1) 道の駅 たろう ( 岩手県宮古市 ) 道の駅 たろう は 宮古市の旧田老町の中心部より約 3km 北方の標高約 140m の台地に位置しており 東北地方における防災機能を具備した 3 箇所の道の駅の 1 つであるとともに 宮古市の地域防災計画の一次避難場所としても位置付けられている 幸い津波浸

Similar documents
< E B B798E7793B188F5936F985E8ED EA97975F8E9696B18BC CBB8DDD816A E786C7378>

< E B B798E7793B188F5936F985E8ED EA97975F8E9696B18BC CBB8DDD816A E786C7378>

通話品質 KDDI(au) N 満足やや満足 ソフトバンクモバイル N 満足やや満足 全体 21, 全体 18, 全体 15, NTTドコモ

22. 都道府県別の結果及び評価結果一覧 ( 大腸がん検診 集団検診 ) 13 都道府県用チェックリストの遵守状況大腸がん部会の活動状況 (: 実施済 : 今後実施予定はある : 実施しない : 評価対象外 ) (61 項目中 ) 大腸がん部会の開催 がん部会による 北海道 22 C D 青森県 2

 

129

»°ËÞ½ŸA“⁄†QŸA“⁄Æ�°½No9

1 1 A % % 税負 300 担額

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも


平成 31 年 3 月 20 日更新 全国女性の参画マップ 平成 30 年 12 月作成 内閣府男女共同参画局

< E188CA8C9F8FD88A65955C2E786C73>

<925089BF955C81698CF6955C816A2E786C73>

2 受入施設別献血量 ( 推計値 ) ブロ都ック道府県 合計 全国血液センター献血者数速報 (Ⅰ) 血液センター 平成 30 年 12 月分 L % L % 日 L L % 日 L L % 台 L L % 台 L 8, ,768

平成 27 年 2 月から適用する公共工事設計労務単価 1 公共工事設計労務単価は 公共工事の工事費の積算に用いるためのものであり 下請契約等における労務単価や雇用契約における労働者への支払い賃金を拘束するものではない 2 本単価は 所定労働時間内 8 時間当たりの単価である 3 時間外 休日及び深

<4D F736F F D20486F744E E D BD90AC E93788AEE8AB28AC CF906B89BB97A6816A817C82BB82CC A2E646F63>

平成29年3月高等学校卒業者の就職状況(平成29年3月末現在)に関する調査について

住宅宿泊事業の宿泊実績について 令和元年 5 月 16 日観光庁 ( 平成 31 年 2-3 月分及び平成 30 年度累計値 : 住宅宿泊事業者からの定期報告の集計 ) 概要 住宅宿泊事業の宿泊実績について 住宅宿泊事業法第 14 条に基づく住宅宿泊事業者から の定期報告に基づき観光庁において集計

年齢 年齢 1. 柏 2. 名古屋 3. G 大阪 4. 仙台 5. 横浜 FM 6. 鹿島 -19 歳 0 0.0% 0 0.0% 2 2.7% 1 1.4% 3 4.0% 3 4.6% 歳 4 5.0% 5 6.7% 7 9.6% 2 2.7% 2 2.7% % 25-2

<944D92868FC75F8F578C D834F F E F1817A35302E786C736D>

これだけは知っておきたい地震保険

共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(速報集計結果)からの推計-

2. 長期係数の改定 保険期間を2~5 年とする契約の保険料を一括で支払う場合の保険料の計算に使用する長期係数について 近年の金利状況を踏まえ 下表のとおり変更します 保険期間 2 年 3 年 4 年 5 年 長期係数 現行 改定後

<4D F736F F D2081A030308B4C8ED294AD955C8E9197BF955C8E862E646F63>

共通基準による観光入込客統計 ~ 共通基準に基づき 平成 22 年 月期調査を実施した 39 都府県分がまとまりました~ 平成 23 年 10 月 31 日観光庁 各都道府県では 平成 22 年 4 月より順次 観光入込客統計に関する共通基準 を導入し 信頼 性の高い観光入込客統計調査を


