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事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部 運輸交通 情報通信グループ第二チーム 1. 案件名国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 和名国際空港保安能力強化プロジェクト英名 The Project for Security Improvement of International Ai

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区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

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架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

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ており 公共交通機関の拡充等のインフラ整備を通じて大都市圏を中心とした混雑緩和 物流改善が必要であるとしている 本事業はこれら方針及び分析に合致する なお 我が国はこれまで対フィリピン円借款による旅客輸送 システム整備として LRT1 号線増強事業 (I) (II) (L/A 調印 :1994 年

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

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2008年6月XX日

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新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

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JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agr

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

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は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部法 司法チーム 1. 案件名国名 : ブラジル連邦共和国案件名 : ( 和文 ) 地域警察活動普及プロジェクト ( 英文 )Project on Nationwide Dissemination of Community Policing 2. 事業の

プロジェクト ( 年 ) 独 (KfW): 西ナイル地区に特化した配電網の拡充 小水力の開発 ( 年 ) 3. 事業概要 (1) 事業の目的ウガンダにおける産業活性化が期待できる地方において 長距離配電線 (33kV 配電線 ) の資機材の調達 据付を行うことによ

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ 1. 案件名国名 : バングラデシュ国案件名 : 和名橋梁維持管理プロジェクト 有償勘定技術支援 英名 Bridge Management Capacity Development Project 2. 事業の背景と必要性

事業事前評価表

国 アメリカ ロシアに次いで世界第 4 位の電力消費国となっている (2014 年 ) 国内の電力供給に関しては 1,114,408GWh の需要に対して供給量は 1,090,851GWh と 2.1% の不足 供給能力もピーク時 153,366MW の需要に対して 148,463MW と 3.2%

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

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資料 - 5 討議議事録 (M/D)

事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

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事業事前評価表

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RO ( 改修 Rehabilitate- 運営等 Operate) 方式ハ民間事業者が公共施設等の設計及び建 BT( 建設 Build- 移転 Transfer) 方式設又は製造を担う手法民間建設借上方式 2 優先的検討の対象とする事業及び検討開始時期一優先的検討の対象とする事業建築物の整備等に関

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豊橋市 PPP/PFI 手法導入優先的検討方針 効率的かつ効果的な公共施設等の整備等を進めることを目的として 多様なPPP/P FI 手法導入を優先的に検討するための指針 ( 平成 27 年 12 月 15 日民間資金等活用事業推進会議決定 ) に基づき 公共施設等の整備等に多様なPPP/PFI 手

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

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国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

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事業事前評価表

スライド 1

Microsoft Word - H290324優先的検討規程(裁定).docx

1 見出し1

事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Pres

事業事前評価表

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 SATREPS) 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名 ( 科学技術 ) 食料安全保障を目指した気候変動対応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装英名

H28秋_24地方税財源

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

Microsoft Word - PPPPFI手法導入における優先的検討に係る指針

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部資源 エネルギーグループ第二チーム 1. 案件名国名 : ザンビア共和国案件名 : 和名ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康 経済リスク評価手法および予防 修復技術の開発英名 The Project for Visualization of

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資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

事業事前評価表

2

2 採用する受注者選定方式の検討について廃棄物処理施設整備事業で一般的に採用されている受注者選定方式は表 -2のとおりです 受注者選定方式の検討に際しての論点を下記に整理しましたので 採用する受注者選定方式について審議をお願いいたします 本施設に求められる5つの整備基本方針に合致した施設の整備運営に

大規模災害等に備えたバックアップや通信回線の考慮 庁舎内への保存等の構成について示すこと 1.5. 事業継続 事業者もしくは構成企業 製品製造元等の破綻等により サービスの継続が困難となった場合において それぞれのパターン毎に 具体的な対策を示すこと 事業者の破綻時には第三者へサービスの提供を引き継

平成 26 年度公共事業事後評価調書 1. 事業説明シート (1) ( 区分 ) 国補 県単 事業名道路事業 [ 国道橋りょう改築事業 ( 国補 )] 事業箇所南巨摩郡身延町波高島 ~ 下山地区名国道 300 号 ( 波高島バイパス ) 事業主体山梨県 (1) 事業着手年度 H12 年度 (2) 事

(Microsoft Word -

資料 2-2(1) 小樽港本港地区 臨港道路整備事業 再評価原案準備書説明資料 平成 21 年度北海道開発局

Microsoft Word - MMR事業事前評価表.doc


平成22年2月●日

Microsoft PowerPoint - _Presentation Tokyo Seminar July 2014 final without video.pptx

Microsoft Word 交通渋滞(有明アーバン)_181017

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1 見出し1

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

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所において施工する場合 2 施工にあたり相互に調整を要する工事で かつ 工事現場の相互の間隔が 10km 程度の近接した場所において同一の建設業者が施工する場合 ( 別添 建設工事における現場代理人の常駐義務の緩和に係る取扱いについて に示す 参考 第 2 第 1 項第 3 号に定める該当工事 参照

