回転もしくは歯軸の変化を伴わない圧下のためには 頰舌側の近遠心両方で圧下力を付与し 歯の抵抗中心 (CR 図 1-13) に圧下力が伝わるような設計が必要となる そのために 2ヶ所のアンカースクリューとエラスティ ックチェーンを利用する 口腔内でエラスティックチェーンが滑るのを防ぐために メタルボタ

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歯科矯正用アンカースクリューの応用法 補綴治療前の minor tooth movement:mtm をシンプルに The application of orthodontic miniscrews for minor tooth movement before prosthetic treatment 韓国延世大学歯学部 矯正科副教授 鄭朱玲 Chooryung J. Chung, D.D.S., Ph.D. Associate professor, Department of Orthodontics, Gangnam Severance Dental Hospital, Yonsei University はじめに 補綴治療の前処置としてのminor tooth movement(mtm) の基本原則は 全顎的な咬合状態は維持しながら 必要な部位だけを選択的に移動することである そのために 計画した歯の移動に対する反作用が少なくなるように固定源を強化する必要がある 近年 骨固定源である歯科矯正用アンカースクリューの導入により 患者さんの 協力がなくても歯の移動に対する反作用を最小限に押さえられるようになった 特に 補綴治療のための M T M に際しては 歯科矯正用アンカースクリューを用いることで 反作用の憂慮なく 装置を装着する部位を最小限にしながらも効率よく簡単に選択的な歯の移動ができる また アンカースクリューの埋入位置やアタッチメントの使用により 従来では困難であった圧下のメカニクスもより簡単に設計することができる 本稿ではジーシーオルソリーの インデュース MS-Ⅱ アンカースクリューを応用して補綴治療の前処置としての MTMを施術した症例を通して 様々なアンカースクリューを適用したシンプルな治療法や臨床的に重要なポイントを紹介したい 症例 1 上顎第 1 大臼歯の圧下 患者 ;40 歳 男性主な治療目的 ; インプラント治療のための上顎第 1 大臼歯の圧下治療経過 ; 全顎的な咬合を維持しながら上顎第 1 大臼歯の圧下を行うために 頰側には第 2 小臼歯 第 1 大臼歯の間に 口蓋側には第 1 第 2 大臼歯の間にアンカースクリューを埋入した エラスティックチェーンを両側のアンカースクリューに直接かけて圧下力を付与し 約 5ヶ月後充分な圧下が得られた その間 下顎にもアンカースクリューを用いて第 2 第 3 大臼歯のアップライト ( 整直 ) を行い ( 症例 5 図 5-2 ) その後インプラント埋入を行った 図 1-1 2 ヶ所のアンカースクリューを利用した上顎第一大臼歯の圧下 術前バイオメカニクスの模式図 術中 ; 歯の抵抗中心 ; エラスティックチェーン 20 No.149 2014-5

回転もしくは歯軸の変化を伴わない圧下のためには 頰舌側の近遠心両方で圧下力を付与し 歯の抵抗中心 (CR 図 1-13) に圧下力が伝わるような設計が必要となる そのために 2ヶ所のアンカースクリューとエラスティ ックチェーンを利用する 口腔内でエラスティックチェーンが滑るのを防ぐために メタルボタンを接着するか充塡用レジンを利用して歯に直接固定を行う 症例 2 下顎第 2 大臼歯の整直 患者 ;22 歳 女性主な治療目的 ; 隣接面修復治療のための大臼歯の整直治療経過 ; 下顎第 3 大臼歯の抜歯の際 その後方にアンカースクリューを埋入 した アンカースクリューのヘッドにリガチャーワイヤーを結紮し フックの形状で口腔内に露出した ここからエラスティックチェーンを用いて下顎第 2 大臼歯をけん引することにより遠心傾斜 させて整直を図った 約 3ヶ月後大臼歯が整直したため 隣接面の修復治療を行った 図 2-1 Closed method による大臼歯の整直 術前術中 付着歯肉の歯根間に比べて 下顎第 3 大臼歯の遠心は粘膜に囲まれているため アンカースクリューのヘッドに直接エラスティックチェーンをかける方法 (open method) は患者さんおよび術者ともに不便さを感じる場合が多い したがって 粘膜にアンカースクリューを埋 入する場合は そのヘッド部分まで粘膜下に埋入し リガチャーワイヤーのようなアタッチメントだけを口腔内に露出してアンカーとして使用する方法 (closed method) が推奨される ジーシー サークル 149 号 2014-5 21

