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1. 研究開始当初の背景中学 高校生において性行動の活発化 低年齢化が進んでいる 2006 年に日本性教育協会が取り纏めた第 6 回 青少年の性行動全国調査 報告書によれば 1990 年代に入って 性交経験率は高校生において大幅な増加を示したことが報告されている こうした性行動の活発化 低年齢化に伴い 高校生の性感染症や 10 代の妊娠や性被害などの問題の深刻化が指摘されている ( 母子保健の主なる統計 2006) 例えば 10 代の性感染症罹患率や妊娠中絶実施率は わずかながら減少傾向を示しているものの 依然としてその率は少ないとはいえない状況にある また インターネットや携帯電話の普及に伴い 高校生がこれらのツールを利用する機会が増加し それにともない性被害に巻き込まれるといった事例も数多く報告されている このような背景のもと 中学 高校生を対象とした性教育においては従来の知識伝達型の教育ではなく 各自が自身の生活状況に即して最善の判断 決定ができるようなスキルの習得を目指した教育が模索されている 本研究では 健康に関する情報を批判的に吟味し 正しく理解し 活用することができる能力であるヘルスリテラシー (Health Literacy: HL) に着目し その測定とヘルスリテラシーの向上を目標とした教育プログラムを考案することを目的とした ヘルスリテラシーの測定は難題とされるが 妥当性 信頼性を備えた測定尺度の開発が強く望まれている 米国においては すでに Williams らによって 成人の機能的ヘルスリテラシー検査 (TOFHLA) が開発されている 1) また わが国では渡邉が NHES (National Health Education Standards) に基づき ヘルスリテラシー尺度を作成し大学 生を対象に調査を実施している 2) 本研究では これまでのヘルスリテラシーに関する先行研究の成果と中高生を対象とした性成熟に関する意識についての我々のこれまでの研究結果を参考に 思春期のセクシュアル ヘルスに特化した内容をもつセクシュアル ヘルスリテラシーを考案した セクシュアル ヘルスリテラシーは 性に関する情報へアクセスし 理解し 活用するための動機と自信および能力 と暫定的に定義した 2. 研究の目的本研究は 世界保健機関 (WHO) によって提唱され Nutbeam(2000) 3) によって健康教育の重要な効果指標として位置づけられたヘルスリテラシー概念に着目し 高校生に対する性教育の効果指標としてのセクシュアル ヘルスリテラシー概念を定義し その測定尺度を開発することおよびセクシュアル ヘルスリテラシーの向上にむけた性教育プログラムを開発することを目的とした 3. 研究の方法第 1 段階として セクシュアル ヘルスリテラシーを 性に関する情報へアクセスし 理解し 活用するための動機と自信および能力 と暫定的に定義し これまでの研究成果の整理と 既存の尺度の検討等を踏まえ セクシュアル ヘルスリテラシーを 機能的リテラシー 相互作用的リテラシー 批判的リテラシー の 3 つの側面から把握するための準備項目を収集 作成した 第 2 段階として 作成された項目を用いて調査を実施し セクシュアル ヘルスリテラシー尺度の信頼性と妥当性の検証をおこなった 第 3 段階として セクシュアル ヘルスリテラシーの向上を目標とする性教育プログラムを検討した

4. 研究成果 (1) セクシュアル ヘルスリテラシー尺度の開発に関する研究 1 高校生のセクシュアル ヘルスリテラシ ー測定尺度の開発に関する予備的研究 目的 本研究では 深刻化する思春期のセクシュアル ヘルスの問題に特化したセクシュアル ヘルスリテラシー概念を考案し それを測定するための予備的尺度を開発することを目的とした 方法 調査対象は A 県内の高校 1 校に在籍する1~3 年生 672 名とした 対象者には無記名 自記式の質問紙を配布し 添付の封筒に厳封 提出してもらい 回収した 測定尺度をNutbeam(2000) の提唱するヘルスリテラシーの3 要素 ( 機能的リテラシー 批判的リテラシー 相互作用的リテラシー ) をそれぞれ反映すると思われる23 項目で構成した データの集計および分析には 記述統計 信頼性分析 因子分析 一元配置分散分析を用いた 統計解析ソフトはSPSS ver16.0jを用いた 結果 回収された 413 名の調査票 ( 回収率 61.4%) のうち 各調査項目において欠損のない 