平成22年○月○日

Transcription:

円借款用 事業事前評価表 1. 案件名 国名 : ミャンマー連邦共和国案件名 : ヤンゴン環状鉄道改修事業 L/A 調印日 :2015 年 10 月 16 日承諾金額 :24,866 百万円借入人 : ミャンマー連邦共和国政府 (The Government of the Republic of the Union of Myanmar) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における鉄道セクターの開発実績 ( 現状 ) と課題ミャンマー連邦共和国 ( 以下 ミャンマー ) の旧首都ヤンゴン市は 人口約 510 万人を抱える同国最大の商業都市である 経済活動の中心地として近年も人口の増加が著しく JICA が協力したヤンゴン都市圏戦略的開発マスタープラン (2013 年 3 月 ) によれば 2035 年には 950 万人を超えると予測されている 急速な都市化により悪化する道路渋滞等の都市交通問題に対し 老朽化した社会基盤インフラの更新や 人と環境に優しい公共交通網の構築が必要とされている 同市内には総延長約 46km の区間に 38 の駅を持つヤンゴン環状線があり ミャンマー国鉄 (Myanma Railways: MR) により管理 運営されている 一日当たり 122 本の列車が運行されているが 施設や機材 車両の老朽化が進み 列車走行速度の低下や遅延 脱線事故等が頻発している 市内公共交通サービスの輸送機関毎の分担割合に占める鉄道は 1% 程度と極めて低く 多くの市民はバスを利用している 本事業は JICA が策定を支援したヤンゴン総合都市交通マスタープラン ( 案 ) において優先事業として位置付けられており 車両や鉄道保安設備の更新と改善を通じ 更なる需要増加とモーダルシフトに対応した安全で快適な輸送サービスの確保が必要とされている (2) 当該国における鉄道セクターの開発政策と本事業の位置づけ 2012 年 6 月にテイン セイン大統領は経済社会改革フレームワーク (Framework for Economic and Social Reforms) の第 2 フェーズを発表した 同フレームワークでは国家の主要政策として 1 農業を基盤とした工業化 2 公平 均等な成長 3 統計の改善 4 成長エンジンとしての貿易 投資の促進 を掲げており 鉄道セクターの開発は沿線地域の経済活動の活性化に寄与するため 2 公平 均等な成長 及び 4 成長エンジンとしての貿易 投資の促進 に合致する 鉄道分野における開発政策が定められた政策文書は作成されていないが 鉄道運輸省と MR は鉄道路線の建設や隣国との鉄道接続計画を一時保留し 既存幹線鉄道路線の改良 近代化を進めることを審査時に確認している (3) 鉄道セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績 2012 年 4 月に策定された我が国の対ミャンマー経済協力方針において 持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援 を重点分野の一つとしており 具体的な施策の一つにおいて 鉄道の運営改善 近代化 が挙げられており 本事業は同方針と合致する また 2013 年 6 月に閣議決定された日本再興戦略において インフラシステム輸出戦略 を迅速かつ確実に実行する とし 鉄道を含む多様な 日本企業や自治体によるインフラ等の輸出を拡大するため 円借款 海外投融資等 の戦略的な活用についても言及があり 本事業は同戦略とも合致する JICA の援助実績として 有償資金協力 鉄道近代化事業 (1) (1982 年 ) 及び 鉄道近代化事業 (2) (1984 年 ) によりミャンマー国鉄の車両調達や車両改修 組立等のための設備機材調達等を支援した 2013 年 5 月より技術協力 鉄道安全性 サービス向上プロジェクト を開始し ミャンマー国鉄の運営 維持管理能力の強化を実

