Microsoft Word - 環境工業研究 原稿_ docx

Similar documents
01盤用熱対策機器_coolcabi.indd

夏期節電手法のご紹介 に関する資料の見方 節電メニューの説明 節電メニューの概要について説明しています 計算例 節電効果をお客さま自身にて理解し試算できるよう, 試算条件や計算式等を記載しております ( 注 : ある条件下による試算事例であり, 各々の建物の運用状況等によって節電効果は異なります )

indd

業務用空調から産業用まで 圧倒的な効率で省エネやCO2排出量削減に 貢献するKOBELCOのヒートポンプ ラインナップ一覧 業界最高効率の高い省エネ性 シリーズ 全機種インバータを搭載し 全負荷から部分 機 種 総合COP 冷房 供給温度 暖房 熱回収 冷温同時 製氷 冷媒 ページ HEMⅡ -10

PowerPoint プレゼンテーション

Lubricated Compressor

azbil Technical Review 2011年1月号

ACモーター入門編 サンプルテキスト

- 1 -

1

GA(VSD) 給油式ロータリスクリュコンプレッサ_30-90kW_水冷_空冷

事業者概要 会社名 : 株式会社伸和 住所 : 新潟県新潟市西蒲区金池 10 業種 : プラスチック製品製造業 資本金 : 5,300 万円 従業員数 : 66 人 設立年月日 : 平成 21 年 12 月 28 日 代表者名 : 代表取締役 山本和伸 経営理念 : 生活のさまざまなシーンで あなた

スクリーンフィルタ.indd

CP-V 真空用ドレン回収ポンプ 型式選定チャート ( 流入水頭 1m 時 ) 低揚程タイプ < 最大揚程約 14m> 高揚程タイプ < 最大揚程約 20m> 1. 実際には流入水頭 対象装置 運転条件などにより決定されます 詳細はお問い合わせください 吸引ドレン量 ( 流入水頭 1m 以外の数値に


Microsoft Word - 原稿本文_ doc

三建設備工業つくばみらい技術センター汎用機器を用いた潜熱処理システムの運転実績

4 推進体制別途添付いたします 5 公表の方法等 ホームページアドレス 閲覧場所 窓口で閲覧 所在地 冊 子 閲覧可能時間 冊子名 入手方法 その他

J-PARCニュートリノビームライン用 超伝導電磁石システム(21) -冷凍機節電運転モードの構築—

WGP150C/224C/300C/475C/615C WGP150C WGP224C WGP300C WGP475C WGP615C 4.03 / / / / /

DHP indd

工場など天井が高く、中・大規模な空間の効率的な空調を実現する置換換気空調用パッケージエアコンを製品化

IDFIDU-I-C1-F2.indd

<4D F736F F F696E74202D F81798E9197BF332D31817A8E7B90DD8AC7979D ED28CA48F4389EF C835B83938E9197BF81698FC C816A2E >

事例8_ホール素子

1

リニヤポンプについて

4 推進体制 経営責任者 環境管理責任者 (PSN 佐江戸 ) ( 計画管理責任者 : 事業部長 ) GM: グループマネージャー TL: チームリーダー Sa: 参事 SJ: 主事 事務局 (PSN 佐江戸 ) ( 計画推進責任者 :GM) 技術管理者 :SJ 平成 6 年 4 月 1 日時点 イ

PA10-02-標準マルチ(UX).xls

Microsoft PowerPoint _ _挰喬表è³⁄挎(æ¡‹)H _报渖é£�åfi†.pptx

1. 用役 ( ユーティリティー ) と用役設備 用役 ( ユーティリティー ) の種類 用役 ( ユーティリティー ) の起動手順 電力供給設備 電力の種類と電圧 電力供給設備とは 発電設備.

M シリーズモータポンプ 特長 V シリーズピストンポンプと電動機を一体にしたモータポンプです 形式記号説明 プレッシャコンペンセータ制御 M A E コンビネーション制御 ( 自圧式 ) M C H X E


Microsoft PowerPoint - 資料7-5.ppt

空冷式ヒートポンプチラー仕様書仕様書番号 ご使用先殿電源 200V 50/60Hz ご注文元殿始動方式圧縮機 : インハ ータ送風機 : インハ ータ用途冷暖房弊社工事番号 形名 EAHV-P4200A-STD ( 標準 ) 法定冷凍トン ユニット台数 1 台 冷房暖房

