とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

最高裁○○第000100号

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

最高裁○○第000100号

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

インターネット上の誹謗中傷対応の基礎(Web公開用)

(Microsoft Word -

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

判決【】

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

最高裁○○第000100号

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

めた事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実 ) (1) 当事者ア原告は, 映画プロデューサーである ( 甲 1,2) イ被告は, 新聞社であり, ウェブサイト 朝日新聞デジタルAJW を運営するものである (2) 原告の著

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

平成 27 年 12 月 9 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 11 月 6 日 判 決 東京都荒川区 < 以下略 > 原 告 株式会社オールビユーテイ社 同訴訟代理人弁護士 山 本 隆 司 同 植 田

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4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

(イ係)

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

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最高裁○○第000100号

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

 

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

期分本税 831 万 1900 円の合計 以下 本件租税債権 という ) (3) 東京国税局国税徴収官 B( 以下 B 徴収官 という ) は 同局特別国税徴収官 C( 以下 C 特官 という ) の決定に基づき 平成 20 年 3 月 6 日 原告がA 証券に対して有していた本件証拠金の返還請求権

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

主位的に自筆証書 ( 後述の本件文書 ) による遺言に基づいて遺贈を受けたこと, 予備的に死因贈与を受けたことを主張して, 不当利得 ( 主位的 ) 又は死因贈与契約 ( 予備的 ) に基づく3000 万円 ( 内金請求 ) 及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成 27 年 12 月 5 日か

被 告 株式会社日本ジャーナル出版 東京都江戸川区 < 以下略 > 被 告 I 東京都港区 < 以下略 > 被 告 J 同所被 告 K 上記 4 名訴訟代理人弁護士山 上 俊 夫 主 文 1 被告株式会社日本ジャーナル出版, 同 J 及び同 Kは, 連帯して, 原告らそれぞれに対し80 万円及びこれ

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平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

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2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

平成  年(オ)第  号

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により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

( 一 ) 被告は 建築土木の設計施工管理及び請負並びに資材販売業 及び 不動産の売買業 等を目的とする会社であり 原告らは 同社から昭和六三年一月頃別紙物件目録記載の分譲マンション ( 以下 本件マンション という ) を約二〇〇〇万円にてそれぞれ購入し 同年八月頃それぞれ引渡しを受けた ( 二

任の下に表現され 掲載されるものであり ブログ投稿ユーザーは掲載した情報の信頼性 真実性 正確性 妥当性 適法性 完全性を当社及びブログ投稿ユーザーを含む閲覧ユーザー並びにあらゆる第三者に対して保証するものとします なお 当社は これらについて何ら保証するものではなく また 掲載された情報等が本規約

事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

平成 30 年 ( 受 ) 第 269 号損害賠償請求事件 平成 31 年 3 月 12 日第三小法廷判決 主 文 原判決中, 上告人敗訴部分を破棄する 前項の部分につき, 被上告人らの控訴を棄却する 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする 理 由 上告代理人成田茂ほかの上告受理申立て理由第

税研Webセミナー利用規約

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

25 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 5 訴訟費用は, 第 1,2 審とも, 被控訴人らの負担とする 6 仮執行宣言第 2 事案の概要 1 本件は, 服飾品の販売等を業とする控訴人が, 控訴人の従業員であった被控訴人 Y2 及び同 Y3 が控訴人を退職し, 被控訴人 Y1 が経

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

3 被告は, 原告に対し, 金 3453 万 2652 円及びこれに対する平成 23 年 12 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件訴訟は, 原告が, 被告の製造販売に係るデジタルカタログについて, 原告の特許権を侵害している旨主張して, 被告に対し

