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第 4 回上越市新クリーンセンター生活環境保全協議会 次第 とき ところ 平成 28 年 5 月 14 日 ( 土 ) 午後 1 時 30 分から 上越市新クリーンセンター建設工事現場事務所 1 階大会議室 1 開会 2 委嘱状交付 3 あいさつ 自己紹介 4 会長 副会長の選出 5 協議事項 (1

第 3 章ごみ処理方式の検討 第 1 節可燃ごみ処理方式の検討 1. 横須賀市新ごみ処理施設整備検討委員会の提言広域化基本計画に基づく新たな可燃ごみ処理施設の整備にあたり 適切な施設の整備に資するため設置した委員会において可燃ごみ処理施設の方向性としては 運営方式を民間活用とする場合には処理方式の絞

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富士フイルム株式会社富士宮事業場 焼却炉の維持管理記録 焼却炉への廃棄物投入量 廃棄物処理法第十五条の二の三第 2 項による産業廃棄物処理施設の維持管理の公表 2017 年度 (2017 年 4 月 1 日 ~2018 年 3 月 31 日 ) 投入実績 ( 単位 t) 産業廃棄物 種類 4 月 5

世田谷清掃工場 平成 27 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 不燃物 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) スラグ ( ガス化溶融 )( 含

別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

平成 24 年度維持管理記録 ( 更新日平成 25 年 4 月 26 日 ) 1. ごみ焼却処理施設 (1) 可燃ごみ焼却量項目単位年度合計 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 A B 炉合計焼却量 t 33, ,972

高効率ごみ発電施設整備マニュアル

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[ 法第 8 条の4( 閲覧用記録簿 )] 産業廃棄物処理施設維持管理記録簿 [ 焼却施設 ] 平成 30 年度 焼却した産業廃棄物の種類及び数量[ 規 12 条の7の3 第 3 号イ ] 種類 ( 単位 ) 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2

3. 排ガスガス処理設備 3.1 ばいじん除去設備ごみ焼却排ガス中のばいじんを除去する設備は 近年では 焼却施設には使用実績が最も多いろ過式集じん器が多く使用されています ろ過式集じん器はバグフィルタとして知られています バグフィルタは 単にばいじんを除去することだけを目的とするのでなく 有害ガス

災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合 < 設置の背景 > 発災後 1 年を迎えるに当たり 総理のイニシアティブにより災害廃棄物の処理を加速するため設けられたもの < これまでの成果 > 第 1 回 ( 平成 24 年 3 月 13 日 ) 再生した災害廃棄物の大胆な活用 民間企業の協力拡大の要

渋谷清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 不燃物 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰 ( 含有試験 ) 6 4 周辺大気環境調査結果 7 5 試料採取日一覧 8 (

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ツールへのデータ入力前にすべきこと 一般廃棄物処理に係るフロー図を作成 < 収集 : 直営 > < 直接搬入 > 粗大ごみ **t <A 破砕施設 : 直営 > <D 最終処分場 > 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 燃やすごみ **t アルミ缶 **t スチール缶 **t びん

排ガスの中のばい煙量又はばい煙濃度 富士フイルム和光純薬株式会社平塚工場 焼却炉の維持管理記録 測定記録 廃棄物処理法第十五条の二の三第 2 項による産業廃棄物処理施設の維持管理の公表 規制項目 基準 年度 測定場所 平成 27 年度 測定頻度 平成 28 年度 煙道 1 回 /6 ヶ月 平成 29

納入製品 施設紹介 高度排ガス処理付き焼却炉設備の納入 運転状況 - 江蘇省南京市 - Report on Delivery and Operational Condition of Grate-type (Stoker-type) Incinerator with Advanced Flue Ga

仮設焼却施設の運転状況(11月4日~12月26日)

北清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7 4

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品川清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

平成 29 年度一般廃棄物処理施設維持管理状況 ( 最終処分場 ) 最終処分量単位 :t 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 不燃物


