高エネルギー加速器研究機構

Similar documents
人材育成 に関するご意見 1) 独立行政法人情報通信研究機構富永構成員 1 ページ 2) KDDI 株式会社嶋谷構成員 8 ページ 資料 7-2-1

第2回 星の一生 星は生まれてから死ぬまでに元素を造りばらまく

2018 年度事業計画書 Ⅰ 基本方針 1. 健康関連分野を取り巻く環境と直近の動向 健康医療分野が政府の日本再興戦略の重点分野に位置づけられ 健康 医療戦略が策定されるなど 予防や健康管理 生活支援サービスの充実 医療 介護技術の進化などにより 成長分野としてマーケットは大きく拡大することが期待さ

<30345F D834F E8F48816A2D8AAE90AC2E6D6364>

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

寄附文化の醸成に係る施策の実施状況 ( 平成 26 年度に講じた施策 ) 別紙 1 < 法律 制度改正 > 総務省 ふるさと納税の制度拡充 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 学校法人等への個人寄附に係る税額控除の要件の緩和 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 特例控除の上限の引上げ

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

第 2 回保障措置実施に係る連絡会 ( 原子力規制庁 ) 資料 3 廃止措置施設における保障措置 ( 規制庁及び IAEA との協力 ) 平成 31 年 4 月 24 日 日本原子力研究開発機構安全 核セキュリティ統括部 中村仁宣

ABS学術対策チーム紹介HP用

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) 研究課題別中間評価報告書 1. 研究課題名 テーラーメード育種と栽培技術開発のための稲作研究プロジェクト (2013 年 5 月 ~ 2018 年 5 月 ) 2. 研究代表者 2.1. 日本側研究代表者 : 山内章 ( 名古屋大学大学

原田潤田村陸東佑真井上翼 大阪市立大学 修士課程 2 年で卒業 ( ) 東京大学 修士課程 2 年 ( ) 大阪市立大学 修士課程 2 年 ( ) 大阪市立大学 修士課程 2 年 (2016.9

τ-→K-π-π+ν τ崩壊における CP対称性の破れの探索

第 2 日 放射性廃棄物処分と環境 A21 A22 A23 A24 A25 A26 放射性廃棄物処分と環境 A27 A28 A29 A30 バックエンド部会 第 38 回全体会議 休 憩 放射性廃棄物処分と環境 A31 A32 A33 A34 放射性廃棄物処分と環境 A35 A36 A37 A38

第3節 重点的な取り組み

<93FA92F6955C2E6D6364>

スキル領域 職種 : マーケティング スキル領域と MK 経済産業省, 独立行政法人情報処理推進機構

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

JPS_draft.pptx

別紙 2 様式第十八 ( 第 13 条関係 ) 認定事業再編計画の内容の公表 1. 認定をした年月日平成 27 年 7 月 6 日 2. 認定事業者名 WAKUWAKU JAPAN 株式会社 3. 認定事業再編計画の目標 (1) 事業再編に係る事業の目標スカパー JSAT グループ ( 以下 スカパ

Microsoft Word - 東京文化資源区構想最終報告書 docx

<4D F736F F D208DBB939C97DE8FEE95F18CB48D EA98EE58D7393AE8C7689E6816A2E646F63>

内部統制ガイドラインについて 資料

. 実施方法 公表学校関係者評価の実施については 平成 8 年度に行われた 自己点検評価 を学校関係者評価委員の皆さまにご確認いただき 自己点検評価の各項目に対するご意見と評価を取りまとめました また 評価結果については 今後の各校における教育活動や学生指導等 学校運営の改善に活かすとともに教育水準

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

5 地域再生を図るために行う事業 5-1 全体の概要 棋士のまち加古川 をより幅広く発信するため 市内外の多くの人が 将棋文化にふれる機会や将棋を通じた交流を図ることができる拠点施設を整備するとともに 日本将棋連盟の公式棋戦 加古川青流戦 の開催や将棋を活かした本市独自のソフト事業を展開する 5-2

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 利害関係者の特定 QMS 適用範囲 3. ISO 9001:2015への移行 リーダーシップ パフォーマンス 組織の知識 その他 ( 考慮する 必要に応

イノベーション活動に対する山梨県内企業の意識調査

Transcription:

