<4D F736F F D C668DDA97705F B382AB82AA82AF936EE7B C91E D A81768CB48D A6D92E894C F08BD682A082E8816A202D B2E444F4358>

Similar documents
< 研究の背景と経緯 > 半導体製造技術により 生体分子と親和性の高いマイクロチップが開発され それらを基盤とした革新的なバイオ分析技術が実現しています その中でも デジタルバイオ計測は マイクロチップを利用して 1 個の生体分子から機能や物性を高感度かつ定量的に計注測できる手法であり Digita

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

報道発表資料 2008 年 11 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 メタン酸化反応で生成する分子の散乱状態を可視化 複数の反応経路を観測 - メタンと酸素原子の反応は 挿入 引き抜き のどっち? に結論 - ポイント 成層圏における酸素原子とメタンの化学反応を実験室で再現 メタン酸化反応で生成

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム


法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

記者発表資料

PowerPoint プレゼンテーション

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

Microsoft Word - _博士後期_②和文要旨.doc

A4パンフ

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

<4D F736F F D BE391E58B4C8ED2834E C8CA48B8690AC89CA F88E490E690B62E646F63>

PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

平成 28 年 9 月 16 日 離れた細胞間の物質輸送やシグナル伝達を担う脂質膜ナノチューブの形成を誘導する仕組み 1. 発表のポイント : 離れた細胞間の物質輸送やシグナル伝達を担う脂質膜ナノチューブ (Tunneling nanotube TNT) の形成を誘導するタンパク質 M-Sec の立

発電単価 [JPY/kWh] 差が大きい ピークシフトによる経済的価値が大きい Time 0 時 23 時 30 分 発電単価 [JPY/kWh] 差が小さい ピークシフトしても経済的価値

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

Microsoft Word 「ERATO河岡先生(東大)」原稿(確定版:解禁あり)-1

平成 30 年 8 月 6 日 報道機関各位 東京工業大学 東北大学 日本工業大学 高出力な全固体電池で超高速充放電を実現全固体電池の実用化に向けて大きな一歩 要点 5V 程度の高電圧を発生する全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現 14 ma/cm 2 の高い電流密度での超高速充放電が可能に 界面形


2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

化学の力で見たい細胞だけを光らせる - 遺伝学 脳科学に有用な画期的技術の開発 - 1. 発表者 : 浦野泰照 ( 東京大学大学院薬学系研究科薬品代謝化学教室教授 / 大学院医学系研究科生体物理医学専攻生体情報学分野 ( 兼担 )) 神谷真子 ( 東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻生体情報学

<4D F736F F D B82C982C282A282C482512E646F63>

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

<4D F736F F D F D F095AA89F082CC82B582AD82DD202E646F63>

受精に関わる精子融合因子 IZUMO1 と卵子受容体 JUNO の認識機構を解明 1. 発表者 : 大戸梅治 ( 東京大学大学院薬学系研究科准教授 ) 石田英子 ( 東京大学大学院薬学系研究科特任研究員 ) 清水敏之 ( 東京大学大学院薬学系研究科教授 ) 井上直和 ( 福島県立医科大学医学部附属生

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

報道発表資料 2004 年 9 月 6 日 独立行政法人理化学研究所 記憶形成における神経回路の形態変化の観察に成功 - クラゲの蛍光蛋白で神経細胞のつなぎ目を色づけ - 独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) マサチューセッツ工科大学 (Charles M. Vest 総長 ) は記憶形

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

平成24年7月x日

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

令和元年 6 月 4 日 科学技術振興機構 (JST) 北 海 道 大 学 名 古 屋 大 学 東 京 理 科 大 学 電力使用量を調整する経済的価値を明らかに ~ 発電コストの時間変動に着目した解析 制御技術を開発 ~ ポイント 電力需要ピーク時に電力使用量を調整するデマンドレスポンスは その経済

untitled

PowerPoint プレゼンテーション

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

(修正)資料1_野地PM_研究開発プログラム説明資料(提出版)ver4_2_2 (1)

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

第6号-2/8)最前線(大矢)

1-4. 免疫抗体染色 抗体とは何かリンパ球 (B 細胞 ) が作る物質 特定の ( タンパク質 ) 分子に結合する 体の中に侵入してきた病原菌や毒素に結合して 破壊したり 無毒化したりする作用を持っている 例 : 抗血清馬などに蛇毒を注射し 蛇毒に対する抗体を作らせたもの マムシなどの毒蛇にかまれ

