状 : 内外需要が堅調足許の経済は内外需要が堅調を維持 輸出は世界経済の回復を背景に急拡大 個人消費は良好な雇用所得環境を受けて 若干減速しつつも安定的に拡大 企業マインドの改善によって 固定資産投資に底入れの兆し 堅調な需要拡大を受けて 工業生産は高めの伸びを維持 展望

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

金融政策決定会合における主な意見

2018 年 10 月号 中国の金融経済動向について 中国の AI 動向について 千葉銀行上海駐在員事務所

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中国経済展望2018年12月号

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

○ユーロ

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2019年の中国経済見通し:強まる景気減速感

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

デレバレッジ政策や米中貿易摩擦により景気は減速 現状 : 景気は減速景気は減速傾向 金融監督の強化を柱としたデレバレッジ ( 与信や債務の抑制 ) 政策により シャドーバンキングの拡大に歯止めがかかった一方 地方政府などが資金繰り難に直面し インフラ投資が大幅に鈍化 米中貿易摩擦は 製造業の投資マイ

月例経済報告

中国、一段の景気下振れを示唆する動きが顕在化 | 第一生命経済研究所 西濵徹

先行き景気は緩やかに減速 現状 : 景気は減速局面入りでは 217 年 1~12 月期の実質 GDP が前年同期比 +6.8% と 前の期から横ばいに 環境規制の強化や貸出金利の上昇が景気の押し下げ要因となった一方 世界経済の回復を反映した輸出の拡大が押し上げ要因に 217 年通年の経済成長率は前年

景気は再び減速局面に 現状 : 景気は減速では ~ 月期の実質 GDP 成長率が前年同期比 +.% と 四半期ぶりに低下 足許の景気減速の背景として 政府が政策スタンスを変えたことが指摘可能 昨年まで 政府は景気失速を回避するために 積極的な財政支出と金融緩和を実施していたものの 過剰生産や不動産市

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

中国:大都市の住宅頼みの景気底入れへ

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月例経済報告

みずほインサイト アジア 2019 年 1 月 22 日 中国経済の現状と 2019 年展望 2018 年 10~12 月期 GDP と修正李克強指数の動向 アジア調査部中国室主任エコノミスト 大和香織 年

景気は減速 先行き大幅な成長鈍化は回避 現状 : 景気は減速景気は 製造業のけん引力低下を受けて減速傾向 この背景には デレバレッジ政策と貿易摩擦が指摘可能 習近平政権は 昨年から金融リスクの低減に向けデレバレッジ政策に本腰 穏健中立方針とされていた金融政策は 短期金利の高め誘導などで実質的に引き締

マクロ経済動向分析4月 成長減速の中に見える安定 ソフトランディング体勢へ

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資料1

< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

先行き高めの成長が持続 現状 : 内外需要が堅調経済は内外需要が堅調を維持 輸出が世界経済の回復を背景に拡大 工業生産も高めの伸びが持続 もっとも 固定資産投資の増勢は鈍化傾向 内訳をみると 民間投資と不動産開発投資が小幅に加速したものの 国有企業の設備投資やインフラ投資が減速 政府は 民間投資が拡

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

経済学でわかる金融・証券市場の話③

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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2019年の日本経済

Invesco Premia Plus Fund

先行き景気は緩やかに減速 現状 : 景気は減速局面入り経済は減速局面入り 政府が環境規制を強化したため 重工業で減産の動き 短期市場金利を高めに誘導するとともに 金融監督を強化したことも 企業の資金調達コストを上昇させ 固定資産投資が緩やかに減速 小型車減税措置の完全終了 (217 年末 ) に伴い

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

本文

先行きも高めの成長が持続 現状 : 堅調さを維持経済は 一部で弱い動きがみられるものの 堅調さを維持 弱い動きは主に耐久消費財 一部の固定資産投資 輸出の 3 分野で出現 もっとも こうした弱めの動きは限定的であり 景気を大きく下押しするほどのマイナス影響は顕在化せず 実際 工業生産や輸入は堅調な伸

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

【別添3】道内住宅ローン市場動向調査結果(概要版)[1]