施中 2014 年 5 月には無償資金協力 鉄道中央監視システム及び保安機材整備事業 の G/A を締結し ヤンゴン中央駅 ~ ピュンタザ駅間において信号システムや中央監視センターの整備等を実施中 2014 年 9 月には有償資金協力 ヤンゴン マンダレー鉄道整備事業フェーズ I(I) の L/A が調印され ヤンゴン - タングー間の軌道 土木 信号システム等の改修と輸送車両の更新を実施中 (4) 他の援助機関の対応ドイツは 1990 年代に鉄道施設の維持管理に関する技術支援実績がある 現在 中国が車両 ( 機関車 客車 ) 工場建設 インドが車両調達等の支援を実施中である 韓国は 2014 年 9 月 経済協力開発基金 (ECDF) を通じた約 350 百万米ドルの融資による客車 100 両の新規調達の支援を表明した その他に MR が現在計画中の案件は以下の通り なお 括弧内は協議先国 機関である 機関車エンジン改修 車両工場整備 ( 中国 ) マンダレー ミッチーナ鉄道改修 ( 韓国 ) バゴー ダウェー鉄道改修 (ADB) タムー マンダレー鉄道 ( インド ) 外国からの援助によらないが ヤンゴン マンダレー線の一部区間において MR が独自に中国 インドの各メーカーから調達した信号システムが導入されている また中古気動車については日本の鉄道事業者からの払い下げを多数購入 これまでに 184 両が輸入されている 他の援助機関との事業の重複及び対象範囲の重複はない (5) 事業の必要性上記のとおり 本事業は同国の開発課題及び開発政策 我が国並びに JICA の援助重点分野と整合していることから JICA が本事業の実施を支援することの必要性 妥当性は高い 3. 事業概要 (1) 事業の目的ヤンゴン環状鉄道の近代化に向けて 老朽化した車両 鉄道設備の更新 改修を実施し 効率的な旅客輸送能力の増強と安全で快適な公共交通サービスの向上を図り もってヤンゴン都市圏の社会経済活動の活性化に寄与するもの (2) プロジェクトサイト / 対象地域名ヤンゴン地域ヤンゴン市 (3) 事業概要円借款協力により ヤンゴン環状鉄道 ( 約 46km) のうち 無償資金協力 鉄道中央監視センター及び保安機材整備計画 により整備される 2km 区間の信号システム ( 電子連動装置 列車監視装置 踏切自動警報装置 ) を除く 44km 区間の信号システムの更新と新規車両の調達を円借款で行い 軌道 土木 関連施設の改修は ミャンマー側実施機関による負担工事として実施する 1 信号システム ( 電子連動装置 踏切自動警報装置 列車監視装置等 : 総延長 44km の対象区間範囲 ) の調達 設置 2 車両 ( 動力分散型電気式ディーゼル気動車 (Diesel Electric Multiple Unit: DEMU) の調達 3 土木 施設改修工事 ( ミャンマー側負担工事 ) ア ) 軌道改修 ( レール更新 レール溶接等 ) イ ) 土木改修 ( 排水施設 路盤改良 橋梁架け替え等 ) ウ ) 施設改修 ( 駅ホーム 車両建屋 フェンス 電力供給施設等 ) 4 コンサルティング サービス ( 入札補助 調達監理 ミャンマー側負担工事の実施促進支援 維持管理能力強化 技術移転 研修 経営改善 )

(4) 総事業費円借款本体 :36,276 百万円 ( うち 円借款対象額 :24,866 百万円 ) (5) 事業実施スケジュール / 協力期間円借款本体 :2015 年 10 月 ~2022 年 4 月を予定 ( 計 79 ヶ月 ) 信号システムの据付工事完了 (2020 年 4 月 ) をもって事業完成とする (6) 事業実施体制 1) 借入人 : ミャンマー連邦共和国政府 (the Government of the Republic of the Union of Myanmar) 2) 保証人 : 無し 3) 事業実施機関 : ミャンマー国鉄 (Myanma Railways: MR) 4) 操業 運営 / 維持 管理体制 : ミャンマー国鉄 (Myanma Railways: MR) (7) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境社会配慮 1 カテゴリ分類 :B 2 カテゴリ分類の根拠 : 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) に掲げる鉄道セクターのうち 大規模なものに該当せず 環境への望ましくない影響等は重大でないと判断され かつ 同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため 3 環境許認可本事業に係る環境影響評価 (EIA) 報告書は同国国内法上作成が義務付けられていない 4 汚染対策工事中に想定される 大気汚染 水質汚濁に関しては 建設機器のメンテナンス 散水によるダストの低減 排水路や必要に応じ沈砂池を設けること また想定される騒音に関しては作業工程を調整し 建設機器のメンテナンスを行うことにより 影響は最小限であると想定される 供用後の騒音 振動についてはプロジェクトによる改善により重大な負の影響は想定されないが モニタリングを通じて住民の苦情の有無を確認し 必要に応じた対応が行われる 5 自然環境面事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず 自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される 6 社会環境面本事業は 実施機関の所有地内で実施するため 用地取得は発生しない ただし 鉄道の運転速度向上に伴う沿線の安全確保のため 軌道中心から両端 2.5m 幅を安全距離として確保することから この範囲に居住する 48 人の非自発的住民移転 及び 15 人への農業補償が必要となる 同国国内手続き及び簡易住民移転計画に沿って移転及び補償が行われる 住民移転に関する住民協議が開催され 被影響住民から事業に係る特段の反対意見は出ていない 7 その他 モニタリング工事中及び供用後は MR が大気汚染 水質 騒音等のモニタリングを実施する 2) 貧困削減促進 : 該当なし 3) 社会開発促進 ( ジェンダーの視点 エイズ等感染症対策 参加型開発 障害者 配慮等 ): ジェンダー活動統合案件 : 本事業によりバリアフリーに対応した公共輸送が確保されることで女性や児童 マイノリティの移動手段の円滑化と 社会経済活動への参加機会の促進が期待される

