ここれだけは知っておきたい! 国際財務報告基準 Q&A Keyword22: 中間財務報告 Q. 中間財務報告について教えてください また, 日本の基準とは何か違いがあるのですか A. 国際会計基準第 34 号 (IAS34 号 ) 中間財務報告(Interim Financial Reporting) では, 中間財務諸表を作成する場合に従うべき, 開示項目を含む最小限の内容を定義し, かつ採用すべき認識及び測定の原則を規定しています 開示については, 年度の財務諸表と同様の方法によるほか, 要約方式によることが認められています 認識及び測定の原則については, 年度と同一のものを適用しなければなりませんが, その原則の範囲内において, 見積りの方法をより多く使用できる場合等が例示されています 1. 範囲 IAS34 号が規定する 中間財務報告 は, 事業年度よりも短い期間に係る財務報告を意味します したがって必ずしも事業年度の半分の期間に限定されるものではなく, 例えば四半期 (3ヶ月 ) や半期 (6ヶ月) が含まれます IAS34 号ではどのような企業がどのような場合に中間財務報告を行うべきかは定めておらず, これを各種機関によって決定される制度に委ねており, その上で,IFRS に準拠した中間財務報告を行う場合には IAS34 号を適用することを求めています ただし, 特に上場企業については, 少なくとも事業年度の上半期末現在の中間財務諸表を提供すること, 及び中間財務諸表を 60 日以内に入手可能とすることを奨励しています 2. 開示 (1) 年度と同様の財務諸表または要約財務諸表 IAS34 号では, 中間財務諸表は, 年度の財務諸表と同様の 財務諸表の完全なセット (IAS1 号に規定 ), または一定の簡略化がなされた 要約財務諸表のセット (IAS34 号に規定 ) のいずれかを含むものとしています 企業はいずれかの方法を選択して中間財務諸表を作成します (2) 要約財務諸表の構成 要約財務諸表のセット による場合,IAS34 号は, 開示すべき最小限の項目を定めており, 少なくとも以下の項目を含みます 要約財政状態計算書 要約包括利益計算書 要約持分変動計算書
要約キャッシュ フロー計算書 精選された説明的注記要約財務諸表の内容は, 少なくとも直近の年度の財務諸表の各見出し及び小計を含むことが要求されています したがって, 例えば財政状態計算書であれば最低限, 流動資産, 固定資産等の区分及び小計を記載すれば足りると考えられますが, 実務上は年度の財務諸表とほぼ同様の開示を行うことが一般的です (3) 精選された説明的注記 IAS34 号では, 中間財務諸表の利用者は年度の財務諸表を入手しうることを前提に, 直近の年度の財務諸表以降の財政状態の変動及び経営成績を理解する上で重要な事象と取引について説明を行うべきという観点から, 以下の最低限開示すべき注記事項を定めています これらの情報は, 通常は, 期首からの累計ベースで報告します 中間財務諸表においても直近の年度の財務諸表と同じ会計方針と計算方法とが採用されている場合はその旨, 変更が行われたときにはその変更の性質と影響についての説明 中間営業活動の季節性又は循環性についての説明的コメント 資産, 負債, 資本, 純利益又はキャッシュ フローに影響を与える事項で, その性質, 規模, 又は頻度からみて異常な事項の性質と金額 当該事業年度の過去の中間期に報告された見積金額の変更, 又は, 過去の事業年度に報告された見積金額の変更が当該中間期に重要な影響を与えているときには, その変更の性質と金額 負債証券及び持分証券の発行, 買戻し, 及び償還 普通株式とその他の株式の各々に対する配当金 セグメント情報( 年度で必要な場合のみ ) 中間期末後の重要な事象で当該中間期にかかる中間財務諸表に反映されていない事象 企業結合, 子会社及び長期投資の取得又は処分, リストラクチャリング, 並びに廃止事業など, 中間期間における当該企業の構成上の変化の影響 直近の年度の期末日後の偶発負債又は偶発資産の変動 (4) 対象期間中間財務諸表は, 以下の期間を対象として比較形式で開示することが求められています 例えば四半期開示を行う場合, 包括利益計算書のみ当該四半期 (3ヶ月) と累計 (6ヶ月) を併記することが求められています 財政状態計算書 包括利益計算書 当該中間期末 直近の事業年度末 当該中間期間
年初からの累計期間 直近の事業年度の対応する中間期間 直近の事業年度の対応する年初からの累計期間 持分変動計算書 キャッシュ フロー計算書 年初からの累計期間 直近の事業年度の対応する年初からの累計期間 年初からの累計期間 直近の事業年度の対応する年初からの累計期間 3. 