新立川市清掃工場 ( 仮称 ) の基本的な考え方 平成 27(2015) 年 12 月 立川市 1

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2 採用する受注者選定方式の検討について廃棄物処理施設整備事業で一般的に採用されている受注者選定方式は表 -2のとおりです 受注者選定方式の検討に際しての論点を下記に整理しましたので 採用する受注者選定方式について審議をお願いいたします 本施設に求められる5つの整備基本方針に合致した施設の整備運営に

本研究で対象とした宮城県で発生した災害廃棄物量は 約 16.7 百万トンと推計され 環境省の公表値 17.6 百万トンよりも小さい値となった また 仮置場の位置は便宜上 各市町村役場の所在地と仮定したうえで評 価に供した 岩手県 宮城県 福島県 4.5 百万 ton 4.0 百万 ton 16.7

新ごみ処理施設の整備に向けた 施設整備の基本方針 資料 施設整備の基本方針 ( 案 ) (1) 施設整備の目的泉佐野市田尻町清掃施設組合 ( 以下 本組合 という ) 及び熊取町では 泉佐野市 田尻町及び熊取町から発生する一般廃棄物 ( ごみ及びし尿処理汚泥 ) を泉佐野市田尻町清掃施

東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業の実地調査について

足立清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

有明清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

練馬清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

1 経過及び趣旨平成 20 年 3 月に策定された 湘南東ブロックごみ処理広域化実施計画 の基本方針として リサイクル推進型 +バイオガス利用 ( 残渣焼却 ) 最終処分場負荷軽減型 のごみ処理システムの構築があり バイオガス化施設導入の調査 検討を進めてきました バイオガス化施設導入の検証にあたっ

中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会(第49回)

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中央清掃工場 平成 29 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

環境保全対策の検討について 資料 3 1 排ガスに係る対策 (1) 排ガスに係る対策の概要ア排ガスに関する主な物質と除去方法焼却施設から排出される有害物質については, 大気汚染防止法, ダイオキシン類対策特別措置法等により, 厳しく大気への排出濃度が規制されている 主な物質と除去方法は, 表 1のと

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<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

(2) 地震発生時の状況地震発生時の運転状況ですが 現在 20 清掃工場で40 炉が稼動していますが 地震発生当日は32 炉が稼動しており 8 炉は定期補修や中間点検のため停止していました 地震後は設備的な故障で停止したのが2 炉ありまして 32 炉稼動していたうち2 炉が停止したというのが地震発生

計画の位置づけ 本計画の位置づけは 図 1 に示すとおりです 災害廃棄物対策指針 に基づき 島根県が策定する災害廃棄物処理計画との整合を図りつつ 災害廃棄物処理に関する本市の基本的な考え方と具体的な対応方策を示すものです 災害発生時には 被害状況等の情報収集を行ったうえで 本計画に基づき災害廃棄物の

熱ボイラの設置 ( 水噴霧ガス冷却設備 ) 復水タービンの導入 Installation of a waste heat boiler (water spra gas cooler) Introduction of a condensing turbine 低温エ ノマイ の導入発電機の能力増強 I

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ター ン 施設 施設 タン ター ン の の の ーン ラ ン バー 炉 バー ラ ン ン ラ ー ン ン ーン No1. ン 生 ン No2. ン 図 2 エネルギー回収推進施設フローシート 表 1 エネルギー回収推進施設システム概要 受入供給設備 ごみピット 容量 :2 450 m 3 (γ =

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

DXNs分解・脱硝機能を併せ持つバグフィルタによる排ガス処理実績,三菱重工技報 Vol.49 No.1(2012)

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畜産環境情報 < 第 63 号 > 1. 畜産の汚水から窒素を除去するということはどういうことか 2. 家畜排せつ物のエネルギー高度利用 南国興産を例に 3. 岡山県の畜産と畜産環境対策 4. 兵庫県の畜産と畜産環境対策について

Trial Study to Aggregate the Flow of Relief Funds for the Great East Japan Earthquake: Matrix of Relief Fund Inflow and Outflow Abstract The 2011 Grea

