雇用政策の現状・課題と労働者派遣制度

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(2)3 年以内の有期プロジェクト型業務 ( 同項第 2 号イ ) 事業の開始 転換 拡大 縮小または廃止のために必要な業務で 一定期間内で完了することが予定されている業務への派遣については その業務が完了するまでの期間であれば 受入期間の制限はありません (3) 日数限定業務 ( 同項第 2 号ロ

労働者派遣制度の概要 1

Ⅰ 事業規制の強化

改正労働者派遣法 平成24年10月1日施行

2 正社員 契約社員 アルバイトの場合 ( 直接雇用の場合 ) 賃金の支払い仕事上の指揮命令 直接雇用の場合 労働者と労働契約を結ぶのは ( 雇用主は ) 労働者派遣とは 自己の雇用する労働者を その雇用関係の下に 他人の指揮命令を受けて その他人のために労働に従事させることをいいます 直接雇用の場

労働者派遣とは て その他人のために労働に従事させることをいいます 正社員 契約社員 アルバイトの場合 ( 直接雇用の場合 ) 賃金の支払い仕事上の指揮命令 派遣の場合派遣契約 A 社派遣先 A 社約労働者派遣とは 自己の雇用する労働者を その雇用関係の下に 他人の指揮命令を受け 働契勤務労労働者

シルバー派遣事業のご利用を検討されているお客様へ Ⅰ 労働者派遣事業と請負の違いについて 労働者派遣と請負の違いについて 労働者派遣 労働者派遣契約 請負 請負契約 センター派遣先センター発注者 雇用契約指揮命令センターの指揮命令なし 派遣労働者 構成員 シルバー会員 雇用主は派遣会社 派遣先が派遣

の業務について派遣先が九の 1 に抵触することとなる最初の日 六派遣先への通知 1 派遣元事業主は 労働者派遣をするときは 当該労働者派遣に係る派遣労働者が九の 1の ( 二 ) の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても派遣先に通知しなければならないものとすること ( 第三十五条第一項関係

て 労働者派遣契約書に休業手当等の支払いに要する費用を確保するための費用負担等に関する事項を記載していないもの (1 派遣元事業所 ) ウ派遣料金額の明示派遣労働者に対して 書面の交付 ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信の方法により労働者派遣に関する料金の額を明示していないもの (5

法律 ) 及び派遣元指針 ( 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針 ) 派 遣先指針 ( 派遣先事業主が講ずべき措置に関する指針 ) が定められ 派遣元と派遣先がそれぞれ講ずるべき措置等を示しています 派遣労働は 労働者の契約形態によって 常用型 と 登録型 の二つに分けられます 登録型派遣労働者

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年度報告(報道発表資料)

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① 年度報告(確報) かがみ

派遣先の皆さまへ 派遣社員を受け入れるときの主なポイント 労働者派遣の流れ 労働者 派遣元事業主 派遣先 派遣登録 ( 登録型派遣の場合 ) 適切な事業運営 派遣依頼 抵触日通知 1 期間制限チェック事業所単位 個人単位の期間制限を理解している労働契約申込みみなし制度を理解している 2 派遣契約の締

① 年度報告(報道発表資料) かがみ

平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

登録用 ③2603 年度報告(確報)P3~18(差替・見え消し版)

業務統計を活用した新規指標2006

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今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書(その1)

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Microsoft Word - 別添 報告書

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Microsoft Word 建議と要綱の対応表

Microsoft Word - 【本省用】260808プレス発表資料.doc

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この冊子を手に取っている皆さんへ

一公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律案目次第一章総則 ( 第一条 第二条 ) 第二章立候補休暇 ( 第三条 第六条 ) 第三章雑則 ( 第七条 第九条 ) 附則第一章総則 ( 目的 ) 第一条この法律は 立候補休暇の制度を設けることにより 公職の候補者となる労働