関東 優良産廃処理業者認定制度で優良認定を受けている許可証 組合員都道府県 許可地域組合員名所在地 茨城県 黒沢産業 ( 株 ) 茨城県 関 茨城県 茨城県 ( 株 ) マツミ ジャパン 茨城県 茨城県 ( 株 ) 国分商会 埼玉県

< ( 平成 29 年 9 月分 )> 2010 年平均 =100 ブロック別 北海道地方 東北地方


文字数と行数を指定テンプレート

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

A-1_中央年報 「野菜」品目別産地別月別取扱高表H28(A4横)

2-5 住宅の設備

平成 26 年 3 月 28 日 消防庁 平成 25 年の救急出動件数等 ( 速報 ) の公表 平成 25 年における救急出動件数等の速報を取りまとめましたので公表します 救急出動件数 搬送人員とも過去最多を記録 平成 25 年中の救急自動車による救急出動件数は 591 万 5,956 件 ( 対前

厚生労働科学研究費補助金 (地域健康危機管理研究事業)


平成 22 年第 2 四半期エイズ発生動向 ( 平成 22(2010) 年 3 月 29 日 ~ 平成 22(2010) 年 6 月 27 日 ) 平成 22 年 8 月 13 日 厚生労働省エイズ動向委員会

( 図表 1) 特別養護老人ホームの平米単価の推移 ( 平均 ) n=1,836 全国東北 3 県 注 1) 平米単価は建築工事請負金額および設計監

平成 26 年の救急出動件数等 ( 速報 ) 消防庁

第 40 回 看護総合 2009 年 平成 21 年 2009/7/18-19 京都府京都市 2009 年 2010 年 精神看護 2009/7/23-24 島根県松江市 2009 年 2010 年 母性看護 2009/8/6-7 佐賀県佐賀市 2009 年 2010 年 看護教育 2009/8/2

PowerPoint プレゼンテーション

「交通マナー」に関するアンケート調査結果

平成 27 年の救急出動件数等 ( 速報 ) 消防庁

住宅着工統計による再建築状況の概要 ( 平成 1 9 年度分 ) 国土交通省総合政策局情報安全 調査課建設統計室 平成 20 年 11 月 5 日公表 [ 問い合わせ先 ] 担当下岡 ( 課長補佐 ) 遠藤( 建築統計係長 ) 中村 TEL ( 代表 ) 内線

事務連絡平成 30 年 10 月 26 日 各都道府県消防防災主管課東京消防庁 各指定都市消防本部 } 殿 消防庁予防課 外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン のリーフレットの配布について 2020 年東京オリンピック パラリンピック競技大会が開

中央年報 「野菜」品目別産地別月別取扱高表H26(A4横)

九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

輸送計画書 マラソン交流大会 ( 珠洲市 ) 10 月 6 日現在 第 23 回全国健康福祉祭いしかわ大会実行委員会

調査実施概況 小学校 ( 都道府県 ( 指定都市除く )) 教育委員会数 ( 1) 学校数児童数 ( 2) 全体 実施数 調査対象者在籍学校数 実施数国語 A 国語 B 主体的 対話的で深い学びに関する状況 ( 3) 算数 A 算数 B 質問紙 平均正答率 13~15 問 国語


景況レポート-表

平成17年3月24日

Microsoft PowerPoint - スポーツ経済度ランキング.ppt

平成 24 年度職場体験 インターンシップ実施状況等調査 ( 平成 25 年 3 月現在 ) 国立教育政策研究所生徒指導 進路指導研究センター Ⅰ 公立中学校における職場体験の実施状況等調査 ( 集計結果 ) ( ) は 23 年度の数値 1 職場体験の実施状況について ( 平成 24 年度調査時点

本土 ( 沖縄県を除く ) 保険期間 60か月 48か月 37か月 36か月 35か月 34か月 33か月 32か月 31か月 30か月 29か月 28か月 27か月 26か月 25か月 24か月 23か月 22か月 21か月 20か月 合 自家用 A B 営 業 用 用 C D 自 家 用 用 4

