国際与信は再び中国へ向かう

Similar documents
先進国、新興国向けともに国際与信は増加

中国 資金流出入の現状と当局による対応

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

Microsoft Word - 校了 11 統計 ①増田、田辺.doc

2017 年訪日外客数 ( 総数 ) 出典 : 日本政府観光局 (JNTO) 総数 2,295, ,035, ,205, ,578, ,294, ,346, ,681, ,477

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

Microsoft Word - 20_2

<4D F736F F D20819A F F15F907D955C93FC82E F193B989F08BD682C882B5816A2E646F6378>

順調な拡大続くミャンマー携帯電話市場

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

地域別世界のエアコン需要の推定について 年 月 一般社団法人 日本冷凍空調工業会 日本冷凍空調工業会ではこのほど 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果を まとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行 なっているもので 今回は 年から 年までの過去 ヵ年について主


Microsoft Word - 世界のエアコン2014 (Word)

ITI-stat91

JNTO


個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

地域別世界のエアコン需要の推定について 2018 年 4 月一般社団法人日本冷凍空調工業会日本冷凍空調工業会ではこのほど 2017 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果をまとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行なっているもので 今回は 2012 年から 20

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)結果の推移

Microsoft Word - 18_2

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

42

米国中長期債の処分超が続く

国民 1 人当たり GDP (OECD 加盟国 ) ( 付表 2)OECD 加盟国の国民 1 人当たりGDP(2002~2009 年 ) 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 1 ルクセンブルク 58,709 ルクセンブルク 59,951 ルクセンブルク 64,016 ルクセンブル

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

2017年度 JTI業績報告資料

Microsoft Word - 04_data_product_4

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

Microsoft Word - 15_2

銅地金輸入 ( その2) HS モンゴル 0 0 ラオス 0 0 イラン 0 0 オマーン 0 0 ウズベキスタン 0 0 ノルウェー 0 0 ポーランド 0 0 コンゴ共和国 0 0 コンゴ民主共和国 0 0 タンザニア 0 0 モザンビーク 0 0 ジンバブエ 0 0 ニ

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

2017年12月期 第3四半期 JTI業績報告資料

現代資本主義論

2017 電波産業調査統計

Microsoft PowerPoint - ï¼fiã••PAL镕年+第ï¼fiQ;ver5.pptx

12月CPI

OECD生徒の学習到達度調査(PISA2012)のポイント|国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)


企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

Microsoft Word - 10 統計 参考.doc

海外たばこ事業実績補足資料(2015 年1-3 月期)

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - ブラジル経済概観(2019年2月)

国際会議等への参加のために行った受入れ状況

有償ストック・オプションの会計処理が確定


1999

銀行等の非居住者等に対する国別債権債務に関する報告書

拡大する企業の「投資」

【11】ゼロからわかる『債券・金利』_1704.indd

早稲田大学外国人学生数集計 2017 年 05 月 01 日現在 ( 概況 1) 区分 合計 国際教養 1 年 プログラム 私費 国費 交換 総計

2017年第3四半期 スマートフォンのグローバル販売動向 - GfK Japan

早稲田大学外国人学生数集計 2018 年 05 月 01 日現在 ( 概況 1) 区分 合計 国際教養 1 年 プログラム 私費 国費 交換 総計

貸出は積極的だが消費者向けの環境に変化

四国地方 主要8行の預金・貸出金等分析(2017年第2四半期(中間期)決算)

早稲田大学外国人学生数集計 2017 年 11 月 01 日現在 ( 概況 1) 区分 合計 国際教養 1 年 プログラム 私費 国費 交換 総計

利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

スライド 1

< E97708AC28BAB82C982C282A282C42E786C73>

近畿圏における電気機器の貿易動向 平成 24 年 10 月 22 日大阪税関調査統計課 貿易額推移 近畿圏における電気機器の貿易額は 2000 年に初めて輸出額が 3 兆円を突破し 輸入額が 1 兆円を突破しました 輸出額は 2001 年に一旦減尐しますが その後は右肩上がりで増加し 2005 年に