●労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案

この冊子を手に取っている皆さんへ

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原


6 紹介予定派遣 ( 注 4) (1) 紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数 44,891 人 ( 対前年度比 36.1% 増 ) (2) 紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者数 27,362 人 ( 対前年度比 38.3% 増 ) ( 注 1) 派遣労働者数 は ここでは一

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第 7 派遣元事業主の講ずべき措置等 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針 ( 平成 11 年労働省告示第 137 号 ) ( 最終改正平成 29 年厚生労働省告示第 210 号 ) 第 1 趣旨この指針は 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 ( 以下 労働者派遣法

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株式会社フロンティアビジネス 別紙 1 1 処分内容 (1) 労働者派遣法第 21 条第 2 項に基づく労働者派遣事業停止命令 ( 労働者派遣事業停止命令の内容は 3 のとおり ) (2) 労働者派遣法第 49 条第 1 項に基づく労働者派遣事業改善命令 ( 労働者派遣事業改善命令の内容は 4 のと

要領統一型紙

(2) 特定機関からの報告の受理及び聴取に関すること (3) 特定機関に対する監査に関すること (4) 外国人家事支援人材の保護に関すること (5) 特定機関において外国人家事支援人材の雇用の継続が不可能となった場合の措置に関すること (6) その他 本事業の適正かつ確実な実施のために必要なこと 3

特定派遣事業所 販売 デモンストレーター 添乗 その他の OAインスト情報処理 編集 印 広告デザイその他の 営業 販売ラクター システム開刷 DTPオン 技術 クリ 関連職 発 ペレーター エイティブ職 機械設計 放送機器等操作 放送番組放送番組等における等演出大道具 小道具 アナウンサー 建築物

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要領統一型紙

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

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2 改正後の労働者派遣法に基づく集計結果 ( 27 年 9 月 30 日 ~ 28 年 3 月 31 日 ) (1) 派遣労働者数 ( ア + イ + ウ + エ )( 注 2) 約 130 万人 1 ア無期雇用派遣労働者 イ有期雇用派遣労働者 125,792 人 948,260 人 2 ( 旧 )

(3) 始業 終業時刻が労働者に委ねられることの明確化裁量労働制において 使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化する (4) 専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化専門業務型裁量労働制の導入に当たり 事前に 対象労働者に対して 1 専

Press Release 参考配布 平成 30 年 10 月 5 日 照会先 職業安定局需給調整事業課課長 牛島 聡 主任中央需給調整事業指導官新田峰雄 課長補佐 冨田英晴 ( 代表電話 )03(5253)1111( 内線 ) ( 直通電話 )03(3502)5227 常時雇用す

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

平成 31 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日まで 63 歳平成 34 年 4 月 1 日から平成 37 年 3 月 31 日まで 64 歳 4 定年について 労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません ( 均等法第 6 条 ) ( 退職 ) 第 48 条前条に定める

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条件画面報告対象期間報告年月日 (6 月 1 日現在 ) 得意先 NO 部門出勤区分ファンクションキーヘルプ (F1) プレビュー (F8) 印刷 (F9) 終了 (F12) 年度報告する期間の開始年月日と終了年月日を指定します システム日付の年とシステム固定で持つ決算年月日の日付により 初期値をセ


派遣法改正に向けた動きが本格化 失業率が 5% を上回るなど厳しい雇用情勢が続く中 政府は労働者派遣事業の規制強化に乗り出している 2009 年 12 月 28 日 労働政策審議会は労働者派遣法 ( 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 ) 改正原案を取り纏め

目次 Ⅰ 労働者派遣事業の許可制への一本化 2 Ⅱ 労働者派遣の期間制限の見直し 4 Ⅲ キャリアアップ措置 14 Ⅳ 均衡待遇の推進 17 Ⅴ 労働契約申込みみなし制度 19 Ⅵ その他の内容

雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項 第 1 趣旨 この留意事項は 雇用管理分野における労働安全衛生法 ( 昭和 47 年法律第 57 号 以下 安衛法 という ) 等に基づき実施した健康診断の結果等の健康情報の取扱いについて 個人情報の保護に関する法律についての

(2) 特定労働者派遣事業 24,084 円 ( 平均 )( 対前年度比 1.0% 増 ) ( 注 1) 派遣労働者数 は ここでは一般労働者派遣事業における常用雇用労働者数及び登録者数並びに特定労働者派遣事業における派遣労働者数の合計とした 登録者 には 過去 1 年間に雇用されたことのない者は含

当初からの改正趣旨 理由 (3 つの問題点とその対応策 ) 問題点雇用の不安定な形態不透明な待遇違法派遣の増加 対応規制強化待遇改善迅速な対処と強化 具体策 ( 登録型派遣の原則禁止 ) ( 製造業務派遣の原則禁止 ) 日雇派遣の原則禁止 グループ企業内規制 1 年以内離職者の受け入れ 有期から無期

Works University 日本の人材ビジネス 【11】関連統計データ

施行規則 という ) 第 18 条の2 第 1 項 ) ウ待遇に関する事項等の説明派遣労働者として就業しようとする労働者が安心 納得して働くことができるようにするためには 実際に就労した際の賃金額の見込み等を事前に把握することが必要である そのため 派遣元事業主に対し 派遣労働者として雇用しようとす

Microsoft PowerPoint - 2の(別紙2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【佐賀局版】

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Ⅰ 概要について 一次下請契約者を社会保険等加入業者に限定します 平成 29 年 4 月 1 日以降に契約締結した工事において 受注者は 原則として社会保険等未加入業者を下請契約 ( 受注者が直接契約締結するものに限る 以下 一次下請契約 という ) の相手方としないこととします 追加 建設工事契約

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契約の終了 更新18 無期労働契約では 解雇は 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当であると認められない場合 は 権利濫用として無効である と定められています ( 労働契約法 16 条 ) 解雇権濫用法理 と呼ばれるものです (2) 解雇手続解雇をする場合には 少なくとも30 日前に解雇の予告

9-1 退職のルール 職することは契約違反となります したがって 労働者は勝手に退職することはできません 就業規則に 契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には それに従って退職できることになりますが 特段の定めがない場合には なるべく合意解約ができるように 十分話し合うことが大切です ただ

れている者 個人事業所で5 人以上の作業員が記載された作業員名簿において 健康保険欄に 国民健康保険 と記載され 又は ( 及び ) 年金保険欄に 国民年金 と記載されている作業員がある場合には 作業員名簿を作成した下請企業に対し 作業員を適切な保険に加入させるよう指導すること なお 法人や 5 人

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派遣受入期間の制限について 業務によって 派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる期間に制限を設けている 業務 物の製造 軽作業 一般事務など いわゆる 26 業務 など ( ) 派遣受入期間の制限 原則 1 年間 ( 過半数労働組合等の意見を聴いた上で 3 年間まで延長できる ) なし その他派遣受入

個人情報の保護に関する規程(案)

弘前市告示第   号

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

A4 経営事項審査の受審状況により確認方法が異なります なお 適用除外は 労働者の就業形態等によって適用除外とならない場合もあることから 元請負人は 年金事務所等に適用除外となる要件を確認した上で判断してください 経営事項審査を受審している場合 有効期間にある経営規模等評価結果通知書総合評定値通知書

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

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改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

Q&A 集 Q1 社会保険等とは何か A1 社会保険等とは 健康保険 ( 協会けんぽ 健康保険組合等 ) 厚生年金保険 及び雇用保険をいいます Q2 国民健康保険組合に加入しているが 社会保険等未加入建設業者となるのか A2 法人や常時 5 人以上の従業員を使用する国民健康保険組合に加入している建設

