Microsoft Word - 感染症と予防接種について doc

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2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

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耐性菌届出基準

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

Microsoft Word - WIDR201826

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

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2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好


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2015 年 9 月 30 日放送 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE) はなぜ問題なのか 長崎大学大学院感染免疫学臨床感染症学分野教授泉川公一 CRE とはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 以下 CRE 感染症は 広域抗菌薬であるカルバペネム系薬に耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの いわゆる

Microsoft Word - WIDR201839

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別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症

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抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 歳 歳以上 合計 ( 注 ) *

Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

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インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

鹿児島県感染症発生動向調査事業 ( 内容に関するお問い合わせ : 健康増進課感染症保健係 ) 感染症のホームページアドレス 第 20 週の手足口病の定点当た

2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

感染症学 責任者 コーテ ィネーター 担当講座 学科 ( 分野 ) 情報薬科学分野西谷直之教授 情報薬科学分野 医学部臨床検査医学講座 対象学年 2 期間後期 区分 時間数 講義 18 時間 単位数 1 単位 学習方針 ( 講義概要等 ) 感染症学では既習の微生物学の知識を基にして 感染症の侵入門戸

Microsoft Word - 届出基準

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症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.5 伝染性紅斑 りんご病

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

本書の特徴 まとめ 暗記 問題を これ1冊で 左ページがポイント 右ページが穴埋め問題 ポイントを 3段階レベルに分類しました この本は はり師きゅう師 あん摩マッサージ指圧師を目 指す方の 臨床医学各論の勉 強をサポートする問題集です 国家試験でよく出る部分を 中心にポイントを絞り込んで あります

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

クチ ワ ン で安心 予防接種は集団生活前に子育て応援券を有効活用 感染症発生動向速報 ( 平成 31 年第 10 週分 3 月 4 日 ~3 月 10 日 ) インフォメーション 予防接種をご確認くださいこの春から保育所 幼稚園に通い始めるお子さんも多いと思います 一般に乳幼児は感染症に対する抵抗

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日産婦誌58巻9号研修コーナー

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改訂の理由及び調査の結果直近 3 年度の国内副作用症例の集積状況 転帰死亡症例 国内症例が集積したことから専門委員の意見も踏まえた調査の結果 改訂することが適切と判断した 低カルニチン血症関連症例 16 例 死亡 0 例

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 0-5 ヶ月 6-11 ヶ月 1 歳 歳以上 合計 (

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 9 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 5 インフルエンザ 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

Microsoft Word - 感染症週報

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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熊本県感染症情報 ( 第 31 週 ) 県内 170 観測医の患者数 (7 月 28 日 ~8 月 3 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 0 1 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 7 0 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

感染症発生動向調査 2019 年第 29 週 京都市感染症週報京都市感染症情報センター ( 京都市衛生環境研究所 ) (7 月 15 日 ~7 月 21 日 ) 今週のコメント

高知県感染症発生動向調査(週報)

Weekly Report on Aomori Prefecture Infectious Disease 青森県感染症発生情報 (2019 年第 3 週 ) 発行青森県感染症情報センター (2019 年 1 月 24 日 ) ( 青森県環境保健センター : 担当微生物部 ) TEL

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

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ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン<医療従事者用>

1 MRSA が増加する原因としては皮膚 科 小児科 耳鼻科などでの抗生剤の乱用 があげられます 特にセフェム系抗生剤の 使用頻度が高くなると MRSA の発生率が 高くなります 最近ではこれらの科では抗 生剤の乱用が減少してきており MRSA の発生率が低下することが期待できます アトピー性皮膚炎

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インフルエンザ(成人)

2012 年 7 月 18 日放送 嫌気性菌感染症 愛知医科大学大学院感染制御学教授 三鴨廣繁 嫌気性菌とは嫌気性菌とは 酸素分子のない環境で生活をしている細菌です 偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌があります 偏性嫌気性菌とは 酸素分子 20% を含む環境 すなわち大気中では全く発育しない細菌のことで 通

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とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

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熊本県感染症情報 ( 第 50 週 ) 報告期間 インフルエンザ 水 痘 突発性発しん ヘルパンギーナ マイコプラズマ肺炎 クラミジア肺炎 ( ロタウイルス ) 第 43 週第 44 週第 45 週第 46 週第 47 週第 48 週第 49 週第 50 週第 47 週第 48 週第 49 週 7