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

Gifu University Faculty of Engineering

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

報道発表資料 2002 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 局所刺激による細胞内シグナルの伝播メカニズムを解明 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 細胞の局所刺激で生じたシグナルが 刺激部位に留まるのか 細胞全体に伝播するのか という生物学における基本問題に対して 明確な解答を与えま

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

生物時計の安定性の秘密を解明

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D DC58F49288A6D92E A96C E837C AA8E714C41472D3382C982E682E996C D90A78B408D5C82F089F096BE E646F6378>

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 研究報告書(崇城大-岡).doc

報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

Microsoft Word CREST中山(確定版)

世界初! 細胞内の線維を切るハサミの機構を解明 この度 名古屋大学大学院理学研究科の成田哲博准教授らの研究グループは 大阪大学 東海学院大学 豊田理化学研究所との共同研究で 細胞内で最もメジャーな線維であるアクチン線維を切断 分解する機構をクライオ電子顕微鏡法注 1) による構造解析によって解明する

報道発表資料 2006 年 6 月 5 日 独立行政法人理化学研究所 独立行政法人科学技術振興機構 カルシウム振動が生み出されるメカニズムを説明する新たな知見 - 細胞内の IP3 の緩やかな蓄積がカルシウム振動に大きく関与 - ポイント 細胞内のイノシトール三リン酸(IP3) を高効率で可視化可能

報道機関各位 2017 年 8 月 7 日 東北大学大学院医学系研究科 がん分子標的薬の効果を投薬前に高精度で診断する方法の開発 - 格段に明るく光るナノ粒子を利用した高感度定量イメージング - 研究のポイント がんの組織診断において 投薬効果や予後の診断の感度 精度 定量性を上げるための新しい検査

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

Microsoft Word - 01.doc

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

遺伝子組み換えを使わない簡便な花粉管の遺伝子制御法の開発-育種や農業分野への応用に期待-

創薬に繋がる V-ATPase の構造 機能の解明 Towards structure-based design of novel inhibitors for V-ATPase 京都大学医学研究科 / 理化学研究所 SSBC 村田武士 < 要旨 > V-ATPase は 真核生物の空胞系膜に存在す

背景 近年, コンピューター, タブレット, コンタクトレンズなどの使用増加に伴い, 国民の約 10 人に 1 人がドライアイだと言われています ドライアイの防止に必要な涙 ( 涙液 ) は水だけでできていると思われがちですが, 実は脂質層 ( 油層 ), 水層, ムチン層の三層で形成されています

ポイント 微生物細胞から生える細い毛を 無傷のまま効率的に切断 回収する新手法を考案しました 新手法では 蛋白質を切断するプロテアーゼという酵素の一種を利用します 特殊なアミノ酸配列だけを認識して切断する特異性の高いプロテアーゼに着目し この酵素の認識 切断部位を毛の根元に導入するために 蛋白質の設

16K14278 研究成果報告書

平成14年度研究報告

KASEAA 52(1) (2014)

記 者 発 表(予 定)

植物が花粉管の誘引を停止するメカニズムを発見

<4D F736F F D208DC58F498A6D92E88CB48D652D8B4C8ED289EF8CA992CA926D2E646F63>

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

論文の内容の要旨

学位論文の要約

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

80_表1-4

RN201610_cs5_fin2.indd

報道関係者各位 平成 24 年 4 月 13 日 筑波大学 ナノ材料で Cs( セシウム ) イオンを結晶中に捕獲 研究成果のポイント : 放射性セシウム除染の切り札になりうる成果セシウムイオンを効率的にナノ空間 ナノの檻にぴったり収容して捕獲 除去 国立大学法人筑波大学 学長山田信博 ( 以下 筑

報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02.docx

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

e - カーボンブラック Pt 触媒 プロトン導電膜 H 2 厚さ = 数 10μm H + O 2 H 2 O 拡散層 触媒層 高分子 電解質 触媒層 拡散層 マイクロポーラス層 マイクロポーラス層 ガス拡散電極バイポーラープレート ガス拡散電極バイポーラープレート 1 1~ 50nm 0.1~1

スライド 1

Transcription:

平成 3 0 年 3 月 5 日 科学技術振興機構 (JST) 東京大学日本医療研究開発機構 (AMED) 膜たんぱく質が脂質を輸送する過程を 1 分子単位で超高感度検出 ~ マイクロチップ技術が実現する 膜たんぱく質機能解析 の新展開 ~ ポイント 膜たんぱく質による脂質の輸送はさまざまな生理機能に関与しており その活性を計測する方法の高感度化と定量化が求められていたが 技術的な障壁があった 新たなマイクロチップ技術の開発により 計測感度が従来法の約 100 倍に向上した 創薬候補および薬剤標的を効率的に探索する基盤技術とした応用研究が期待できる JST 戦略的創造研究推進事業において 東京大学大学院工学系研究科の渡邉力也講師 大阪大学免疫学フロンティア研究センターの長田重一栄誉教授の研究グ 1) ループは 膜たんぱく質による脂質輸送の計測感度を従来のリポソーム法注と比べて約 100 倍に向上させる超高感度計測技術を開発し 脂質の輸送過程を1 分子単位で定量計測することに成功しました 膜たんぱく質は細胞膜上にあり 情報伝達やエネルギー合成などの重要な役割を担っているたんぱく質です 膜たんぱく質は医薬品の標的として知られており 中でも物質を輸送する膜たんぱく質は 近年特に注目されている薬剤標的です 従来 物質を輸送する膜たんぱく質を創薬の標的とするため イオンなどの親水性分子の輸送に関して 高感度に計測する手法が多数開発されてきました しかし 細胞膜を構成するリン脂質分子そのものの輸送を計測するには技術的な障壁があり これまで計測の高感度化と定量化を実現することは極めて困難でした 本研究グループは検出感度や定量性の向上のため 1リン脂質分子の輸送を検出する 2) ための微小な人工生体膜注を高度に集積化したマイクロチップ 2 生体膜上のリン脂質組成を非対称化する光操作技術 3これらを組み合わせた脂質輸送の超高感度計測技術を確立しました 現在までに 哺乳類由来の脂質輸送たんぱく質であるTMEM16 注 3) F の働きを1 分子単位で計測できるほどの高感度化を実現することに世界で初めて成功し 従来のリポソーム法の約 100 倍の超高感度でリン脂質分子の輸送を計測することを可能にしました 今回開発されたマイクロチップ技術は リン脂質分子を輸送する膜たんぱく質を標的とした創薬候補を効率的に探索する上で最適な基盤技術になることが期待されます なお 本研究の一部は 東京大学の野地博行教授 大阪大学の櫻木嵩晴大学院生と共同で行ったものです 本研究成果は 2018 年 3 月 5 日の週 ( 米国東部時間 ) に 米国科学アカデミー紀要 (PNAS) のオンライン版で公開されました 1

本成果は 以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました JST 戦略的創造研究推進事業個人型研究 ( さきがけ ) 研究領域 : ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術 ( 研究総括 : 若槻壮市米国 SLAC 国立加速器研究所光科学部門教授 / スタンフォード大学医学部構造生物学教授 ) 研究課題名 : 膜タンパク質の構造変化と物質輸送の 1 分子同時計測技術の開発研究者 : 渡邉力也 ( 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻講師 ) 研究期間 : 平成 25 年 10 月 ~ 平成 29 年 3 月 JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) 研究領域 : ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術 ( 研究総括 : 田中啓二東京都医学総合研究所理事長兼所長 ) 研究課題名 : 細胞膜におけるリン脂質の非対称分布とその崩壊 研究者 : 長田重一 ( 大坂大学免疫学フロンティア研究センター栄誉教授 ) 研究期間 : 平成 26 年 10 月 ~ 平成 32 年 3 月 JST は本領域で 先端的ライフサイエンス領域と構造生物学との融合により ライスサイエンスの革新につながる 構造生命科学 と先端基盤技術の創出を目指します 上記研究課題において 渡邉力也講師はナノ反応容器を利用して 膜たんぱく質の物質輸送と構造変化を 1 分子単位で同時に計測できる技術を新規開発し 構造機能相関の直接的な解明から それらの作動原理の理解を目的としています 長田重一チームは 世界に先駆けて同定した 細胞膜の非対称性の維持 崩壊に関与する 3 個の膜たんぱく質の分子の構造 作用機構を明らかにすることを目的としています 日本医療研究開発機構 (AMED) 革新的先端研究開発支援事業 (PRIME) 研究開発領域 : 画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明 ( 研究開発総括 : 横山信治 ) 研究開発課題名 : 脂質輸送タンパク質の高感度機能解析にむけた生体膜マイクロチップの開発と創薬への応用 研究開発者 : 渡邉力也 ( 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻講師 ) < 研究の背景と経緯 > 細胞の表面には 膜たんぱく質と呼ばれるたんぱく質が存在しており 情報伝達やエネルギー合成など生理的に重要な役割を担っています その中でも 物質を輸送する膜たんぱく質は近年特に注目されている薬剤標的であり その輸送活性を高感度かつ定量的に計測することで 薬剤の効果を評価する試みがなされています これまで イオンなどの親水性分子の輸送については 1 分子単位で高感度に計測する手法が多数開発されてきました しかし 薬剤や脂質などの疎水性分子の輸送を計測するには 標的分子の取り扱いの難しさなどの技術的な障壁があり 高感度化と定量化を実現することは極めて困難でした 膜たんぱく質が輸送する疎水性分子の代表として リン脂質 が挙げられます リン脂質は生体膜の主成分で 生体膜を構成する2 層構造に異なる組成で存在すること ( 非対称性 ) が知られています この脂質組成の非対称性の維持と崩壊は 膜たんぱく質が脂質を輸送することで実現しており さまざまな生理機能に関与しています 例えば リン脂質の一種であるフォスファチジルセリン (PS) は 通常 生体膜中で非対称に存在していますが 外部のシグナルに応答して膜たんぱく質が活性化すると その輸送により脂質組成の非対称性は崩壊します このPSの非対称性の崩壊に伴い アポトーシス注 4) を起こし 2

