自動走行と民事責任

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自動車事故に関する現行の法律の整理 交通事故時の法的責任およびその根拠法責任を負う個人 / 法人製品等責任責任根拠 自動車運転死傷行為処罰法刑事責任刑法運転者 - 道路交通法行政処分道路交通法 民法 事業者 運行供用者 - 運行供用者責任自動車損害賠償保障法 使用者 - 使用者責任民法 損害保険会社

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いても使用者責任が認められることがあります 他方 交通事故の原因が相手方の一方的な過失によるものであるなど 被用者に不法行為責任が発生しない場合には 使用者責任も発生しません イ 2 使用関係被用者との使用関係については 実質的な指揮監督関係があれば足りるとして広く解されており 正社員 アルバイト

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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資料 5 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 論点 3 CM 賠償責任保険制度のあり方 論点 2 CMR に求められる善管注意義務等の範囲 建築事業をベースに CMR の各段階に応じた業務内容 目的ならびに善管注意義務のポイントを整理 CM 契約における債務不履行責任において 善管注

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1 趣旨このガイドラインは 日本国内の公道 ( 道路交通法 ( 昭和 35 年法律第 105 号 ) 第 2 条第 1 項第 1 号に規定する 道路 をいう 以下同じ ) において 自動走行システム ( 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度に行い 又はその全てを行うシステムをいう 以下同じ ) を

はじめに 交通事故統計年報によると 交通事故発生件数及び死傷者数は年々減少傾向にあるが 自動車保険統計による保険金支払額は同様には減少していない 現在の交通事故対策は 警察統計による交通事故発生件数や死傷者数等の量的な値で評価し その値を減少させることを目的に行われているが 現状ではこの比較手法が必

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( 登録の審査及び登録 ) 第 7 条市長は, 前条の規定による申請を受けたときは, 第 5 条に規定する登録の要件を満たしていることを確認の上, 届出のあった情報を登録するものとする ( 登録情報の利用 ) 第 8 条市長は, 次に掲げる事由に該当するときは, 市民等の生涯学習活動を促進し, 又は

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記入例 様式 8 号の 1 第三者の行為による傷病届 国民健康保険用 平成 年 月 日 福岡市区長殿 世帯主 住所 氏名 電話 届出者の住所 届出者の氏名 届出者の電話番号 印 次のとおりお届けします 被保険者証記号 番号 被保険者 フリガナ 氏 発生日時 発生場所 名 福岡県庁前交差点 職業 法制

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エ加害行為と結果発生との間に因果関係があること行為と結果との間に相当因果関係があることが必要です これは Aの行為がなければBの結果が生じなかったという直接的な関係に限らず 一定の原因行為とそれなしには生じないと認められる結果とのつながりが 通常予想できる程度のものである場合も含みます ⑵ 特殊の不

報告書の利用についての注意 免責事項 本報告書は 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所が現地法律コンサルティング事務所 Clyde & Co LLP に作成委託し 2017 年 1 月に入手した情報に基づくものであり その後の法律改正などによって変わる場合があります 掲載した情報 コメン

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第三者行為による傷病届 交通事故用記入例 被害者 加 被保険者証記号番号 種別一般退職本人退職被扶養 氏名 氏名 住所 職業 被保険者の氏名を記入 ( 事故原因 過失の大小に関わらず 被保険者が被害者 相手が加害者になります ) 相手の氏名を記入 ( 年 月 日生 )

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とができます 4. 対象取引の範囲 第 1 項のポイント付与の具体的な条件 対象取引自体の条件は 各加盟店が定めます 5. ポイントサービスの利用終了 その他いかなる理由によっても 付与されたポイントを換金することはできません 第 4 条 ( 提携サービス ) 1. 提携サービスは 次のとおりです

自転車で走行中の事故 駅改札内の階段で転んでケガをした場合や建物火災に よるケガも対象 あいおい損保 トッププラン 1 2 犯罪被害事故を対象にする特約を用意 自動車事故以外の交通事故全般及び建物火災による死傷も対象とする特約を 用意 2 原付 単車に搭乗中の事故への拡張 三井住友海上 モスト は

