カンキツ栽培の問題点と技術的対策 新崎正雄 比嘉淳 ( 沖縄県農試名護支場 ) MasaoArasakiandAtsushiHiga:Problemofthecitruscultivationandtechnicalcountermeasure. I カンキツの生産状況本県におけるカンキツ類の生産量

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梢の発生が期待できるよう9月には必ず仕上げ摘果を徹底し 適正葉果比に仕上げましょう 着果量が中庸以上の樹では早生温州では9月中 普通温州では10 月上旬までに行いましょう(表2) ⑴着果過多樹着果量が多く肥大が悪い樹は 商品性の低い小玉果や傷果 病害虫被害果を中心に早急に

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Title カンキツ栽培の問題点と技術的対策 Author(s) 新崎, 正雄 ; 比嘉, 淳 Citation 沖縄農業, 35(1): 49-56 Issue Date 21-6 URL http://hdl.handle.net/2.5.121/ Rights 沖縄農業研究会

カンキツ栽培の問題点と技術的対策 新崎正雄 比嘉淳 ( 沖縄県農試名護支場 ) MasaoArasakiandAtsushiHiga:Problemofthecitruscultivationandtechnicalcountermeasure. I カンキツの生産状況本県におけるカンキツ類の生産量は温州ミカンが最も多く, 次いでタンカン, シイクワシャー, その他中晩生カンキツの順となっている ( 図 1). 栽培面積は温州ミカンとシイクワシャーが減少傾向, タンカンやその他中晩生カンキッが伸び 3 てきている. 温州ミカンは8 月下旬 ~9 月上旬に曰南 1 号などの極早生温州が, その後 1 月まで興津早生温州が出荷されている. 温州ミカンの出荷先は県外市場が多く, 平成 12 年実績でも 73% が県外向けである. タンカンは12 月から早出しものが見られ,2 月頃が出荷のピークである. タンカンは県内消費が主であるが, 最近は宅配便などで県外にも多く出荷されている. シ 皿血 2 生産量 6 167 148 イクワシャーは加工用が多く, 次いで生食用で, 収穫時期は加工用が 1~11 月頃, 生食用が 1 月 頃である. その他中晩生カンキツは在来種のカー 2 - 温州ミカンタンカンシイクワシャー中晩生カンキツ柑橘類 図 1. 柑橘類の生産量 ( 平成 11 年 ). ブチー, オートーの栽培面積が多く, 次いでポ ンカン, マーコット, 天草, 不知火である ( 第 1 表 ). 第 1 表. その他中晩生カンキツの栽培面積 ( 平成 11 年度 ). 単位 :ha カーブチーオートーポンカンマーコット天草不知火その他 北部中部 11. 4. 3.6 2.3.1 2. 1.3 2..2 1. 1.7 注 : 園芸振興課資料より作成 Ⅱ カンキツ栽培の問題点と技術的対策 1. 温州ミカン平成 12 年産の本県温州ミカンの販売状況は8 月下旬は比較的良かったものの,9 月以降糖度が上がらず, 更にグリーンハウスミカンの人気もあって, 厳しい販売となった. 温州みかんの 1kg 当り県外販売単価は平成 8 年までは3 円 以上で推移してきたが, 平成 9 年から2 円台で推移している ( 図 2). 価格低迷の最も大きな原因は果実品質にあり, 県外出荷時期の果実糖度は概ね低い状況である. 糖度が上がらない原因には収穫時期の気象要因 ( 特に降雨量 ), 排水不良園等がある. 平成 11 年度の温州ミカン出荷反省会では農協や生産者か