エイズ /HIV 等感染症対策 : 本事業は エイズ感染が危惧される国において工事労働者が 1 ヵ所の現場に長期間集中する大規模事業であるため 実施機関はコントラクターの入札書類にエイズ対策条項を設け 建設工事中の労働者に対するエイズ対策プログラムの実施をコントラクターに義務付けるものとする 障害者配慮 : 新規車両の詳細設計では 日本の国土交通省の バリアフリー整備ガイドライン ( 車両等編 ) を参照し 障害者や女性に優しい仕様を反映させる方針 ミャンマー負担工事の土木 施設の基本設計支援に対しても同様に 関連ガイドラインを反映させる方針 (8) 他ドナー等との連携 : 特に無し 4. 事業効果 (1) 定量的効果 1) 運用 効果指標 指標名 基準値 (2015 年実績値 ) 目標値 (2022 年 ) 事業完成 2 年後 旅客輸送量 ( 人 km/ 日 ) 850,200 2,140,000 運行本数 ( 列車本数 / 日 ) 122 175 車両運行キロ (km/ 日 ) 2,860 4,100 列車運行間隔 ( 分 ) 15-45 10-12 環状線一周走行時間 ( 分 ) 170 110 年間事故件数 ( 件 ) ヤンゴン環状線全区間を対象 19 (2014 年実績値 ) 2) 内部収益率以下の前提に基づき 本事業の経済的内部収益率 (EIRR) は 20.68% 財務的内部収益率 (FIRR) は 5.24% となる EIRR 費用 : 事業費 ( 税金を除く ) 運営 維持管理費便益 : 鉄道利用者及び道路交通利用者の移動時間減 及び走行費用減 運賃収入増プロジェクト ライフ :40 年 FIRR 費用 : 事業費 ( 税金を含む ) 運営 維持管理費便益 : 運賃収入プロジェクト ライフ :40 年 (2) 定性的効果安全で効率的な旅客輸送の実現 快適な公共交通サービスの実現 ヤンゴン都市圏の社会経済活動の活性化 5. 外部条件 リスクコントロール ミャンマー経済の急速な悪化による貨物輸送 旅客輸送の減少鉄道輸送事業に関する大幅な政策の変更 0-1 ( 想定外の事故を含む )

6. 過去の類似案件の評価結果と本事業への教訓 (1) 類似案件の評価結果ミャンマー 鉄道近代化事業 (2) の事後評価等では MR は恒常的なスペアパーツ不足と技術者の能力不足という問題を抱えており 維持管理体制の改善を図ることが課題であると指摘されている また 中国 重慶モノレール建設事業 の事後評価等では 審査時に予測された乗客輸送量の確保に至っていない点が指摘されており 審査時の乗客輸送量の過大な需要予測や 当初想定の駅勢圏の住宅地開発の遅れに伴う低い利用者伸び率等が原因とされている 事業開始から完成後までに軌道交通ネットワーク化や路線沿線の住宅地開発の計画について十分に検討 確認した上で需要予測を提示し 事業計画を定める必要があると指摘されている (2) 本事業への教訓本教訓を踏まえ スペアパーツ不足に関し 本事業にて事業完成後に必要となるスペアパーツを 2 年間分供与するとともに スペアパーツの納入方法 計画的な調達を含むメンテナンス条項等を施工業者との契約内容に含めるといったといった対応を詳細設計時に検討する 技術者の能力不足については 2013 年度から実施している 鉄道安全性 サービス向上プロジェクト を活用し 鉄道設備の維持管理における方針策定や技術力の向上を図る また 本事業においても施工監理段階において本体事業のコンサルティング サービスにて 運営 維持監理能力の強化を担う技術者が参加し 技術的問題に対して助言を行う予定 需要予測については ヤンゴン総合都市交通マスタープラン ( 案 ) の策定時に実施した交通実態調査と需要予測の分析結果を活用し 本事業による効果検証に基づいて旅客輸送量を予測し 事業計画を定めている 7. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる指標 1) 旅客輸送量 ( 人 km/ 日 ) 2) 物輸送量 ( トン km/ 日 ) 3) 運行本数 ( 列車本数 / 日 ) 4) 車両キロ (km/ 日 ) 5) ヤンゴン環状線一周所要時間 ( 時間 ) 6) 運賃収入 ( チャット / 年 ) 7) 経済的内部収益率 (EIRR)( %) 8) 財務的内部収益率 (FIRR)( %) (2) 今後の評価のタイミング事業完成 2 年後 以上