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1. トピック :216 年 1~12 月期 GDP の評価と今後の見通し 1~12 月期の実質成長率は小幅に上昇インフラ投資の一服により投資は減速小売も低下したが 雇用所得環境は改善外需寄与度も低下しており 在庫増が 1~12 月期成長率の押し上げに寄与した模様 216 年後半に企業景況感が回復資

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

今月の経済金融情勢2018年11月30日号

中国経済の2018年問題

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

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中国、財新サービス業PMIは4ヶ月ぶりの低水準に(Asia Weekly(3/4~3/8)) | 第一生命経済研究所 西濵徹

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景気は緩やかに減速へ 現状 : 景気は持ち直し 7 月は弱含む指標が散見されたものの 総じてみれば経済の好調は持続 実質小売売上高は所得環境の改善により上向き 民間固定資産投資は企業の景況感が改善するなか持ち直し 輸出も世界経済の回復によって持ち直し傾向にあり 内外需ともに回復が明確化 政府が昨年か

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長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

PowerPoint プレゼンテーション

【ロシア最新経済金融週報】

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

第2章_プラントコストインデックス

スライド 1

経済:マーケット・フォーカス

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平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

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(Microsoft Word \214\216\215\206_\203g\203s\203b\203N1\201i2010\224N\223x\214o\215\317\214\251\222\312\202\265\201j.doc)

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

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本日の説明内容 総括 2019 年 3 月期第 1 四半期実績 2019 年 3 月期通期見通し 主要施策の進捗 1

今月の経済金融情勢2018年12月25日号

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

Transcription:

情勢判断 中国経済金融 投資の持ち直しで下振れ圧力がやや緩和した中国経済 ~ 経済対策の速やかな実施で 19 年は 6.5% 成長 ~ 王雷軒要旨内需 ( 投資 + 消費 ) の勢いが弱まったことを背景に 2018 年 7~9 月期の実質 GDP 成長率は前年比 6.5% と 9 年半ぶりの低い伸びとなった しかし その後は輸出が底堅く推移したほか 投資も小幅ながらも持ち直していることから 下振れ圧力がやや緩和したと見られる 今後も 新たな景気対策に加え 既に打ち出された経済対策の速やかな実施による効果も期待されるので 減速に歯止めがかかると見込まれる 足元でも下振れ圧力はあるものの やや和らいだと見られる 2018 年 7~9 月期の実質 GDP 成長率は前年比 6.5% と 1~3 月期 ( 同 6.8%) 4~6 月期 ( 同 6.7%) から減速が続き 09 年 1~3 月期以来 9 年半ぶりの低い伸びとなった ( 図表 1) 前期比も 1.6% と 4~6 月期 ( 同 1.7%) から鈍化した その後も下振れ圧力は続いているものの 10 月分の経済指標からは幾分和らいだと見られる ( 前年比 %) 8.5 図表 1 中国の実質 GDP 成長率の推移 ( 四半期ベース ) 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 12 年 13 14 15 16 17 18 ( 資料 ) 中国国家統計局 CEIC データより作成

( 前年比 %) 16 14 図表 2 中国の小売売上総額の推移 小売売上総額 ( 名目 ) 小売売上総額 ( 実質 ) 12 10 8 6 4 3 5 7 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 12 13 14 15 16 17 18 ( 資料 ) 中国国家統計局 CEIC データより作成 ( 注 ) 17 年 3 月の実質伸びが発表されず 10 月の個人消費は弱含みで推移 季節要因などで落ち込みが鮮明に まず 個人消費について詳細に見ていきたい 10 月の小売売上総額は前年比 8.6% と 9 月 ( 同 9.2%) から伸び率が低下した 物価変動を除いた実質ベースの小売売上総額も前年比 5.6% と 9 月 ( 同 6.4%) から伸びが鈍化し 統計開始以来の低水準となり 個人消費は力強さを欠く展開となっている ( 図表 2) このうち ネット販売を通じた小売売上総額は二桁を上回る伸びが続いた一方 自動車販売台数が同 12% と 4 ヶ月連続で前年割れとなった 家計所得の伸び悩み 米中経済摩擦に伴う不確実性の高まりによる消費マインドの悪化 そして住宅ローン金利の上昇などによる家計負担の増加が個人消費を抑制していると考えられる 上記のほか 10 月の小売売上総額の伸びが鈍化を強めた背景には 祝日要因と買い控えも挙げられる まず 祝日要因については 中秋節が 17 年の 10 月から 18 年は 9 月になったことが挙げられる また 中国最大の小売イベントであるダブルイレブン (11 月 11 日 ) を控えた買い控えの規模が大きかった可

