2017/12/5 九大応力研 ( 春日市 ) 海洋レーダ研究集会 水産業への活用を想定した宮崎県の海洋レーダ導入計画について 渡慶次力 ( 宮崎水試 ) 藤井智史 大城弘貴 池原日向 ( 琉大 工 )
本日の話題提供 背景 ( 宮崎県内の沿岸漁業者からのニーズに応える ) 宮崎水試では, 日向灘全域を網羅する水温や流況, 黒潮位置などの各要素が視覚的に統合された毎日の海況図を提供する試験研究を実施している 本日の話題提供 1 宮崎水試の海況情報提供の取組み 日向灘海況情報提供システムの概要とその効果 2 宮崎県における海洋レーダの導入計画 琉球大学所有のHFレーダを用いた日向灘の試験観測 宮崎県における海洋レーダの本格導入の計画
1 宮崎水試の取組み日向灘海況情報提供システムの概要と漁業者の利用実態 背景 ( 宮崎県内の沿岸漁業者からのニーズに応える ) 宮崎水試では, 日向灘全域を網羅する水温や流況, 黒潮位置などの各要素が視覚的に統合された毎日の海況図を提供する試験研究を実施している 宮崎水試の取り組みこれらの漁業者ニーズに対応する 日向灘海面の海況情報を提供するシステム ( 以下, 日向灘海況情報提供システム と呼ぶ ) の開発に取り組み,2015 年度より運用
日向灘海況情報提供システムの概要について ( 渡慶次ほか 2016) 海上 GPS( 位置 ) 数秒毎の海況情報を蓄積 表層総合海況情報 水産試験場 一日一回正午更新 漁業者の利用 スマホ等 水温計 ( 水温 ) GPS データロガー 画像に変換 Web サーバー 潮流計 ( 流向 流速 ) 曳縄船 5 隻 まき網船 3 隻による監視 海況情報の統合 海上保安庁黒潮流軸 漁船情報水温 流れ 位置 気象庁海面水温 情報提供 データ収集から情報提供までの一連の作業を全自動化 海況図は詳細な沿岸域近傍の水温フロント域での水温, 流況場が 1 つの海況情報として表現可能 水試日報 として 宮崎水試 HP 及び携帯サイトにて 2013 年 1 月より情報提供を開始
水試日報に対するまき網漁業者の利用実態と経済試算 ( 渡慶次ほか, 2017) 北浦漁協所属の中型まき網漁業の全 7 船団の船頭あるいは船主に対して アンケート調査や聞き取りにより経済効果を試算した 北浦漁港 水試日報は 全船団が 禁漁日を除くほぼ毎日 利用していた 水試日報の利用効果としては 以下の2 点 1 漁場発見による漁獲機会の増大による漁獲金額の増加 (6 船団 ) 180 百万円 2 無駄な操業をしないことによる生産コスト削減 (2 船団 ) 航行経費( 燃油費 ) 削減 24 百万円 労務時間の削減 13 百万円 1+2 = 217 百万円 200 百万円 経済試算をしたことで 海況情報の重要性と効果の理解がすすんだ!