01

(Microsoft PowerPoint - \216R\223c\221\262\230_2011 [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

発売の狙い 昨今の電力事情から節電に対する関心は高く 業務用エアコンにおいてもより一層の省エネ 節電を強く求められています また エネルギー効率が高い製品の使用を促進するために 省エネルギー法で 2015 年度に具体的に達成すべき基準値が定められています 当社は今回 機器本体の省エネ性の向上を図り

Microsoft Word - koudoka-seika-004

運転しない

Microsoft Word - MBV-LDカタログ

平成 27 年度補正予算中小企業等の省エネ 生産性革命投資促進事業費補助金 設備別省エネルギー効果計算の手引き 省エネルギー効果計算について 平成 28 年 7 月 2.0 版

【配布資料】

NEW LINE UP No, NPPDF 3-02 小型部品組立てなどに最適な エアピンセット VTA&VTB ペン型の本体に真空パッドと真空発生器を内蔵 チューブ (ø4 mm ) を接続 圧縮エア (0.5MPa) を供給 穴またはボタン操作で真空発生 小型ワークを吸着 特性は 2 タイプを用

資料2 排出量取引の国内統合市場の試行的実施及び国内クレジット制度について

Microsoft Word 磁気ディスク装置_Version 1.1(p)

タンク式浅井戸用インバーターポンプ「圧力強(つよし)くん」WT-P200Xを発売

Film Dry 膜式ドライヤ

,745 3,000 JK

細則第 38 号様式 ( 第 2 条第 49 号 ) ( 総括票 ) 地球温暖化対策実施状況報告書 ( 報告先 ) 横浜市長 H26 年 7 月 17 日 住所横浜市神奈川区新子安 氏名 オルトヨコハマ ビジネスセンター管理組合理事長本荘雄二郎 ( 法人の場合は 名称及び代表者の氏名 )

<4D F736F F D D F944D8CF08AB78AED82CC E682E889C AB834B A682A DC58F4994C

力率 1.0(100%) の場合 100% の定格出力まで有効電力として発電し 出力できます 力率 0.95(95%) の場合は 定格出力の 95% 以上は有効電力として出力できません 太陽光発電所への影響 パワコンの最大出力が 95% になるので 最大出力付近ではピークカットされます パワコンの出

1 排出削減事業者の情報排出削減事業者会社名株式会社シンセラ排出削減事業を実施する事業所事業所名株式会社シンセラ排出削減事業共同実施者 ( 国内クレジット保有予定者 ) 排出削減事業共同実施者名一般社団法人低炭素投資促進機構 1

店舗・オフィス用パッケージエアコン 室内ユニット「てんかせ2方向」シリーズを発売

B3.並列運転と冗長運転(PBAシリーズ)

HDN 中 HDBシリーズ 経済性で 省エネ性で 環境対応で システムのニーズに対応 オゾン層破壊係数ゼロの HFC R-134a R-407C を採 HDN シリーズ ベビコン とベストマッチの経済タイプ HDB シリーズ アフタークーラー内蔵の省エネ設計 オゾン層破壊係数ゼロの R-134a R

P01

K TURBO COMPRESSOR TC SERIES K ターボエアーコンプレッサ TC シリーズ 100% オイルレスの圧縮システムが生み出す究極のクリーンエアー ピュアエアー Kターボエアーコンプレッサは ギアと潤滑システムのある既存製品と異なり 圧縮機構部を含むすべてのエアー経路においてオ

No.375-表1・4.indd

Microsoft PowerPoint - 1.プロセス制御の概要.pptx

新事業分野提案資料 AED(自動体外式除細動器) 提案書

01_03_特集.indd

物理学 II( 熱力学 ) 期末試験問題 (2) 問 (2) : 以下のカルノーサイクルの p V 線図に関して以下の問題に答えなさい. (a) "! (a) p V 線図の各過程 ( ) の名称とそのと (& きの仕事 W の面積を図示せよ. # " %&! (' $! #! " $ %'!!!