322 名のデータを使用した 性別構成は 男子 110 名 (34.2%) 女子 212 名 (65.8%) 学年の構成は 1 年生が 112 名 (34.8%) 2 年生が 107 名 (33.2%) 3 年生が 103 名 (32.0%) であった 項目分析の結果 セクシュアル ヘルスリテラシーに関する項目の回答分布に著しい偏りはみられなかった また 信頼性分析の結果 項目 - 全体相関が低い項目はみられなかった 24 項目を用いた因子分析の結果 当初仮定した通りの 3 因子 機能的リテラシー 批判的リテラシー 相互作用的リテラシー が抽出された 各尺度得点と性別 学年 性感染症 妊娠を心配した経験の有無 過去 現在の交際経験の関連を検討したところ 相互作用的および機能的リテラシ ーについて解釈可能な関連が認められた 考察 本研究の結果より SHL 尺度の下位尺度である 相互作用的リテラシー 機能的リテラシー 尺度については一定の信頼性 妥当性を有することが示唆された 今後は 性に関する態度や知識等との関連をみていくことにより 本尺度の妥当性 特に批判的リテラシー尺度についてさらに検討していく必要性が示唆された 2 高校生向けセクシュアル ヘルスリテラシー尺度の開発 目的 本研究の目的は 高校生の 性に関する情報を批判的に吟味し 正しく理解し 活用することができる能力であるセクシュアル ヘルスリテラシー (SHL) を測定するための尺度を開発し その信頼性と妥当性を検討することである 対象と方法 A 県内の 5 校の高等学校に在籍する 1~3 年生 1361 名を対象に 無記名 自記式の質問紙を配布し添付の封筒に厳封のうえ回収した その結果 SHL 性に関する知識 性に関する効力感 妊娠を心配した経験 性感染症を心配した経験の調査項目欠損のない 801 名のデータを得た 収集されたデータに基づき 本尺度の内的整合性 因子的妥当性と因子不変性 構成概念妥当性をそれぞれ検討した 統計解析ソフトは SPSS ver16.0j および Amos16.0 を用いた 結果 回収された調査票のうち 各調査項目において欠損のない 801 名のデータを使用した 性別構成は 男子 361 名 (45.1%) 女子 440 名 (54.9%) 学年の構成は 1 年生が 291 名 (36.3%) 2 年生が 241 名 (30.0%) 3 年生が 269 名 (33.0%) であった 確認的因子分析の結果 Nutbeam らによって仮定された 3 つの因子 ( 機能的リテラシー 相互作用的リテラシー 批判的リテラシー ) から構成される本尺度の 3 因

子 1 次因子構造モデルのデータに対する適合 度は高く 因子的妥当性が支持された また 男女間 学年間の多母集団同時因子分析の結果 本尺度の因子不変性を支持する結果を得た 本尺度で測定された SHL と性に関する知識 性に関する効力感 妊娠を心配した経験 性感染症を心配した経験のあいだにはそれぞれ理論的に予測された関連が認められ 本尺度の構成概念妥当性をおおむね支持する結果が得られた 結論 本研究の結果は 開発されたセクシュアル ヘルスリテラシー尺度がおおむね許容しうる信頼性および妥当性を有していることを裏付ける結果であった ただし 本研究ではセクシュアル ヘルスリテラシー得点と性感染症の心配 望まぬ妊娠の心配とのあいだに理論的に予測された関連が観察されなかった 本研究は横断研究であるため この点について詳細な分析は不可能である この点については 今後 コホート研究デザインに基づき セクシュアル ヘルスリテラシー尺度の得点が将来の望まぬ妊娠や性感染症の発生を十分に予測できるか否かを検討することが課題である (2) セクシュアル ヘルスリテラシーと性に関する知識 効力感との関連 目的 性に関する情報を批判的に吟味し 正しく理解し 活用することができる能力を高める必要性が求められている 我々はこうした能力をセクシュアル ヘルスリテラシー (Sexual Health Literacy) として捉え 先行研究において それを測定するための尺度を開発した 本研究では その概念の理解を深めるために 我々が開発した尺度を用いて セクシュアル ヘルスリテラシーと性に関する知識の関連を明らかにすることを目的とした 方法 調査対象は A 県内の高校 1 校に在籍する 1~3 年生 672 名とした 対象者には 無記名 自記式の質問紙を配布し添付の封筒に厳封のうえ回収した 調査項目は 性別 学年 セクシュアル ヘルスリテラシー 性に関する知識とした