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

コンピュータ使用型調査について 情報通信技術 (ICT) を切り離すことができない現代社会にあって生徒の知識や技能を活用する能力を測るため また よりインタラクティブで多様な文脈の問題を提示するため コンピュータ使用型調査に移行された 科学的リテラシーのみ シミュレーションが含まれた新規問題を出題し

目 次 Ⅰ. 総括編 1. 世界各地域の人口, 面積, 人口密度の推移と予測およびGDP( 名目 ) の状況 ( 1) 2. 世界の自動車保有状況と予測 ( 5) 3. 世界の自動車販売状況と予測 ( 9) 4. 世界の自動車生産状況と予測 ( 12) 5. 自動車産業にとって将来魅力のある国々 (

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

アジア/世界エネルギーアウトルック 2013

資料5 TIMSS2007関連資料

2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

図 1 生徒の科学に対する態度 (2006 年 2015 年 ) ( 項目例 ) 科学の話題について学んでいるときは たいてい楽しい 科学についての本を読むのが好きだ 図 1 生徒の科学に対する態度 2 科学の楽しさ 指標 の変化 ( 項目例

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

Information Security Management System 説明資料 2-2 ISMS 適合性評価制度の概要 一般財団法人日本情報経済社会推進協会情報マネジメント推進センター副センター長高取敏夫 2011 年 9 月 7 日

スポーツ国際交流及び国際会議等への派遣・受入状況

PowerPoint プレゼンテーション

39_3

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

<4D F736F F D DC58F4994C5817A C A838A815B83585F984A93AD90B68E5990AB82CC8D918DDB94E48A E646F6378>

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

PowerPoint プレゼンテーション

リサーチ Press Release 報道関係者各位 2015 年 7 月 29 日 アウンコンサルティング株式会社 世界 40 カ国 主要 OS 機種シェア状況 2015 年 6 月 ~ iphone 大国 日本 高い Apple シェア率 ~ アジア 8 拠点で SEM( 検索エンジンマーケティ

経済見通し

「第12回信用金庫取引先海外事業状況調査結果 資料編」

Microsoft PowerPoint EU経済格差


1.4 年ぶりにプラスに転じた新興国の金融収支 ( 注新興国 1) の金融収支 ( 外貨準備の増減を除く 以下特注ない限り同様 ) は 215 年から 216 年にかけて大幅なマイナス ( 資金流出超 ) を記録したものの 217 年には小幅ながらも 4 年ぶりにプラス ( 超 ) に復した ( 第

3_2

ご参考資料 オーナー経営者経営者の意識調査 - 概要 - 調査期間 2003 年 9 月 1 日 ~10 月 31 日 調査機関日本では ASG グループが本調査の主体になり 日経リサーチ社に調査を委託した 調査の一貫性を保つために 各国のデータの取りまとめは 国際的な調査機関である Wirthli

<4D F736F F D E937890AC96F18EC090D195F18D C A E646F63>

<4D F736F F F696E74202D2090E096BE8E9197BF288A F984A93AD90B68E5990AB82CC8D918DDB94E48A E B8CDD8AB B83685D>

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

Transcription:

金融資本市場 7 年 月 日全 頁 国際与信は再び中国へ向かう BIS 報告銀行による国際与信残高統計 (7 年第 四半期 ) 金融調査部研究員森駿介 [ 要約 ] BIS の統計によれば 7 年 6 月末の国際与信残高は.9 兆ドルと 四半期連続で 増加した 与信側 ( 銀行側 ) を見ると 欧州の銀行は欧州先進国向けの与信を中心に残高を増加させた 米国の銀行はオフショア向け 新興国向けを中心に残高を伸ばした 邦銀の国際与信残高は 年代に入り増加基調にあったものの 6 年第 四半期 以降は横ばいとなっている 7 年 6 月末の国際与信残高は微減だった 債券価格の下落リスクを警戒した邦銀が中長期債を大幅に処分したこと ドル調達コストの上昇等 で海外貸出における採算性の審査を厳格化する動きが強まっていること等が背景にあ ると考えられる 与信受入側で見ると 欧州先進国向けが国際与信残高の増加に寄与している FRB の利 上げにより資本流出が懸念された新興国向けの与信も残高増となっている そのうち 年 6 月末をピークに減少が見られた中国向け与信も足元では増加している ただし 中国向け与信は 短期与信比率が高いことから 満期到来に伴う資金流出が発生し やすい構造にあり 今後も注視が必要かもしれない 株式会社大和総研丸の内オフィス -676 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