平成20年7月11日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

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平成 25 年 7 月 16 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官上原啓司 平成 24 年 ( ワ ) 第 24571 号損害賠償等請求事件 ( 口頭弁論の終結の日平成 25 年 6 月 6 日 ) 判 決 東京都武蔵野市 以下略 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 小 倉 秀 夫 東京都足立区 以下略 被 告 B 主 文 1 被告は, 原告に対し,50 万円及びこれに対する平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 原告のその余の請求を棄却する 3 訴訟費用は, これを8 分し, その7を原告の負担とし, その余は被告の負担とする 4 この判決は, 第 1 項に限り, 仮に執行することができる 事実及び理由 第 1 請求被告は, 原告に対し,400 万円及びこれに対する平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 漫画家である原告が, 被告に対し,1 被告が原告の描いた似顔絵を無断で画像投稿サイトに投稿したことは, 原告の著作権を侵害し, かつ, その名誉又は声望を害する方法で著作物を利用する行為として原告の著作者人格権を侵害するものであり, また,2 被告がその削除を求めた原告からあたかも殺害予告を受けたかのような記事をツイッターのサイトに投稿したこ - 1 -

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか, 各項目末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実 ) (1) 原告は, 海猿, ブラックジャックによろしく, 特攻の島 等の作品で知られる漫画家であり, 訴外有限会社佐藤漫画製作所 ( 以下 佐藤漫画製作所 という ) は, 原告の制作した漫画作品の著作権の管理等を行う特例有限会社である なお, 海猿 は, これを原作としてテレビドラマ化, 映画化がされている (2) 佐藤漫画製作所は, 同社の運営する 漫画 on Web というウェブサイトの販売促進活動の一環として, 同サイトで原告の作品を購入した顧客に対し, その希望する人物の似顔絵を原告が色紙に描き, これを贈与するというサービスを提供していた (3) 被告は, 平成 24 年 3 月 20 日頃, 上記サイトを通じて, 原告の作品である 特攻の島 第 3 巻及び第 4 巻を購入し, 佐藤漫画製作所に対し, 上記サービスの一環として, 昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を描き贈与するよう申し入れた 原告は, 上記サービスの趣旨に従い, 昭和天皇及び今上天皇の似顔絵各 1 枚 ( いずれも正中線より右側部分のみ 乙 2の1 2, 乙 3 以下, これらを併せて 本件似顔絵 という ) を描き, 佐藤漫画製作所がこれを被告に送付した (4) 被告は, 同月 24 日, ツイッターのサイト ( 以下 本件サイト という ) に, 天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい 陛下の似顔絵を描いてくれるプロのクリエイターさん お願いします クールJAPANなう, です と投稿し, その後, 本件似顔絵のうちの1 枚を撮影した写真を - 2 -

Twitpicという画像投稿サイトにアップロードした上, 本件サイトに 陛下プロジェクトエントリーナンバー 1,A 海猿, ブラックジャックによろしく, 特攻の島 と投稿して, 上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した また, 被告は, 同日, 本件似顔絵のうちの残る1 枚を撮影した写真を上記画像投稿サイトにアップロードした上, 本件サイトに はい応募も早速三通目! 盛り上がって来たねぇ陛下プロジェクト なんとまたAさんの作品だ! なんか, 萌えますな 萌え陛下 と投稿して, 上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した ( 以下, 被告によるこれら一連の行為を 本件行為 1 という ) これに対し, 原告が, お客様のリクエストには極力お応えするのですが, 政治的, 思想的に利用するのはご遠慮ください あくまで個人的利用の範囲でお応えしたイラストです と投稿したところ, 被告は, あ, はいゴメンなさい 賛同していただけると思ったのですが, 届きませんでしたか... ごめんなさい 消します と投稿し, その後, 本件似顔絵の写真を上記画像投稿サイトから削除した ( 甲 1,2,4,6,7,9, 乙 2の1 2, 乙 3) (5) しかし, 被告は, 本件サイトに, 同月 25 日, 毒をもって毒を制すということで, 大手マスコミと同じ手法を取ってみた などと投稿し, 同月 26 日には, どんな手を使っても注目を集めて伝えたいことがあるんです, Aさんにも 害予告されましたし, あちこちから狙われてますのでw 俺の交友範囲は右から左, 官から暴, 聖から貧まで幅広いですが, 危険情報ばかり流しているので... アブナイJAPANというのに少しまとめてありますので, アホかと思ったらtogetterで検索を と投稿した ( 以下, 被告によるこれらの投稿を 本件行為 2 という ) ( 甲 2,9) (6) 本件サイト及び上記画像投稿サイトにおける被告の上記 (4) 及び (5) の投稿内容は, 被告により特にブロックされた者以外の者において自由に閲覧す - 3 -