ガスヒートポンプエアコン メンテナンス契約のおすすめ|2018年11月

(2) 現況水質等 A ポンプ場から圧送される汚水の水質分析及び硫化水素濃度測定結果を表 -2 図 -2 に示す 表 -2 水質分析 計量項目 単位 計量場所ピット吐出口 BOD mg/l CODcr mg/l 硫酸イオン濃度 mg/l 全硫化物 mg/l

AISIN GROUP REPORT 2011

Heading title

新規文書1

全油圧ポンプ仕様表:日本プララド

補足資料 1-2 運用実施 温水ボイラの空気比低減による燃料消費量の削減 (13A ガス ) 現状 問題点都市ガスボイラを使用 燃料を完全燃焼させるための空気比が大きい ( 排ガス温度 200 空気比 1.5) そのため 排ガス量が増加し 排ガス熱損失が増加している 空気比 21/{21-( 排ガス


(Microsoft Word - PDT-090j \202o\202s\203V\203\212\201[\203Y.doc)

FACCIA PIANA INGLESE.indd

CDMカタログ_ indd

浅深両用インバーターポンプ「スマート強(つよし)くん」シリーズ4機種を発売

CV10 空気式制御弁 / 1.0 仕様データ バルブ部 型式接続本体材質 CV10 フランジ JIS10KFF フランジ JIS10KRF ねずみ鋳鉄 FC0 炭素鋼鋳鋼 ASTM A216 Gr.WCC ステンレス鋳鋼 ASTM A351 Gr.CF8M 最高使用圧力 PMO 1.0

見直し後11 基準相当1.64GJ/ m2年hh11 基準相当見直しH11 基準と見直し後の省エネ基準の比較について 住宅 建築物判断基準小委員会及び省エネルギー判断基準等小委員会平成 24 年 8 月 31 日第 2 回合同会議資料 1-1 より抜粋 設備機器の性能向上により 15~25% 程度省

< D32392D8AF990DD947A8AC791CE899ECFD9C E786C73>

JA PXA 遠心力ポンプ 仕様 仕吐出量 Q max = 500 L/min 圧力 H max = 250 m 温度範囲 T = -10 C ~ +80 C 粘度 ν max = 20 mm 2 /s Quality Management DIN EN ISO 9001:2008 w

<4D F736F F D2089C692EB BF B C838C815B CC AF834B E2895BD90AC E368C8E29>

CKTB-3103 東芝スーパー高効率菜種油入変圧器 2014 スーパー高効率菜種油入変圧器 シリーズ

技術名

能力グラフ 50Hz OCA-300BC-200V-R 60Hz 能力グラフの見方の説明は 編 P に掲載しておりますのでご参照ください OCA-300BC-200V-R 屋外盤用 外形寸法図 < 正面図 > < 側面図 > < 裏面図 > < 下面図 > パネルカット図 取付図 <

外気カット制御 有 外気冷房制御 無 全熱交換器制御 有 ( 全熱交換効率 0.) 2 換気設備 室用途毎に基準設定換気風量 ( 換気回数 ) 基準設定全圧損失 標準的な送風機の送風機効 率 伝達効率 余裕率 モータ効率を定め これらを標準設備仕様とする 基準設定換気風量 : 設計者へのヒアリング調

YP_表紙cc_1804_4c

Microsoft PowerPoint - 第1回(変遷+Rankineサイクル)_H22講義用.ppt

COOL & CLEAN 熱い空気や汚れた空気を排出することは あらゆる施設で不可欠 でも それだけでは十分とはいえません 快適な空間を保つためには 涼しい空気 きれいな空気を取り入れることが重要です カマクラは 多機能の給気ファンでお客様のさまざまなニーズにお応えします 1 COOL CLEAN

BSAT and BSA Bellows Sealed Stop Valves

スラリー供給装置/スラリー配管内の定期的な洗浄(フラッシング)についてのお知らせ

15

スチームコンプレッサーユニット 仕様 接続 本体材質 型式 SC1-1 SC1-2 SC1-3 SC2-1 SC2-2 SC2-3 SC7-1 SC7-3 制御弁 COS CV-COS CV10 COS CV-COS CV10 COS CV10 最大吸入蒸気量 最高使用圧力 PMO 駆動蒸気圧力範囲

「節電対策パンフレット」(家庭向け)

生産ライン・設備機器メーカー双方の課題をIoTで解決!