平成19年度環境ラベルに関するアンケート調査集計結果報告

調査概要 1. 調査の方法 : 株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト アイリサーチ のシステムを利用した WEB アンケート方式で実施 2. 調査の対象 : アイリサーチ登録モニターのうち 全国の男女 20 歳 ~59 歳を対象に実施 3. 有効回答数 :4230 人 (47 各都道

RBB TODAY SPEED TEST

「公立小・中・高等学校における土曜日の教育活動実施予定状況調査」調査結果

H ( 火 ) H ( 水 ) H ( 金 ) H ( 火 ) H ( 月 ) H ( 火 ) H ( 土 ) H ( 日 ) H ( 木 ) H ( 火 ) H

別添2 乳児家庭全戸訪問事業の実施状況

公文書管理条例等の制定状況調査結果 平成 3 0 年 3 月総務省自治行政局行政経営支援室

1. 社会福祉法人経営動向調査 ( 平成 30 年 ) の概要 目的 社会福祉法人と特別養護老人ホームの現場の実感を調査し 運営実態を明らかにすることで 社会福祉法人の経営や社会福祉政策の適切な運営に寄与する 対象 回答状況 対 象 特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人 489 法人 (WAM

第 18 表都道府県 産業大分類別 1 人平均月間現金給与額 ( 平成 27 年平均 ) 都道府県 鉱業, 採石業, 砂利採取業建設業製造業 円円円円円円円円円 全国 420, , , , , , , ,716 28

海08:30~17:30 月火水木金土日祝北道08 健診機関リスト 北海道 リ P ト ス リ P 健診 リ P 健 健診 P 健診 リ P リ スリ 診 P リ P 健診 P 健 P ス P P P 健 P 健診 P P P P 健 健診 診 P P P リ P 機 機 P 健 ス 健 リ P P

厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

表 3 の総人口を 100 としたときの指数でみた総人口 順位 全国 94.2 全国 沖縄県 沖縄県 東京都 東京都 神奈川県 99.6 滋賀県 愛知県 99.2 愛知県 滋賀県 神奈川


統計トピックスNo.96 登山・ハイキングの状況 -「山の日」にちなんで-

Microsoft Word - 認知度調査HP原稿

3. 下水道の整備状況平成 30 年 3 月 31 日現在 県内では 20 市町のうち 11 市 6 町で公共下水道事業が実施されており 17 の市町で供用されています しかしながら 愛媛県の下水道普及率は 53.7% と全国第 38 位となっており まだまだ遅れています 瀬戸内海や宇和海などの豊か

<4D F736F F D D91208D918CF697A791E58A7795CE8DB7926C C F2E646F63>

h1

都道府県ごとの健康保険料率 ( 平成 30 年 ) 基本保険料率 / 特定保険料率の合算料率 都道府県 料率 都道府県 料率 都道府県 料率 都道府県 料率 北海道 東京 滋賀 香川 青森 神奈川 京都

輸送計画書 太極拳交流大会 開催地 : 秋田市 ねんりんピック秋田 2017 宿泊 輸送センター Ver.1 更新日 :8/28

秋田市会場最終結果一覧2.pdf


Microsoft Word - 公表資料2013本番

(別紙1)

地域医療ビッグデータに触ってみよう ほぼハンズオンマニュアル

県別 大学進学 37県で流出超過!|旺文社教育情報センター

労働力調査(基本集計)平成25年(2013年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等

PowerPoint プレゼンテーション

共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(確報集計結果)からの推計-

B 新潟県神戸市千葉市徳島県 新潟県神戸シニア選抜千葉市シニア徳島カバロスシニア (1 日目 ) 第 2 9:55-10:40 新潟県 0 ( ) 4 神戸市 (1 日目 ) 第 2 9:55-10:40 千葉市 1 ( (1 日目 ) 第 6 13:35-14:20 ) 1 徳島県 新潟県 0 (

<4D F736F F F696E74202D208DA196EC90E690B E63589F EA98EA191CC92B28DB882DC82C682DF E392E B315D81408DA196EC205B8CDD8AB B83685D>

平成 29 年度 消費者の意識に関する調査 結果報告書 食品ロス削減の周知及び実践状況に関する調査 平成 30 年 3 月 消費者庁消費者政策課

【H30】水難年報(H29)本文

【PDF】ディスクロージャー誌2008(一括ダウンロード)