ることができる設定とされていた 2 争点 (1) 本件行為 1についての違法性 ( 著作権若しくは著作者人格権侵害 ) 及び責任 (2) 本件行為 2についての違法性 ( 名誉毀損 ) 及び責任 (3) 損害額 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点 (1)( 本件行為 1についての違法性及び責任 ) について ( 原告の主張 ) 被告が本件似顔絵の写真を無断で画像投稿サイトにアップロードした行為は, 原告の著作権 ( 公衆送信権 ) を侵害するものである 被告は, 本件似顔絵につき被告に著作権がないこと及びこれをアップロードすることにつき原告又は佐藤漫画製作所から許諾を得ていないことを知っていたのであるから, 上記著作権侵害につき故意がある また, 被告が本件似顔絵の写真を本件サイトでの前提事実 1(4) の投稿記事と共にアップロードする行為は, 原告がこのような政治色の強いプロジェクトに賛同しているとの誤解を公衆に生じさせるものである 原告は 特攻の島 という第二次世界大戦時の日本を舞台とする漫画を連載しており, 天皇崇拝者と誤解されると, その作品が色眼鏡で見られるおそれが生ずるものであるから, 本件行為 1は, 原告の名誉又は声望を害する方法で著作物を利用する行為として, 原告の著作者人格権を侵害するものである 被告は, 公衆に上記のような誤解を生じさせる目的で本件似顔絵を利用したものであるから, 上記著作者人格権侵害につき故意又は過失がある ( 被告の主張 ) 上記プロジェクトは, その場限りの冗談企画であり, 政治的思想に基づくものではない 被告は, 過去に原告の同様のイラストをアップロードし - 4 -

たときは, 原告から事後報告で承諾を受けており, 今回, 原告に事前承諾を打診したものの, 返答を得られなかった 被告としては, 何か問題があったとしても, 後で軽く謝罪すれば済む程度の認識であり, 著作権侵害の故意はない (2) 争点 (2)( 本件行為 2についての違法性及び責任 ) について ( 原告の主張 ) 本件行為 2の 害予告 が 殺害予告 を意味することは, ツイッターの利用者であれば容易に想像がつくことである 殺害予告は威力業務妨害罪となり得る行為であり, また, 他人に対して殺害予告を行うような者は精神的に正常ではないと受け取られるから, 原告が被告に対して殺害予告をしたとの事実を摘示することは, 原告の社会的評価を低下させるものである したがって, 本件行為 2は, 原告の名誉を毀損するものであり, そのことにつき被告には故意又は過失がある ( 被告の主張 ) 被告は, 原告から 全力で潰します とツイートされ, 大きな恐怖心を抱いた このように, 原告は, 被告の企画を妨害しようとしており, 害予告 は 妨害予告 の意味で投稿したものであるから, 原告に対する不法行為となるものではない (3) 争点 (3)( 損害額 ) について ( 原告の主張 ) 原告のような, その作品がテレビ番組や映画の原作としても用いられるクラスの漫画家が, 特定の主義 主張の広告等として用いられる作品を制作する場合の報酬の相場は100 万円 ( 本件似顔絵それぞれにつき各 50 万円 ) を下ることはない したがって, 原告は, 被告に対し, 著作権侵害に基づき,100 万円の使用料相当損害金の損害賠償請求権を有する また, 特攻の島 の作者である原告が, 天皇崇拝者と誤解される方法 - 5 -

