4-3-7. 新船建造する場合の基本仕様燃料電池漁船を新造船として建造する場合は 設計の自由度を生かした次世代型を考えた発想の試設計が望ましい 今回 以下の理由により推進方式をウォータージェット推進にした ウォータージェット推進は 排水量増大時の船速不利があり 低速域での推進効率はシャフト式と比べ低いが 舵やキールなど付加物が無くなり船体抵抗が減尐すること 重量が軽くなること モータを船尾部に設置でき 機関室内の機器配置の自由度が増すこと 2 基のウォータージェットの採用でサイドスラスターが不要になること ( 今回は風が強い日の操船の容易さを考慮して船首部のサイドスラスターを残した ) またそのウォータージェット 2 基をジョイステックで操作することで操舵装置類の設置が不要になる利点があること 今回の養殖作業船の実用船速が 10 ノット程度であり 速度を要求しないことを考慮し 更に ロープ類の巻き込みが無く安全に操業できることからウォータージェット推進で試設計を行った なお 油圧駆動の漁労機器類も全て電機駆動にする方法もあるが 調査検討結果 現状では 給餌機の電動製品が製造されていないこと キャプスタンやサイドスラスターにおいて電動製品では性能容量が小さく 同程度の性能品でも 寸法がかなり大きく定格出力時間が短いことや かなり重量が大きくなることが判明した このため 漁労機器については 改造の場合と同様に油圧ユニット装置を介した駆動方法で基本仕様をまとめた < 電動キャプスタン> 巻取能力:1 トン 巻取速度:13m/min 巻胴直径:200φ 電動機:6P-3.7k 型式:ECM-1 ( 大同重機製作所製 ) 図 4-3-8 電動キャプスタンと電動サイドスラスター < 電動サイドスラスター > DC24V 5kW 型 出力 :5kW/2 分定格 (3kW/15 分定格 ) プロペラ最大回転数 2000min-1 (1650 min-1) ダクト口径 :200φ 質量 : 55kg 型式 :SD200U-E ( 第三舶用工業 製 ) 図 4-3-9 新造船の場合に採用したウォタージェット ( 石垣の HP) - 73 -
表 4-3-8 新造船の場合の養殖作業燃料電池漁船の主要機器及び寸法 No 名 称 数量 備 考 1 電動機 ( 推進用 ) 2 台 定格出力 65kW / 寸法 1165 530 740 2 ウォ-タージェット 2 基 石垣製 IWJ-A025 型 3 電動機 ( 油圧ユニット装置用 ) 1 台 定格出力 45kW / 寸法 947 485 528 4 水素燃料電池 1 台 定格出力 130kW / 寸法 950 300 240 5 水素高圧ボンベ 8 本 70MPa 内容積 224l / 寸法 600φ 1500 6 リチウムイオン電池 8 式 セル数 17 / 寸法 455 325 130 7 コントロールボックス 1 台 定格電圧 500V~440V / 寸法 800 400 1200 8 コンバータ 1 台 24V 制御電源充電 (DC-DC) 9 油圧ユニット装置 1 台 EZ-442-2 型 / 寸法 849.7 760 520 10 給餌機 1 台 サンコ- テクノ製 MSH700KT 型 2000 870 1500 11 投餌機用ブロア 1 台 サンコ- テクノ製 450 450 550 12 キャプスタン 2 基 巻揚荷重 1000kgf / 寸法 360φ 660 ドラム径 160φ 13 サイドスラスター 1 基 船首側 - 河上船舶機器製 KTHS-250 型 14 散水用ヤブスコポンプ 1 台 油圧駆動海水ポンプ ( 高澤製 SP-500L-1) 15 雑用水ヤブスコポンプ 1 台 高澤製 KP150-11/4BCH ( 電磁クラッチ付 ) 16 高圧洗浄機 1 台 中央工業製 TNF 型寸法 438 290 353 17 オイルクーラー 1 式 山本機工製ラインクーラー YLC-50 18 操舵装置用ポンプ 1 台 マロール PU 型 寸法 334 210 336 19 バッテリー (12V) 2 個 制御電源用 24V 4-3-7-1. ウォータージェットウォータージェット 2 基を搭載し 別々の電動機でそれぞれ駆動する方式とする これにより船尾側のサイドスラスターを省くことが出来 操舵装置も不要とすることが出来る その操作要領図と操作するジョイステックを示す 図 4-3-10 ウォータージェットのジョイステック操作と船の動き ( 石垣提供 ) - 74 -
図 4-3-11 ウォータージェット 2 基による真横移動と斜め移動のジョイステック操作 ( 石垣提供 ) 図 4-3-12 後進バケットの箱形の場合の舵効きと向き ( 石垣提供 ) 図 4-3-13 後進バケットのバケット型の場合の舵効きと向き ( 石垣提供 ) - 75 -
4-3-7-2. ウォータージェット駆動用電動機 2 基のウォータージェットの駆動は 65kWの各電動機で駆動することとする インバーター盤からの制御により 130kWの燃料電池と 搭載しているリチウムイオン電池からの電源供給により制御する < 要目 > 出力 : 65 kw 回転数 : 4,000 min-1 周波数 : 60 Hz 電圧 : 340 V 極数 : 2 P 重量 : 470 kg 耐震 : 2 G 図 4-3-14 三相誘導電動機 ( 明電舎外形図より ) 4-3-7-3. 制御盤 ( コントロール盤 ) 130kWの水素燃料電池と 50kWのリチウムイオン電池からの電源により 推進用の電動機 (130kW) と漁労機器類の油圧ユニット装置を駆動する電動機 (45kW) およびウォタージェット駆動用の電動機 (65kW 2 基 ) の電力系統図を以下に示す 図 4-3-14 養殖作業船の電力系統図 - 76 -