日向灘表層海況図今後の展開 ( 水試日報 ) の課題 漁船情報あり 漁船情報なし 課題 1 時化等で漁船情報が得られない時に 海況図の精度が低い 2 海表面のみの情報 3 流況情報が不足
日向灘海況情報提供システムの開発 Ⅱ(H27~31 年度 ) 過去現在将来像 日向灘海況情報提供システム Ⅰ (H22~26) 漁船活用 日向灘の海面海況 課題 1 鉛直情報へ拡充 2 潮流情報の充実 日向灘海況情報提供システム Ⅱ 1 漁船 漁業者による水温 塩分観測 ( 鉛直情報 ) 2 海洋レーダ活用 ( 潮流情報 ) 高度な海況情報 0m 50m 100m 日向灘の詳細海況情報 資源管理下における効率的な操業 収益性の向上 経済効果 :2 億円 1 漁獲機会増大による漁獲金額の増加 2 無駄な操業を取り止める 沿岸資源変動に影響を与える海洋環境指標の抽出 (H27~31) 行政との協力関係 : 海の天気図でつくる新しい漁業創生事業 (H28) 等
今後の展開 2 宮崎県における海洋レーダの導入計画 海洋レーダを導入する目的 1 流れ 2 潮目 3 波浪 海況把握 出漁判断 漁場の検討 出漁判断 総合的な海況情報提供を目指す 表 : 宮崎県の海洋レーダ導入スケジュール H30 年度以降 ( 計画中 )
実証実験の施設 ( 琉球大学所有物今後の展開 ) 項目中心周波数 24.5MHz レーダ諸元 距離分解能 1.5km アンテナ型式 送受信兼用反射器付き短縮ホイップ10 素子フェーズドアレイ ビーム幅 15 ビームスキャン ±45 7.5 ステップ 電波型式 パルスドチャープ (FMICW) 全幅 54m 全高 6m 琉球大所有の試験機 写真 : 宮崎港局のレーダー 宮崎港局 :2015 年 11 月設置清武川局 :2015 年 12 月設置 野島局 :2017 年 3 月移設 観測結果は 琉大 大城さんの修論を紹介 データ処理等は 藤井 (2001) と同じ方法 観測範囲
実証試験で観測した流れ (2015 年 4 時間毎 ) 12/26 16:00 12/26 20:00 12/27 0:00 12/27 4:00 宮崎局 清武局 浮魚礁 浮魚礁 12/27 8:00 12/27 12:00 12/27 16:00 12/27 20:00
うみさち4 号付近の視線方向の流速と風速今後の展開 レーダ流速 測定水深 : レーダ :0.5m 浮魚礁 :10m 4 号流速 4 号風速 図レーダ流速 (a) 4 号流速 (b) 4 号風速 (c) の時系列 正値は岸に向かう成分, 負値は沖に向かう成分を示す 図レーダ流速 (a) 4 号流速 (b) 4 号風速 (c) の時系列 正値は岸に向かう成分, 負値は沖に向かう成分を示す 冬季 (11 月 ~1 月 ) は レーダ流速に 10cm/s 以上の沖合に向かう成分が加わっており 北西風に対応する沖合方向へ吹く 4 号風速値も大きい 冬季は 吹送流の影響を強く受けていたと考えられる
海面 海洋レーダの利用を想定している本県の漁業種類今後の展開 ひき縄 モジャコ漁 10m 船曳網 小型底曳き網 50m まき網 まぐろはえ縄 100m 水深スケール 宮崎県水産白書 ( 宮崎県,2017) 海洋レーダは 冬季 ~ 春季の北西風が強い時期に吹送流の影響を受ける 運用する漁具が海面付近の漁業 ( 例えばモジャコ漁 ) であれば 海洋レーダから取得された生の流速値がそのまま役立つが 深い層で漁具を運用する多くの漁業種類には吹送流を除した流速値にするなど情報提供において工夫が必要と考えられる
双峰型スペクトルの観測事例今後の展開 図 2016/1/1 1:40 に宮崎局で観測されたデータ (a) 距離 - ドップラースペクトル特性 (b)13.5~30km スペクトル強度 - ドップラスペクトル 黒丸はスペクトルピークを示し 緑の丸はスペクトルピークが 2 つあることを示している (c) 双峰型スペクトルピークが発生したブーム方位 78.0