で本件似顔絵を使用され, 著作者人格権が侵害されたことにより被る精神的苦痛を慰謝するのに必要な金員は200 万円 ( 本件似顔絵それぞれにつき各 100 万円 ) を下らない さらに, 原告が著名な漫画家であること, ツイッターという利用者の多いネットサービスで本件行為 2に係る事実摘示がされ, 原告の名誉が毀損されたことからすれば, これに伴う原告の精神的苦痛を慰謝するのに必要な金員は100 万円を下らない ( 被告の主張 ) 争う 被告は, 原告の指摘を受け, 原告に謝罪をした上, 画像投稿サイトから速やかに本件似顔絵の写真を削除しており, これを見た者もほとんどいなかったはずである 第 3 当裁判所の判断 1 争点 (1)( 本件行為 1についての違法性及び責任 ) について (1) 本件似顔絵は, 原告が昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を創作的に描いたものであって, 美術の範囲に属するものであるから, 原告は, これにつき著作権及び著作者人格権を有するものと認められる (2) 前記前提事実 (6) のとおり, 被告が本件似顔絵の写真を投稿した画像投稿サイトの投稿内容は, 被告により特にブロックされた者以外の者において自由に閲覧することができる設定とされていたところ, 被告は, これに上記写真をアップロードしたのであるから ( 本件行為 1), これにより, 原告が本件似顔絵について有する著作権 ( 公衆送信権 ) を侵害したものというべきである (3) また, 前記前提事実 (4) によれば, 被告は, 自作自演の投稿であったにもかかわらず, 被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく, あたかも, 被告が本件サイト上に 天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい 陛下プロジェクト なる企画を立ち上げ, プロのクリエーター - 6 -

に天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ, 原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2 回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて, 本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである ( 本件行為 1) 本件似顔絵には, C 様へ 及び A という原告の自筆のサインがされていたところ, C 様 は, 被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった ( 乙 2の1 2, 弁論の全趣旨 ) 上記の企画は, 一般人からみた場合, 被告の意図にかかわりなく, 一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり, このような企画に, プロの漫画家が, 自己の筆名を明らかにして2 回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは, 一般人からみて, 当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴, 賛同しているとの評価を受け得る行為である しかも, 被告は, 本件サイトに, 原告の筆名のみならず, 第二次世界大戦時の日本を舞台とする 特攻の島 という作品名も摘示して, 上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示したものである そうすると, 本件行為 1は, 原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって, 原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして, 原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる (4) 以上のとおり, 本件行為 1は, 原告の著作権 ( 公衆送信権 ) 及び著作者人格権を違法に侵害するものであり, 被告にはそのことについての故意があったと認められる (5) これに対し, 被告は, 過去に原告の同様のイラストをアップロードしたときは, 原告から事後報告で承諾を受けており, 今回, 原告に事前承諾を打診したものの, 返答を得られなかったと主張する しかし, 原告が事前 - 7 -

又は事後に前記画像投稿サイトへの本件似顔絵の掲載を承諾していたこと はなく, 被告の上記主張を採用することはできない また, 当時, 漫画 on Web ( 前記前提事実 (2)) に, 顧客に贈与した似 顔絵についての著作権の説明や警告表示等がなかったとしても, その有無 にかかわらず, 上記 (3) のような形でその似顔絵の写真を画像投稿サイトに 投稿することが許されないことは当然であるから, この点は上記の判断に 影響しないというべきである 2 争点 (2)( 本件行為 2 についての違法性及び責任 ) について 前記前提事実 (5) のとおり, 被告は本件サイトに A さんにも 害予告され ました とする記事を投稿したものである ( 本件行為 2) が, 被告の主張す るような 妨害予告 の意味であればこれを伏せ字にする必要はないから, 上記投稿に接した通常のネットユーザーは, 害予告 が殺害予告を伏せ 字にしたものであり, 原告が被告に対して文字どおり殺害予告をし, 又は常 軌を逸した攻撃的言動ないし危害の告知をしたと受け取るものと考えられる そうすると, 本件行為 2 は, 被告が原告からそのような危害の告知を受けた との事実を摘示する記事を投稿するものであり, これは原告の社会的評価を 低下させるものであるから, 原告の名誉を毀損する行為であると認められる そして, 以上に説示したところに照らせば, 被告にはそのことについて故意 又は少なくとも過失があると認めるのが相当である これに対し, 被告は, 原告から 全力で潰します とツイートされ, 大 きな恐怖心を抱いたので上記の投稿に及んだと主張する しかしながら, 証 拠 ( 甲 2,8) によれば, 原告は, 原告の妻 ( 漫画家 ) も, 被告からの要請 に応じて今上天皇の肖像画を描いて送付していたことから, 仮にその作品を アップロードしたときは全力でこれを阻止する趣旨を伝える目的で 奥さん ( ママ ) のの利用したら全力で潰します と投稿したにすぎず, その趣旨は, 上記 投稿内容から十分被告に伝わるものと認められる そうすると, 原告が被告 - 8 -