認識及び測定 (1) 概要 IAS34 号では, 年度と同一の会計方針を適用することが求められています 資産, 負債, 収益, 及び費用は, すべて年度と同一の原則により認識します 中間期間の税金費用については, 年度の見積利益総額に適用される税率, すなわち見積平均年次実効税率を用いるとされています このことは, 年度の財務諸表で適用されるのと同じ会計上の認識と測定の原則の適用という基本的概念に一致するものとして位置づけられています 見積平均年次実効税率は実務的な範囲内で租税区域および利益の種類ごとに算定されます (2) 累計を基準とした測定 IAS34 号では, 企業の報告の頻度 ( 年次, 半期, 又は四半期 ) によって年度の経営成績の測定が左右されてはならず, 測定は年初からの累計を基準として行わなければならないとされています 例えば, 第 1 四半期において減損損失が認識された場合で, 第 2 四半期に見積りが変更された場合には, その差額について減損損失を追加的に認識または戻入れることになります (3) より多くの見積りの使用等前述のとおり,IAS34 号では, 中間財務諸表では資産, 負債, 収益, 及び費用は, すべて年度と同一の原則により認識することが求められていますが, その原則の範囲内において, 見積りの方法を多く使用できる場合などが例示されています (IAS34 号付録 B 及びC) 以下にその一部を示します 税金費 用 退職給 個別の税率を使用する場合に近い合理的な見積が可能であれば, 各租税区域全体又は 各種利益全体の加重平均税率も用いられる 退職給付費用の計算は, 前期末の基礎数値を用いて期間計算することができる ( ただし重
付減損棚卸資産再評価及び公正価値連結会社間残高 要な変動がある場合は調整が必要 ) また, 退職給付債務と年金資産の評価を年度のように行うのではなく, 直近の数理評価からの推計によって信頼できる測定が得られることが多い 中間期末で詳細な減損の計算を必ず行う必要はなく, むしろそのような計算が必要となるかを判断するために直前の年度末以降の減損の兆候を考慮すべきである 全数量の棚卸及び評価の手続は中間期末では必要ない 中間期末では売上マージンに基づいて見積を行えば足りる 有形固定資産や投資不動産の評価において, 年度では専門家に依拠するが, 中間ではそうしないこともありうる 中間期末日現在の連結財務諸表の作成に際しては, 年度ほど詳細な調整は行われないものもありうる 4. 日本基準との比較 IAS34 号に対応するものとして, 日本では四半期財務諸表と中間財務諸表の2つの制度がありますが, ここでは四半期財務諸表を例にとり説明します IAS34 号では, 中間財務報告においては年度より多くの見積りの使用等が可能である旨が示されていますが, 日本基準でも同様の趣旨による簡便的な会計処理が定められており, その例示項目も共通しているものが多くあります ただし, 日本基準ではこの簡便的な会計処理のほか, 四半期特有の会計処理という例外的な会計処理が一部定められています 特に日本基準における四半期特有の会計処理のうち, 年度末までに吸収されると予測される原価差額の繰延べは IAS34 号では禁止されており, 後入先出法による食い込み分の売上原価修正については, 国際財務報告基準では会計方針としての後入先出法そのものが認められていません また, 税金費用の計算については, 日本基準では年度と同様の方法, すなわち四半期会計期間を一事業年度とみなして税効果会計を適用する方法が原則, 年度の見積実効税率を用いる方法が四半期特有の会計処理となっているのに対し,IAS34 号では年度の見積実効税率を用いる方法のみが認められています IAS34 号日本基準 ( 四半期 ) 会計基準 一般的な中間財務報告の基準 ( 四半 期や中間を含む ) として定められてい る 四半期財務諸表に関する会計基準 が定 められている
財務諸表の様式財務諸表の構成精選された説明的注記 ( 四半期の注記 ) 会計方針 ( 認識及び測定の原則を含む ) 四半期特有の会計処理 年度と同様の基準による財務諸表と要約方式による財務諸表が認められている 要約財務諸表の内容は, 少なくとも年度の財務諸表の各見出し及び小計を含む ( ただし要約方式でも年度とほぼ同様の開示を行うことが一般的 ) 持分変動計算書あり 直近の年度の財務諸表以降の財政状態の変動及び経営成績を理解する上で重要な事象と取引について説明を行うための事項 ( 具体的注記項目の定めあり ) 年度と同一 なし ( ただし年度の見積実効税率による計算を行う ) 年度の財務諸表に準じるが, 財務諸表利用者の判断を誤らせない限り集約して記載することができる ( ただし 四半期連結財務諸表規則 などに従うことが一般的 ) 株主資本等変動計算書なし 基本的な考え方は IAS34 号に類似 ( 具体的注記項目の定めあり ) 四半期特有の会計処理を除き, 原則として年度と同一 ただし, 財務諸表利用者の判断を誤らせない限り, 簡便的な会計処理によることができる 原価差異の繰延処理 後入先出法における売上原価修正 税金費用の見積実効税率による計算 簡便的な会計処理 / より多くの見積りの使用等 どちらも同様の趣旨であり, 例示されている項目に差はあるが, 両者に共通する例示項目として例えば以下のものがある 棚卸資産の実地棚卸の省略 退職給付費用の前期末数値を基準とした期間計算 連結財務諸表における連結会社間残高の調整 減損の兆候の重視 この Q&A は 週刊経営財務 2892 号 (2008 年 11 月 8 日 ) にあらた監査法人企業会計研究会として掲載したものです 発行所である税務研究会の許可を得て あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので 他への転載 転用はご遠慮ください