2. 事例 Q&A [1] 公的年金制度の仕組み Q. 私は昭和 37(1962) 生まれの男性で 現在 55 歳のサラリーマンです 何歳からどのような年 金が受け取れるのでしょうか A. 65 歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が それに加えて配偶者が 65 歳になるまで加給年金が 支給されます 確

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(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 15,250 円 ( 平成 26 年度 ) 付加保険料月額 400

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 16,490 円 ( 平成 29 年度 ) 付加保険料月額 400

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

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老齢基礎年金 老齢基礎年金を受けられる方 老齢基礎年金は 原則として受給資格期間が 25 年 (300 ヵ月 ) 以上ある方が 65 歳になったときから受けられます 受給資格を満たしているときは 本人の希望により 60 歳から 70 歳までの間で年金を受け始める年齢を変更することができます (17

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強制加入被保険者(法7) ケース1

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

現在公的年金を受けている方は その年金証書 ( 請求者及び配偶者 請求者名義の預金通帳 戸籍謄本 ( 受給権発生年月日以降のもの ) 請求者の住民票コードが記載されているもの ( お持ちの場合のみ ) 障害基礎年金 受給要件 障害基礎年金は 次の要件を満たしている方の障害 ( 初診日から1 年 6か

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ライフプランニングと資金計画 問題 1. ファイナンシャル プランナーの顧客に対する行為に関する次の記述のうち 職 業倫理や関連法規に照らし 最も適切なものはどれか 1. 税理士資格を有しないファイナンシャル プランナーが 住宅ローン相談セミナーを開催し その出席者に対して無償で確定申告書の作成代行

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第 7 章 年金 福祉 1 年金 日本の公的年金制度は, 予測できない将来へ備えるため, 社会全体で支える仕組みを基本としたものです 世代を超えて社会全体で支え合うことで給付を実現し, 生涯を通じた保障を実現するために必要です 働いている世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てるという方式で

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被用者年金一元化法

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A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

ただし 対象期間の翌年度から起算して3 年度目以降に追納する場合は 保険料に加算額が上乗せされます 保険料の免除や猶予を受けず保険料の未納の期間があると 1 年金額が減額される 2 年期を受給できない3 障害基礎年金や遺族基礎年金を請求できない 場合がありますのでご注意ください 全額または一部免除

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年金は 万が一のとき もしっかりサポートします! 一般的に 年金 と言いますと 老後の生活を支える 老齢年金 をイメージしますが それだけではありません! 年金には万が一のときに 障害厚生年金 や 遺族厚生年金 が支給される場合があります 障害厚生年金 病気やけがで障害の状態になったときは 厚生年金

2/5 ヘ ーシ Q1. 年金通算とは何ですか? A. これまで各企業や基金では 加入者の老後の安定の一助となるよう さまざまな年金制度をつくり運営してきました しかし 従来の終身雇用を前提とした制度では 現代のライフスタイルに対応することが難しくなってきています 転職など雇用の流動化に対応し これ

老齢基礎年金 老齢基礎年金は 国民年金の加入者であった方の老後の保障として給付され 65 歳になったときに支給されます 老齢基礎年金は 保険料納付済期間 ( 厚生年金保険や共済組合の加入期間を含む ) と保険料免除期間などを合算した資格期間が 10 年以上ある場合に 終身にわたって受け取ることができ

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再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

8-1 雇用保険 雇用保険の適用基準 1 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること 31 日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き この要件に該当することとなります このため 例えば 次の場合には 雇用契約期間が31 日未満であっても 原則として 31 日以上の雇用が見込まれるもの

しくみ2 厚生年金は基礎年金に上乗せ 厚生年金保険が適用されている事業所に勤めるサラリーマン等は 国民年金と厚生年金保険の2つの年金制度に加入することになります 厚生年金保険から支給される年金は 加入期間とその間の平均収入に応じて計算される報酬比例の年金となっていて 次のように基礎年金に上乗せするか

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年金支給開始年齢図 特別支給の ( 給料比例部分 ) 昭和 29 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 特別支給の退職共済年金 昭和 25 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 退職共済年金 経過的職域加算額 ( 旧職域部分 ) 退職等年金給付 ( 年金払い退職給付 ) 平成 27 年 9 月までの組合