症例 3 下顎第 2 大臼歯の圧下 患者 ;45 歳 男性主な治療目的 ; インプラント治療の前処置としての下顎第 2 大臼歯の圧下治療経過 ;.019 x.025 ステンレスワイヤーを利用してアンカースクリューと 第 2 小臼歯 第 1 大臼歯の頰側を連結しレジンで固定することで 間接固定源 (indirect anchorage) を確保した その後 第 1 第 2 大臼歯にブラケットを装着してNiTiワイヤーによりレベリ ングを行った 約 5 ヶ月後 第 2 小臼歯 第 1 大臼歯の移動は認められないまま第 2 大臼歯の充分なレベリングと圧下が得られ その後上顎のインプラント埋入を行った 図 3-1 間接固定源とレベリングを利用した下顎第 2 大臼歯の圧下 1 ;.019 x.025 ステンレスなどの剛性の高いワイヤー 5 3 下顎の場合 舌側へのアンカースクリューの埋入は難しい そのため基本的に頰側のアンカースクリューと周囲の歯を頑固なワイヤーで連結した間接固定源を確保したうえで ブラケットとアーチワイヤーを利用してレベリ ングを行うことが多い ただし アンカースクリューと間接固定源は弾性を持つワイヤーとレジンで固定されるため 間接固定源の歯の移動も認められることがある したがって 治療中の咬合の変化に注意する必要がある 22 No.149 2014-5

症例 4 上顎第 2 大臼歯の圧下 患者 ;55 歳 女性主な治療目的 ; インプラント治療のための上顎第 2 大臼歯の圧下治療経過 ; 頰側には第 2 大臼歯の遠心 カースクリューを埋入し エラスティックチェーンにより圧下力を付与した 約 4ヶ月後充分な圧下が得られ その後下顎のインプラント埋入を行った 口蓋側には第 1 第 2 大臼歯の間にアン 図 4-1 上顎第 2 大臼歯の圧下 術前バイオメカニクスの模式図 術中 ; 大口蓋孔 ; エラスティックチェーン 基本的な圧下のメカニクスは上顎第 1 大臼歯圧下の際と同様だが 第 2 大臼歯の場合 口蓋側遠心には大口蓋孔が存在し ( 図 4-13) 解剖学的制約によりアンカースクリューの埋入が難しい また症例 2のように第 2 大臼歯 リューの埋入が困難である場合がある そのため 図 4-2 のように第 2 大臼歯の近心にアンカースクリューを埋入し そのヘッドにレバーアームを固定して圧下力の方向を調節する場合もある の頰側遠心も視野の確報などが難しいためアンカースク 図 4-2 レバーアームによる圧下方向の調節 第 2 大臼歯の遠心には頰側 口蓋側ともにアンカースクリューの埋入が難しいためアンカースクリューのヘッドにレバーアームを固定し 圧下方向の調節を行っている ; レバーアーム ; エラスティックチェーン ジーシー サークル 149 号 2014-5 23

症例 5 欠損部補綴スペースの獲得 患者 ;67 歳 女性主な治療目的 ; 大臼歯の整直および欠損部インプラント埋入スペースの獲得治療経過 ; 下顎第 1 大臼歯の喪失により第 2 大臼歯の近心傾斜が認められ 第 2 大臼歯の整直によるインプラント埋入スペースの獲得を計画した 第 2 大臼歯にはブラケットをボンディングし 欠損部位にアンカースクリューを埋入した.016ステンレスワイヤーに NiTiオープンコイルを挿入してアンカースクリューとブラケットスロットに装着したところ 約 2ヶ月後にはスペースを獲得できたため 同スペースにインプラントを埋入した 図 5-1 アンカースクリューを固定源としたインプラント埋入スペースの獲得 術前術中 近心傾斜した臼歯 ( 特に最後方臼歯 ) の遠心方向への傾斜移動による整直を行う際には 同部の垂直的な咬合高径の増加による開咬や咬合干渉が起こる可能性がある したがって 定期的なモニタリングを通じて咬合状態を確認し 当該歯の整直と同時に圧下のメカニックを追加す る または咬合調整を加えるなどの配慮が必要になる場合もある また アンカースクリューとアップライトスプリングを利用する方法 ( 図 5-2 症例 1の下顎 ) や小臼歯部を間接固定源としてオープンコイルを挿入して使用する方法 ( 図 5-3 ) も応用できる 図 5-2 アンカースクリューを固定源としたインプラント埋入スペースの獲得 ( 症例 1 の下顎 ) 図 5-3 間接固定源によるインプラント埋入スペースの獲得 24 No.149 2014-5