平成 29 年度に係る業務の実績に関する評価結果 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 1 全体評価 高エネルギー加速器研究機構 ( 以下 機構 という ) は 我が国の加速器科学の国際拠点として 素粒子原子核研究所 及び 物質構造科学研究所 の2つの大学共同利用機関並びに 加速器研究施設 及び 共通基盤研究施設 の2つの研究施設を設置するとともに 日本原子力研究開発機構と共同でJ-PARCセンター ( 大強度陽子加速器施設 ) を設置する法人である 物質を構成する素粒子や原子核 それらに働く力の性質等を明らかにし 宇宙誕生の謎に迫る研究 生命体を含む物質の構造 機能を解明する研究等を推進している 第 3 期中期目標期間においては 主要共同利用実験 (J-PARC Bファクトリー及び放射光施設 ) を国内外の大学等と協力し着実に進め研究成果を上げるとともに これらを通じて 大学の研究 教育機能の強化に貢献するほか 産業界との連携や各種広報活動を通して広く社会の支持を得ること等を基本的な目標としている この目標達成に向け 機構長のリーダーシップの下 機動的 戦略的に資源配分するとともに 放射光施設利用による自己収入の増加を図るなど 法人の基本的な目標 に沿って計画的に取り組んでいることが認められる ( 戦略性が高く意欲的な目標 計画 の取組状況について) 第 3 期中期目標期間における 戦略性が高く意欲的な目標 計画 について 平成 29 年度は主に以下の取組を実施し 機構の機能強化に向けて積極的に取り組んでいる T2K 実験 (Tokai to Kamioka ニュートリノ実験 ) など共同利用実験の成果を数多くプレスリリースし 社会的に注目を集めている また これらの共同利用実験は 国際性が非常に高い環境下で実施されており そこに多くの大学院生が参加することで 大学の人材育成に大きく貢献している さらに 共同利用の課題申請から研究成果の公開までを把握する研究成果管理システムを整備するなど 共同利用の 見える化 を推進している ( ユニット 国際的な共同利用実験の推進による成果の創出と大学の人材育成への貢献並びに共同利用のはたす役割の情報発信 に関する取組 ) 平成 29 年度から始動した第 1 号の多国籍参画プロジェクトに関して 世界トップクラスの研究者の参画を得て SuperKEKB 加速器によるBelleⅡ 実験のプロジェクトの成否を決定するPhase2( ビーム衝突調整 ) 運転の立ち上げを完了した また 東京大学宇宙線研究所の大型低温重力波望遠鏡 KAGRAの建設支援や 公的機関と産業界とのオープンイノベーション拠点であるTIA( つくばイノベーションアリーナ ) のTIA 連携プログラム探索推進事業 かけはし の実施を通じて 更なる技術の進展とイノベーション創出に向けた取組が行われている ( ユニット KEKが持つ基盤技術を活かし大学等に対する専門的な技術支援と交流 並びに交流を通じた更なる技術の進展とイノベーションの創出 に関する取組 ) - 1 -

2 項目別評価 < 評価結果の概況 > 特筆 一定の注目数 順調おおむね順調 遅れ 重大な改善事項 (1) 業務運営の改善及び効率化 (2) 財務内容の改善 (3) 自己点検 評価及び情報提供 (4) その他業務運営 Ⅰ. 業務運営 財務内容等の状況 (1) 業務運営の改善及び効率化に関する目標 1 組織運営の改善 2 教育研究組織の見直し 3 事務等の効率化 合理化 ( 理由 ) 年度計画の記載 28 事項全てが 年度計画を上回って実施している 又は 年度 計画を十分に実施している と認められるとともに 平成 28 年度評価において評 価委員会が指摘した課題について改善に向けた取組が実施されているほか 下記 の状況等を総合的に勘案したことによる 年度計画 46-2 については 機構長のリーダーシップにより機構長裁量経費を配 分するなど 年度計画を十分に実施している と認められるが 当該計画を上回っ て実施しているとまでは認められないと判断した 年度計画 49-7 については 労働関係制度の変更を行うなど 年度計画を十分 に実施している と認められるが 当該計画を上回って実施しているとまでは認めら れないと判断した 機構長のリーダーシップによる機動的 戦略的な資源の配分 J-PARC による実験研究に重点を置いて 機構長裁量経費を機動的 戦略的に資源配分し J-PARC 加速器の MR( 主リング ) の運転経費として 504 時間分を積み増し このうちユーザー利用として 428 時間を確保したことにより 加速器の調整運転にも効果的な時間配分が可能となった結果 ビームロスの低減に成功して過去最高のビーム強度 - 2 -