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2.3.2 公的年金制度の財源と支出 1年間の年金給付費はいくらなのか 公的年金制度の財源には保険料のほかに 積立金の運用収入や税金などがある 1年間でどれだけの金額が年金制度に使われているのでしょうか 以下の図 に 公的年金制度の財源と給付費を示します 財源については 保険料による

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2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢


2 障害厚生年金障害厚生年金は次の1~3の条件すべてに該当する方が受給できます 1 障害の原因となった病気やケガの初診日 ( 1) が 厚生年金保険の被保険者である期間にあること 2 障害の原因となった病気やケガによる障害の程度が 障害認定日 ( 2) に法令により定められている障害等級表 ( 3)

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点及び 認定された日以降の年間の見込みの収入額のことをいいます ( 給与所得等の収入がある場合 月額 108,333 円以下 雇用保険等の受給者の場合 日額 3,611 円以下であること ) また 被扶養者の年間収入には 雇用保険の失業等給付 公的年金 健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます

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年金額の改定について 公的年金制度は平成 16 年の法改正により永久に年金財政を均衡させる従来の仕組みから おおむね ( 100 ) 年間で年金財政を均衡させる仕組みへと変わった この年金財政を均衡させる期間を 財政均衡期間 という これにより 政府は少なくとも ( 5 ) 年ごとに財政の検証をおこ

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平成25年4月から9月までの年金額は

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

Q1 社会保険とはどのような制度でしょうか 会社などで働く人たちが収入に応じて保険料を出し合い いざというときの生活の安定を図る目的でつくられた制度のことで 一般的に健康保険や厚生年金保険のことを 社会保険 といいます 健康保険法第 1 条では 労働者の業務外の事由による疾病 負傷若しくは死亡又は出

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31 Vol.105 わかりいただけたと思います では 地方公務員の皆さんが老後に受け取る年金はどのようなものでしょうか 図2 をご覧ください 共済年金制度から 退職共済年金 国民年金制度から 老齢基礎年金 と 二つの年金がそれぞれ共済組合と日本年金機構から支給されます 退職共済年金は 共済年金を含

(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

Ⅰ 改正について 児童扶養手当法の改正 Q&A ( 公的年金等と合わせて受給する場合 ) Q1 今回の改正の内容を教えてください A: 今回の改正により 公的年金等 * を受給していても その額が児童扶養手当の額 より低い場合には 差額分の手当が受給できるようになります 児童扶養手当 は 離婚などに

第9章 国民年金制度について

第 2 問問 4 2 < 遺族に必要な生活資金等の総額 > 生活費 30 万円 50% 12 カ月 29 年 =5,220 万円 死亡整理資金( 葬儀費用等 ) 200 万円 緊急予備資金 300 万円 住宅ローンについては団体信用生命保険に加入しているので計算に含めない合計 5,220 万円 +2

1. はじめに 自ら変わります 社会保険庁を変えます 社会保険庁ホームページ : 社会保険庁改革リスタートプラン より やるき化 プロジェクト あたりまえ化プロジェクト 見える化 プロジェクト きれい化 プロジェクト 2007/4/14 Copyright

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源泉徴収税額について 年金課年金給付担当 平成 28 年分公的年金等の源泉徴収票 をお送りしました 平成 28 年中に年金を受給された方に 平成 28 年分公的年金等の源泉徴収票 を 平成 29 年 1 月 12 日 ( 木 ) にお送りしました 今回下記のように様式が改正されております 裏面に記載

介護保険制度 介護保険料に関する Q&A 御前崎市高齢者支援課 平成 30 年 12 月 vol.1

T3-08-2_遺族基礎年金(2)_

一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

第 2 節強制被保険者 1 第 1 号被保険者頻出 択 ( 法 7 条 1 項 1 号 ) 資格要件 日本国内に住所を有する20 歳以上 60 歳未満の者 ( 第 2 号 第 3 号被保険者に該当する者を除く ) 例 ) 自営業者 農漁業従事者 無業者など 適用除外 被用者年金各法に基づく老齢又は退

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12 ページ, 図表 ,930 円 保険料納付済月数 + 全額免除月数 1/2+4 分の 3 免除月数 5/8+ 半額免除月数 3/4+4 分の 1 免除月数 7/8 ( 出所 ) 厚生労働省 老齢年金ガイド平成 2730 年度版 より筆者作成 40 年 ( 加入可能年数