5 沖縄農業第 35 巻第 1 号 (21) 25 2 販 '5 売量 (t)1 5 < 処. 竺葱 一種早生 4 25 8 25 単 2 価 12345678911112 年度 図 2. 年度 BI 販売実績の推移. 注 :JA やんぱる資料. 35 3,5( 円 ) ら, 来年はマルチミカンを作らないと対抗で きない, これまで築いてきた産地を守るため にも技術向上でがんばりたい などの意見があっ た. 一方, 果実品質の問題は全国的な温州ミカ ン産地の問題でもあり, 市場評価を高めるため に農水省や生産団体では平成 12 年度に出荷基準 の見直しを行っている. その基準は果実糖度を 出荷時期別に 9 月 9 度,1 月 1 度,11 月 11 度と している. このように温州ミカンを取り巻く販 売環境は県内外共に大変厳しく, 県や関係団体 の早急な品質向上対策が望まれている. 露地栽培温州ミカンの具体的な果実品質向上 対策としては, マルチ栽培, 高畦栽培, 植物調 整剤 ( エチクロゼート ) の利用等がある. 最近 九州地域を中心に生産量が増加傾向にあるグリー ンハウスミカンは, 施設利用の省力栽培技術で あるが, 出荷時期が 8 月 ~9 月で,3~4 部着 色,1 度台の糖度で販売されており, 販売単価 も 5 円台である. 一方, 本県の温州ミカン品質向上対策の動き としては, 中部地区を中心にマルチ栽培が行わ れており, 平成 12 年産の温州ミカン販売実績 17 t のうちマルチミカンは 18t である. マルチミ カンの糖度は園地によるばらつきもあるが,9 ~11 度と高く, 今後さらにマルチ栽培面積を増 やす計画である. 1 5 (1) 極早生温州のマルチ栽培試験 1) 平成 12 年度の試験結果 本県産温州ミカンは収穫時期に降雨などで果 実糖度が上がりにくく, 県外市場での販売が厳 しい. 近年, 県外ではマルチ栽培により高糖度 ミカンを生産し高い市場評価を得ている. 名護 支場でもマルチ栽培試験を平成 2 年から行い, 平成 5 年には普及成果を公表している. 中部地 域では平成 2 年頃からマルチ栽培に取り組みは じめ, 平成 6 年には普及してきた. 一方, 名護 支場では最近の温州ミカンの販売状況を少しで も打開するため, 平成 12 年度からマルチ栽培及 びフィガロン剤の散布による高糖度ミカン生産 技術確立試験に取り組んでいる. マルチミカン の品質は 8 月に 9 度以上,9 月に 1 度以上を目 標にしている. 試験方法は名護支場内の極早生温州 宮本の 1 年生樹 ( 台木カラタチ ) を用い, 平成 12 年 5 月 21 曰に透湿性マルチシートを樹下に約 2, 幅 で被覆した ( 部分マルチ ). 被覆前の 5 月上旬 に早期摘果を行い, 園内の排水路を整備し排水 対策を行った. また, フィガロン剤の散布は 1 回目を 6 月 8 曰,2 回目を 7 月 5 日に 3 倍で 樹全体に散布した. その結果, マルチ区の土壌 水分 (pf 値 ) は無処理区に比べ 2.5~2.7 の水準 を維持した ( 図 3).8 月 15 日時点での果実糖 度はマルチ + フィガロン区が無処理区に比べ 1 6 45 Ⅱ 隆水 3 塁 (m ) 15 5/ 中 6/ 上 6/ 下 7/ 中 8/ 上 8/ 下 図 3. 降水量と pf 値の推移. 降水量 c- 露地区 o マルチ区 5 3221 斫値 5.5

' 新崎 比嘉 : カンキツ栽培の問題点と技術的対策 51 第 2 表. 果実品質 (8 月 15 日 ). 処理区 マルチ + フィガロン区マルチ区フィガロン区露地区 果実重 (9) 糖度 (%) クエン酸 (%) 113 118 113 12 841 8777 1.18 1.38 1.32 1.33 j 糖度 % 8 1 7.6 2 7 6.8 6.4 6/156/37/157/38/14 8Bi 査日 図 4. 処理区の糖度の推移. S マルチ + フイカ ロン区 c マルチ区 フィカ ロン区 c 焼処理区 8/29 印加 14,J 1 樹当たりの割合 56 :] 二 J 44 61 39 と74 マルチ + フイカ ロン区マルチ区フィガロン区鶴処理区処理区 図 6.1 樹当たり果実糖度別害リ合 (8 月 31 曰 ). 