OBDII (CARB) 取扱説明書 1

FC200 FC200 S45C SUS V V C C C MPa MPa 0.15MPa MPa V kW 160kW

P116-P119 _ SMPi_1-4P_02

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁


備編 水処理関連機器 ヘリカルポート ルーツタイプ ロータリブロワ連機器曝気用ルーツブロワ RS 型設 機構 独自のヘリカル機構 ブロワはうるさいもの ブロワの騒音は宿命的なもの と考えられがちでした それは 従来のルーツブロワでは ケーシング内の空気を一気に吐き出す構造のため 大きな衝撃や脈動が生

伝熱学課題

Transcription:

工場におけるコンプレッサー設備の省エネ方法 Energy saving way of compressor equipment in a factory 報告者藤田祐章 ( 株 ) I H I 回転機械 HIROAKI FUJITA IHI Compressor and Machinery Co.,Ltd. キーワード : 適正化 下げる 遮断 台数制御 メンテナンス Key Word : Rationalization reduce (lowered.) Shut off Group control Maintenance 1. はじめに産業分野では 利便性の高い動力源として圧縮空気が幅広く使用されています 一般的な製造工場では 電力消費の約 20 ~ 25 % がコンプレッサーの消費電力と言われており 日本の電力使用の約 50 % が産業分野である為 コンプレッサーは日本の電力消費の約 10 % を占めていることになります エネルギーの使用の合理化等に関する法律 ( 省エネ法 ) では 中長期的にみて年平均 1 % 以上の エネルギー消費原単位 または 電気需要平準化評価原単位 の低減目標を事業者に対して定めています 経済産業省資源エネルギー庁ホームページ参照 年平均 1 % という目標は 簡単に達成できそうな小さな数値に見えますが 省エネは事業者の経営計画に連動させる必要が有り 刻々と変化する生産状況に対応して目標を達成し続けることは 難しい問題です したがって 図 1 の電力消費割合を見てもコンプレッサー設備の省エネ化が重要な課題であり より一層の注力が求められています 本稿では コンプレッサー設備において 何を改善すれば実際に省エネ効果が生まれるのか? という漠然とした課題を解決するためのポイントをご紹介します また提案および省エネ効果事例も幾つかご紹介いたします 1

2. 高効率コンプレッサーでの運用および機種構成の適正化高効率コンプレッサーを導入して運用すれば 省エネになることは当然のことですが その効果を最大限に引き出すためには 使用空気量 必要圧力 工場側の負荷変動などを知り 適正機種でコンプレッサー設備を構成する必要が有ります 高効率コンプレッサーを導入したものの運用面で活躍できなければ 省エネ効果は半減してしまいます ( 1 ) コンプレッサーには様々な制御方法が有ります 主な制御方法の概要を 図 2 に示します 1 インバータ回転数制御必要空気量に応じて回転数を変化させる制御です 幅広い範囲で一定圧力制御が可能なため 用 として最適です 回転数を下げた状態で負荷率 0 % に移行する為 無負荷待機電力の消費も抑えられます 2 負荷 / 無負荷制御負荷率 100 % での継続運転が最も効率良い為 主に 用 として運用されます の際には 負荷率 0 % と 100 % を交互に繰り返します 3 吸入絞り制御吸入絞り弁を開 閉することで 負荷率 0 ~ 100% を無段階で一定圧力制御します ただし 図 2 に示す通り負荷率が下がっても電力は殆ど下がりません 100 90 80 3 電力 % 70 60 50 40 2 1 30 20 10 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 負荷率 % 実線 : 定圧制御動作破線 : 負荷 / 無負荷動作 図 2 主なコンプレッサー制御による電力消費の違い 2

( 2 ) 複数台のコンプレッサーを運用する場合 それぞれの吐出空気量のバランスが重要です 図 3 に示すように 用 用 となる構成が最適です 逆に 用 > 用 になると コンプレッサーの増減台がうまくコントロールできずに余分なエネルギー消費が発生する場合が有ります 補足 ) 用 : 工場の使用空気量変動に応じて コンプレッサー吐出空気量を調整 用 : 常に負荷率 100% で運転 ( 3 ) 0.7MPaG クラスの標準的なコンプレッサーは 1 段 ~ 3 段圧縮が使用されています 図 4 に示す通り 3 段圧縮の仕事量 ( 白い部分の面積 ) が最小で高効率となります コンプレッサーが空気を圧縮する時 理想的なのは等温圧縮ですが 現実的には不可能です 実際にはほぼ断熱に近い工程で圧縮されます そこで 理想的な等温圧縮に近づける為 多段圧縮を採用して 各段に中間冷却器を設けています 30 用 用 30 用 > 用 余分なエネルギー消費 消費エネルギー 20 10 増台 増台 消費エネルギー 20 10 増台 増台 0 1 2 3 4 空気量 0 図 3 複数台コンプレッサー運用イメージ 1 2 3 4 空気量 1 段圧縮 2 段圧縮 3 段圧縮 圧力 (P) 中間冷却器で 2 回冷却 ( 仕事量減少 ) 冷却器で 1 回冷却 ( 仕事量減少 ) 3 容量 (V) 図 4 圧縮工程図 ( 仕事量 )

