被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

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年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

最高裁○○第000100号

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

最高裁○○第000100号

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

インターネット上の誹謗中傷対応の基礎(Web公開用)

事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

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最高裁○○第000100号

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

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に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

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非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

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19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

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平成20年7月11日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

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判決【】

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平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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(イ係)

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

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沖縄厚生年金事案 440 第 1 委員会の結論申立人の申立期間のうち 申立期間 2に係る標準報酬月額は 事業主が社会保険事務所 ( 当時 ) に届け出た標準報酬月額であったと認められることから 当該期間の標準報酬月額を 28 万円に訂正することが必要である また 申立期間 3について 申立人は当該期

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東京地方裁判所委員会 ( 第 36 回 ) 議事概要 ( 東京地方裁判所委員会事務局 ) 第 1 日時平成 27 年 10 月 22 日 ( 木 )15:00~17:00 第 2 場所東京地方裁判所第 1 会議室第 3 出席者 ( 委員 ) 貝阿彌誠, 足立哲, 大沢陽一郎, 大野正隆, 岡田ヒロミ

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ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

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平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

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滞納処分によって財産の差押えを受け 被告がその売却代金等の配当を受けたことについて 本件各申告の一部は錯誤に基づく無効なものであり これを前提としてされた滞納処分も無効であるから 被告は法律上の原因なく配当を受けているとして 不当利得返還請求権に基づき 前記第 1の請求記載の各金員の支払を求めている

平成14年7月3日

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処分済み

Transcription:

主 文 1 被告は, 原告に対し,30 万円及びこれに対する平成 26 年 4 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 訴訟費用は, これを6 分し, その5を原告の負担とし, その余を被告の負担とする 3 この判決は, 主文 1 項に限り仮に執行することができる 事実及び理由第 1 請求被告は, 原告に対し,200 万円及びこれに対する平成 26 年 4 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 大学教授である原告が, 講義時に 阪神タイガースが優勝すれば無条件で単位を与える という発言 ( 以下 本件発言 という ) をしていないのに, 大学生である被告により, 原告が本件発言をした旨をツイッターに投稿され, それがインターネット上で広く取り上げられたために精神的苦痛を被ったと主張して, 被告に対し, 不法行為による損害賠償請求権に基づき,20 0 万円及びこれに対する不法行為日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 2 前提事実以下の事実は, 当事者間に争いがないか, 括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる本件の前提事実である (1) 当事者原告は,A 大学大学院 B 科教授であり,A 大学 C 学部の教授を兼任している ( 甲 1) - 1 -

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇した場合, 特別恩赦を発令し, 全員合格とする と記載されたパワーポイントのスライド ( 以下 本件スライド という ) を用いて話している状況を撮影し, 同日, ツイッターにその画像及び 阪神が優勝したら無条件で単位くれるらしい というコメントを投稿した ( 以下 本件投稿 という 甲 2) 本件投稿は, インターネット上の複数のまとめサイトのほか,BIGLO BEニュース ( 同年 4 月 16 日 ),JCASTニュース( 同日 ) 及び産経 W EST( 同年 6 月 9 日 ) 等のニュースサイトで取り上げられた ( 甲 4~8) 3 争点及び当事者の主張 (1) 本件投稿の内容が虚偽であるか ( 争点 1) ( 原告の主張 ) 原告は, 本件スライドを示しながら かつては, 阪神タイガースが優勝した場合, 全員合格とするという教授もいたが, 現在はそんなことはない と説明したのであり, 本件発言はしておらず, 本件投稿の内容は虚偽である ( 被告の主張 ) 本件投稿の内容は真実である 原告は, 本件スライドを示しながら本件発言をした 被告は, そのとおりの内容をツイッターに投稿したにすぎない (2) 因果関係の有無 ( 争点 2) ( 原告の主張 ) 被告の本件投稿により, 原告が本件発言をしたかのような虚偽の情報がインターネット上で流布され, 原告に権利侵害及び損害が生じた - 2 -

( 被告の主張 ) 被告以外にも, 本件スライドの撮影画像をツイッターに投稿した者がいる 被告が本件投稿をしなくても, 本件発言はインターネット上に公開されたのであり, 被告の行為と原告の権利侵害及び損害との間に因果関係はない (3) 権利侵害の有無及び損害額 ( 争点 3) ( 原告の主張 ) 被告の本件投稿により, 原告は, いい加減な授業や単位付与をしているかのような誤解を受け, 大学教授としての社会的評価が下落するとともに, 業務妨害といえる被告の行為により授業の運営が困難となった また, 本件講義では, 携帯及びスマートフォンの利用を禁止し, 講義内容をインターネットで公開することを許しておらず, 本件投稿の違法性は著しい これによる原告の精神的苦痛に対する慰謝料の相当額は200 万円を下らない ( 被告の主張 ) 被告は, 原告が用いた本件スライド及び原告の説明どおりの内容をツイッターに投稿したにすぎず, 原告に精神的苦痛が生じたとは思われない 第 3 当裁判所の判断 1 事実経過前提事実, 証拠 ( 甲 17のほか, 文中掲記のもの ) 及び弁論の全趣旨によれば, 以下の事実が認められる (1) 原告は, 平成 26 年 4 月 14 日の本件講義において, 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇した場合, 特別恩赦を発令し, 全員合格とする と記載された本件スライドを示しながら, かつては, 阪神タイガースが優勝した場合, 全員合格とするという教授もいたが, 現在はそんなことはない と説明した 被告は, 本件講義を受けていたが, 本件スライド及びその横で話す原告の立ち姿を撮影し, 同日, その画像に 阪神が優勝したら無条件で単位くれる - 3 -