7 16 而雇一百 7 度一百壱 EE1 6 9 8.5 c マルチ + フイガロン区 的印 8 5 17 糖度 % し 降 6 雨量 4 (m ) 7 2 6.5 2SSM L2L3L 果実サイズ 1/ 下旬 2/ 上旬 2/ 中旬 2/ 下旬 図 5. 果実サイズと糖度 (8 月 2 曰 ). 図 7. マノレチ被覆期間中の降雨量. % 程度高くなり, 品質向上効果が認められた ( 第 2 表 ). 糖度は生育期間中マルチ+フィガロン区, マルチ区でやや高く推移した ( 図 4). 果実サイズ別の糖度ではマルチ+フィガロン区とマルチ区は無処理区に比べ各サイズとも8~ 8.5 度台と高く安定していた ( 図 511 樹当たりの糖度割合ではマルチ+フィガロン区とマルチ区には6 度台の果実がなく,8 度台の果実が多かった ( 図 6). マルチ区の糖度が十分上昇しなかった原因として, 部分マノレチのため雨水が浸透し, 土壌が十分乾燥しなかったことが考えられた ( 図 7). 試験地がやや排水不良園であることから, 次回は完全マルチ栽培により雨 水対策を行い, 糖度の向上をさらに検討したい. 2) マルチ栽培上の注意事項マルチ資材は透湿性マルチシート ( タイベック ) が最も多く普及しており, その他白黒マノレチなどがある. マノレチを行う条件としては樹体良好な樹を用いる. 圃場は水はけが良く, 乾燥しやすいこと. また, 雨水が停滞しないように傾斜をつける. 一方, 乾燥時の対策として, 潅水チューブをマルチシート下に設置する. 潅水は過乾燥で樹体のしおれが大きい場合, 果実肥大量が小さく減酸が遅い場合に行う. マルチ被覆時期は園地土壌の乾燥度合いにもよるが,5

52 沖縄農業第 35 巻第 1 号 (21) ~6 月を目安に, 土壌ができるだけ乾燥した状態で行う. マルチ後は果実肥大が緩やかなので, 被覆前に早期摘果を行い, 果実肥大を促進させておく必要がある. マルチ被覆はパイプ巻き上げ方法にすれば, 収穫後の施肥やその後の管理が行いやすい. で, その頃は県内消費向けのため, 県外産と競合する. そこで, 平成 '2 年度に興津早生温州の完熟栽培による品質向上を検討した. 方法は名護支場内の興津早生温州の初成り5 年生樹 ( 台木カラタチ ) を用い, 平成 12 年 5 月下旬に透湿性マルチシートを樹下に約 15, 幅 で被覆した ( 部分マルチ ). その結果,,2 月, (2) 興津早生温州の完熟マルチ栽培 興津早生温州の出荷最盛期は 9 月中旬 ~1 月 日時点でのマルチ区の果実は無処理区に比べて 着色が良く, 糖度もやや高かった ( 第 3 表 ). 第 3 表. マルチ栽培の果実品質 ( 平成 12 年 12 月 1 曰 ). 果皮色 処理区果実重 (9) 着色 a 値糖度 (%) クエン酸 (%) 糖酸比 マルチ区無処理区 19 127 1. 9. 16.1 11.1 1.8 1.2.72.71 15. 14.4 しかし, 土壌乾燥が十分進まなかったため, 次年度に再度検討したい. なお, 完熟栽培は栽培期間が長いため, 防虫 防鳥対策用ネット施設が必要である. 投入すると, 地表面の根群増加に効果がある. 4) 密植園は果実品質や生産性が悪いため, 間伐 せん定による改善を行う. 樹高は肥培管理や収穫作業が楽に行えるよう低くする. 整枝 せん定は樹内への受光体制や農薬の散布効率が (3) 温州ミカン栽培の基礎技術 ) 土作りは根群を増加させ, 健全な樹体を維持し, 安定した収量と高品質果実生産になる. 毎年, 適期施肥と併せて堆肥や敷き草を投入したい. 2) 結果樹に達したら, 整枝, せん定を行い, 良くなり, 果実品質も向上する. 5) 果実肥大期の少雨は小玉果になりやすいため, 潅水し果実肥大を促す. 