3. コンプレッサー吐出圧力を下げるコンプレッサーの吐出圧力を下げることが 省エネに最も有効なことは広く知られています その効果と何故省エネに有効なのかを説明します ( 1 ) コンプレッサーの電力消費を低減以下に容積式コンプレッサー理論軸動力 ( モーター出力 ) の 式 1 を示します i Lad -1 Ps Qs Pd i 0.06 Ps 1 1 式 1 Lad : 断熱理論動力 kw i : 圧縮段数 κ : 比熱比 Ps : 吸入圧力 MPa abs Pd : 吐出圧力 MPa abs Qs : 吸入状態容量 m3/min 吸入圧力と吐出圧力の圧力比 ( 印 ) の関係式であることが分かります 仮に吐出圧力を 0.69MPaG 0.59MPaG と 0.1 MPa 下げた時 理論軸動力の低減率を概算してみます ( 2 段圧縮 比熱比 1.4 吸入圧力 0.1013MPaABS とします ) P0.59 Ps P Ps 0.69 1 i 1 i 0.6913 1 0.1013 0.7913 1 0.1013 1.41 2.8 1.41 2.8 1 0.316 0.93 0.341 1 吐出圧力を 0.1MPaG 下げると約 7% の動力低減になります ( 実際は諸効率やメカロスの影響で効果は若干小さくなります ) ( 2 ) エア漏れ量の低減コンプレッサーの吐出圧力を下げると 配管等からのエア漏れ量が少なくなります 漏れ量の理論式は幾つか存在しますが 代表的な計算式を 式 2 に示します この式から配管内の圧力が下がると 漏れ量が少なくなることが分かります また見方を変えると 工場内における圧縮空気使用先 ( エアガン ブローなど ) で消費される圧縮空気量も少なくなります 293 Q 120S(P1 0.1) 273 t 0.5 式 2 Q : 空気漏れ量 dm3/min(anr) P1 : 配管 機器内の空気圧力 MPaG t : 空気温度 S : 漏れ開口部の有効面積 mm2 直径 dmm の円孔の場合は S=(π/4) d^2 0.9 ( 流量係数 ) で概略計算する 4

4. コンプレッサー吸込み温度を下げるコンプレッサーが吸い込む空気の温度を下げると コンプレッサー原単位 ( Nm3/kWh ) が改善して省エネに有効です コンプレッサーの機種により効果は異なりますが 概要を 図 5 に示します 吐出圧力 0.7MPaG クラスで多段圧縮機を想定したものですが 縦軸 ( 原単位比 ) の数値が大きい程省エネになります 吸込み温度 35 ( 100 % ) を 25 に下げた場合 レシプロコンプレッサーは約 3.4 % ターボコンプレッサーは約 2 % ドライ ( オイルフリー ) スクリュコンプレッサーは約 1.7 % の原単位改善になります 図 6 は 吸込み温度を下げるための例を示したものです ただし注意点が有ります (1) 吸入圧力損失を抑える ( 小さくする ) ( 2 ) 吸気冷却の熱交換器に使用する冷却水にチラー水を使用しない コンプレッサーは吸入圧力損失が大きくなると性能が低下します 吸込み温度を下げることで得られた省エネ効果を掻き消してしまいます また熱交換器にチラー水を利用した場合 チラー装置の電力を加味するとエネルギー収支的に成立しません 吸入ダクト : 圧力損失を最小限にする 吸入ダクト + 熱交換気 : 圧力損失を最小限にする 屋内 35 屋内 35 屋外 25 コンプレッサー吸込み 25 コンプレッサー コンプレッサー吸込み 25 コンプレッサー 冷却水 ( 井水など ) 外気吸入 図 6 外気吸入 吸気冷却のイメージ 吸気冷却 5