/ 欧 米 邦銀の与信動向 : 邦銀の与信残高が伸び悩み BIS( 国際決済銀行 Bank for International Settlements) が BIS 報告銀行による 7 年 6 月末時点の国際与信残高 を公表した 7 年 6 月末の国際与信残高は.9 兆ドルと前期差 +,6 億ドル ( 前期比 +.8%) で 四半期連続の増加となった ( 図表 ) 図表 国際与信残高とその前期差 - 残高の前期差 ( 右軸 ) 国際与信残高 6 7 8 9 6 7 - - - 与信側 ( 銀行側 ) から与信残高を見ると 欧州の銀行 は前期差 +,99 億ドル ( 前期比 +.%) と増加している ( 図表 ) 残高増加分の約 分の は欧州先進国向けの与信の増加によるもので 特にベルギー ドイツ オランダ向け与信が増加している オフショア向けの与信残高も増加傾向にある ( 前期比 +.8%) ただし 長期的な傾向としては 欧州の銀行の国際与信残高は減少基調にあり 足元の残高増加は大きなトレンドを変えるものではないと思われる 米国の銀行 ( 以下 米銀 ) の与信残高も前期差 +76 億ドル ( 前期比 +.%) の増加となった オフショア向け や新興国向け を中心に残高を伸ばしている 長期的な傾向としては 米銀の国際与信残高は 兆ドル前後の横ばいで 欧州先進国向け与信が減少し オフショア向け与信が増加している 本レポートでは 断りのない限り最終リスクベースの数値を扱う これは 与信対象の直接的な所在地ではなく 与信の最終的なリスクがどこに所在するのか を基準に 国 地域別の分類を行ったもの なお この値は 国境を越える与信 外国銀行の支店 現地法人による外貨建て国内与信 外国銀行の支店 現地法人による地場通貨建て与信 で構成される 欧州の銀行は オーストリア ベルギー フランス ドイツ ギリシャ アイルランド イタリア オランダ ポルトガル スペイン スイス 英国 スウェーデンの ヶ国の銀行で構成している オフショアは 香港 シンガポール ケイマン諸島 バハマ バーレーン バミューダ諸島 旧蘭領アンチル ガーンジィ マン島 ジャージィー レバノン パナマで構成している 新興国は 中国 韓国 台湾 インド フィリピン インドネシア マレーシア タイ チェコ ポーランド ハンガリー ルーマニア ロシア トルコ アルゼンチン ブラジル メキシコ チリ コロンビア 南アフリカ イスラエルの ヶ国 地域で構成している