鹿児島県感染症発生動向調査事業 感染症のホームページアドレス 咽頭結膜熱の報告数は, 前週と同数の 59 人 ( 定点当たり 報告数 1.09) でした 保

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

名称未設定

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

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2009年8月17日


第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

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10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

改訂の理由及び調査の結果直近 3 年度の国内副作用症例の集積状況 転帰死亡症例 アモキシシリン水和物及びクラブラン酸カリウム アモキシシリン水和物の国内症例が集積したことから 専門委員の意見も踏まえた調査の結果 改訂することが適切と判断した 血小板減少関連症例 1 アモキシシリン水和物 3 例 (

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Transcription:

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 : A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の概要 A 群溶血性レンサ球菌感染症 ( 一般には溶連菌感染症と言われる場合が多いです ) は A 群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる感染症です 同菌は上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で 菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こすことが知られています 最も多く発生している急性咽頭炎の他にも日常的にみられる感染病態として膿痂疹 蜂巣織炎 あるいは抗菌薬による治療が発達する前によくみられていた病型として猩紅熱があります その他にも中耳炎 肺炎 化膿性関節炎 骨髄炎 髄膜炎などをきたすことがありまし また 菌の直接の作用ではなく 感染後の免疫学的機序を介して リウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすこともよく知られています 更に 発症機序 病態生理は不明ですが 軟部組織壊死を伴い 敗血症性ショックを来たす劇症型溶血性レンサ球菌感染症は重篤な病態としてしばしば問題となっています A 群溶血性レンサ球菌のほとんどは細胞表層に蛋白抗原として M 蛋白と T 蛋白を有しており これらの抗原性により さらに型別分類されます M 蛋白には 100 以上の血清型が T 蛋白には約 50 の血清型が知られています また 本菌は溶血毒素 発熱毒素 ( 発赤毒素 ) 核酸分解酵素 ストレプトキナーゼなど 種々の活性蛋白物質を産生して細胞外に分泌し 種々の症状を起こすと考えられています A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の疫学 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎はいずれの年齢でも起こり得ますが 学童期の小児に最も多く 3 歳以下や成人では典型的な臨床像を呈する症例は少ないです 感染症発生動向調査によると 冬季および春から初夏にかけての 2 つの報告数のピークが認められています この感染症は 通常患者との接触を介して伝播するため ととの接触の機会が増加するときに起こりやすく 家庭 学校などの集団での感染も多いです 感染性は急性期にもっとも強く その後徐々に減弱していきます 急性期の感染率については兄弟間の感染が最も高率であり約 25%( 文献によっては 50% も ) と報告されています 以前に学校での咽頭培養を用いた研究によると 健康保菌者が 15 30% あると報告されていますが 健康保菌者からの感染はまれという説もあります 近年は溶連菌感染症に対する迅速診断キットが普及し それによって診断方法が容易になり 報告数が以前よりも増加傾向にあると言われています 一方 2014 年の秋以降は過去 10 年間の同時期の週と比較して最も患者数の多い週が大半を占めており 2015 年の累積患者数は 2004 年以降では最も多く ( 累積報告数 401,240 暫定値 ) なりました ( 図 )

A 群溶 血性レンサ球菌咽咽頭炎定点あたり報告数年年次別週別推移 (2004 年年 ~ 2016 年年第 19 週 ) 4.00 3.50 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 図.A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の小児科定点当たり報告数の年次別週別推移 (2004 年 ~2016 年第 19 週 ; 感染症発生動向調査より ) A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の臨床症状 潜伏期は2 5 日ですが 潜伏期での感染性については明らかになっていません 発症する場合は突然の発熱と全身倦怠感 咽頭痛によって発症し しばしば嘔吐を伴います 咽頭壁は浮腫状で扁桃には浸出液を伴っています 軟口蓋に点状出血がみられることがあり 更には特徴的な苺 ( イチゴ ) 舌 ( 写真 ) が認められる場合があります この苺舌ですが 発症早期には舌は白苔で覆われており その後白苔が剥離した後で苺舌がみられます 発熱開始後 12 24 時間すると点状紅斑様 日焼け様の皮疹が出現して猩紅熱と呼ばれる病態を呈することがあります 針頭大の皮疹により 皮膚が紙ヤスリ様の手触りとなる事が特徴的です この場合 通常顔面には皮疹はなく 額と頬が紅潮し 口の周りのみ蒼白にみえる ( 口囲蒼白 ) と言われています