Microsoft Word - 第二章

調査結果(資料1~資料9)

○ 第1~8表、図1~4(平成25年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について)

2003年5月2日

表 1) また 従属人口指数 は 生産年齢 (15~64 歳 ) 人口 100 人で 年少者 (0~14 歳 ) と高齢者 (65 歳以上 ) を何名支えているのかを示す指数である 一般的に 従属人口指数 が低下する局面は 全人口に占める生産年齢人口の割合が高まり 人口構造が経済にプラスに作用すると

平成29年度通級による指導実施状況調査結果について(別紙2)

- 1 - Ⅰ. 調査設計 1. 調査の目的 本調査は 全国 47 都道府県で スギ花粉症の現状と生活に及ぼす影響や 現状の対策と満足度 また 治療に対する理解度と情報の到達度など 現在のスギ花粉症の実態について調査しています 2. 調査の内容 - 調査対象 : ご自身がスギ花粉症である方 -サンプ

PowerPoint プレゼンテーション

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

建設工事受注動態統計調査報告 ( 平成 26 年度計分 ) 公共機関からの受注工事 (1 件 500 万円以上の工事 ) 時系列表については,9,10 ページ参照 26 年度の公共機関からの受注工事額は 16 兆 2,806 億円で, 前年比 4.3% 増加した うち 国の機関 からは 5 兆 7,

(Microsoft Word - \223o\230^\220\\\220\277\217\221\201iWord\224\305\201j.doc)

Transcription:

平成 23 年度東日本大震災を考慮した道の駅に関する研究 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ林隆史 1), 秋山聡 2), 谷口宏 3), 竹本由美藤村万里子 5), 岸田真 6) 7), 佐藤浩 4) 概要 : 本研究は道の駅が持つ機能に着目し 道の駅の基本機能である 休憩機能 情報発信機能 地域連携機能 の 3 つの機能の他 新たな機能として新潟県中越地震において注目された 防災機能 について その現状を整理するともに 先般発生した東日本大震災で果たした役割を踏まえ 今後の道の駅が持つべき機能と役割について考察を行ったものである その結果 東日本大震災では 広い駐車スペースを利用した災害応援の活動拠点や地域住民や道路利用者の一時 ( 次 ) 避難場所といった防災拠点として機能していた他 被災地への物流が滞る中 最寄品や農家より直接仕入れた農産品を販売することで 被災者ならびに生産者に活力を与え 地域コミュニティの維持に貢献していることが現地調査から確認された これらを踏まえ 道の駅が具備すべき防災機能について 1) 電力の確保 2) 災害用トイレの確保 3) スペースの確保といったハード対策 4) 非常時の運営体制整備 5) 農業関係者との連携といったソフト対策の二つの視点から考察し整理した キーワード : 道の駅 防災機能 防災拠点化 東日本大震災 1. はじめに 道の駅はドライバーが 24 時間利用できる 休憩機能 道路や地域の情報を提供する施設としての 情報発信機能 道の駅を接点に活力ある地域づくりを行う 地域連携機能 の3つの機能を基本コンセプトとし この3つの機能による相乗効果から 地域とともにつくる個性豊かな賑わいの場 を創出することが求められている 一方 新潟県中越地震においては 道の駅の新たな機能としての防災機能に注目が集まり 防災機能を持った道の駅が全国に整備されるようになった 1) そこで 本研究では昨年度の研究成果から特に道の駅の防災機能に着目し 東日本大震災で果たした役割について現地調査を踏まえて整理するとともに 防災機能を具備した施設の現状及び今後道の駅が持つべき機能とその役割について考察を行ったものである 2. 東日本大震災で道の駅が果たした機能 (1) 道の駅被災状況 3 月 11 日に発生した東日本大震災において 東北地方の道の駅では 多くの道の駅において 停電や断水 道路障害による物流の断絶といった 生活インフラの障害によって 通常営業が出来なくなるといった事態が生じる結果となった その中でも 沿岸部に立地する 4 箇所の道の駅は津波による直接的な被害を受けた他 原発事故の避難区域内の道の駅も存在するなど 被災した道の駅の中には 未だ営業の見込みが立たない駅もある 筆者らは被災した道の駅の現状を調査すべく 4 月 28 日から 岩手県 宮城県の沿岸部を中心とした道の駅の状況について調査を行った 以下に調査した道の駅の一部についてその状況を示す 1) 林隆史 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループチームリーダー 2) 秋山聡 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ主任研究員 3) 谷口宏 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ上席主任研究員 4) 竹本由美 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ主任研究員 5) 藤村万里子 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ上席主任研究員 6) 岸田真 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ主任研究員 7) 佐藤浩 ( 財 ) 国土技術研究センター道路政策グループ総括 - 1 -