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第 4 条公共の場所に向けて防犯カメラを設置しようとするもので次に掲げるものは, 規則で定めるところにより, 防犯カメラの設置及び運用に関する基準 ( 以下 設置運用基準 という ) を定めなければならない (1) 市 (2) 地方自治法 ( 昭和 22 年法律第 67 号 ) 第 260 条の2

5. 当社は 会員に対する事前の通知を行うことなく 本規約を変更できるものとします この場合 本サービスの提供等については 変更後の規約が適用されるものとします 6. 前項の場合 当社は変更前に又は変更後遅滞なく 変更後の本規約を本サイト上にて告知するものとします 第 4 条 ( 本サービスの利用料

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団体地方公務員賠償責任保険の特長 特長 その 1 補償対象期間が広い 過去の公務に対する訴訟が今 提起されても安心です 初年度契約の保険期間の開始日より前に行われた公務に起因する損害賠償請求が保険期間中になされた場 9.補償対象期間について を参照ください 合に補償の対象となります ただし 首長は除

消防業務賠償責任保険に関する Q&A 1 主契約について Q1 1: 再燃火災による事故も対象になるのですか? A1 1: 対象となります 但し あくまでも消防本部側に過失または重過失があり 賠償責任を負担するケースとなります 消防本部の過失認定は 極めて難しい判断を伴いますので 過去の判例や裁判所

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第 5 条自家用車を業務に使用することができる役職員は, 次の各号に該当する者とする (1) 第 6 条の申請時に引き続き 1 年以上自動車を日常的に運転している者 (2) 心身の状態が良好で安全の確保に不安がない者 ( 自家用車業務使用登録の申請 ) 第 6 条役職員が, 自家用車を業務に使用する

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Transcription:

自動走行と民事責任 早稲田大学名誉教授 浦川道太郎 平成 28 年度経済産業省 国土交通省委託事業 自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究 シンポジウム ( 開催 :2017 年 3 月 7 日東京 )

自動走行レベル 0~ レベル 5 民事責任 事故補償はどう変化するか? レベル 運転者が全てあるいは一部の運転タスクを実施 概要 安全運転に係る監視 対応主体 SAE レベル 0 運転自動化なし 運転者が全ての運転タスクを実施運転者 SAE レベル 1 運転支援 SAE レベル 2 部分運転自動化 システムが前後 左右のいずれかの車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 ( 例 : 自動ブレーキ 前方車追従 車線維持の機能を 1 つ有する ) システムが前後 左右の両方の車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施 ( 例 : 前方車追従 + 車線維持 ) 運転者 運転者 自動運転システムが全ての運転タスクを実施 SAE レベル 3 条件付運転自動化 SAE レベル 4 高度運転自動化 SAE レベル 5 完全運転自動化 システムが全ての運転タスクを実施 ( 領域 限定的 ) システムの介入要求等に対して 予備対応時利用者は 適切に応答することを期待 システムが全ての運転タスクを実施 ( 領域 限定的 ) 予備対応時において 利用者が応答することは期待されない システムが全ての運転タスクを実施 ( 領域 限定的ではない ) 予備対応時において 利用者が応答することは期待されない システム ( フォールハ ック中は運転者 ) システム システム ここでの 領域 は 必ずしも地理的な領域に限らず 環境 交通状況 速度 時間的な条件などを含む 自動運転レベルの定義 (SAE J3016 TM SEP2016) 概要 本内容はあくまで概要であり 詳細は SAE J3016 TM SEP2016 本文を参照する必要があります

Ⅰ. 自動車走行に関する責任

自動車損害賠償保障法 ( 自賠法 )3 条 ( 自動車損害賠償責任 ) 第 3 条自己のために自動車を運行の用に供する者は その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる ただし 自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは この限りでない

自賠法 3 条のルーツドイツ自動車交通法 (1909 年制定 )7 条の考え方 1) 自動車の運行に際して人を死亡させ 人の身体若しくは健康を毀損させ 又は物が損傷された場合には 自動車の保有者はこれによって生じた損害を被害者に対して賠償する義務を負う 2) 事故が自動車の性状における欠陥又は機能の障害に基づかない不可避の事変に起因する場合には 賠償義務は免除される 被害者 運行に関与していない第三者又は動物の行為に原因があり かつ 自動車の保有者も運転者も状況に応じて必要とされる注意を尽くしていた場合には とりわけ不可避の事変であると認められる