( 前年比 %) 30 25 能性もあると見られる 実際 11 月 11 日の売上額は伸び率が前年比 23.8% と 17 年 ( 同 43.5%) からは鈍化したものの EC 最大手であるアリババの売上額は 2,135 億元 2 位の京東は 1,598 億元で いずれも過去最高を更新するなど 消費意欲が依然として強いことを示唆していると思われる 先行きについては 個人所得税法の改正による減税が行われたほか 10 月 11 日に発表された 個人消費促進体制 メカニズムの整備に関する実施法案 (2018~2020 年 ) で 個人消費を押し上げるための 6 大分野における 26 の具体的な措置 ( 新エネルギー自動車に対する優遇税制の継続等 ) が打ち出されていることから 減速には歯止めがかかると考えられる ただし 企業が経営コストの削減に注力しているため 賃上げペースが鈍化しているほか 米中経済摩擦への警戒感もあり 消費マインドを大きく向上させることは容易ではないだろう 図表 3 中国の固定資産投資と内訳の推移設備投資不動産業向け投資固定資産投資インフラ整備向け投資 20 15 10 5 0 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/1 2016/1/1 2017/1/1 2018/1/1 ( 資料 ) 中国国家統計局 CEIC データより作成 ( 注 ) 年初来累積 直近は 18 年 10 月 投資は下げ止まり 先行きも持ち直しを想定 他方 投資については 1~10 月期の固定資産投資は前年比 5.7% と 1~9 月期 ( 同 5.4%) から下げ止まった 内訳を確認すると 不動産業向け投資および設備投資は引き続き持ち直し基調にあるが インフラ整備向け投資も同 3.7% と 1~9 月期 ( 同

3.3%) からやや上向いた ( 図表 3) 地方政府および国有企業が抱える過剰な債務の削減によって 18 年入り後は急ブレーキがかかったインフラ整備向け投資はようやく底入れの動きが出始めている 投資主体別では 民間投資の持ち直し基調が続いているほか 国有企業による投資の大きな鈍化にも歯止めがかかったと見られるなど 政府による景気下支え策の効果が出始めている 先行きについても 地方政府および国有企業のみならず 後述のように 中小企業や民間企業への資金支援を強化していることもあり 固定資産投資全体の持ち直しも期待される ただし 米中経済摩擦をめぐる不確実性が依然として大きいことや 冬季の環境規制の強化などによる投資への影響に留意する必要がある ( 前年比 %) 30 図表 4 中国の輸出入の推移 20 輸出 輸入 10 0-10 -20-30 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 14 年 15 16 17 18 ( 資料 ) 中国海関総署 CEICデータより作成 ( 注 ) 金額はドルベースで前年同月比 中国輸出は拡大基調維持も先行きに懸念 また 10 月分の輸出は前年比 13.4% と 9 月 ( 同 15.2%) から伸び率がやや鈍化したものの 堅調に推移した ( 図表 4) 対米貿易についても 10 月分の輸出は前年比 13.2% と 9 月 ( 同 14.0%) からやや減速したものの 堅調な伸びを維持している 他方 米国からの輸入は同 1.8% と 2 ヶ月連続で前年割れと