1) 道の駅 たろう ( 岩手県宮古市 ) 道の駅 たろう は 宮古市の旧田老町の中心部より約 3km 北方の標高約 140m の台地に位置しており 東北地方における防災機能を具備した 3 箇所の道の駅の 1 つであるとともに 宮古市の地域防災計画の一次避難場所としても位置付けられている 幸い津波浸水区域から外れていたため 大津波による被災は免れたものの 周辺は停電や断水に見舞われた しかしながら 道の駅 たろう の敷地内に防災拠点として設置された津波防災 道路情報館は 非常用発電装置を用いて 周辺が停電する中で 唯一の情報発信拠点として機能し また沢水を用いた非常用トイレを開放するなど 多くの人々が一時避難所として利用した 一方 津波防災 道路情報館は他の施設と管理者が異なっており 結果的には道の駅の指定管理者が一時的に対応せざるを得なかったなど 発災時の運用についての課題も残った 写真 -3 津波により被災した道の駅 みやこ 3) 道の駅 高田松原 ( 岩手県陸前高田市 ) 道の駅 高田松原 は 国道 45 号沿いの道の駅であり 日本百景にも数えられる白砂青松の浜 高田松原に存在している そのため 付近一体をおそった大津波によって壊滅的な被害を受け 現在でも復旧の目処がたっていない 一方 広い駐車スペースのがれきが整理され 自衛隊等の活動車両の駐車場として利用されていた 写真 -1 たろう津波防災 道路情報館 ( 手前 ) 写真 -4 津波により壊滅した道の駅 高田松原 写真 -2 自家発電によって 24 時間稼働した情報提供設備 2) 道の駅 みやこ ( 岩手県宮古市 ) 道の駅 みやこ は 岩手県内を縦横に結ぶ国道 45 号と 106 号の結節点に位置し 宮古港の出崎埠頭に立地している しかしながら 埠頭に立地していたことから 一帯をおそった大津波によって 壊滅的な施設被害を受け 現在でも復旧の目処が立っていない 写真 -5 広い駐車スペースを活かした活動拠点 4) 道の駅 大谷海岸 ( 宮城県気仙沼市 ) 道の駅 大谷海岸 は宮城県気仙沼市本吉町の国道 45 号線沿いにあり JR 気仙沼線の大谷海岸駅に併設され 日本一海水浴場に近い駅 はまなすステーション とし - 2 -