自動車 ( 危険物 ) のリスク 無過失責任保有者 ( 運行供用者 ) の責任運転手の運転ミス自動車の危険 ( 人と機械の自動車の爆発 炎上 ( 性状欠陥 機能障害 ) 複合的な危険 ) 運転ミス 性状欠陥機能障害

自動車 ( 危険物 ) のリスク 運行供用者の責任 運転のリスク システムのリスク 自動走行と対人事故の責任 運転者の状態 システム監視義務運転者の過失責任 (709 条 ) 運転者の運転過誤 ( 民法 709 条 ) 特定状況下運転者の責任 構造上の欠陥又は機能上の障害 ( 自動走行装置の欠陥 故障 ) ( 製造物責任法 3 条 ) 運転者の過失責任なし レベル 1~3 レベル 4 レベル 5 自賠法 3 条による運行供用者 ( 自動車保有者 ) の責任 現在 国土交通省の 自動運転における損害賠償責任に関する研究会 において検討が行われている

レベル 5 における民事責任 運転者の過失責任 0 運転者不在 運行供用者 ( 自動車保有者 ) の責任 残存する運行供用者の定義 = 運行支配 + 運行利益運行支配 目的地を定めて自動車の走行を開始 ( 交通の危険の作出 ) 運行利益 自動車使用による目的地への到達自動車の保守 管理上の義務を負担事故危険の減少 自動車保険料の低減の利益 自動車製造者の製造物責任 ( 製造物責任法 3 条 ) 増大する

民事責任と保険 ( 現在 = レベル 0) 1. 対第三者事故人損事故 ( 家族以外の同乗者を含む ) 責任根拠自動車保有者の責任 自賠法 3 条 ( 条件付無過失 危険責任 ) 自動車運転者の責任 民法 709 条 自賠責保険 ( 自賠法 11 条 [ 保有者 + 運転者の賠償責任を填補 ]) 自動車保険 ( 対人賠償保険 )( 自賠責を補強 ) 同乗者 ( 家族等 ) の人損事故責任根拠自動車保有者の責任 自賠法 3 条 ( 条件付無過失 危険責任 ) 自動車運転者の責任 民法 709 条 自賠責保険 + 自動車保険 ( 人身傷害保険 ( 旧 : 搭乗者傷害保険 )) 物損事故責任根拠自動車保有者 運転者の責任 民法 709 条など 自動車保険 ( 対物賠償保険 ) 2. 自損事故人損事故 自動車保険 ( 人身傷害保険 ( 旧 : 自損事故保険 ) など ) 物損事故 自動車保険 ( 車両保険 )

民事責任と保険 ( レベル 5) 1. 対第三者事故人損事故 ( 家族以外の同乗者を含む ) 責任根拠自動車保有者の責任 自賠法 3 条 ( 条件付無過失 危険責任 ) 自動車運転者の責任 民法 709 条 自賠責保険 ( 自賠法 11 条 [ 保有者 + 運転者の賠償責任を填補 ]) 自動車保険 ( 対人賠償保険 )( 自賠責を補強 ) 同乗者 ( 家族等 ) の人損事故責任根拠自動車保有者の責任 自賠法 3 条 ( 条件付無過失 危険責任 ) 自動車運転者の責任 民法 709 条 自賠責保険 + 自動車保険 ( 人身傷害保険 ( 旧 : 搭乗者傷害保険 )) 物損事故責任根拠自動車保有者 運転者の責任 民法 709 条など 自動車保険 ( 対物賠償保険 )? 2. 自損事故人損事故 自動車保険 ( 人身傷害保険 ( 旧 : 自損事故保険 ) など ) 物損事故 自動車保険 ( 車両保険 )

Ⅱ. 製造物責任

自動走行と事故の責任 運転者の状態 システム監視義務運転者の過失責任 (709 条 ) 特定状況下運転者の責任 運転者の過失責任なし システムのリスク 製造者の責任 運転者の運転過誤 ( 民法 709 条 ) レベル 1~3 レベル 4 レベル 5 構造上の欠陥又は機能上の障害 ( 自動走行装置の欠陥 故障 ) ( 製造物責任法 3 条 ) 製造物責任法 3 条による製造者 ( 自動車メーカー ) 等の責任