練馬清掃工場 平成 29 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

第 3 章計画ごみ質の設定 第 1 節計画ごみ質の設定計画ごみ質の設定にあたっては, 組合実績より, 可燃ごみの排出量を踏まえ設定するものとする 本施設の計画ごみ質として, 可燃ごみに関する以下の項目を設定する 1 三成分 ( 水分, 可燃分, 灰分 ) 及び種類別組成割合 2 発熱量 ( 低位発熱

揃 Lag [hour] Lag [day] 35

鈴鹿市不燃物リサイクルセンター 2 期事業 特定事業の選定について 平成 19 年 4 月 12 日

環境に優しい清掃工場を目指して -ISO14001 環境活動報告書 - 平成 24 年度 三番瀬 船橋市南部清掃工場から撮影三番瀬は東京湾最奥部にある約 ヘクタールの干潟と浅海部です また 都心から一番近い潮干狩り場があることでも知られています 船橋市環境部

埋立てた一般廃棄物の種類及び数量の記録 ( 平成 30 年度 ) 最終処分場名 : 第二処分場 単位 : トン 種 類 数量 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 搬入量一般廃棄物焼却灰 1, , , 合計

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る. これらの廃棄物は混合状態となっていることが多いため, 選別後にそれぞれの性状に合った処理を実施する必要がある. 環境省 4) により, 放射性物質濃度による処分 ( 保管 ) 方法が表 -1のように示されている. 可燃物の焼却処理後に発生する焼却灰, 下水汚泥の焼却灰, 浄水汚泥の焼却灰は,


大栄環境 ( 株 ) 和泉リサイクルセンター平井 5 工区管理型最終処分場 / 処理実績平成 26 年度契約処理 : 管理型埋立区分品目 平成 26 年 平成 27 年 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 燃え殻

化学産業と化学技術の環境貢献 本稿は 化学装置 2010 年 3 月号に筆者が掲載した報文 化学産業 の環境経営と環境貢献 の一部を加筆 削除 修正したものである 環境企画 松村眞 はじめに 環境対策には 環境負荷物質の発生を抑制する上流の分野と やむを得ずに作られてしまう環境負荷物質を無害化する下

目 次 1 計画策定の意義 1 2 基本的方向 2 3 計画期間 2 4 対象品目 各年度における容器包装廃棄物の排出量の見込み 4 6 容器包装廃棄物の排出の抑制の促進するための方策に 関する事項 5 7 分別収集をするものとした容器包装廃棄物の種類及び当該容器 包装廃棄物の収集に係る

(Microsoft Word - \220R\215\270\214\213\211\312\225\361\215\220\217\221_ \215\305\217I_.doc)

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Microsoft Word - 様式2-8 産廃処理計画

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Transcription:

石巻広域クリーンセンターの運転状況東日本大震災により発生した災害廃棄物の焼却処理について On Processing of Disaster Wastes Due to the Great East Japan Earthquake at Ishinomaki Plant * 山形成生 Naruo Yamagata 技術士 ( 衛生工学部門 ) 佐藤吉壽 Yoshihisa Sato 奥田聡 Satoshi Okuda 石巻広域クリーンセンターは, 東日本大震災で津波により機器が水没するなどの被害を受けたが,2011 年 月 11 日に再稼働し, 現在も順調に運転を行っている これまで震災復興に資するため, 約 2 万 t の震災がれき等を受入れ,2013 年 月にその処理を完了した また, 災害廃棄物の処理にあたっても, 溶融用外部燃料を投入することなく安定した処理が可能であった 本稿では, 石巻広域クリーンセンターにおける災害廃棄物の処理実績を中心に再稼働後の運転状況について報告する Ishinomaki Plant, which was severely damaged by the Great East Japan Earthquake, resumed commercial operation on July 11th 2011 and is being operated stably. Ishinomaki Plant contributed to Tohoku Reconstruction by processing some 20 000 tons of disaster wastes. When processing disaster wastes, stable operation was achieved without using excessive energy for melting. In this paper, we report the operational status of Ishinomaki Plant by using fluidized bed gasification and melting system. Key Words: 都 市 ご み Municipal solid waste ガス化溶融 Gasification and melting 災害廃棄物 Disaster Wastes セールスポイント 流動床式ガス化溶融炉は, 可燃ごみをはじめとする一般廃棄物に加え, 災害廃棄物の処理も可能な幅広いごみ質に対応できるシステムである まえがき 2011 年 3 月に発生した東日本大震災から3 年近くが経過した この間, 岩手県, 宮城県では仮設焼却炉の建設, 既設焼却炉の活用および広域処理により,2013 年 月末時点での県全体の災害廃棄物の処理率は岩手県で6 %, 宮城県で94 % まで進捗している (*1) また, 福島県においても, 国の代行処理 による仮設焼却炉 ( 相馬市 新地町 ) が2013 年 2 月下旬から本格稼働するなど,2014 年度のできるだけ早期の処理完了を目指した取組みが進められている このような状況において, 石巻広域クリーンセンター ( 写真 1) においても,2011 年 月の再稼働以降, 積極的に災害廃棄物を受入れ処理を行い震災復 神鋼環境ソリューション技報 4

興に貢献した 以下では, 石巻広域クリーンセンターにおける災害廃棄物の処理実績を中心に再稼働後の運転状況について報告する. 施設の概要石巻広域クリーンセンターは, 都市ごみ向け流動床式ガス化溶融炉として2003( 平成 15) 年 3 月竣工した 以来, 年間で約 0 万 t のごみを処理し,1 写真 1 施設全景 炉あたり年間 320 日以上の安定運転を達成するなど順調に稼働している 本施設のフローおよび概要は, 以下のとおりである 1) 炉型式流動床式ガス化溶融炉 2) 施設規模 230 t/d(115 t/24 h 2 炉 ) 3) 蒸気条件 3 MPa 300 4) 発電設備復水式タービン (2 00 kw) 5) 排ガス処理減温塔 +バグフィルタ+ 触媒反応塔 6) 公害防止基準値表 1のとおり. 災害廃棄物への対応. 災害廃棄物の処理状況 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では, 石巻広域クリーンセンターも津波により機器が水没するなどの被害を受けたが, 約 3カ月の復旧工事の後, 復電および試運転を経て, 月 11 日に本格稼働した 復旧後は地域の早期復興に資するため, 災害 表 1 公害防止基準値と処理方法 項目基準値処理方法 ば い じ ん 塩 化 水 素 硫黄酸化物 窒素酸化物 一酸化炭素 ダイオキシン類 0.02 g/m 3 N 以下 50 ppm 以下 50 ppm 以下 60 ppm 以下 30 ppm 以下 0.01 ng-teq/m 3 N 以下 バグフィルタ乾式消石灰吹込み乾式消石灰吹込み燃焼制御 + 触媒脱硝燃焼制御燃焼制御 + 活性炭吹込み + 触媒分解 注 : 基準値は, 乾ガス基準,O 2 =12 % 換算値 図 1 石巻広域クリーンセンターフローシート 4 神鋼環境ソリューション技報