写真 :A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎による苺舌 ( 国立感染症研究所ホームページより : http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/340-group-a-streptococcus-intro.html) A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療 治療にはペニシリン系の抗菌薬やセフェム系抗菌薬の投与が推奨されており 投与期間はペニシリン系の場合は10 日間 セフェム系の場合は5 日間が推奨されています これまでA 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療にはペニシリン系抗菌薬を第 1 選択薬としてリウマチ熱や糸球体腎炎の合併を予防するために10 日間投与することが推奨されてきました しかし ペニシリン投与後にも15~20% 程度の患者が当初感染した血清型と同じ型のA 群溶血性レンサ球菌を保有し続けると言われています これは投与期間が長期に渡るために服薬のコンプライアンスが不十分となってしまう場合が少なくないこと 周囲からの再感染 咽頭部に常在する他のβラクタマーゼ産生菌の影響 菌が細胞内でも生育できること 患部にバイオフィルムが掲載されていて薬剤が浸透しにくい場合があること 等がその理由としてあげられています 除菌が困難な場合には βラクタマーゼ阻害薬が配合されたペニシリン系抗菌薬や セフェム系抗菌薬の10 日間投与が推奨されています また ペニシリンアレルギーがある場合にはエリスロマイシン等のマクロライド系抗菌薬の投与が行われますが マクロライド耐性菌が少なからず存在しており 慎重な対応が求められます ( 表 )

表.A 群溶血性連鎖球菌による咽頭炎 扁桃炎の抗菌薬療法 ( 坂田宏. 小児科における 咽頭炎 扁桃炎 :A 群溶連菌感染症を中心に. 口咽科 23:1:11~16, 2010 より引用 ) A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染経路 主な感染経路は 発症者もしくは保菌者 ( 特に鼻咽頭部に保菌している者 ) 由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です 物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが 患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です 発症者に対しては 適切な抗菌薬による治療が開始されてから48 時間が経過するまでは学校 幼稚園 保育園での集団生活は許可すべきではないとされています A 群溶血性レンサ球菌の無症状保菌者への対応 通常無症状保菌者から他者への拡散やリウマチ熱をきたす危険性は低いと言われていて 無症状保菌者に対する積極的な抗菌薬投与による除菌については議論が別れています しかし 小児の集団生活施設においてA 群溶血性レンサ球菌咽頭炎が集団発生した場合 既に相当数の保菌者が潜在しているために 発症者に対する適正な治療を行いつつ飛沫感染対策や接触感染対策に努めても患者の発生を速やかに消失させることはしばしば困難を伴います 以下の様な状況においては 無症状保菌者に対する除菌を考慮すべきとの報告もあります ア )A 群溶血性レンサ球菌が集団発生しており かつリウマチ熱や急性糸球体腎炎が複

数例発生している場合 イ ) 適切な治療にもかかわらず 数週間に渡って同一の症例において複数回 A 群溶血性 レンサ球菌による咽頭炎が生じている場合 参照 : 1A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは. 国立感染症研究所ホームページ : http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/340-group-a-streptococcus-intro.html 2 坂田宏 : 小児科における咽頭炎 扁桃炎 :A 群溶連菌感染症を中心に. 口腔 咽頭科 23(1):11~16.2010 3 神吉耕三 : 予防投薬の適応と方法. 小児科診療 11(47):1677~1682.2000 4 日常診療に役立つ小児感染症マニュアル2007 改訂第 2 版. 日本小児感染症学会編 : 東京医学社 2006 年 11 月 15 日発行 5Control of Communicable Diseases Manual 19 th Edition. An official report of the American Public Health Association: 2008 6Communicable Disease Control and Health Protection Handbook the 3 rd Edition. Hawker J. MD., Begg N. MD., et al: Blackwell Publishing Ltd. 2012