製造物責任法 3 条 ( 製造物責任 ) 第 3 条製造業者等は その製造 加工 輸入又は前条第 3 項第 2 号若しくは第 3 号の氏名等の表示をした製造物であって その引き渡したものの欠陥により他人の生命 身体又は財産を侵害したときは これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる ただし その損害が当該製造物についてのみ生じたときは この限りでない

製造物責任の問題点 (1) 自動走行車の欠陥 運転ソフトの欠陥が原因 ソフトの欠陥を製造物責任法 (PL 法 ) の対象範囲に含めることが可能か? 製造物の定義 = 製造又は加工された動産 (PL 法 2 条 1 項 ) 製造物 ( 自動車 ) と一体化したソフトの欠陥は自動車 ( 動産 ) の欠陥?

製造物責任の問題点 (2) 欠陥類型と製造物責任の責任主体 製造物責任法による責任 設計上の欠陥製造上の欠陥指示 警告上の欠陥 自動車メーカー 輸入業者の責任 民法 ( 契約責任 [415 条 ] 不法行為責任 [709 条 ]) による責任 ( 安全配慮義務?) 運転者に対する指示 警告 = 説明義務 ( レベル 1~3) 販売業者 レンタカー業者の責任

製造物責任の問題点 (3) 欠陥自動車事故による保護範囲 (PL 法 3 条 ) 人的損害欠陥車の同乗者 ( 運行供用者を含む ) と車外の第三者 (PL 法 3 条本文 ) 物的損害拡大損害 ( 損害が欠陥車のみに生じたときは賠償範囲に含まれない )(PL 法 3 条但書 )

製造物責任の問題点 (4) 設計上の欠陥の判断基準 通常有すべき安全性 [PL 法 2 条 2 項 ] としてどの程度が要求されるか 平均的運転者よりも安全な運転行動 危険状態の予見能力 危険状態の回避能力 平均的運転者の反応時間とシステムの反応時間との比較 EDR 等の利用

製造物責任の問題点 (5) 設計上の欠陥の判断時点 当該製造物を 引き渡した時期 (PL 法 2 条 2 項 )? 自動走行車の 製造物の特性 (PL 法 2 条 2 項 ) として 要求される運転ソフトのバージョン アップ 最終バージョン アップ時における欠陥判断

Ⅲ. 自動走行車の民事責任 と事故補償 ( 保険 )

自動走行車の民事責任の構造 ( 潜在的に ) 危険な製品を製造 + 危険物である自動車を公共交通に置く 自動車メーカー 製造物責任 (PL 法 3 条 ) 運行供用者 欠陥が証明できれば 運行供用者責任 ( 自賠法 3 条 ) 自動車交通事故 損害賠償請求権 事故被害者

運行供用者責任と製造物責任との関係 事故原因が自動車の欠陥にありながら 欠陥の立証が困難なために 運行供用者責任が製造物責任の肩代わりをする問題 ( レベル 5 に向かって問題が拡大 ) 事故被害者 損害賠償請求保険金請求 支払 運行供用者 自賠責 自動車保険 求償 支払 自動車メーカー 生産物賠償責任 (PL) 保険 一定割合の保険料負担 求償の容易化欠陥の推定 自動車製造物責任の因果的責任? EDR データによる事故原因分析 負担率の算定

物損事故の問題 レベル 4~5 における運転者の過失を想定し難い状況 人身事故を対象にした自賠法の限界 対物賠償保険の保護がなくなる問題 考えられる解決法 1) 自賠法の改正 運行によって他人の生命 身体又は物を害したとき ( 運行供用者責任の拡張 ) 2) 現行法の枠内での解決 被害者となる者の車両保険による対応 ( 被害者側の自衛の拡張 ) 3) 欠陥の証明責任の軽減による製造物責任追及の途 (EDR データの利用?)

ハッキング等走行支援システム の妨害 錯乱と事故損害の補償 レベル 4~5 における運行供用者責任 運転者責任を問えない問題 一義的には ハッカー等システム錯乱者の民法 709 条責任 上記責任追及ができない場合 1) 政府保障事業 ( 自賠法 72 条 ) 2) 製造物責任法 3 条の責任 ( ソフトの欠陥 ハッキング等システム錯乱に安全を確保できなかったソフトの欠陥 )