らしい というコメントを付してツイッターに投稿した ( 本件投稿 ) (2) 同日, インターネット上の複数のまとめサイトにおいて, 本件投稿が紹介された 平成 26 年 4 月 16 日には ( ア )BIGLOBEニュース及び( イ )JC ASTニュースで, 同年 6 月 9 日には ( ウ ) 産経 WESTで, 本件投稿につき ネットは盛り上がっている, 物議を醸した などと紹介された (3) 原告は, 平成 26 年 5 月の連休明けに, インターネット上で本件投稿が広く取り上げられていることを知った 同年 8 月, 原告がこの件につき学部長や専攻代表に相談したところ, 専攻代表が, 原告と被告を呼んで話し合いの場を設けた その結果, 被告が提出した文書 ( 甲 9) には,( ア ) 本件スライドをみて 面白いジョークだな と思い, みんな冗談とわかるだろう という軽い気持ちで撮影して画像をSNSに掲載したが, 事が大きくなってしまったこと,( イ ) 原告に迷惑をかけたことを謝罪すること,( ウ ) 転載されたアフィリエイトブログひとつひとつに削除依頼をし, 定期的に途中経過や削除依頼の結果等に係る報告のメールを原告に送信することなどが記載されていた しかし, 被告は, その後, 原告に上記報告のメールを送信しなかった (4) 原告は, 代理人としてD 弁護士を選任し, 同弁護士は, 平成 27 年 11 月に被告に対し, 内容証明郵便及び簡易書留により削除依頼の状況報告を求める文書を送付したが, いずれも被告が受領せずに返還されたため, 同年 12 月 21 日付けで普通郵便により同様の文書を送付した (5) 被告は, 平成 27 年 12 月 31 日にD 弁護士に文書 ( 甲 13) をファックスで送信した そこには,( ア ) 平成 26 年 4 月の本件投稿当日,livedoorに記事の削除依頼をしたが応じてもらえなかったこと,( イ ) 平成 27 年 4 月に,3 か所のまとめサイトの管理者に削除依頼をして応じてもらい, 産経ニュースに削除依頼をして, 応じられないが記事は半年で自動的に削除されるとの返答を受けたこと,( ウ ) 同年 12 月に1か所のブログの管理者に削除依頼をして応じてもらい,livedoorに改めて削除依頼をしたがブログの管理者と相談し - 4 -

て削除するかどうかを決める旨の返答を受けたことなどが記載されていた (6) D 弁護士は, 被告に対し, 平成 28 年 1 月 6 日付けで普通郵便により, ツイッターに本件投稿の訂正及び謝罪の投稿をするよう求める旨の文書 ( 甲 1 4) を送付した 被告は, これを放置したが, 指導教員から電話で強く求められ, 同年 5 月 18 日, 約 2 年前の本件投稿は嘘である旨をツイッターに投稿した もっとも, 本件訴訟までそれを原告に報告しなかった 被告は, その後, 専攻代表からのメールに返信せず, 電話にも出ない状況となった (7) 原告は, 平成 28 年 5 月 20 日, 本件訴訟を提起した 被告は, 訴訟代理人弁護士 2 名を選任し, 同年 6 月 20 日に第 2の3( 被告の主張 ) の内容の答弁書を提出した 同月 24 日の進行協議期日では, 審理に先行して和解協議を進める方針が確認され, 同年 9 月 6 日の期日では, 原告が出席して和解協議がされた 同年 10 月 3 日の期日では, 被告が出席して和解協議がされる予定であったが, 被告が出席せず, 被告訴訟代理人らが被告と連絡がとれない状態であると述べた 同月 17 日, 被告訴訟代理人らは辞任届を提出した 被告は, それ以降, 弁論終結まで期日に出席しなかった 2 争点 1( 本件投稿の内容が虚偽であるか ) について前記認定のとおり, 原告は, 本件講義時に本件発言をしておらず, 本件投稿の内容は虚偽であると認められる 被告は, 原告が実際に本件発言をした旨主張する しかし,( ア ) 本件講義に出席した60 余名の学生が, 原告によるアンケートに対し, 原告の説明内容が上記認定のとおりであった旨回答したこと ( 甲 16),( イ ) 被告も, 本件訴訟前は, 原告の説明内容が上記認定のとおりであった旨の文書 ( 甲 9,15) を原告に提出していたこと,( ウ ) 本件講義に係る科目につき成績評価がされるのは8 月初めであり, 時的関係から阪神タイガースの優勝という事情を成績に反映させるのはほぼ不可能であること ( 弁論の全趣旨 ) などの事情がある これらによれば, 被告の上記主張は採用することができず, その主張内容は不合理なものと - 5 -