に対して常軌を逸した攻撃的言動ないし危害の告知をしたものとは認められないから, 原告が上記のツイートをしたことは, 前記の判断を左右するものではない 3 争点 (3)( 損害額 ) について (1) 前記前提事実 (1) 及び (4) 並びに前記 1の認定判断のとおり, 原告は, その作品がテレビ番組や映画の原作として用いられた経歴のある漫画家であるところ, 被告は, 自己の政治的傾向ないし思想的立場に賛同するプロの漫画家が存在することをアピールする目的で, 原告の意思に反し, 原告の筆名を明示して, 本件似顔絵を公衆に送信するという形で利用したものである もっとも, 本件似顔絵の写真が画像投稿サイトにアップロードされていたのは4 時間程度の間であって ( 甲 2によれば, 被告が画像投稿サイトに本件似顔絵を投稿したのが午後 5 時 28 分頃, これを削除したのが午後 9 時 16 分頃である なお, 甲 4,6 等に記載された時刻はこれと16 時間の差があるが, 掲載から削除までの時間に変わりはない ), これを閲覧した者が多数に及んだとはいい難い これらの事実を総合考慮すれば, 原告が被告による本件似顔絵の著作権侵害により被った損害の額は,20 万円と認めるのが相当である (2) 前記前提事実 (5) 並びに前記 1 及び2の認定判断によれば, 被告は,1 原告に無断で本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードし, しかも, 本件似顔絵を入手した経緯について触れることなく, あたかも原告が本件サイトにおける被告の政治的傾向ないし思想的立場に賛同して2 回にわたり本件似顔絵を投稿してきたかのような記事を投稿し, これにより, 原告の名誉及び声望を害する方法で本件似顔絵を利用し, また,2 本件似顔絵を画像投稿サイトから削除するよう求めた原告に対し, 意趣返しともとれる形で, Aさんにも 害予告されました と, 原告から常軌を逸した攻撃的言動ないし危害の告知を受けたかのような記事を投稿し, 原告の名誉 - 9 -

を毀損したものである もっとも, 被告は原告の要請を受けた後は, 画像投稿サイトから本件似顔絵の写真を速やかに削除したこと, 上記のとおり, 本件似顔絵の写真が画像投稿サイトにアップロードされていたのは4 時間程度の間であって, これを閲覧した者が多数に及んだとも認め難いことも認められる これらの事実を総合考慮すれば, 被告が本件行為 1により原告の著作者人格権を侵害したこと及び本件行為 2により原告の名誉を毀損したことに伴う精神的苦痛を慰謝するにはそれぞれ15 万円 ( 合計 30 万円 ) をもってするのが相当である 4 結論以上によれば, 本件請求は主文の限度において理由があるからこれを認容し, その余は理由がないからこれを棄却することとし, 訴訟費用の負担につき民訴法 64 条本文,61 条を, 仮執行の宣言につき同法 259 条 1 項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 46 部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官清野正彦 裁判官植田裕紀久 - 10 -