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事業者が行うべき措置については 匿名加工情報の作成に携わる者 ( 以下 作成従事者 という ) を限定するなどの社内規定の策定 作成従事者等の監督体制の整備 個人情報から削除した事項及び加工方法に関する情報へのアクセス制御 不正アクセス対策等を行うことが考えられるが 規定ぶりについて今後具体的に検討

Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

派遣受入期間の制限について 業務によって 派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる期間に制限を設けている 業務 物の製造 軽作業 一般事務など 派遣受入期間の制限 原則 1 年間 ( 過半数労働組合等の意見を聴いた上で 3 年間まで延長できる ) 26 業務など ( ) なし その他派遣受入期間の制限が

Microsoft Word - 改訂 H28 H27施行状況記者発表(リード文)

2 安全衛生教育の実施等 () 6 派遣労働者を雇い入れたときに雇入れ時の安全衛生教育を行 はい いいえ っています () 7 派遣労働者の派遣先事業場を変更するなど 作業内容を変更 はい いいえ したときは 当該派遣労働者に対し 作業内容変更時の安全 衛生教育を行っています ()() 8 6 及び

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●子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案

中央教育審議会(第119回)配付資料


4-1 育児関連 休業期間を有給にするか 無給にするかは 就業規則等の定めに従います また 雇用保険に加入している労働者には 国から給付金が支給されます (P106 参照 ) 産前産後休業期間中及び育児休業期間中は 労働者 使用者とも申請により社会保険料が免除になります 育児休業の対象者 ( 第 5

厚生労働省 需給調整課 - 改正派遣法説明会 

 

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派遣期間 9 ヶ月 ( ソフトウェア1 年 ) につき許可 届出制により認事業を認める 1986 ( 昭 61)10 月派遣 3 業務追加 ( 全 16 業務 ) 1996 ( 平 8)12 月派遣法改正 政令改正労働者派遣法改正 政令改正手続きを簡素化し 育児 介護休業取得者の代替要員に係わる派遣

Q&A Q1: 例外要件のエ. 主たる生計者でなく 世帯の年間収入の額が 500 万円以上である場合 の 主たる生計者でなく とは どのような場合を指しますか? A1: 世帯収入にあなたの収入が占める割合が 50% 未満である場合を指します Q2: 例外要件のエ. 主たる生計者でなく 世帯の年間収入

Transcription:

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 の一部を改正する法律 ( 労働者派遣法改正法 ) 平成 24 年厚生労働省

1 労働者派遣事業制度の概要

労働者派遣とは 労働者派遣 : 自己の雇用する労働者を 当該雇用関係の下に かつ 他人の指揮命令を受けて 当該他人のために労働に従事させること ( 労働者派遣法第 2 条第 1 項 ) ( 参考 1) 労働者供給 ( 参考 2) 職業紹介 派遣元 労働者派遣 派遣契約 派遣先 供給元 供給契約 労働者 供給先 職業紹介事業求人者 ( 雇用主 ) あっせん者雇求職者 ( 労働者 ) 用関係 労働者派遣に該当するものは 労働者供給に含まれない 労働者 ( 参考 3) 請負 請負業者 請負契約 注文主 ( 参考 4) 偽装請負 ( 法的には労働者派遣に該当 ) 請負業者 ( 形式上は ) 請負契約 注文主 派遣元 派遣先 労働者の三者関係 労働者 請負を装い派遣を実施 労働者 労働者供給については 職業安定法の規定により業として行うことが禁止されている 労働者派遣は 従来の労働者供給の一形態に当たるものであるが 労働者派遣法により 一定のルールのもとに適法に事業として行えることとなったもの