セクシュアル ヘルスリテラシーは 我々が開発したセクシュアル ヘルスリテラシー尺度を用いて測定した 信頼性と妥当性をすでに報告したとおりである 性に関する知識は 先行研究をもとに作成した 15 の正誤問題を課すことで測定した データの集計および分析には 記述統計 一元配置分散分析 相関分析を用いた 統計解析ソフトは SPSS ver16j を用いた 結果 配布した 627 名の調査票のうち 各調査項目において欠損のない 413 名 ( 有効回答率 65.3%) を分析対象とした 性別構成は 男子 124 名 (32.8%) 女子 254 名 (67.2%) 不明 35 名 学年の構成は 1 年生が 134 名 2 年生が 119 名 3 年生が 122 名 不明 38 名であった 性に関する知識の正答率の低かった問題は 男子で 一般的に 女性の月経周期は 25~30 日周期で3~7 日間持続する (25.0%) 性感染症は若い人ほど感染率が高い (29.8%) 女子で 性感染症は若い人ほど感染率が高い (36.3%) 子宮は 卵子を排卵させる機能がある (46.3%) であった 男女間の正答率に有意な差がみられた問題は たった一回の性的接触でも性感染症になることがある 性感染症はピルで予防できる 一般的に 女性の月経周期は 25~30 日周期で 3~7 日間持続する であった SHL 尺度の得点の平均値は 相互作用的リテラシーが 18.7±7.2 点 批判的リテラシーが 16.7±5.1 点 機能的リテラシーが 20.27±6.4 点であった 性別では 相互作用リテラシーが男子よりも女子が有意に高かった (p=0.013) 学年別では

3 年生が 1 年生より有意に高く (p<0.001) 3 年生が 2 年生より有意な差があった (p<0.001) また 相関分析の結果 男女共に機能的リテラシーと性に関する知識に相関がみられた 男子では speamanρ=0.24 (p=.008) 女子では speamanρ=0.15(p =.015) であった 考察 性に関する知識とセクシュアル ヘルスリテラシーの一側面である機能的リテラシーのあいだに有意な関連がみられたが 相互作用的リテラシーおよび批判的リテラシーとのあいだには有意な関連はみられなかった このことから これまでの知識導入型の教育では 機能的リテラシーの向上は期待できるが 相互作用的 批判的リテラシーの向上にはつながらない可能性が考えられる したがって 今後は 知識のみならず 相互作用的リテラシー 批判的リテラシーを向上させるような教育や働きかけが必要であることが示唆された (3) 高校生の性に関する保健行動効力感と性の健康 目的 思春期のセクシュアル ヘルスを向上するためには 性に関する正しい知識を得ることは重要である また さまざまな教育プログラムでは性に関する知識のみならず スキルの教育にも重点がおかれている しかしながら 性に関する自己効力感に視点を当てた教育が少ないのが現状である そこで本研究では 性に関する自己効力感に注目をし 高校生の性に関する保健行動の効力感をあげるプログラムを開発する目的で調査を行った 方法 対象は A 県内の高校 1 校に在籍する 1~3 年生 672 名とした 調査項目は 性別 学年 過去 現在の交際経験の有無 性感染症の心配の経験 妊娠の心配の経験 性に関する保健行動の効力感とした 性に関する保健行動効力感は 先行文献を参考に独自に作成した尺度を用いて測定した 下位尺 度は 拒否 ネゴシエーション コンドーム利用 で構成した 分析は 記述統計 一元配置分散分析 カイ2 乗検定を用いた 統計解析ソフトは SPSS ver16j を用いた 結果 配布した 627 名の調査票のうち 413 名 ( 有効回答率 65.3%) を分析対象とした 性別構成は 男子 32.8% 女子 67.2% 学年の構成は 1 年生が 36% 2 年生が 32% 3 年生が 32% であった 妊娠の心配をした人の性別 学年別割合は 男女共に学年が上がるにつれて大きくなる傾向が示された 性感染症の心配の経験は 学年が上がるにつれて大きくなっていたが有意な差はみられなかった ネゴシエーション コンドーム利用 に関する効力感得点は男女間で差がなかった 学年別効力感得点は コンドーム利用 得点で学年が上がるほど高い結果であった 効力感と妊娠を心配した経験 性感染症を心配した経験を低群 高群でカイ 2 乗検定を用いて比較をした結果 女子において 拒否 得点が低いほど妊娠を心配した経験のあるものが多くみられた 