た細胞は 自らが死んでいるというシグナルを外部に発信し 血小板で血液の凝固を促進します これらの生理機能に関わる脂質輸送たんぱく質にも薬剤標的を拡張するためには 疎水性分子の輸送を高感度かつ定量的に計測し 現状の技術障壁を打破できる新規技術の開発が急務とされていました < 研究の内容 > 本研究グループは 脂質輸送の活性計測を高感度化するため 超高密度な人工生体膜チップの新規開発と これを用いた脂質輸送の超高感度計測技術の確立を目指しました 具体的には 超高密度人工生体膜チップを開発し 独自の光操作技術を用いることで チップ上の人工生体膜に対して 細胞環境と同様の 脂質組成の非対称性 を再現することに成功しました そして 膜たんぱく質の脂質輸送によって 脂質組成の非対称性が崩壊する過程を1 分子単位の超高感度で検出することを可能としました 1. 超高密度人工生体膜チップの新規開発これまでに作製した表面積が10 平方マイクロメートル ( マイクロは100 万分の1) 程度の均一な人工生体膜を約 10 万個集積した超高密度人工生体膜チップ ( 大きさ :24 ミリメートル 32ミリメートル ) を改良し リン脂質分子の輸送を検出するための工夫をしました ( 図 1) このチップでは 直径 3~8マイクロメートルの円筒形上のくぼみが集積化されていますが その開口部にリン脂質の2 重層で構成される生体膜を形成しました また 開口部以外の表面はリン脂質の1 重層で覆いました さらに 独自の光操作技術を用いることで 蛍光標識したリン脂質 ( 蛍光脂質 ) が外層にのみ存在する非対称な生体膜を形成することに今回成功しました ( 図 2) 従来のリポソーム法では 非対称性を形成する手法が複雑で また 脂質組成の非対称性が自発的に崩壊することから 脂質輸送の定量的な計測が困難でしたが このマイクロチップでは 2 時間以上にわたり脂質組成の非対称性を維持することに成功しています すなわち 膜たんぱく質による脂質輸送を高感度 高効率 定量的に計測する上で最適な基盤技術といえます 2. 脂質輸送の高感度計測技術の確立新たに開発した超高密度人工生体膜チップを用いて 膜たんぱく質による脂質輸送の高感度計測技術を確立しました ( 図 3) まず 脂質輸送の計測のため くぼみの開口部に形成された人工生体膜へ脂質輸送たんぱく質を組み込み 蛍光標識した脂質を生体膜の内層へ輸送させます 輸送された蛍光脂質は 微小な人工生体膜の内層に濃縮されるため たんぱく質の働きが弱くても 蛍光脂質の濃度変化は顕著に増大します そのため 輸送された蛍光脂質に由来する蛍光強度の上昇から 脂質輸送たんぱく質の脂質輸送を高感度かつ定量的に検出できるようになります 現在までに 哺乳類由来の脂質輸送たんぱく質であるTMEM16Fが生体膜に1 分子しか存在しなくとも その脂質輸送活性を検出できるほどの高感度化に成功しており これは 従来法のリポソーム法が100 分子以上の膜たんぱく質を必要とすることを考えると 100 倍以上の計測感度の向上を達成したといえます このように 当該技術の開発により 膜たんぱく質による疎水性分子の輸送に関 3