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の合計 ( ただし 20 歳以上 60 歳未満の期間 ) なお 保険料免除期間がある場合 本人は保険料を支払っていなくても 一定の期間が分子に加算される A さんの場合 保険料納付済月数は 国民年金保険料納付済期間 35 月 + 厚生年金保険被 保険者期間 398 月 + 厚生年金保険被保険者期間

無年金・低年金の状況等について

上乗部分Q1. 基金制度のどの給付区分が分配金の対象となるのか A1 基金の給付区分は 国の厚生年金の一部を代行している 代行部分 と 基金独自の 上乗部分 から構成されています 代行部分は 解散により国に返還され 解散後は国から年金が支給されますので 分配金の対象となるのは基金独自の上乗部分となり

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MR通信H22年1月号

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年金制度について 31

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はじめに 1 掛金は毎月 1 日に引き落としいたします 国民年金基金にご加入いただきありがとうござい ます 国民年金基金は 自営業者などの国民年金の第 1 号被保険者の方々の多様化するニーズに応え より豊かな老後を過ごすことができるよう 国民年金 ( 老齢基礎年金 ) に上乗せした年金を受け取るため

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

基金からの支給に関する手続きのご案内

Transcription:

ViewPoint 営 公的年金制度に関する最近の事例 水野高太郎部東京室 老後のライフプランを考えるうえで 公的年金制度は 非常に重要な役割を果たしていますが その制度の内容を理解することは大変難しいものです 今回は みずほ総合研究所部に寄せられる事例を通して 公的年金の基礎を解説します 1. はじめに 公的年金制度は 現役世代の支払う保険料と国庫負担 ( 税金 ) により 安定的に運営されています ( 社会保険方式 ) 老後の収入面からの生活実態を見ると 高齢者世帯の 55.0% が公的年金や恩給のみで生活をしています ( 図 1) また 65 歳以上の高齢者世帯の平均所得 297.3 万円の 67.5% を公的年金が占めるなど 老後の生活における重要な柱となっています ( 図 2) 図 1 公的年金 恩給が総所得に占める割合 図 2 高齢者世帯の平均所得に占める公的年金の割合 20~40% 未満の世帯 [5.8%] 40~60% 未満の世帯 [11.5%] 20% 未満の世帯 [3.2%] 財産所得 [15.3 万円 /5.2%] 仕送り 企業年金 個人年金 その他 [16.6 万円 /5.6%] 公的年金 恩給以外の社会保障給付 [4.5 万円 /1.5%] 60~80% 未満の世帯 [11.5%] すべて公的年金 恩給の世帯 [55.0%] 稼働所得 [60.2 万円 /20.3%] 80~100% 未満の世帯 [13.0%] 公的年金 恩給 [200.6 万円 /67.5%] 資料 : 厚生労働省国民生活基礎調査 ( 平成 27 年 ) 1

2. 事例 Q&A [1] 公的年金制度の仕組み Q. 私は昭和 37(1962) 生まれの男性で 現在 55 歳のサラリーマンです 何歳からどのような年 金が受け取れるのでしょうか A. 65 歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金が それに加えて配偶者が 65 歳になるまで加給年金が 支給されます 確定拠出年金(個人型)金 階 わが国においてすべての国民は 国民年金に加入することになっています 厚生年金の被保険者 お よびその配偶者も国民年金の被保険者であり 厚生年金加入者であるサラリーマンや公務員などは 2 つの年金に同時に加入することになっていることから 2 階建て構造の公的年金制度 と呼ばれてい ます ( 図 3) 例えば 厚生年金に加入しているサラリーマンや公務員は 第 2 号被保険者 と呼ばれていますが 老齢 を事由とする年金を受け取る場合は 1 階部分の国民年金の老齢基礎年金と2 階部分の老齢厚 生年金を受け取ることとなります 保険料は 報酬額に応じて労使で折半して納付しています さらに 企業や個人の任意加入による企業年金や 厚生年金基金など公的年金に上乗せして受け取れる年金もあ ります 第 2 号被保険者に扶養されている配偶者は 第 3 号被保険者 と呼ばれ 保険料の負担はあり ません 2 階部分の老齢厚生年金は 加入期間が1カ月以上ある人が 65 歳から受け取ることができます なお 厚生年金については 男性は昭和 36 年 4 月 1 日以前に 女性は昭和 41 年 4 月 1 日以前に誕生日 のある人は 生年月日によ って 65 歳以前でも特別支 図 3 年金制度の体系 給の老齢厚生年金を受給することができます 厚生年金基金 加給年金は 厚生年金上乗国加入期間 20 年以上の年せ付民年加年金受給者に生計を維持さ金 年金れる 65 歳未満の配偶者 2 金基階 金 18 歳未満の子供 20 歳未 厚生年金 子からの年金額は各 1 満の1 級 2 級の障害をもつ子供がある場合には 基礎年 各 224,300 円 (3 人目の 国民年金 74,800 円 ) が加算されま す さらに配偶者特別加第 1 号被保険者第 2 号被保険者第 3 号被保険者算として 165,500 円が加 自営業者など サラリーマン 公務員 第 2 号被保険者の配偶者 算されます 2

