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(1) 当該団体が法人格を有しているか 又は法人格のない任意の団体のうち次の1~2の要件を全て満たすもの 1 代表者の定めがあること 2 団体としての意思決定の方法 事務処理及び会計処理の方法 並びに責任者等を明確にした規約その他の規定が定められていること (2) 関係市町村との協議体制を構築してい

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Transcription:

農 のある暮らしづくりアドバイザー派遣事業について 一般財団法人都市農地活用支援センター 常務理事 統括研究員 佐藤啓二 (1) はじめに ( 一財 ) 都市農地活用支援センターは 三大都市圏を中心に 都市農家 JA 地方公共団体等による農住の調和したまちづくりを支援するため 平成 5 年度から依頼に応えて各地に専門家 ( まちづくり専門家 税理士 弁護士等 ) を派遣する 都市農地活用 保全アドバイザー制度 を運営 実施している ( 平成 22 年度末実績派遣件数 26 都道府県 856 件 ) 制度自体は当センターのプロパー事業であるが 当センター設立の経緯を踏まえ 農住組合の設立支援 農住調和のまちづくり推進 ( 国交省 ) 等 都市農地 都市農業に関する国の行政施策との連携を重視して制度運営を行ってきた 近年農地の保全 都市農業の振興に光が当てられるようになり 平成 25 年度に農林水産省が 農 のある暮らしづくり交付金を創設し その全国支援事業として農業 福祉 教育 防災等の専門家の各地への派遣を行うこととなったことから 都市農地活用 保全アドバイザー制度 を基礎として 農 のある暮らしづくりアドバイザー派遣事業に取り組むこととなった 平成 25 年度は 全国約 50 地区に専門家を派遣し 各地域での 農 のある暮らしづくりの取組を支援することができた 平成 26 年度は 地区数を倍増し 全国約 100 地区に専門家を派遣して取組支援を行うこととしており 本誌を借りて関係者の皆様方の積極的な活用をお願いしたい 以下 この事業の経緯 平成 25 年度の実績 平成 26 年度の計画をご紹介する (2) 農業の振興に関する検討会と 農 のある暮らしづくり交付金の創設日本社会の基調が人口減少 急激な高齢化の進展 都市の縮退に転じる中 これまで都市計画と農業の狭間に塩漬けされてきた都市農業 都市農地を取り巻く環境が大きく変化しようとしている 国土交通省では社会資本整備審議会都市計画制度小委員会において 成長時代の都市計画制度の背骨とも言うべき線引き制度の見直しを含む都市計画制度の総点検が進められ平成 24 年 9 月に 都市と緑 農の共生 の理念を掲げた中間答申がまとめられた 農水省においても 食料自給率の向上を目指す新しい 食料 農業 農村基本計画 で 都市農業の振興がより鮮明となり 農村振興局長の下に都市農業の振興に関する検討会が設置された 国交省の担当官もオブザーバー出席して集中的に検討が進められ 平成 24 年 8 月に中間とりまとめが公表されたが その中では 都市農業の果たしている多面的機能等に対する国民的理解の醸成と多様な主体による都市農業振興 都市農地保全の取組を支援することが急務であり 早急に予算措置等の取組を行うべきことが示された こうした背景を受け 農林水産省では平成 25 年度に 農 のある暮らしづくり交付金制度を創設し 都市及びその近接地域において ソフト事業 ハード事業の両面から 農 を楽しめる暮らしづくりを支援する 18

こととなった 農 のある暮らしづくり交付金は 都市的地域における市民農園の区画数の拡大 ( 平成 23 年度 15 万区画 平成 29 年度 20 万区画 ) を政策目標として掲げ 次の 3 本柱で構成されている 1 農 のある暮らしづくり推進対策 ( 原則 1 年 ~2 年 ) 都市の住民が 農 と触れ合う機会を増やしていくため 住民 NPO 農業者等が取組む多様な活動や付随する簡易な施設の整備を支援実施主体 : 民間団体 NPO 市町村等想定される活動例 : 遊水機能の優れた水田の保全活動 学童の農業体験を通じた食育の推進 高齢者福祉農園の開設準備 既存施設を利用した学童農園の立ち上げ 2 農 のある暮らしづくり整備対策( 原則 1 年 ) 農 を楽しめる暮らしづくりに必要な施設整備を支援補助率 :1/2 以内実施主体 : 農園開設予定者 NPO 特例子会社 社会福祉法人 農業法人 認定農業者 市町村等想定される施設整備例 : 市民農園 障害者雇用農園等の整備 簡易な生産基盤の整備 防災兼用井戸の整備 3 農 のある暮らしづくり支援対策 ( 原則 1 年 ~2 年 ) 農 のある暮らしづくりに向けた全国の活動を支援 農業 福祉 教育 防災等の専門家の各地への派遣 都市農業の意義の啓発のための情報の整備 効果的な情報提供手法の開発等中心となっているのは 1 農 のある暮らしづくり推進対策で 全国を対象に事業実施者を公募し 有識者等で構成される選定委員会の審査により波及効果の期待できるモデル性の高い取組を選定している 実績は 平成 25 年度は応募 189 件 採択 112 件 平成 26 年度は応募 115 件 採択 55 件 ( この他に継続 60 件 ) となっている (3) 交付金による 農 のある暮らしづくりアドバイザー派遣事業 ( 一財 ) 都市農地活用支援センターが平成 5 年度から実施してきた 都市農地活用 保全アドバイザー制度 は これまで農住組合の設立支援等をテーマにしたものが多かったが 近年農地の保全 都市農業の振興に光が当てられるようになり 都市農地 農業の多面的機能に着目したまちづくりの事例が増加していることから 都市農地活用 保全アドバイザー制度 の改革が課題となりつつあった 19