考察 性感染症の心配の経験は 学年があがるとともに増加することが明らかになった 心配を感じる年齢に達するまでの予防教育が重要であることが示唆された また 性に関する保健行動の効力感の ネゴシエーション 拒否 の得点に関しては学年では差がみられず コンドーム利用 は学年があがるにつれて上昇していた 今後は コミュニケーション能力に焦点をあてた教育の必要性があると思われる また男女での比較から 女子の 拒否 効力感が低いことに男女の違いを理解した教育の必要性が示唆された (4) セクシュアル ヘルスリテラシーの向上にむけた性教育プログラムの開発プログラム開発を行うに当たって 上記

SHL 項目の度数分布を概観した 高校生 1 生から 3 年生の 801 名の調査では 機能的 SHL である 性教育で使用する教材などにおいて 内容が難しい 文章や文字の意味がわからない 項目は生徒があてはまると答えており また 批判的 SHL の項目おいてあてはまらないと答えていた 情報源がどこからか調べた どのように集められた情報か確認した は半数の生徒があてはまらないと回答し くわえて 相互作用的 SHL の項目では 必要であればうまく医療機関や専門家を訪ねることができた 誰かに相談することが出来た が半数はあてはまらないと答えていた このように 性教育の教材や情報などは 読解の難しいものが多く 情報の吟味が行われないことが多いこと 相談や受診につながる行動ができにくいことが明らかとなった また 性に関する知識と SHL の研究においては 機能的リテラシーが SHL と関係しており 読解力を高める教育が必要性が示唆された OECD 生徒の学習到達度の 2009 年度の調査において わが国は 総合読解力 は 8 位で高い能力を示している この読解力を高めるプロセスとして 情報の取り出し 解釈 熟考 評価がある 本プログラムにおいては 十分な性教育の時間を持ちにくい高校生に これらの読解のプロセスを組み入れ性に関する健康と権利のドリル学習や 批判的な SHL に関する教育としてのメディアリテラシー教育や科学的根拠に基づいた広告やリーフレットなどの分析などを組み入れること また これまでの研究において 相互リテラシーの高い生徒に妊娠や性感染症の心配をしている生徒が多いことから 状況の設定や事例の提示など 具体的に考える機会 ロールプレーやピアサポート ライフスキルトレーニングなどを構成することを本プログラムの構 て報告会を行った 具体的な教材化と介入を行う予定である 1)Williams MV, Parker RM, Baker DW, et al. Inadequate functional health literacy among patients at two public hospitals JAMA 1995; 274: 1677-168 2) 渡邉正樹. 健康リテラシーの概念と評価. 日本保健医療行動科学年報 2001; 16:185-190.2. 3)Nutbeam D. Health literacy as a public Health goal: a challenge for contemporary health education and communication strategies into the 21th century. Health Promotion International. 2000; 15: 1-2. 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 学会発表 ( 計 4 件 ) 1 富岡美佳 田村裕子 思春期の子どものセクシュアル ヘルスに関する親の不安と親子間コミュニケーション 第 57 回日本学校保健学会 2010 年 11 月 27 日 坂戸 2 富岡美佳 田村裕子 高校生の性に関する保健行動効力感と性の健康 第 69 回公衆衛生学会 2010 年 10 月 29 日 東京 3 富岡美佳 高校生のセクシュアル ヘルスリテラシーと性に関する知識の関係 第 36 回日本看護研究学会 2010 年 8 月 22 日, 岡山 4 富岡美佳 高校生のセクシュアル ヘルスリテラシー測定尺度の開発に関する予備的研究 2010 年 3 月 7 日 香川 : 6. 研究組織 (1) 研究代表者富岡美佳 (TOMIOKA MIKA ) 研究者番号 :30441398 (2) 研究分担者 ( ) 研究者番号 : (3) 連携研究者 ( ) 研究者番号 : 成要素として高等学校教員と関係者に向け