一方, 成熟期の土壌乾燥は果実品質の向上効果が高いため, 乾燥しやすい圃場作りが重要である. 国頭マージは粘質性の土壌が多いため, 排水路を確保する. 春の新梢や着花 果を大事に育て, 適性着果量 の確保, 適期防除に努める. 3) 防風林は台風被害を減少させ, そうか病などの病害の発生を押さえる耕種的防除になる. 防風林の高さは3m 程度とし, 側枝もある程度刈り込み, 園内を明るくする. 防風林は地際部をせん定し通風を良くすると, 開花期の高温による落果防止や病害虫の発生防止にもなる. 防風林のせん定くずはチッパーで細断し, 園地に 2. タンカンタンカンは, 温州ミカンに次いで生産量が多く, 品種ではT-132, 垂水一号のほか, 最近名護支場で育成された 名護紅早生 の栽培面積が増加している. タンカンは食味が良く, 県民に親しまれているが, 隔年結果性があること, 果実の外観が悪い等の問題がある. また, タンカンは,12 月に完熟する優良品種がないため,

新崎 比嘉 : カンキツ栽培の問題点と技術的対策 53 やむなく年末需要向けに早取り出荷しているが, 着色や糖度の面で本来の品質とはいえない.12 月に出荷できる他の優良品種を早めに選定 普及し, タンカンを2 月頃の完熟期に出荷できるようにしたい. (1) タンカンのマルチ栽培による品質向上技術の確立タンカンは収穫時期の2 月頃には長雨, 曇天が多く曰照量が少ない気象条件下にあり, 果実糖度も11 度程度とやや低い. そこで, 近年温州 ミカンで普及している透湿性マルチシートをタンカンに用いて品質向上の予備試験を行った. 方法は名護支場内の露地 高畦栽培 タンカン ( 垂水 11 年生樹, 台木カラタチ ) を用い, 平成 12 年 1 月 24 曰に透湿性マルチシートを樹下に被覆した. その結果, マルチ区の土壌は無処理区に比べ徐々に乾燥していった ( 第 4 表 ). 果実糖度はマルチ区がやや高く推移したが, 目標の 12 度台には至らず, マルチ被覆による品質向上の効果は小さかった ( 第 5 表 ). 次回はマルチシート被覆を早い時期に行い, 再度検討したい. 第 4 表. 土壌水分値. 処理区 マルチ区露地区 土壌水分値 (pf) 2/4 2/15 2/25 1.7 2. 2.1 1.6 1.5 1.2 果皮色の値 (2/25) 18.8 18.3 第 5 表. 果実品質. 処理区 マルチ区露地区 糖度 12/212/42/25 9.6 1.2 1.9 9.6 9.9 1.5 クエン酸 12/212/42/25.92.75.69.92.85.69 3. シイクワシャーシイクワシャーは, 沖縄県の在来カンキツとして古くから栽培されており, 温州みかん, タンカンに次いで生産量が多い. 果実の利用方法はつまもの, 加工用, 生食用である. シイクワシャーは機能性成分含量が高く最近注目されている. 一方, シイクワシャーは系統数が多く, 果実の大きさや品質もそれぞれ異なっているため, 今後, 生食用で販売する場合には出荷規格が問題となる. そのため, 加工用, つまもの用, 生食用など利用形態別に系統選抜を行う必要がある. 名護支場には2 年程前から奄美大島, 沖縄本島及び周辺離島から在来シイクワシャーを 収集しており, 現在 1 余の系統が保存されている. これらの系統はその特性が十分把握されていないため, 平成 11 年度から大宜味村と協力して果実の長期利用を目的につまもの, 加工用, 青果用に適したシイクワシャー優良系統選抜試験を開始している. 果実の選抜目標は大玉 無核系統とし, 果実調査は平成 11 年 9 月より毎月 1 回, 各系統の果実を採取し, 形態及び品質調査を行っている. その結果, シークァーサー系統の中に無核系統があることがわかった.11 月時点の無核シイクワシャーは果実重が399/ 個, 糖度が8.%, クエン酸が2.1% であった ( 第 6 表 ).