症例 6 歯冠破折前歯の歯根挺出 患者 ;35 歳 男性主な治療目的 ; 歯冠破折前歯修復のための歯根挺出 (forced eruption) 治療経過 ; 歯冠破折した上顎中切歯の biologic widthを確保するために 約 3 m m の歯根挺出を計画した アンカースクリューを側切歯の遠心に埋入し.018 TMAワイヤーを約 50gの挺出力が加わるように活性化して アンカースクリューのヘッドと中切歯の間にレジ ンで固定した 約 2ヶ月後 目標の挺出量が得られたため 同部の修復治療を開始した 図 6-1 アンカースクリューと弾性ワイヤーを用いた歯冠破折前歯の歯根挺出 1 5 3 弾性ワイヤーの活性化による垂直的な挺出は短期間で可能であるが 頰舌的なコントロールが必要になる場合もあるので注意が必要である ジーシー サークル 149 号 2014-5 25

まとめ本稿で示した症例のように 矯正用アンカースクリューは様々な部分矯正に応用され その効果は高く評価されている 著者の場合は 特に補綴治療の前処置としての MTMは可能な限りブラケットを使用しないシンプルなシステムを適用するようにしている 症例 1 2 6 のように アンカースクリューに single forceをかける direct force systemは力学的に安定しやすいうえ 患者さんの負担も少なく治療の効率も優れている ただし 下顎臼歯部のように解剖学的限界から安定したアンカースクリューの埋入が困難である場合は 力系の設計が難しいため間接固定源を確保してブラケットを装着し レベリングから行う方法が推奨される 本稿で示した全ての症例において インデュース M S -Ⅱ を使用している 結びとして MTMにおけるその臨床的なメリットを解説する アンカースクリューの 初期安定性は 埋入部位の骨とアンカースクリューの機械的結合 (mechanical locking) と一部のosseointegration によるものとされている アンカースクリューの安定性に対するデザインによる差はないと報告されており アンカースクリューの選択や応用法は術者の好みによって様々であると考えられる しかしながら 実際の臨床の現場 特にMTM 症例においては多様なアタッチメントを必要とすることが多いため その接着しやすさやアンカースクリュー周囲の軟組織の清掃性の良さなどが 痛み アンカースクリューの安定性 治療の予後などに影響を及ぼす インデュース M S -Ⅱ は ヘッドの適度な突出感があり 下部軟組織を損傷することなくアタッチメントや間接固定源を設計することが容易にできる また症例 1 4のような臼歯圧下の際には 一般的に力系の設計上 アンカースク リューの口蓋部への埋入が必要になる 頰側とは異なり 口蓋軟組織の厚みは個体差が大きいため その厚みに応じてアンカースクリューの長さを選択する必要がある場合が多い インデュースMS-Ⅱはネック (transmucosal part カラー ) の長さを選択できるので ネジ部分 ( スレット ) が骨内に完全に埋入されるため粘膜の炎症や腫れが起きにくく 安定して継続使用することができるものと考えられる 謝辞 原稿の校閲を支援していただきました久野昌隆先生に感謝いたします 鄭朱玲 ( チョン チュリョン ) 韓国延世大学歯学部矯正科副教授略歴 所属団体 1999 年延世大学卒業 1999 2006 年東京医科歯科大学大学院咬合機能矯正学専攻 学位獲得 post-doctoral fellow 2006 年 延世大学歯学部講師 助教授 副教授 大韓歯科矯正学会認定医 World Federation of Orthodontists(WFO)fellow, World Implant Orthodontic Association(WIOA)advisory committee. インデュース MS-Ⅱに関するお問い合わせ先 株式会社ジーシーオルソリーカスタマーサポートフリーダイヤル 0120-108-171 受付時間 10:00 16:00( 土 日 祝日を除く ) ホームページ www.gcortholy.com 26 No.149 2014-5