こうした時期に 上記の 農 のある暮らしづくり交付金が創設されたことから 当センターとして これまでの 都市農地活用 保全アドバイザー制度 運営 実施の実績を基礎に 3の 農 のある暮らしづくり支援対策 ( 農業 福祉 教育 防災等の専門家の各地への派遣 ) 業務を引き受けることとし その任務を果たす中で今後の 都市農地活用 保全アドバイザー制度 改革の方向を見定めることとした 公募による事業者選定であったが 幸いにして当センターの提案が受け入れられ 平成 25 年度 ~ 26 年度の2ヵ年事業として 当センターが農林水産省の 農 のある暮らしづくり支援対策 ( 農業 福祉 教育 防災等の専門家の各地への派遣 )( 以下 文中で 農 のある暮らしづくりアドバイザー派遣事業 ) を実施することとなった りアドバイザー は 派遣依頼主体が農業者から都市住民まで幅広いこと ( 農業者やその団体 地域で活動している住民 企業従業員やその団体 社会福祉法人 NPO 学校 自治体等) 及び派遣テーマが次のように大変多様であることに最大の特色がある テーマの例 農業体験農園の開設 水田を利用した市民イベント 空き農地を活用したデイサービス マンションの空き地を利用した菜園作り 団地周辺の空き農地を利用した生きがい就労 高齢者施設への園芸療法の導入 農家と学校が連携した食育の取組み 地域交流機能を取り入れた直売場整備 農を楽しむサービス付き高齢者住宅 このようにして誕生した 農 のある暮らしづく 20

なお 当センターの恒久的制度である 都市農地活用 保全アドバイザー制度 に対し 農 のある暮らしづくりアドバイザー派遣事業 は25 年度 ~ 26 年度の2ヵ年の時限の決まった事業であることから JA 及び自治体からの派遣依頼については可能な限り 都市農地活用 保全アドバイザー制度 として実施することとした (4) 平成 25 年度の取組 農 のある暮らしづくりアドバイザー派遣事業を実施するにあたり 農林水産省と協議し 当センターの都市農地活用 保全アドバイザー制度を基礎に実施するものの 福祉や食育等 従来のアドバイザーの手薄となっている分野をカバーするため 当センターのアドバイザーを拡充するとともに 関係する福祉や市民農園等の専門家団体と連携し こうした団体に所属する専門家を積極的に活用させていただくこととなった 1 専門家派遣制度検討会等以下の関係協力団体の了解を得て 制度要綱を確定し 平成 25 年 8 月末から制度をスタートした 特定非営利活動法人全国農業体験農園協会 特定非営利活動法人千葉県市民農園協会 特定非営利活動法人日本園芸福祉普及協会 特定非営利活動法人日本セルプセンター 一般財団法人高齢者住宅財団 一般社団法人 JA 共済総合研究所高齢社会 福祉研究グループ 2アドバイザー登録等地域の様々なニーズに対応するため 各関係協力団体に所属する専門家を派遣するシステムを構築すると共に 当センターの都市農地活用 保全アドバイザーについて 新たに福祉 食育 住宅等の5 名の専門家を加え 計 60 名を登録した ( 未登録 15 名 ) また ホームページ 電話等で応対すると共に 都市農地活用 保全アドバイザー会議や都市農地活用実践ゼミナールの場を通じて案件の掘り起こしに努めた 都市農地活用 保全アドバイザー会議 東京 : 日時 : 平成 26 年 2 月 20 日 ( 木 )13:30 ~ 場所 : ちよだプラットフォームスクウェア 5F 504 号室大阪 : 日時 : 平成 26 年 2 月 21 日 ( 金 )13:30 ~ 場所 : 千里ライフサイエンスセンター 7F 701 号室 議題 1 農 を楽しめるまちづくりプロジェクトについて ( 農水省担当官 ) 2 農 のあるくらしづくり交付金による専門家派遣事業の活用について 3 JA 及び関係専門家団体等との協力体制の構築について 農地活用実践ゼミナール 日時 : 平成 26 年 2 月 6 日 ( 木 )10 時 ~ 12 時 15 分場所 : 中央大学駿河台記念館 670 号室講義 1 農 を楽しめるまちづくりプロジェクト について講師高塚泰誠氏講義 2 調布市等における 農の風景育成地区 の取組み講師大橋南海子氏 3アドバイザーの派遣全国の農家 都市住民 企業 NPO 等の依頼に応じ 農 のある暮らしづくりへの取組みを支援するため テーマに応じた専門のアドバイザーを派遣した (49 地区 62 名 ) その内訳は図の通りである 21

テーマ別には 体験農園 + 市民農園の開設指導が最も多くなっており 次いで農を楽しむサービス付高齢者向け住宅のプランニング指導 食育となっている 園芸療法や福祉農園等の高齢者サービスや農を活用した障害者の自立支援も多くなっている 圏域では 首都圏が最も多く 次いで地方圏 近畿圏や中部圏はそれほどでもない 派遣依頼者は 農家が最も多く 企業 NPO 都市住民等が次いでいる 派遣された専門家の所属団体では当センターが6 割強で NPO 全国体験農園協会が次いでいる (5) 平成 26 年度の計画冒頭述べたように 平成 26 年度は継続事業でもあり 4 月末からの派遣体制をとり 年間を通じて100 地区へ専門家を派遣するべく取組を強化している また 農林水産省の予算上の重点事項として 他省庁との連携プロジェクト推進がかかげられており 厚生労働省との農 福 ( 福祉 ) 連携プロジェクト及び国交省のコンパクトシティ化 ( 低炭素化法 都市再生特別措置法 ) と連携した農を楽しめるまちづくりプロジェクト関連のものの掘り起こしに注力することとしている 22