5. 圧縮空気供給配管の改善コンプレッサーが吐出した圧縮空気を工場の使用先まで効率よく供給するには 配管計画が重要なポイントになります ( 1 ) 通過流量に対する適正配管口径の選定現在のコンプレッサー設備は省エネ効果が高いことから低圧化が進んでいます ここで注意すべきは 既存配管のまま低圧化 ( 供給圧力を下げる ) を実施した場合 圧縮空気のボリュームが大きくなり 管内流速および圧力損失を増加させる恐れがあります 一般的に供給配管の圧力損失は 0.02MPa 以下に抑えることを推奨します 参考までに通過流量に対する推定圧力損失を 図 7 に示します 圧力損失 MPa 0.20 0.18 0.16 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 配管口径による圧力損失変化 (100m 直管相当 ) 管内圧力 0.6MPaG の時 0 10 20 30 40 50 60 70 80 通過流量 m3/min 50A 65A 80A 100A 150A 図 7 圧力損失 MPa 管内圧力による圧力損失変化 (100m 直管相当 ) 配管口径 80A の時 0.20 0.18 0.16 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 0 10 20 30 40 50 60 70 80 通過流量 m3/min 0.7MPaG 0.6MPaG 0.5MPaG ( 2 ) 圧力損失発生要因の排除 見直し 1バルブ類流量調整の必要が無いバルブについては ゲート弁 ボール弁 ( フルボア ) を採用する また 工場を見渡すと バルブ開度が中途半端な状態で運用されているところが多く見受けられます 特に支障が無ければバルブは全開とします 2クリーン化機器類 ( フィルターなど ) フィルター類は使用年月に応じて必ず圧力損失が増加します 入出口の差圧計での圧力損失管理が必要です 特にメッシュの細かいミストフィルターについては要注意であり 既存のフィルター類に差圧計が無い場合は設置を推奨しています 3 配管 エアタンク類のドレン溜りコンプレッサーから吐出された圧縮空気は 端末の空圧機器に至る配管内で自然冷却されると 含みきれなくなった水分が水滴となり配管中またはエアタンク類に溜まります ( 以後ドレン ) 特に配管に溜まったドレンは 圧力損失を増加させる原因となりますので 可能な限りドレン溜りの発生しない配管ルートを計画します ルートの都合でドレン溜りが発生する配管が必要な場合は ドレン排出管理を推奨しています 図 8 カルバート内配管や埋設配管など 排出管理が困難な場合は 上流に除湿機の設置を行い 露点温度管理を行うことで ドレン溜りを回避できます 6

コンプレッサー U 字配管 : ドレン溜り 使用先 地上 排出 排出 埋設配管 : 排出管理が困難 エアタンク : ドレン溜り 図 8 ドレン溜りと排出イメージ 6. 付帯設備の見直し 改善コンプレッサーの付帯設備には 主に除湿機 フィルター類 冷却水設備 エアタンク 換気設備等が有ります 既存コンプレッサーの更新や改修 低圧化を進める場合 これら付帯設備の能力確認を行い 省エネ推進の妨げとならないように注意が必要です 以下にポイントを示します ( 1 ) 除湿機 フィルター類 1 省エネの一環で 既存コンプレッサーの吐出圧力を下げた時 図 9 コンプレッサーの吐出圧力が下がると 処理が必要な圧縮空気のボリュームが大きくなります したがって既存の除湿機やフィルター類では適正な処理できなくなる場合が有ります 除湿機で露点温度が確保できない他 圧力損失が増加するなどの問題が発生してきます 適正流量納入時のまま低圧化で省エネ! OK OK ボリューム UP NG NG コンプレッサー 0.70MPaG 0.66MPaG コンプレッサー 0.6MPaG 0.5MPaG 除湿機フィルター除湿機フィルター P = 0.04 P = 0.10 圧損増加 図 9 低圧化の注意点 2 低圧仕様のコンプレッサーに更新する場合例えば 納入当初の既存コンプレッサー必要圧力が 0.7MPaG だったが 現在は 0.5MPaG でも十分賄える為 低圧 0.5MPaG 仕様へ更新して省エネを図ることを考えます 同じ電動機出力ベースで 仕様圧力 0.7MPaG と 仕様圧力 0.5MPaG のコンプレッサーを比較した場合 一般的に仕様圧力 0.5MPaG の方が吐出空気量が大きくなります したがって既存の除湿機やフィルター類は能力不足になります この場合 除湿機やフィルター類を一緒に更新するのか もしくは同出力ベースでの更新ではなく 同吐出空気量ベースでの更新 ( 更新機は 既存機より電動機出力が小さくなります ) するのか判断が必要です 7