/ 図表 欧州の銀行 米銀 邦銀の国 地域別国際与信残高 8 欧州の銀行 欧州先進国向け 米国向け日本向け オフショア向け新興国向け... 米銀 欧州先進国向け日本向けオフショア向け新興国向け 6.. 7 8 9 6 7. 7 8 9 6 7.. 欧州先進国向け米国向けオフショア向け新興国向け 邦銀........ 7 8 9 6 7 ( 注 ) 米銀において 9 年第 四半期に報告対象の拡大がなされた 邦銀の国際与信残高は 年代に入り増加基調にあった グローバル展開する本邦企業への貸出や国内債券の運用難を背景とした外債保有の積極化等が背景にあったと思われる しかし 6 年第 四半期以降は横ばいで推移しており 7 年第 四半期は前期差 96 億ドル ( 前期比.%) の減少となった 欧州先進国向けやオフショア向けの与信残高は増加した一方で これまで残高増加が続いていた米国向けの与信は減少に転じた ( 前期差 6 億ドル ) 6 年末からの米国金利上昇と FRB の金融政策スタンスから 今後の債券価格の下落リスクを警戒した邦銀が保有する外債を処分したことが背景にあると考えられる 財務省 日本銀行 国際収支統計 を見ると 預金取扱機関が 7 年 月に米国の中長期債を大幅に処分していることが分かる また 足元でドル調達コストが高水準で推移していることや優良貸出先を巡る競合の強まり等から海外貸出における採算性の審査を厳格化する動きが強まっている という指摘もある 6 詳細は 中田理惠 森駿介 (7) 預金取扱機関の外債処分の動きは一段落か ( 7 年 8 月 日 大和総 研レポート ) を参照 http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/78_7.html 6 日本銀行 金融システムレポート (7 年 月号 )

/ 国際与信は再び中国へ向かう 与信受入側の国際与信残高の増減 ( 前年同期差 ) を見ると 6 年第 四半期以降 その他先進国向けの与信増が相対的に大きい オフショア向け与信も香港やケイマン諸島向けの与信増加を背景に 残高増加が 年第 四半期以降続いている ( 図表 ) また 7 年第 四半期においては欧州先進国向けの与信残高が 年第 四半期以来のプラスに転じた 欧州の銀行から欧州先進国向けの国際与信残高の伸びが大きく寄与している 新興国向けの国際与信は 四半期連続で増加している 中国を除く新興国向けも 年第 四半期以来 初めて増加に転じた 7 年 6 月に米国の政策金利誘導レンジが引き上げられ 米国の金利上昇を背景とした新興国からの資本流出が懸念された しかし 7 年第 四半期時点では 国際与信残高の減少は見られない 図表 与信受入側の国際与信残高の増減 ( 前年同期差 )... 新興国その他オフショアその他先進国欧州先進国世界計. -. -. -. 6 7 ( 注 ) 新興国は中国を含む 他方 中国向けの国際与信残高は 年 6 月末をピークに減少していたものの 足元では前期差で見て 四半期連続の残高増加となっている ( 図表 左図 ) 主要な与信側( 銀行側 ) は英国 米国 日本などである フランスも足元で中国向けの与信残高を大きく伸ばしている 残存期間別で見ると 中国向け国際与信の変動は 年以内に返済期限が到来する短期のクロスボーダー与信の増減によるところが大きい ( 図表 右図 ) 年後半から 6 年前半にかけての与信残高の減少は利下げによる利鞘の減少や人民元安に伴う為替差損が発生する可能性等 中国が抱えるリスクを背景に 海外主体が保有する短期の中国向けの与信をロールオーバーせずに引き揚げたことが理由と考えられる 7 反対に 6 年末より中国の金利上昇が見ら https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr7.htm/ 7 矢作大祐 () 金融収支からみる中国の海外資金調達動向 ( 年 月 8 日 大和総研レポート )

/ れ 人民元 ( 対ドル ) も 7 年初に下げ止まりが見られた これらの要因が足元の中国向けの資金流入をもたらしている可能性がある ただし 引き続き中国向けの与信は短期のものが多いことから 満期到来に伴う資金流出が発生しやすい構造にあり 今後も注視が必要かもしれない 図表 中国向け国際与信残高 ( 左図 ) と残存期間別の中国向け与信残高 ( 右図 ),,,, 8, 8,, 6, 6,,,,,, 7 8 9 6 7 中国向け与信残高 ( 右軸 ) 英銀米銀邦銀台湾銀フランス銀 7 8 9 6 7 満期 年超のクロスボーダー与信満期 年以内のクロスボーダー与信海外支店 現地法人の現地通貨建て現地向け与信 ( 注 ) 残存期間別の中国向け与信残高 ( 右図 ) は所在地ベース ( 与信先の所在地に基づく ) https://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/8_.html