て設置されている また 海岸に近いこともあり 大津波によって 建物は壊滅的な被害をうけた しかし 鉄骨の骨組みを残すだけとなった直売所の補修にとりかかり 骨組みにトタン板を張り 電気も水もない中 4 月 29 日 わずかな品を並べて直売所は再スタートを切り 農林水産物と生活用品の販売 小さな食堂を再開している 近くに店が無いことから 直売所には米 野菜 鮮魚の他に 日用雑貨 インスタント食品といった最寄品が置かれ 被災した人々を支えるものとして機能していた また 食堂は昼時には地元の人に加え 復興関係者で賑わい 地域住民に活力を与えていた 写真 -8 広い駐車場を活動拠点として活用 6) 道の駅 上品の郷 ( 宮城県石巻市 ) 道の駅 上品の郷 は 国道 45 号に面しているものの 内陸部に存在していることから 津波の被害を免れた しかしながら停電や断水が発生したため ポータブル型発電装置を用いて 震災当日から営業を継続した また 物流が途絶える中 近隣の農家からの仕入れた農産品の販売を行うと共に 水道の復旧と共に温泉施設を再開させることで 被災者や復旧にあたる工事関係者 ボランティアが訪れ 毎日 1000 人以上に利用された 写真 -6 津波により被災した道の駅 大谷海岸 写真 -9 震災当日から営業した 上品の郷 写真 -7 被災した直売所を補修して再開 5) 道の駅 津山 ( 宮城県登米市 ) 道の駅 津山 は 国道 45 号に面しているものの 海岸部からは 10 数キロ離れた内陸部に存在していたことから 津波による建物等に被害はなく 生活インフラの一部 ( 電話等 ) が影響を受けるに留まった 大きな被害を受けた南三陸町に近く 広い駐車スペースを有することから 自衛隊やレスキュー隊の前進基地や 南三陸町のツアー客の一時避難場所として利用された 7) 道の駅 三本木 ( 宮城県大崎市 ) 道の駅 三本木 は 内陸部の国道 4 号に面しており 東北地方における防災拠点として整備された道の駅の一つでもある 地震の影響により付近は停電や断水に見舞われた 近隣には 大崎市三本木支所があり 近隣住民の多くは避難所となった支所へ避難する一方で 付近を走行していた道路利用者の多くは 道の駅に避難所として駆け込んだ そこで 防災機能として整備した自家発電装置を稼働させ また貯留型の防災トイレを活用し 従業員らの手によって 24 時間営業を続けた その結果 震災当日は 30~40 人が休憩所内や駐車場の自家用車内で宿泊し 実質的な臨時避難所になった また 販売用としてストックしていた おにぎり 菓子 もち 野菜などを提供し 近隣住民にも利用され 大変喜ばれた - 3 -

写真 -10 臨時避難場所となった防災情報ステーション 写真 -13 自家発電装置によって 24 時間情報を発信 ( 道の駅 三本木 ) その他 物流が途絶え 近隣の店舗が津波で壊滅する中 通常の品揃えとは変えて駅長自ら内陸部へ仕入れに行き 日用品を中心に品揃えを行ったり 近隣の農家から直接仕入れた農産品を販売するなど 近隣店舗の代替として機能するとともに 地域住民との接点を図ることによって コミュニケーション機能を発揮し 近隣住民に活力を与えた 写真 -11 使用された災害用貯留型マンホールトイレ (2) 道の駅が果たした機能今般発生した 東日本大震災において道の駅は防災施設の有無に関わらず 施設各々の特徴を活かし 公共 としての役割を果たした 特に津波による被害を免れた高台や被災地周辺部にある道の駅は 停電や断水による影響はあったものの 広い敷地や駐車スペースを活かし 自衛隊などの活動拠点や 水 食料 トイレ 車中泊場所等を提供する避難場所として機能した 写真 -14 物流が滞る中 地元農家からの野菜類の販売 ( 道の駅 三本木 ) 3. 防災機能を備えた道の駅 (1) 道の駅の現状道の駅は平成 23 年 3 月 3 日現在 全国で 970 駅が登録されており 地区別では北海道が 112 駅と多く 本州では岐阜県が 53 駅 長野県が 41 駅 新潟県が 34 駅と続いている 写真 -12 停電 断水の中での仮設トイレの提供 ( 道の駅 やまだ ) また 防災拠点化された 2 駅 ( 道の駅 たろう 道の駅 三本木 ) では 災害用トイレの開放や 自家発電装置を活用し 周辺が停電する中で 唯一の情報発信拠点として機能し 多くの方が一時避難所として利用した 表 -1 道の駅の設置状況 ( 平成 23 年 3 月 3 日現在 ) 2) 都道府県 駅数 都道府県 駅数 都道府県 駅数 都道府県 駅数 北海道 112 東京 1 滋賀 15 香川 18 青森 27 神奈川 2 京都 14 愛媛 24 岩手 30 山梨 17 大阪 8 高知 21 宮城 12 長野 41 兵庫 30 福岡 16 秋田 30 新潟 34 奈良 12 佐賀 8 山形 17 富山 14 和歌山 23 長崎 9 福島 23 石川 22 鳥取 12 熊本 21 茨城 9 岐阜 53 島根 27 大分 22 栃木 19 静岡 21 岡山 16 宮崎 14 群馬 25 愛知 14 広島 15 鹿児島 18 埼玉 18 三重 15 山口 19 沖縄 7 千葉 21 福井 9 徳島 15 合計 970-4 -