4-3-8. 新造船の重量比較と船速推定水素燃料電池を搭載した次世代型の養殖作業船を新造した場合の重量計算を行い 既存船との比較を行った また その排水量を元に船速を推定した 表 4-3-9 に重量重心の比較計算書を示す 表 4-3-9 既存船と新造時の重量重心の計算表 - 77 -
既存船と新造した場合の重量の増減を比較した結果 既存船より 840kg 重く 24,189kg であったが 改造する場合とでは 往航時で 493kg 軽くなった その内訳は 船体部では 船体構造がキール式から船底フラット式になったため 1,365kg 減となる一方 推進部においては 高圧水素タンクを 8 本積載したこと およびコントロールボックスが大型化したことにより 既存船より+2,891kg となり 艤装部分では ウォータージェットを 2 基搭載したことから 船尾側のサイドスラスターが不要となり既存船から 55kg 減となり 搭載物関係では 燃料の A 重油と水素ガスの積載重量差から 631kg 減となり 結果 往航状態で既存船より 840kg 重い計算になった 改造した場合との比較では 船体構造の違いなどにより船体部で 1,495kg 減になり 推進部では 高圧水素ボンベを改造船の 5 本に対し 8 本積載したことなどにより+1,036kg になり 艤装部分では 船首部のサイドスラスター不要で 55kg 減となり 搭載物では ボンベの水素ガス量の違いから+21kg となり 往航状態で改造する場合と比較すると 493kg 軽くなる計算結果になった 往航時と復航時の排水量の増減は 改造時の場合と同様に搭載した餌の 11 トンと燃料の消費分の重量の違いとなる また 往航時での既存船と比較した重心位置は 0.52mから 0.88 mと 0.36m 後方に移動することになる 改造船の場合からでも 0.24m 後方に移動したのは 船体構造をキール式から船底フラット型のウォータージェット推進にすることにより 推進機および駆動用モータが船尾側に配置されたことによる 上述内容の既存船と改造船 新造船の場合における重量および往航と復航時の排水量の比較表を表 4-3-10 に示す 結果 新造船の合計重量は改造船に比べ約 0.5 トン軽くなる 特に船体部はウォータージェット推進にすることにより大きなキールが不要となり約 1.5 トン軽量化となる 一方推進部は水素タンクが 5 本から 8 本に増えることなどにより約 1 トン増加する 全体では 既存船に比べると約 0.84 トン増加する しかしキールが無くなり船底フラットになったことより 船体抵抗が減尐したことから 新造船の推定船速は 既存船とほぼ同じ速度になると推定される これまでの内容で 排水量の比較を表 4-3-10 に 新造した場合の船速と軸出力の関係を図 4-3-15 に 推定船速を表 4-3-11 に示す 表 4-3-10 既存船と改造船および新造船の各部位での重量比較と往航 復航時の排水量比較 - 78 -
図 4-3-15 新船の場合の船速と軸出力の関係 表 4-3-11 新造した場合の推定船速 往航時 復航時 排水量 (t) 24.2 13.2 軸出力 (kw) 121 船速 ( ノット ) 9.0 9.6 4-3-9. 新造船の重心について新船建造した場合における重心位置について 前述の表 4-3-9 の重量重心計算表より 表 4-3-12 に整理した 重心位置は 新造した場合に前後位置 (MG) は 既存船より往航時で後方に 0.36m 復航時で 0.59m 後方に移動する 改造船とは 往航時 0.24m 復航時 0.48mとやはり後方に移動する 重心高さ (KG) は 既存船より 新造した場合の方が重量が 0.84 トン重くなったが 船体構造の違いから往航時で 0.05m 高く 復航時でも 0.46m 高くなった 改造の場合からでは 往航時 0.06m 高く 復航時は 0.49m 高くなった また 横メタセンター高さ (GM) については 既存船に対し新造船では往航時 0.15m 大きくなり 復航時で 0.45m 小さくなった 改造船との比較では 往航時 0.29m 大きく 復航時で 0.12m 小さくなっている 新造船については 往航時は 既存船と改造船より安定性が良いが 復航時ではどちらの船よりも若干小さくなるが 十分な安定性を有している 表 4-3-12 既存船と改造船および新造船の重心位置と GM 値の比較 - 79 -
4-3-10. 既存船と新造船の復原性操業における安全性の面から復元性についても 既存船と新造船の場合について検討を試みた どちらの船の場合も 積荷状態における安全性が重要となることから 排水量がもっとも大きい往航時の状態で計算を行った 平水区域で操業する小型漁船の復原性については明確な基準が無いため 小型船舶安全規則 乙基準 航行区域は限定沿海に照らして検討した 復原性曲線を図 4-3-16 と図 4-3-17 にその計算表を表 4-3-13 に示す 検討結果 既存船も新造船についても 乾舷 GM 値 C 係数ともに基準を満足しており復原性に関する問題はなかった GM の接線 静復原力曲線 動復原力曲線 1ラジアン(57.3 ) の垂線 原点における GM の接線の傾斜度 (tan) はメタセンター高さを表し 1 ラジアン (57.3 ) の垂線との交点ま 図 4-3-16 既存船の往航時の復原力曲線 での垂線の高さが メタセンター高さ に等しくなる 図 4-3-17 新造船の往航時の復原力曲線 - 80 -
表 4-3-13 既存船と新造船の往航時の復原性 - 81 -
4-3-11. 新造船の場合の一般配置図 つぎに新造船の基本仕様に基づき建造した場合の一般配置図及び機関室配置図および船 体断面図を示す - 82 -
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