54 沖縄農業第 35 巻第 1 号 (21) 第 6 表. シイクワシャーの果実特性. 系統番号. 採取地調査時期 1 果重系統名 (9) 糖度 (%) クエン酸 (%) 種子数着色歩合カラー ( 個 / 果 ) チャート値 B-41 名護市屋部 クガニー名護市屋部 ( 対照 ) 1 月 11 月 12 月 1 月 1 月 11 月 12 月 1 月 992891 33433334 8889 44 8.8 1.4 1. 5.72 2.12 1.12.86 2.88 2.4 1.48 13.6 16.2 1242348 1 12 555 1. 1.5 2. 栽培面では農家の高齢化により栽培管理の粗放化, 隔年結果等問題も多い. シイクワシャーは平成 7 年までは生産量が安定していたが, 平成 8 年から隔年結果し始め, およそ1,t~ 1tの間で増減を繰り返している. 隔年結果は生産性が悪い上に, 原料や青果物確保の面からも好ましくない. 隔年結果防止方法としてせん定や摘果等があるが, シイクワシャーは果実が小さいため摘果は大変な作業である. そこで, 南香は収穫時期が11 月で糖度の高いミカンであるが, 裂果やす上がりが多く生産が不安定なため, 栽培面積は増えていない. 特に果実肥大期に裂果が多く, 商品化率がかなり悪い. 裂果は果実肥大期の土壌水分の急激な変化で発生しやすいため, 土壌水分のコントロールが要点といわれている. そこで, 平成 12 年度に裂果防止対策として土壌被覆, 早期摘果, 潅水量の試験を行った. その内容は次の通りである. 平成 13 年度に隔年結果防止対策として, せん定 や摘果剤による着花 着果の調節を検討している 1) 土壌被覆が裂果に及ぼす影響 マルチ区は無処理区と同様にほとんどの果実 4. その他中晩生カンキツ (1) 南香 が裂果し ( 第 7 表 ), 裂果率は 8 月が最も高く ( 図 8), 降水量と裂果数の関係では 8 月の降 第 7 表.1 樹当たりの収量及び裂果率 (1 月 31 曰 ). 処理区収量 (kg) 1 果重 (9) 裂果数 ( 個 ) 裂果率 (%) マルチ区無処理区 4.1 1. 21 178 223 312 91.7 98.2 水量との相関が最も高かった ( 図 9). マルチ区の裂果が無処理区と同様に多かった原因として, マルチ外側からの雨水の浸透が考えられた. 2) 早期摘果が裂果に及ぼす影響 5 月の早期摘果区は無処理区と同様にほとん 1 8 裂皐郵率刑 4 I 2 三 1 丁 どの果実が裂果し, 特に裂果が多かった時期は 8 月であった. 7 月上 7 月下 8 月中 9 月上 g 月下 1 月中 図 8. 南香の累積裂果率の推移.

新崎 比嘉 : カンキツ栽培の問題点と技術的対策 55 1 裂果数個く L y=185x+21.4 r=97 2468112 降水量 (m ) 14 裂果率刑 し 8642 9/29/129/22/21/121/22 調査日 図 9.8 月の降水量と裂果数の関係. 図 1. 南香の潅水量と裂果率の推移. 3) 灌水量が裂果に及ぼす影響少灌水区の裂果率は9 月以降無処理区に比べて低く推移した ( 図 1).1 月 31 曰時点の少潅水区の裂果率は無処理区に比べ明らかに低かつ た ( 第 8 表 ). 平成 12 年度の試験結果から, 南香は露地栽培では裂果しやすく, 特に8 月の降雨量が裂果の - 要因になっている. 南香の裂果防止対策は, 第 8 表.1 鉢当たりの収量及び裂果率 (1 月 31 曰 ). 処理区収量 (kg) 1 果重 (9) 裂果数 ( 個 ) 少潅水区無処理区.27.6 11 225 22.9-89.7 裂果が始まる7 月頃から雨水を入れないよう全面マノレチをし, 収穫時期まで少潅水を行うことが重要と考えられた. しかし, 南香は裂果防止対策の他にす上がり防止対策などの課題が多く, 南香の安定生産技術の確立はかなり厳しい状況である. の大玉果実の生産が可能であり ( 平成 11 年度成績 ), さらに検討し葉果比を確定したい. その他, 天草の新梢 根の発生周期, 後期落果防止技術, 果梗部周辺の小裂果防止技術等の確立を目指している. 