2. 2 廃棄物を一般廃棄物と混合処理している まず 震 スラグ性状および生産量 災後発生し最終処分場に仮保管されていたごみ 以 復旧後のスラグの生産量を図3に示す 下 ストックごみと記す の処理を実施した スト ストックごみや震災がれきなど雑多なものを混合 ックごみ 写真2 は 長期間最終処分場に仮置き 処理しているが スラグの有効利用基準を満足して されていたため多くの土砂を含み 海水を被ってい おり アスファルト用骨材として有効利用されてい るなどの特徴を持つ 平均で約20 最大で30 る を超える混焼を実施したが 問題なく処理を継続 3. し 2012年6月でストックごみの処理を完了した 災害廃棄物の処理が用役使用量に与え る影響 災害廃棄物は 上述の通り可燃ごみと比較して異 引き続いて震災がれき 写真3 の処理を開始し なる性状を有するため その処理にあたっては 通 2013年7月で処理を完了した 2011年7月から2013年7月までの約2年間で 可 常運転から様々な変化が発生することが想定され 燃ごみ 約12万 t に加え 災害廃棄物 約2万 t の た とくに 長期間屋外に仮置きされていたことに 処理 平均混焼率 約14 を実施した 災害廃 よる発熱量の低下に起因する溶融温度維持用の燃料 棄物の処理実績を図2に示す 使用量の増加が懸念された また 海水を被ってい 写真2 写真3 ストックごみ 9 000 収集ごみ量 ごみ搬入量 t/月 000 震災がれき ストックごみ量 震災がれき量 000 6 000 5 000 4 000 3 000 2 000 40 0 7月末にて 受入終了 震災がれき 9 20 ストックごみ 2011年 30 11 12 1 2 2012年 3 4 図2 Vol. No. 2 2014 2 5 6 9 11 12 1 2 2013年 3 4 5 6 0 9 月 搬入割合 1 000 復旧後の災害廃棄物の処理実績 神鋼環境ソリューション技報 49

t/ 図 3 スラグ生産量の推移 (2011 年 月 ~2013 年 9 月 ) 図 4 ごみ処理量と助燃使用量 (1 号系 )(2013 年 2~ 月 ) 図 5 ごみ処理量と助燃使用量 (2 号系 )(2013 年 2~ 月 ) 50 神鋼環境ソリューション技報

るため塩素含有量が多く, 塩化水素の発生濃度の上昇が想定された. 燃料使用量災害廃棄物の処理を完了した2013 年 月までの直近 6カ月間における各炉のごみ処理量と燃料使用量を図 4~5に示す 通常運転においては定常的に燃料を使用することなく自己熱による溶融処理を継続している 燃料使用量は約 2L/ ごみ t 程度 ( ごみに対する入熱量として 1 % 程度 ) と非常にわずかである. 消石灰使用量ストックごみ処理時 (2011 年 月 ~2012 年 5 月 ), 震災がれき処理時 (2012 年 月 ~2013 年 月 ) の消石灰使用量平均値を図 6に示す なお, 比較のため通常運転時として20 年度の平均値をあわせて記載した 図 6からわかるとおり, 災害廃棄物等の処理時には通常運転時に比べて消石灰使用量原単位が 1.~1.9 倍になっており, 災害廃棄物を混合処理することによる影響が見られた ただし, 本現象が災害廃棄物に塩化ビニル製品等が大量に混入したことによるものか, または, 海水に浸かったことによるものかについては定量的に特定できていないが, ストックごみの目視確認状況から海水に浸かったことによる影響が大きいと思われる むすび石巻広域クリーンセンターは, 東日本大震災で津波により機器が水没するなどの被害を受けたが, 2011 年 月に再稼働し, 順調に稼働している ま 図 6 消石灰使用量原単位 ( 搬入ごみ量ベース ) た, 上述のとおり災害廃棄物の処理も実施し, 震災復興にも貢献できた 東日本大震災を受け様々な震災対策が検討されており, 廃棄物処理施設整備計画 ( 平成 25 年 5 月 31 日閣議決定 ) において 強靭な廃棄物処理システムの確保を進める ことが掲げられている 今回の石巻広域クリーンセンターでの災害廃棄物の処理実績から, 流動床式ガス化溶融炉 は強靭な廃棄物処理システムの構築に資するシステムの一つであると確信している 最後に, 本稿作成にあたりまして資料提供を頂くとともに, 運転管理においてもご指導いただいております石巻広域クリーンセンターの職員の方々にお礼申上げます [ 参考文献 ] *1: 環境省ホームページ http://kouikishori.env.go.jp/conditions/ * 環境プラント事業部プラント技術部設備技術室 神鋼環境メンテナンス 運転管理センター石巻事業所 神鋼環境ソリューション技報 51