[2] 年金の支給額 Q. 私は40 代のOLです 学校を卒業して以来 20 年間 厚生年金に加入してきました 将来 年金はいくらもらえますか A. 年金の支給額については 毎年 1 回 誕生月に届く年金定期便に 老齢年金の種類と1 年間の受取り見込額などが記載されていますので そちらでご確認ください 老齢基礎年金の支給額は 保険料を払った月数により決まりますが 老齢厚生年金の支給額は 加入した期間と その間の平均標準報酬月額等により決まります 標準報酬月額とは 被保険者が受け取る給与 ( 基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与 ) を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を 保険料や年金額の計算に用います 老齢厚生年金の支給額は 標準報酬月額などから計算された報酬比例部分と 下記計算式により計算された経過的加算に加え 該当する場合に支給される加給年金を合計したものとなります 標準報酬月額などは ねんきん定期便 (5ページ参照) で確認します 老齢基礎年金の計算式 ( 昭和 16 年 4 月 2 日以降生まれの人 ) 保険料納付済月数 4 分の1 納付半額納付全額免除月数月数月数 + + + 4/8 + 5/8 6/8 4 分の 3 納付月数 7/8 779,300 円 40 年 ( 加入可能年数 ) 12 カ月 経過的加算の計算式 1,652 円 生年月日に応じた乗率 (1~1.875) 被保険者期間月数 - 779,300 円 ( 上限 480カ月 ) 被保険者月数 加入可能年数 12 [3] セカンドライフプラン Q. 私は58 歳のサラリーマンです 私の会社は60 歳定年で 65 歳までは嘱託で雇用を継続してくれます また希望があれば70 歳まで働くことも可能です 年金について 繰り下げ受給 あるいは繰上げ受給という制度があると聞きましたが どのような制度でしょうか A. 65 歳から受け取る老齢基礎年金と老齢厚生年金について 一部 あるいは全部を1カ月単位で受給を早める あるいは遅らせることができる制度です 受給を早めることを 繰上げ受給 といい 1カ月繰上げるごとに0.5% が減額されます 一方 受給を遅らせることを 繰下げ受給 といい 1カ月繰下げるごとに0.7% が加算されます サラリーマンの場合は 60 歳定年で退職金をもらい 65 歳まで再雇用で働くケースが多いと思います この時に 受け取る退職金を一時金で受け取る方法と 60 歳から 70 歳まで 10 年確定給付年金で受け取る方法 あるいは一時金と年金の併用で受け取ることができるケースがあります ここで注意しなければならないのは 一時金で受け取る場合は 退職所得控除が使えますが 年金で 3