して 超高感度機能解析の第一歩を確立しました < 今後の展開 > 膜たんぱく質による脂質の輸送は多くの生理機能に関与しているにも関わらず その作動メカニズムには不明な点が多く残されています 今後 本研究で開発されたマイクロチップ技術を応用することで さまざまな脂質輸送たんぱく質の機能や作動メカニズムだけでなく それらに関連する疾患への理解が大幅に促進されると考えられます また 本研究で開発したマイクロチップには 非対称な人工生体膜が高度に集積化されているため それらを並列利用することができれば 脂質輸送に関わる膜たんぱく質を標的とした創薬候補の高速スクリーニング および 薬剤標的となる膜たんぱく質の大規模な探索に最適な基盤技術となることが強く期待されます 本成果は 渡邉講師らが近年開発した人工生体膜チップ群 ( 特許第 6281834 号 WO2016/199741 特願 2017-040664 特願 2017-13188 2) の汎用性を高める技術であり 今後は実用化を希望する企業との研究開発を進めていく予定です 4

< 参考図 > 図 1 超高密度人工生体膜チップ模式図および蛍光画像 (a) 超高密度人工生体膜チップの模式図 直径 4マイクロメートル 高さ500ナノメートルの微小なくぼみの開口部に脂質 2 重層が形成される また 開口部以外の表面は脂質 1 重層で覆われている (b) 蛍光標識したリン脂質 ( 赤色 ) を配置したときのチップの蛍光画像 くぼみには 蛍光色素 ( 紫色 ) を含む水溶液が封入されている 図 2 光操作による脂質組成の非対称化技術 (a) 脂質組成の非対称化手法の模式図 マイクロチップには蛍光脂質を含有する人工生体膜が形成されている くぼみの開口部に存在する脂質 2 重層に対して 強力なレーザー光を照射することで 外層にのみ蛍光脂質が局在する非対称な脂質組成を持つ生体膜を形成できる (b) 光照射前および照射後の蛍光標識したリン脂質 ( 赤色 ) を配置したときのチップの蛍光画像 光照射前 くぼみに形成されている生体膜 ( 脂質 2 重層 ) の蛍光強度は 周囲を覆っている脂質 1 重層と比較して約 2 倍の強度を持つ 光照射後 外層にし 5

か蛍光脂質は存在しないため 蛍光強度は周囲の脂質 1 重層と同等となる 図 3 膜たんぱく質による脂質輸送の1 分子単位での超高感度計測例異なる分子数の膜たんぱく質 (TMEM16F) を人工生体膜に組み込み その蛍光強度の変化を蛍光顕微鏡で観察した 本計測系では 生体膜の蛍光強度の変化を計測することで 膜たんぱく質の脂質輸送速度が分かる (a) 膜たんぱく質による脂質輸送の高感度検出系の模式図 膜たんぱく質の働きにより 生体膜の外層から内層へ蛍光脂質が輸送されるため 生体膜の蛍光強度が周囲の脂質 1 重膜よりも上昇する (b) 蛍光標識したリン脂質 ( 赤色 ) を配置したときのチップの蛍光画像 ( 左図 ) と蛍光強度の経時変化 ( 右図 ) 膜たんぱく質の活性化剤である塩化カルシウム(CaCl 2) を添加すると その働きにより生体膜の外層から内層へ蛍光脂質が輸送され 蛍光強度が上昇している様子が観察された 6

< 用語解説 > 注 1) リポソーム法脂質組成の非対称な脂質 2 重層でできた直径 100ナノメートル程度のマイクロカプセルを作成し 膜たんぱく質による脂質の輸送を蛍光分光器で検出する方法 注 2) 人工生体膜リン脂質を利用して人工的に形成される脂質 2 重膜の総称 注 3)TMEM16F 脂質輸送を行う膜たんぱく質 血小板に発現するTMEM16Fの遺伝子変異が血友病の一種であるスコット症候群を引き起こすことが知られている 注 4) アポトーシス生体の必要に応じて細胞が自殺する現象で あらかじめプログラムされた細胞死である < 論文タイトル> Single molecule analysis of phospholipid scrambling by TMEM16F (TMEM16Fによる脂質輸送の1 分子解析 ) <お問い合わせ先 > < 研究に関すること> 渡邉力也 ( ワタナベリキヤ ) 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻講師 113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1 工学部 3 号館 6B03 号室 <JST 事業に関すること> 川口哲 ( カワグチテツ ) 科学技術振興機構戦略研究推進部 102-0076 東京都千代田区五番町 7 K s 五番町 <AMEDの事業に関すること> 日本医療研究開発機構 (AMED) 基盤研究事業部研究企画課 100-0004 東京都千代田区大手町 1-7-1 < 報道担当 > 科学技術振興機構広報課 102-8666 東京都千代田区四番町 5 番地 3 7

東京大学大学院工学系研究科広報室 113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1 日本医療研究開発機構経営企画部企画 広報グループ 100-0004 東京都千代田区大手町 1-7-1 8