平成 12 年度の試験結果では, 天草の果実は収穫時期の12 月中 下旬には完全着 色し, 糖度が 12 度, クエン酸が.7% 台になり, (2) 天草 新しい中晩生カンキッとして 天草 が普及 食味が向上した ( 図 11).1 果重と糖度との間 13 しつつある. 天草は12 月の年末贈答用ミカンとして期待される品種である. 天草は豊産性で, 12 月に完全着色し, 糖度が12 度, クエン酸が1. % 以下になり良食味であるが, 皮が剥きにく 2 1 1 1,J1 糖度 % ~.9 酸.8 度.7 (%) いため切って食べる品種である. 収穫時期に果梗部に亀裂が入るほか, 年によっては後期落果が発生する. 当面の試験課題は大玉高糖度果実の安定生産技術の確立である. また, 天草の葉果比試験では4 枚に1 果にした場合,2L 以上 9 6 11 月 1 日 11 月 15 日 12 月 1 日 12 月 15 日 1 月 5 日 図 11. 天草の果実品質の推移. には負の相関があり,L~2L の糖度は 11 度 ~ 14 度であった ( 図 12).

56 沖縄農業第 35 巻第 1 号 (21) 糖度船 し 発生度 % く 6543219 111111,J 例 い 比ぶらん州 中 盆价 r=.382 115225335 1 月 1 重 (9) 図 12.1 果重と糖度の相関. 応百丁耐 -5 正 -5~ 亘已 天草の台木別新梢 根の発生周期の平成 12 年 度試験結果では, 未結果樹の新梢 根の発生時 期や発生量が台木別に明らかになってきた ( 図 13, 図 14). 引き続き, 着果状態での発生周期 を調査し, 今後の栽培改善の資料にしたい. 52 総根長 17 9;3 1 1 図 13. カラタチ台天草の生長周期. 南香天草 図 14. 根の年間発生 f 畳. (3) その他中晩生カンキツ 沖縄県のカンキツ生産の中で12 月に出荷できる有望品種がこれまでなかったため, 名護支場では平成 7 年度に11~12 月用品種として, 天草, 南香 を選定し普及成果として公表した. 天草は徐々に栽培面積が増えているが, 南香は裂果, す上がり防止対策が厳しく普及していな い 一方, 県や関係団体では12 月出荷用品種として, 天草のほかに はるみ を選定している. はるみ は天草と違って剥皮性があり高糖系果実で, 隔年結果性の問題があるものの, 裂果やす上がりが少ない利点がある. その他, 今後の検討品種として 不知火, せとか, キンカンの プチマル などがある. これらの品種はいずれも最近農水省果樹試験場で育成され, 本県でも適応性の高い品種である. 中晩生カンキッの栽培上の注意点として, かいよう病対策や鳥害, ヤガなど害虫対策のためにネット施設は最低限必要である. Ⅲカンキツ栽培の方向性温州ミカンはこれまでの早出しだけでは売れない時代になってきた. おいしい果実を求める消費者の期待に応えるためには今一度栽培管理の徹底, 園地毎の品質管理などきめ細かな対策が重要である. 一方, カンキッ農家の経営安定のためには, 年間を通したカンキツ類の品種組み合わせも必要である. 特に本県は冬春期でもカンキツの露地栽培が可能なため,12~3 月に出荷できる中晩生カンキツの開発が緊急の課題である. Ⅳ. おわりに本県の気象条件を生かした亜熱帯農業の推進は今後とも重要な課題である. 温帯果樹の中ではカンキツ類がこれまでその役割を担ってきた. 今後, 現行品種類に天草, はるみ等, 新しい中晩生カンキツを組み合わせることにより, 新たな展開を期待したい. カンキツ栽培の現場には多くの問題があるがワ関係機関が一体となって解決策を検討しており, 試験場も現場との協力関係をより一層強化し, 一つ一つ確実に成果を上げられるよう努力したい.