平成 16 年 10 月に発生した新潟県中越地震では 道の駅が道路利用者や周辺住民の避難場所となり 炊き出しや仮設住宅が供給されるとともに 被害状況や周辺住民の安否確認など情報発信基地として利用され 道の駅の新たな機能として注目を集めた その後の震災復興のための支援者ボランティアセンターおよび援助物資の配給拠点など 大規模災害の復興を支援する施設としても利用された そこで 平成 19 年 3 月に開催された社会資本整備審議会道路分科会第 23 回基本政策部会において 防災拠点化や機能の多様化など 道の駅の新たな展開についての方針 3) が打ち出された (2) 防災機能を持った道の駅の登場新潟県中越地震を踏まえ 防災機能を持った道の駅の検討が進められ 関東地方では平成 18 年 4 月 国道 50 号沿いに初の防災拠点機能をもった道の駅が整備された この道の駅 みかも は栃木県藤岡町と道路管理者が連携し 災害時の避難所 物資の輸送拠点等を想定した 非常用電源 貯水槽 給水タンク 情報提供施設 が整備されている また 地域の防災拠点に指定されていなくても 近年の防災意識を反映して 防災倉庫や非常用トイレなどを備えた道の駅も増加している 写真 -16 災害用トイレを備蓄 ( 道の駅 ようか但馬蔵 ) また 防災拠点化に関連し 道の駅を活用した地域での取り組みも始まっており 岐阜県東濃地区においては 平成 19 年 12 月 災害時における応急生活物資の供給及び被災者等への支援に関する協定 が締結され その後福島県では平成 20 年 8 月に 道の駅防災総合利用に関する基本協定 を締結 また群馬県では 道の駅の防災総合利用に関する基本協定 が平成 20 年 11 月にそれぞれの道の駅と締結され 災害発生時における道の駅の防災総合利用が本格化されている 道の駅名 表 -2 防災拠点として整備された道の駅の例 都道府県接続道路 合計 駐車場 普通車 大型車 障害者 道路 情報提供施設は被災時にも使用 避難所や支援物資の中継 集配 分配拠点等に使用 気象 情報提供 観光 地域 その他 給水タンク 非常用電源 防災関係非ト常イ用レト貯イ水レ槽 1みかも 栃木県 国道 50 号 125 83 39 3 - - - - 2たろう 岩手県 国道 45 号 42 35 5 2 - - - 3 三本木 宮城県 国道 4 号 158 125 29 4 - - - 4 協和 秋田県 国道 46 号 137 121 12 4 - - - - - - 防災 5ちぢみの里拠おぢや 新潟県 国道 17 号 82 68 12 2 - - - - - - 点 6 美濃にわか茶屋 岐阜県 国道 156 号 44 33 9 2 - - - - - 7ようか但馬蔵兵庫県 国道 9 号 134 114 18 2 - - - - - - 8 源平の里むれ 香川県 国道 11 号 59 45 12 2 - - - - - 9たちばな 福岡県 国道 3 号 70 60 8 2 - - - 不明なため - の表示の場合がある 写真 -15 災害時に使用可能な情報提供施設 ( 道の駅 ちぢみの里おぢや ) 防災用倉庫 通信施設 表 -3 群馬県 道の駅の防災総合利用に関する基本協定 目的災害発生時における迅速かつ適確な応急対策等の実施 協定者 協定内容 防災利用内容 群馬県と県内の 道の駅 19 駅及び道路管理者 災害発生時に県からの要請に基づき 道の駅 施設やスペースを防災利用する (1) 避難施設 ( 臨時入浴施設を含む ) の提供 (2) 救援物資の提供及び保管 (3) 救援物資の運送に係る拠点 中継施設の提供 (4) 防災関係機関の活動拠点場所の提供 (5) 道路情報 被災情報等の発信 (6) 広域避難における中継 休憩施設の提供等 (3) 道の駅として具備すべき防災機能昨年度から行っている道の駅の機能に関する研究において 筆者らは道の駅の多様化する機能について調査を行い その中の一つとして 防災拠点機能の一層の強化について提言としてとりまとめた 今回の東日本大震災においては 図らずも道の駅が防災機能の有無に関わらず 地域の防災拠点として重要な役割を果たしたことが判明した これらを踏まえれば 道の駅が地域住民や道路利用者の一時避難場所や災害情報を提供する上で有効に活用できる可能性があることは言うまでもない そのためには 発災後から避難所もしくは自宅での生活が開始できるまでの数日間の避難生活を維持するための防災機能の具備および強化を行っていく必要がある 今回の東日本大震災を機に 道の駅は防災機能の向上に係る作業を進めてくべきであり 今後の取り組むべきハード ソフトの二 - 5 -