許可 届出制と 登録型 常時雇用型 の関係 登録型派遣 : 派遣労働を希望する労働者を登録しておき 相手方企業から求めがあった場合に これに適合する労働者を派遣元事業主が雇い入れた上で相手方企業に派遣するもの 常時雇用型派遣 : 派遣元事業主が労働者を常時雇用しておき その事業活動の一環として 労働者を相手方企業に派遣するもの いずれも 法令上の用語ではない 登録型派遣 常時雇用型派遣 派遣元 派遣契約 派遣先 派遣元 派遣契約 派遣先 労働者 通常は登録のみしておき 派遣契約の締結に応じて雇用契約を締結 派遣就業の終了に伴い 雇用関係も終了 労働者 派遣就業の終了後も 雇用関係が継続 登録型のみを行う労働者派遣事業 常時雇用型及び登録型の両方を行う労働者派遣事業 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 常時雇用型のみを行う労働者派遣事業 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) ( 特定労働者派遣事業を届出制としている理由 ) 派遣労働者が常時雇用される労働者のみである形態の事業については すべての派遣労働者の雇用の安定が図られている点で その他の形態に比べより望ましい形態であり 派遣労働者の雇用管理を適正に行い得るか等の要件を事前にチェックするまでの必要性は乏しいと考えられるため

労働者派遣事業制度の概要 (1) 1 適用除外業務 1 港湾運送業務 2 建設業務 3 警備業務については 労働者派遣事業を行うことができない また 4 病院等における医療関連業務については 紹介予定派遣の場合 産前産後休業 育児休業 介護休業等を取得する労働者の業務の場合等 ( 医業については これらのほか 就業場所がへき地である場合等 ) に限って行うことが可能 2 許可 届出制 特定労働者派遣事業 ( 派遣労働者が常用雇用労働者のみである場合 ) 届出制一般労働者派遣事業 ( 派遣労働者が常用雇用労働者のみでない場合 ) 許可制 ) 一般労働者派遣事業の許可制については 事業主単位 ( 新たな事業所の設置については届出で可 ) 許可の有効期間は 新規 3 年 更新 5 年 3 労働者派遣契約 (1) 契約の内容等 派遣元事業主と派遣先との間で 派遣労働者が従事する業務の内容 派遣就業の場所 労働者派遣の期間等の一定事項を定める (2) 特定行為の禁止 労働者派遣契約の締結に際し 派遣先が 面接 履歴書の送付を受ける等の派遣労働者を特定することを目的とする行為を行うことは禁止

労働者派遣事業制度の概要 (2) 4 派遣受入期間の制限 (1) 派遣先が同一の業務 ((2)1~5の業務を除く ) に派遣を受け入れることができる期間は 原則 1 年 ( 最長 3 年 ( )) に制限 ) 1 年を超える派遣を受けようとする場合は 派遣先の労働者の過半数で組織する労働組合等に対し 派遣を受けようとする業務 期間及び開始予定時期を通知し 十分な考慮期間を設けた上で意見聴取を行った上で 派遣受入期間を定めることが必要 (2) 派遣受入期間の制限がない業務 1 ソフトウェア開発等の政令で定める業務 ( いわゆる 26 業務 ) 2 3 年以内のいわゆる 有期プロジェクト 業務 3 いわゆる 日数限定業務 (1 か月間に行われる日数が 派遣先の通常の労働者の所定労働日数の半分以下かつ 10 日以下の業務 ) 4 産前産後休業 育児休業等を取得する労働者の業務 5 介護休業等を取得する労働者の業務 ) 26 業務 (1) ソフトウェア開発の業務 (2) 機械設計の業務 (3) 放送機器等操作の業務 (4) 放送番組等演出の業務 (5) 事務用機器操作の業務 (6) 通訳 翻訳 速記の業務 (7) 秘書の業務 (8) ファイリングの業務 (9) 調査の業務 (10) 財務処理の業務 (11) 取引文書作成の業務 (12) デモンストレーションの業務 (13) 添乗の業務 (14) 建築物清掃の業務 (15) 建築設備運転 点検 整備の業務 (16) 案内 受付 駐車場管理等の業務 (17) 研究開発の業務 (18) 事業の実施体制の企画 立案の業務 (19) 書籍等の制作 編集の業務 (20) 広告デザインの業務 (21) インテリアコーディネータの業務 (22) アナウンサーの業務 (23)OA インストラクションの業務 (24) テレマーケティングの営業の業務 (25) セールスエンジニアの営業 金融商品の営業の業務 (26) 放送番組等における大道具 小道具の業務 5 雇用契約の申込み義務 (1) 以下の場合 派遣先は派遣労働者に対する雇用契約の申込みが義務付けられる ア ) 派遣受入期間の制限のある業務 (4(2)1~5 以外の業務 ) について 派遣受入期間の制限への抵触日以降も 派遣労働者を使用しようとする場合 イ ) 派遣受入期間の制限のない業務 (4(2)1~5 の業務 ) について 同一の業務に同一の派遣労働者を 3 年を超えて受け入れており その同一の業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合 ) なお 派遣受入期間の制限のある業務については (1) ア ) のほか 1 年以上同一の業務に同一の派遣労働者を受け入れており 派遣の受入れ終了後 当該業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合に係る雇用の努力義務がある (2) 雇用契約の申込み義務に違反する派遣先には指導 助言 勧告 公表