鉱工業生産も小幅持ち直し 10~12 月期の成長は一旦持ち直す可能性も 10 月 31 日の中央政治局会議後 景気下支え策を強化 なっている 米国による 2,000 億ドルの中国製品に対する追加関税の税率引き上げ (19 年 1 月 1 日予定 ) を控え 米国向け輸出が前倒しで実施されたことが輸出の伸びの拡大の一因と見られる 先行きの対米輸出については 年内は堅調に推移すると見込まれるが 前倒しの反動に加え 米中経済摩擦が激化する恐れもあることから 19 年入り後には輸出の鈍化が予想される 実際 製造業 PMI のサブ指数を確認すると 10 月の新規輸出受注は 46.9 と判断基準となる 50 割れとなっている 今のところは米中経済摩擦による輸出への悪影響は顕在化していないものの 先行きへの懸念は根強い 前述のように 固定資産投資が下げ止まっていることを受けて生産もやや改善に転じている 鉱工業生産 (10 月 ) は前年比 5.9% と 9 月 ( 同 5.8%) から小幅ながら持ち直しの動きが見られた 以上の内外情勢を踏まえつつ景気を展望すると 投資が持ち直しており また 個人所得税法の改正が行われたことなどを受けて個人消費が多少持ち直す可能性もあり 10~12 月期の成長率は前年比 6.6% と小幅ながら高まることを想定する その結果 18 年通年の成長率は前年比 6.7% となる ただし 米中経済摩擦の影響により 19 年には前年比 6.5% と再び減速していく見通しに変わりはない こうしたなか 習近平総書記が会議を主宰した中央政治局会議 (10 月 31 日 ) では 中国経済の現状について 1~9 月期の成長は総じて安定のなかで前進 物価は基本的に安定 製造業の設備投資は回復 輸出入は堅調な推移 外資利用は安定的に拡大 秋作は豊作 住民所得の伸びは経済成長率と基本的に同じ 都市部新規就業者増加数は通年目標を前倒しで達成した と評価した 一方 経済の下振れ圧力が依然存在しており 一部企業の経営が厳しく 長期的に積み上がったリスクがある程度表面化しているとの認識も示されている 今後の政策方針については 金融リスクの防止 デレバレッジを進める といった表現がなくなったほか 打ち出された政策措置の効果を速やかに発揮させ 積極的な財政政策および穏健な金融政策のもとでの安定成長の維持が改めて強調され

当面の注目ポイント :11 月末の米中首脳会談 4 中全会 ている この会議後 銀行の新規企業融資に占める民間企業の比率は大手銀行が 3 分の 1 以上 中小銀行が 3 分の 2 以上 また 向こう 3 年以内には銀行全体で 5 割以上にするという目標を設けるなど 金融当局は速やかに民間企業への資金支援を本格的に強化し始めている模様だ ペンス米副大統領が 11 月に開催された APEC で中国の一帯一路などを批判するなど 米中間の応酬は引き続き行われている 他方 11 月末に G20 サミットに合わせて米中首脳会談が予定されるなか 水面下で経済摩擦をめぐる協議を再開していると報じられている 予定通り 19 年初めに 2,000 億ドルの中国製品への追加関税の税率 10% を 25% に引き上げるか また 米国が残りの中国製品 2,500 億ドル相当分の製品に対しても追加関税を課すかどうかも焦点となる 加えて 今後開催予定の共産党中央委員会第 19 期第 4 回全体会議 (4 中全会 ) で 経済政策などについて議論されると見られ その内容にも注目が集まるだろう 第 1 回中国国際輸入博覧会の開催 最後に 11 月 5 日 ~10 日に上海で開催された第 1 回中国国際輸入博覧会を紹介しておこう 主催側の発表によると 172 ヶ国 地域 国際組織から 3,617 社の企業が出展し 成約額は 578.3 億ドルであった 分野別では スマート ハイテク設備が 164.6 億ドルと最も多く 食品 農産物は 126.8 億ドル 自動車は 119.9 億ドル 医療機器 医療保健は 57.6 億ドルとなった 日本から約 450 社と最大規模 米国は韓国に次いで第 3 位の 180 社だった 会期中のバイヤー数は約 40 万人に達した 習近平国家主席は開幕式で講演を行ったが 中国の今後 15 年間ではモノとサービスの輸入額はそれぞれ 30 兆ドル 10 兆ドルに達するとの見通しを示し 中国が世界に向けて市場を開放していくことや 開放的 協調的な世界経済 貿易の枠組みを構築することを呼びかけた なお 19 年開催予定の第 2 回中国国際輸入博覧会の受付をすでに開始している (18.11.20 現在 )