双峰型スペクトルの発生と九州東岸の黒潮離接岸との関係今後の展開 接岸時 離岸時 接岸時 発生率 : 高い発生率 : 低い発生率 : 高い 図双峰型スペクトルの発生頻度の空間マップ (a)2015 年 12 月 10 日から 2016 年 1 月 12 日 (b)2016 年 1 月 21 日から 2016 年 2 月 15 日 (c)2016 年 9 月 16 日から 2016 年 10 月 17 日 都井岬と黒潮流軸との距離が 40km 未満だと 接岸 40km 以上では 離岸 としている 黒潮接岸時に 双峰型スペクトルが多く発生している
黒潮接岸時の日向灘の海況変動の特徴今後の展開 図 2016 年 4~6 月に Terra/Acua 衛星搭載の MODIS センサで計測された海面水温画像 白域は雲の影響を受けた欠測値, はうみさち 6 号とうみさち 5 号の位置に対応している 試験観測をしている県中部の海岸から 20km 以東は 黒潮接岸時に黒潮前線波動が通過する海域に対応しており 数ヶ月スケールで黒潮が離接岸する日向灘では 双峰型スペクトルが頻繁に発生すると考えられる 双峰型スペクトルの自動読み取りアルゴリズムの作成 改良 照射領域内の異なる流れのうち漁業者にとって有益な情報を選択できるようにするなど情報提供方法の工夫も必要だと考えられる
海の天気図 でつくる新しい漁業創生 情報の充実 海の天気図 を活用した新しい漁業スタイルによる漁村活性化 海の天気図 操業支援情報の提供 ( 水温 流況 波浪等 ) ICT 利用の担い手育成 情報の活用 事業効果 新たな漁業経営モデルの創出と普及 1 海の天気図 を活用した計画的操業と戦略的な漁業経営を実践できる ひと づくり 2 収益性の高い漁業経営モデルの提示と実践する経営体の育成 漁業情報データベース 漁業関連データの集積と高度利用 浜の力 漁協による雇用型漁業起業 海の天気図 活用教育 沿岸漁業スタイルの変革 新規就業者の定着による漁村活性化 1 業界自らが総力を結集した就業者の受け皿としての しごと づくり 収益性改善実証データの提供 2 海の天気図 を使いこなす技能を身に付け 地域に定着する ひと づくり
浜の活力再生交付金事業 ( 水産業強化支援事業 ) (1) 事業目的 漁業者に配信している海況情報の高度化を図り 漁業経営の合理化を目指す (2) 事業概要 事業費 :1 億 8 千万円工事概要 : 制御及び海象解析装置 N=1 式情報配信システム N=1 式レーダ局 N=2 局 ( 宮崎局 美々津局 ) 観測範囲 : 日向灘沿岸事業年度 : 平成 29 年度 レーダー日向市 レーダー宮崎市 水色の部分が観測範囲 日向灘 (3) 事業効果図海洋レーダー観測範囲 1 漁場探索能力の向上による漁業機会の増加 2 航路選択が可能となり 省エネ航行による燃油削減効果 3 的確な出漁判断により無駄な出漁が減ることによる経費削減効果
1300 2000 4000 9000 レーダの概要 13MHz の海洋レーダーの設置範囲約 100m( 沿岸方向 ) 約 15m( 海陸方向 ) 約 9m( 高さ ) 送信アンテナ 1 基 受信アンテナ 8 基 ( 標準 ) 安全柵 TX: 送信アンテナ RX: 受信アンテナ 図 13.5MHz レーダー設置平面図 反射器 輻射器 FRONT バラン インシュレター 同軸ケーブル RG-8/U 支線 φ6 FRP ケーブルメッセンジャ φ6 FRP 同軸ケーブル引留マスト 下部エレメント 支線用マスト GL マストベース ( ヒンジ形 ) 2000 3000 3000 9000 3000 図 13.5MHz レーダー標準設置図図海洋レーダーアンテナ
レーダ範囲図 美々津局 ( 日向市美々津美々津中学校東側海岸 ) 宮崎局 ( 宮崎市郡司分清武川左岸海岸 )
まとめ ( 水産業への活用を想定した宮崎県の海洋レーダ導入計画について今後の展開 ) 1 宮崎水試の取組み紹介 漁船情報を活用した総合的な表層海況情報の提供とその効果 黒潮の影響を受けて速い流れが不規則に変化する海域で操業する漁業者にとって 極端に不足している 流れ情報 を強く求めている 2 宮崎県における海洋レーダ導入計画 琉大所有の HF を用いた日向灘の試験観測 冬季 ~ 春季の北西風が強い時期に吹送流の影響を受ける 黒潮接岸時に双峰型スペクトルピークの発生頻度が高くなる 宮崎県における海洋レーダの本格導入計画 (H31 年度より運用予定 ) 1 流れ 2 潮目 漁場の検討 海況把握 出漁判断 3 波浪 出漁判断 総合的な海況情報提供を目指す