労働者派遣事業制度の概要 (3) 6 紹介予定派遣 労働者派遣のうち 派遣元事業主が派遣労働者 派遣先に対して職業紹介を行うことを予定しているもの 一定の労働者派遣の期間を経て 直接雇用に移行することを念頭に行われる 紹介予定派遣の場合 派遣先は 3(2) にかかわらず 面接 履歴書の送付要請等の派遣労働者を特定することを目的とする行為を行うことができる 同一の派遣労働者の紹介予定派遣は 6 か月を超えてはならない 紹介予定派遣を受けた派遣先が 職業紹介を希望しなかった場合又は派遣労働者を雇用しなかった場合は その理由を派遣元事業主に明示 ( 派遣元事業主は 派遣労働者に明示 ) 7 派遣元事業主 派遣先の講ずべき措置 (1) 派遣元事業主の講ずべき措置 1 個人情報の保護 2 就業の機会 教育訓練の機会の確保等派遣労働者の福祉の増進 3 適正な派遣就業の確保 4 就業条件の明示 5 社会 労働保険の加入の有無と未加入の理由の派遣労働者 派遣先への通知 6 派遣元責任者 ( 製造業務に派遣する場合は専門の責任者 ) の選任 7 派遣元管理台帳の作成 記載等 8 派遣労働者の雇用の安定を図るための措置 9 派遣労働者の福利厚生等に係る均衡配慮 (2) 派遣先の講ずべき措置 1 労働者派遣契約に反しないよう適切な措置 2 適正な派遣就業の確保 3 派遣先責任者 ( 製造業務に派遣を受け入れる場合は専門の責任者 ) の選任 4 派遣先管理台帳の作成 記載等 5 派遣労働者の雇用の安定を図るための措置 (3) 労働基準法等の適用に関する特例等労働基準法 労働安全衛生法等の適用については 原則として派遣中の労働者を雇用している派遣元の使用者が責任を負う立場にあるが 派遣中の労働者の保護に欠けることのないようにする観点から 一定の規定についてその責任を派遣元及び派遣先の事業主に分配 8 相談 援助 指導監督等 (1) 相談 援助等違法事案に対する派遣労働者等の申告 ( 当該申告を理由とする不利益取扱いの禁止 ) 公共職業安定所による派遣労働者等に対する相談 援助 労働者派遣事業適正運営協力員による専門的な助言 (2) 指導監督等違法事案等に対する都道府県労働局による指導 助言 改善命令等

2 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 の一部を改正する法律 ( 労働者派遣法改正法 ) ( 平成 24 年 3 月 28 日成立 )