( 2 ) 冷却水設備水冷式コンプレッサーにはクーリングタワーや循環ポンプ等の冷却水設備が付帯します コンプレッサーは一般的に冷却水温度を下げた方が原単位が良くなりますので 設備の更新や改修を行う場合は 冷却水設備能力の確認と見直しを推奨します 機種や出力によって入口 / 出口温度差が異なります ( 3 ) エアタンク工場の製造量の増加によるコンプレッサー設備の増強 生産環境変化による工場側負荷変動の変化が発生した場合は エアタンク容量の見直しが必要になる場合が有ります 圧力変動を抑えることが省エネに繋がりますので 計画時には考慮すべきポイントの一つです ( 4 ) 換気設備前述 4. 項で記載した通り コンプレッサーは吸込み温度を下げた方が省エネに有効です 機種によって異なりますが 室内温度が 35 以上になる環境ではコンプレッサー性能 ( 原単位 ) は悪化すると考えてください 現状でも夏場の室内が高温になる場合 新規でコンプレッサー設備を建設する場合など 室内機器メーカーに換気設備の検討を依頼して 適正な運用環境になるように計画ください 特に空冷式を運用するユーザーは 発熱量が大きいため注意が必要です 御参考までに 空冷式 の発熱量はモーター定格出力の 90 ~ 100% 水冷式 の発熱量はモーター定格出力の約 10% です 詳しくは各コンプレッサーメーカーに問い合わせ下さい 7. 圧縮空気を必要としない工場への供給遮断休日など稼働していない工場 ( 製造ライン ) に対して圧縮空気の自動弁などで供給を遮断します 圧縮空気の漏れ量低減が期待でき コンプレッサーの負荷率が下がることで省エネになります 本項を目的として 製造ラインの移設や工程見直しも省エネ推進の一つの手法です 図 1 0 コンプレッサー設備 CLOSE 圧縮空気漏れ量ゼロ CLOSE 停止稼働稼働停止工場 A 工場 B 工場 C 図 10 未稼働工場 ( ライン ) への供給遮断イメージ 8

8. 台数制御装置の導入コンプレッサー設備は 工場の必要空気量に対して必要最小限の台数を運転することが最も有効な省エネ対策になります 無駄な無負荷動力 ( 吐出空気量ゼロなのにモーター定格の約 10 ~ 40% の動力を消費している状態 ) を削減できるなど 多くの利点が有ります 台数制御装置導入の主なメリットを幾つか紹介します ( 1 ) コンプレッサーの運転台数を必要最小限に自動制御します また負荷変動に対する追従性向上により最適運転台数での運用になりますので安定した圧縮空気を供給します ( 追従遅れによる無駄なコンプレッサーの起動が抑制できます ) ( 2 ) 自動で運転管理を行う為 省人化が図れます ( 3 ) 運転状況を統括的かつ継続的に監視するため そのデータが省エネ推進に役立ちます ( 4 ) 複数台のコンプレッサーをバランスよく運転し 運転時間の平準化が可能です 運転時間集中などによる機械トラブルの回避になります 9. コンプレッサーメンテナンスによる性能維持コンプレッサーの定期的なメンテナンスは トラブルを未然に防ぎ 機器寿命を延ばすだけではなく 性能維持も目的としています 性能劣化による増エネルギーを逆に捉えますと 性能維持は一つの省エネ対策になります 主な管理項目とその概要を 図 1 1 に示します 圧力 (P) 2 段圧縮 吸入フィルタの目詰まりにより コンプレッサーの吸入圧力が低下 理論的には この部分の動力が上昇します 圧力損失 圧力 (P) 2 段圧縮 中間冷却器の圧力損失で低下した圧力分 再圧縮するため理論的には この部分の動力が上昇します 吸入圧力低下 容量 (V) 1 吸入フィルターの目詰まり 容量 (V) 2 中間冷却器空気通路汚れ ( 圧損 ) 冷却性能低下 2 段圧縮 中間冷却器の性能低下により冷却不足になる 理論的には この部分の動力が上昇します 図 11 主なメンテナンス項目とその概要 圧力 (P) 正規のインタークーラ冷却性能 容量 (V) 3 中間冷却器冷却能力低下 9

1 0. 省エネ提案事例および省エネ効果事例 ( 1 ) 省エネ提案事例インバータ回転数制御および台数制御装置の導入 オイルフリー化 ( 2 ) 省エネ効果検証事例コンプレッサーの集約化 複数台コンプレッサー台数制御運転 10 以上