受け取る場合は 公的年金控除を差し引いた残りが雑所得として課税されます まずは 60 歳から 65 歳 65 歳から 70 歳 70 歳以降と3 段階に分けて 平均余命などを参考にして セカンドライフプランを考えるのがよいかと思います ライフプランを作成するときのコツは まず毎月の支出を固めることです 一方 収入については 実際に見込まれる収入を入れていきます そこで生じる過不足については 場合によっては現役世代から計画的に貯蓄する必要があります 退職金 年金の受取り方については 老齢基礎年金 老齢厚生年金を 70 歳まで繰下げたうえで 退職金の一部を所得税のかからない公的年金控除の範囲で年金形式で受給するのも1つの方法かと思います 繰上げ受給 繰下げ受給 最大 60 歳まで繰上げることができます 60 歳まで繰上げると減額率 30% となり 生涯減額された年金額が支給されることとなります 60 歳まで全額を繰上げた場合 76.6 歳以上長生きすると生涯で受け取れる年金受取額は 65 歳から受け取った場合に比べて少なくなります 最大 70 歳まで繰下げることができます 70 歳まで繰下げると 42% の増額率となり 生涯増額された年金を受給することとなります 最大 70 歳まで全額を繰下げた場合 82 歳以上長生きしないと生涯で受け取れる年金額は 65 歳より受け取った場合に比べて少なくなります なお繰下げ対象額は 働いている場合は在職老齢年金の仕組みを適用した場合に受け取れる金額であり 在職老齢年金が適用される前に支給される老齢厚生年金の全額ではありません [4] 遺族年金 Q. 老齢厚生年金を受給している夫が亡くなりました 遺族年金は受け取ることができますか なお 私は独身時代会社に勤務した経験があり 主人ほどではありませんが 厚生年金を受給しています また 私たち夫婦には未成年の子供はおりません A. 遺族厚生年金を受け取ることができます ただし 奥様自身が老齢厚生年金を受給している場合 遺族厚生年金は奥様の老齢厚生年金の額が支給停止となります 一家の生計を支えている人が万一死亡してしまったときに 失う収入を公的に補うものとして 遺族年金 があります 遺族年金 も 2 階建てとなっており 遺族基礎年金 (1 階部分 ) は国民年金から 遺族厚生年金 (2 階部分 ) は 厚生年金保険から支給されます 遺族基礎年金は 被保険者または受給資格期間が 25 年以上ある人が亡くなったときに 18 歳到達年度の末日を経過していない子 あるいは 20 歳未満で障害年金の障害等級 1 級または2 級の子を持つ配偶者に支給されます 遺族厚生年金は 被保険者が死亡したとき 老齢厚生年金の受給資格期間が 25 年以上ある者が死亡したとき あるいは1 級 2 級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したときに遺族に支給されます 遺族とは 配偶者 子供 父母 孫 祖父母で 妻は年齢に関係なく遺族となります 遺族年金は 1 死亡した人が確かに保険料を納付していたこと ( 保険料納付要件 ) と 2 遺族が死亡した人により生計を維持されていたこと ( 生計維持要件 ) という 遺族の受給要件の両方が充たさ 4

れた場合に支給されます 保険料の未納がある場合は 保険料納付要件を充たせず 遺族年金が支給されないケースもあります したがって 失業して収入がない期間など保険料の納付が困難な場合は 保険料免除の申請 ( 免除申請 ) をしておくことが肝要です この免除申請をしておかないと 保険料の納付を怠っていたとして保険料 未納と扱われることになるので十分に留意する必要があります 65 歳以上の遺族厚生年金の受給権者が 自身の老齢厚生年 自身の年金 遺族年金 金の受給権がある場合は 自身 年遺金族 支給 の老齢厚生年金が全額支給と厚支給停止老齢厚生年金生なり 遺族厚生年金は 老齢厚 ( 老齢厚生年金の相当額 ) 生年金をに相当する額が支給 停止となります 老齢基礎年金 遺族基礎年金 ねんきん定期期便の見方 国民年金 厚生年金に加入している人に 1 年に一度 誕生月に年金制度の加入記録などが記された ねんきん定期便 が郵送されます その内容は以下のとおりです 1 35 歳 45 歳 59 歳の人節目となる 35 歳 45 歳 59 歳を迎える年には 大型の封筒に入った年金定期便が届きます 封筒を開くと 1 これまでの年金加入期間 2 加入実績に応じた年金額 (35 歳 45 歳 ) 老齢年金の見込み額 (59 歳 ) 3 年金加入歴 4 これまでの標準報酬月額と納付保険料などが記されています 2 上記 1 以外の人シール式のハガキが届きます ハガキを開くと 1 これまでの年金加入期間 2 加入実績に応じた年金額 (50 歳未満 ) 老齢年金の見込み額 (50 歳以上 ) 3 これまでの納付保険料額 4 最近の月別の加入状況などが記されています 年金定期便が届いたら 年金の加入歴を十分に確認しましょう 万一 記録に漏れや誤りがあったら 同封されている年金加入記録回答票を提出するか 最寄りの年金事務所にするとよいでしょう 内容は 2018 年 3 月 19 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にごください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所部東京室 03-3591-7077 / 大阪室 06-6226-1701 https://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5