事業規制の強化 労働者派遣法改正法 ( 平成 24 年法律第 27 号 ) 日雇派遣 ( 日々又は 30 日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣 ) の原則禁止 ( 適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合 雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外 ) グループ企業内派遣の 8 割規制 離職した労働者を離職後 1 年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止 派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善 派遣元事業主に 一定の有期雇用の派遣労働者につき 無期雇用への転換推進措置を努力義務化 派遣労働者の賃金等の決定にあたり 同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮 派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合 ( いわゆるマージン率 ) などの情報公開を義務化 雇入れ等の際に 派遣労働者に対して 一人当たりの派遣料金の額を明示 労働者派遣契約の解除の際の 派遣元及び派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保 休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化 違法派遣に対する迅速 的確な対処 違法派遣の場合 派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には 派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす 処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備 そのほか 法律の名称に 派遣労働者の保護 を明記し 派遣労働者の保護 雇用の安定 を目的規定に明記 登録型派遣の在り方 製造業務派遣の在り方 特定労働者派遣事業の在り方 を検討事項とする 施行期日 : 平成 24 年 10 月 1 日 ( 労働契約申込みみなし制度の施行日は 法の施行から 3 年経過後 ( 平成 27 年 10 月 1 日 )) 国会での主な修正点 登録型派遣 製造業務派遣の原則禁止 の削除 登録型派遣 製造業務派遣の在り方 を検討事項とする 原則禁止される日雇派遣の範囲を 2 ヶ月以内 から 30 日以内 に修正 原則禁止の例外に 雇用機会の確保が特に困難な場合等 を追加 労働契約申込みみなし制度の施行日を 法の施行から 3 年経過後 に延期

事業規制の強化 日雇派遣 あまりにも短期の雇用 就業形態であり 派遣元 派遣先双方で必要な雇用管理責任が果たされていない 禁止業務派遣 二重派遣等 法違反の温床 労働災害の発生 グループ企業派遣 同一グループ内の事業主が派遣先の大半を占める 第二人事部的なものであり 需給調整機能を果たさない面も 本来直接雇用する者を派遣として 労働条件を切下げ 日々又は 30 日以内の期間を定めて雇用する労働者については 労働者派遣を禁止する 日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務について 政令によりポジティブリスト化して認める 禁止の例外として 雇用機会の確保が困難な場合等 ( 高齢者 (60 歳以上 ) 昼間学生 副業として従事する者 主たる生計者でない者 ) を 国会の修正により追加 グループ企業 ( 親会社及び連結子会社 ) 内の派遣会社が一の事業年度中に当該グループ企業に派遣する割合 ( 定年退職者を除く ) を 8 割以下に 離職した労働者 ( 定年退職者を除く ) を離職後 1 年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止

派遣労働者の無期雇用化や雇用の安定 派遣労働者の無期雇用化 能力開発の機会が得にくい 就業経験が評価されない やむを得ず派遣で働いているにもかかわらず固定化 一定の有期雇用 (1 年以上 ) の派遣労働者について 希望に応じ 以下のいずれかの無期雇用への転換推進措置を派遣元事業主に対して努力義務化 無期雇用の派遣労働者又は通常の労働者として雇用 紹介予定派遣の対象とすることを通じて 派遣先での直接雇用を推進 無期雇用への転換推進のための教育訓練等の措置を講ずる 無期雇用になるための機会が少ない 派遣契約の中途解除への対処 労働者派遣契約の中途解除に伴い 派遣労働者の雇用が失われる 派遣先が無期雇用の派遣労働者の受入れを選好するインセンティブとするため 無期雇用の派遣労働者について 労働契約申込義務の適用対象から除外 (26 業務に限る ) 派遣元及び派遣先は 労働者派遣契約の解除に当たって 新たな就業機会の確保や休業手当等の費用負担に関する措置等派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる

派遣労働者の待遇の改善 待遇の改善 働きに見合った待遇がなされない 事業運営が不透明 派遣元は 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮しつつ 賃金の決定 教育訓練や福利厚生の実施等について配慮しなければならないものとする 派遣労働者の数 派遣先の数 派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合 ( いわゆるマージン率 ) 教育訓練に関する事項等の情報公開を義務化 ( 派遣元事業主 ) 派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し 雇用した場合における賃金の額の見込みなど待遇に関する事項の説明を義務化 ( 派遣元事業主 ) 派遣元は 派遣労働者の雇入れ 派遣開始及び派遣料金改定の際に 派遣労働者に対して 一人当たりの派遣料金の額を明示しなければならないこととする 紹介予定派遣に係る労働者派遣契約の締結の際 職業紹介後に労働者が従事する業務の内容 労働条件など紹介予定派遣に関する事項を契約に定めることとする

違法派遣に対する迅速 的確な対処 1 法違反の増加 違法派遣の是正が労働者の不利益 ( 雇止め 解雇等 ) につながる場合がある 同じ事業主の下 違法を繰り返す派遣先の増加 処分逃れを画策する事業主の現出 派遣先が 以下の行為 ( 違法派遣 ) を受け入れている場合 ( 以下の行為を行ったことを知らず 知らないことに過失がない場合を除く ) 1 禁止業務 (*) に従事させること 2 無許可 無届の派遣元からの労働者派遣の役務の提供を受けること 3 期間制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けること 4 いわゆる偽装請負 ( 労働者派遣法の規定の適用を免れることを目的として 請負等の名目で 労働者派遣契約を締結せずに労働者派遣の役務の提供を受けること ) 違法な状態が発生した時点において 派遣先が派遣労働者に対して 当該派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす * 禁止業務 : 港湾運送業務 建設業務 警備業務 医療関連業務 労働者派遣が上記 1~4 に該当するかについて 派遣先や派遣労働者から求めがあった場合 行政が助言できることとする みなされた労働契約の申込みを派遣労働者が受諾したにもかかわらず 当該派遣労働者を就労させない場合等に 行政が派遣先に対し 助言 指導 勧告できることとし 勧告に従わない場合は公表できることとする

違法派遣に対する迅速 的確な対処 2 施行期日 法違反の増加 違法派遣の是正が労働者の不利益 ( 雇止め 解雇等 ) につながる場合がある 同じ事業主の下 違法を繰り返す派遣先の増加 処分逃れを画策する事業主の現出 施行期日 派遣先の法違反に対する是正措置を強化 指導又は助言前置を廃止し 直ちに勧告することを可能に 労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備し 以下の場合は許可しない 許可を取り消された法人等の役員であった者で 取消しの日から 5 年を経過しないもの 許可取消し等の手続きが開始された後に事業の廃止の届出をした者で 届出の日から 5 年を経過しないもの等 改正法の公布の日から 6 か月以内の政令で定める日 ( 平成 24 年 10 月 1 日 ) ただし 労働契約申込みみなし制度の施行日については 法の施行から 3 年経過後 ( 平成 27 年 10 月 1 日 )

法律名等の変更 見直し規定等 法律名等の変更 法律の名称に 派遣労働者の保護 を明記し 派遣労働者の保護を図り 派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること を目的規定に明記 見直し規定等 政府は 労働者派遣事業の禁止に伴い 派遣就業ができなくなる派遣労働者の雇用の安定や事業主の労働力確保を支援するため 公共職業安定所又は職業紹介事業者の行う職業紹介の充実等必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとする 政府は この法律の施行後 3 年を目途として 改正法の規定の施行の状況等を勘案し さらなる派遣労働者の保護のための方策を含め これらの法律の規定について検討を加え 必要があると認めるときは その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする 政府は 上記の見直し規定を踏まえつつ 派遣労働者の保護を図ることの重要性にかんがみ 派遣先の責任の在り方等派遣労働者の保護を図る観点から特に必要と認められる事項について 速やかに検討を行うものとする