いわざるを得ない 3 争点 2( 因果関係の有無 ) について被告の本件投稿により, 原告が本件発言をしたという虚偽の情報がインターネット上で広がり, 原告に後記の権利侵害及び損害が生じたことが認められる 被告は, 被告以外に本件スライドの撮影画像をツイッターに投稿した者がいるから ( 甲 3), 被告の行為と, 原告の権利侵害及び損害との間に因果関係がないと主張する しかし, 複数のまとめサイト ( 甲 4,5) 及びニュースサイト ( 甲 6~8) が被告の本件投稿を引用していると認められるから, 上記虚偽の情報が流布したことについて, 被告の本件投稿の寄与は大きいものといえる したがって, 被告が指摘する上記事情を考慮しても上記因果関係が認められ, 被告の上記主張は採用することができない 4 争点 3( 権利侵害の有無及び損害額 ) について (1) 権利侵害の有無について本件投稿により, 原告が実際に本件講義で本件発言をし, 大学教授として正しい成績評価をしていないと受け取った者が一定数はいるものと解される したがって, 被告が本件投稿をした行為は, 原告の社会的評価を低下させ, 名誉を毀損する不法行為に当たるものといえる (2) 損害についてア被告は, 本件投稿により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料の支払義務を負うが, 次の事情からは, 高額の慰謝料を認めるべきとはいえない ( ア ) 近年, 大学における成績評価の公正さが求められており, 本件発言のような形で単位を与えることが許されないのは公知の事実であることなどを考慮すれば, 本件投稿に掲載された本件スライドの内容につき真実であると受け取った者が多かったとは解されず, むしろ大学教授の学生に対する冗談であろうと受け取った者が多かったと解される したがって, 原告の社会的評価の低下の程度は小さかったといえる - 6 -

( イ ) 被告は, 強い悪意に基づいてではなく, 軽い気持ちで本件投稿をしたものであった ( 甲 9) イ他方, 次の事情からは, 慰謝料の額を著しく低額とすべきとはいえない ( ア ) 本件投稿の内容は, 虚偽である その内容は, 一般人の興味を惹くものであって, 真実であれば原告の大学教授としての職務遂行につき, 所属大学において, 更には社会的に問題視され得るものであるといえる ( イ ) 本件投稿は, 広く一般人の目に触れるツイッターにされた上, 多数のサイトに転載され, そのすべてを削除することが困難となった 被告は, 大学生にもなっており, ツイッターで虚偽の事実を摘示する行為がこのような大きな事態を招くことを認識することができたといえる ( ウ ) 原告は, 原則として本件講義における携帯電話やスマートフォンの使用を禁じており, 本件スライドを撮影して本件投稿をした被告の行為は, その禁止に違反するものであったと窺われる ( エ ) 本件投稿が問題となってから現在までの被告の原告への対応は, 大学教授に迷惑をかけた学生の対応として不誠実なものであった すなわち, 被告は,(a) 平成 26 年 8 月に原告に対し, 本件投稿を転載した全サイトの管理者等に削除依頼をし, その経過を定期的に報告する旨約束したのに, その報告をせず, 約 1 年 4か月後に原告側から催促されてようやくその報告をしたところ,(b) その報告を前提としても, 上記約束を果たすための十分な努力をしたとはいえず,(c) その後は大学関係者からの連絡に応じなくなり,(d) 本件訴訟においては, 原告が実際に本件発言をした旨の不合理な主張をした後, 自ら選任した訴訟代理人弁護士らとの連絡を絶ち, その後, 期日に出席しなかった なお, 原告がそのような被告に対して謝罪と事後対応を求めた過程は, 教育者という立場を踏まえた相当に辛抱強いものであり, 最後に他の適切な手段がなくなったために本件訴訟を提起したものと解される - 7 -

( オ ) 原告は, 原告が本件発言をしたという虚偽の事実がインターネット上で話題になっていることを知った後, 心労で全身に疱疹ができて2 週間休んだ旨を陳述書 ( 甲 17) に記載しているところ, 上記虚偽の事実がインターネット上で流布されて原告を揶揄するコメントが付されたことや, その後の被告の対応の不誠実さを考慮すれば, 原告がかなりの精神的苦痛を被ったことは理解することができる ウ以上の事情を総合すれば, 原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料の額は20 万円とするのが相当である エ上記認定額その他本件に現れた諸事情を考慮すれば, 本件訴訟につき原告が要した弁護士費用のうち10 万円を被告に負担させるのが相当である 5 結論以上によれば, 本件請求は, 不法行為による損害賠償請求権に基づき30 万円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し, その余は理由がないから棄却することとし, 主文のとおり判決する 大阪地方裁判所第 20 民事部 裁判官宮﨑朋紀 - 8 -