つの視点ついて示す < ハード対策の視点 > 1 電力の確保電力や情報通信に大きく依存する情報化社会でとなった今日 非常時における電力の確保はインターネットやテレビ 携帯電話による情報収集や状況の把握といった地域の暮らしを支える基盤を支える上で不可欠であるとともに 照明確保により 夜間帯での安心した避難生活が可能となることから 非常用自家発電装置の導入による電力の確保が重要である て 道の駅を地域防災計画における防災拠点として位置付けることは勿論 災害時には結局のところ 現地にいる者が対応せざるを得ない現状を踏まえた上で 役割分担 運営体制 費用負担について明確化しておく必要がある 5 農業関係者との連携道の駅では 地域の農産品を販売していることが多く 物流の途絶える初期段階において それらの農産品を提供できるよう 常日頃より農業関係者と連携を図ることも重要である 2 災害用トイレの確保被災地において 避難所でのトイレは衛生面で深刻な問題を抱え 時には人々の健康面に多大な影響をあたえる要因となるため 災害用トイレの確保は重要である 特に多くの避難者が利用する可能性がある道の駅では 衛生面に優れた貯留タンクや洗浄用貯水槽を備えた災害用トイレの確保についても検討すべきである 3 スペースの確保道の駅といっても その駐車場の広さは大小様々である しかし 非常時においては 地域の幹線道路に面しており 支援車両の駐車スペース ヘリポートもしくはテント 仮設住宅の設置場所として有効活用が可能となる 通常時は駐車場や広場などとして利用しつつ 非常時の活用を検討しておくべきである < ソフト対策の視点 > 4 非常時の運営体制整備多くの道の駅が指定管理者によって管理されている一方で 災害時における避難者への対応といった 本来公共が担うべき役割について 地方自治体 道路管理者 指定管理者との役割分担や運営体制が不明確であった これらを鑑み 避難者の対応につい 4. おわりに 今回の東日本大震災では これまでの想定をはるかに超えた巨大な地震 津波が発生した 一度の災害では戦後最大の人命が失われ膨大な被害の発生をもたらすなど これまでの我が国の地震 津波対策のあり方に大きな課題を残した 道の駅においても例外でなく 津波 地震による施設の破壊 流失 ライフラインの喪失などが相次ぎ 道の駅の基本 3 機能でさえ提供出来なくなるといった事態が発生した こうした観点のもと 道の駅の防災拠点化は その地域の自然 災害特性や道の駅の立地条件を踏まえながら 適切な防災機能と役割を選択し 地域の防災計画等と合わせ 地域と一体となった道の駅の活用方策の検討を行うことが肝要であるといえる JICE では引き続き 1) 全国の道の駅における防災機能の現状について把握を行っていくとともに 2) 道の駅の立地条件や利用実態を踏まえた上での具備すべき防災機能について研究を行っていく予定である 参考文献 1) 平成 22 年度道の駅の機能に関する研究,(( 財 ) 国土技術研究センター ) 2) 国土交通省道路局ホームページ 3) 社会資本整備審議会道路分科会第 23 回基本政策部会資料 - 6 -