480kW を達成している また T2K 実験での反ニュートリノビームデータを着実に蓄積 することが可能となり 平成 29 年度中に積み増した実験データの 3 割を機構長裁量経 費により措置している (2) 財務内容の改善に関する目標 1 外部研究資金 寄附金その他の自己収入の増加 2 経費の抑制 3 資産の運用管理の改善 ( 理由 ) 年度計画の記載 12 事項全てが 年度計画を十分に実施している と認められる とともに 下記の状況等を総合的に勘案したことによる 年度計画 58 については 寄附金の更なる獲得を目指した募集活動を継続し 増 収を図るなど 年度計画を十分に実施している と認められるが 財務情報 ( 寄附 金収入比率 ) から 当該計画を上回って実施しているとまでは認められないと判断し た 年度計画 59-1 については 放射光施設利用による自己収入の獲得増を図るなど 年度計画を十分に実施している と認められるが 当該計画を上回って実施してい るとまでは認められないと判断した 年度計画 63-1 については 契約内容等の見直しによる管理的経費の削減を行う など 年度計画を十分に実施している と認められるが 財務情報から 当該計画 を上回って実施しているとまでは認められないと判断した 放射光施設利用による自己収入の増加放射光施設利用の新たな利用形態である 試行施設利用 利用支援 及び 代行測定 解析 の制度について積極的な情報発信を行うことにより 利用者に制度の定着が図られた結果 放射光施設利用による自己収入は約 1,315 万円であり 対前年度比で約 1,244 万円増となっている - 3 -

(3) 自己点検 評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標 1 評価の充実 2 情報公開や情報発信等の推進 ( 理由 ) 年度計画の記載 10 事項全てが 年度計画を上回って実施している 又は 年度 計画を十分に実施している と認められるとともに 下記の状況等を総合的に勘 案したことによる 年度計画 67-3 については 定期的にサイエンスカフェを実施して情報発信行う など 年度計画を十分に実施している と認められるが 当該計画を上回って実施 しているとまでは認められないと判断した 分かりやすい積極的な動画配信の取組 KEK チャンネルや SNS を活用し 研究活動に関して分かりやすい動画配信を積極的に行い これまでにない取組として 国際プロジェクトにおいて建設した BelleⅡ 測定器の ロールイン作業 の全工程を8 時間に及ぶ実況生中継を行ったところ 放送終了までに 36,033 名の視聴と 13,470 件のコメントがあった これらの取組の結果 KEK ウェブサイトへのアクセス数は平成 28 年度の 2,463,824 件から 3,132,113 件に伸びている (4) その他業務運営に関する重要目標 1 施設設備の整備 活用等 2 安全管理 3 法令遵守等 ( 理由 ) 年度計画の記載 23 事項全てが 年度計画を十分に実施している と認められる こと等を総合的に勘案したことによる 年度計画 69 については 施設 設備の維持管理計画に基づく維持管理を実施す るなど 年度計画を十分に実施している と認められるが 当該計画を上回って実 施しているとまでは認められないと判断した - 4 -

Ⅱ. 教育研究等の質の向上の状況 Bファクトリーでの共同利用実験の推進 Belle 実験は世界的に注目されている レプトン普遍性 の検証に関わるこれまでの測定の結果を得て 標準模型を超える物理現象発見に対する期待が高まり 分野の活性化が進んでいる BelleⅡ 実験は新たに加入した国外の2 機関を含め 国内 12 大学と国外 95 機関 大学 (25ヶ国 地域) とKEKの合計 108 機関 大学による国際共同利用実験に拡大し BelleⅡ 測定器の建設も進展している SuperKEKB 加速器は BelleⅡ 測定器の衝突点へのロールインとビーム衝突点用超伝導電磁石 (QCS) の設置及び搬入をスケジュールどおりに進め Phase2 運転を開始している J-PARCにおけるニュートリノ実験 (T2K) の推進国内 14 機関と国外 50 機関の合計 64 機関によるニュートリノ国際共同実験を推進している 2.2 10 21 POT 分の全データに対して 測定器の有効体積を増やすなど解析手法を改善し ニュートリノでCPが保存する可能性 を 95% で棄却するなどの大きな成果を上げており 世界のニュートリノ研究をリードするとともに 物質優勢宇宙の謎を解明する第一歩になるとの期待も高まっている 反ニュートリノビームで実験を進め J- PARC 加速器のMR( 主リング ) においてビームパワー出力の最高記録 480kWを達成するとともに 反ニュートリノビームのデータを対前年度末と比較して7 割増やしている CERNにおけるATLAS 実験の推進欧州合同原子核研究機関 (CERN) のLHC 加速器でのATLAS 実験にも参加し 国内の参加機関の中心的役割を担い 重心系エネルギー 13TeVでデータ収集を行っており LHC 加速器が極めて順調に稼動し 強度において設計値の約 2 倍の瞬間ルミノシティを達成している 設計値を大きく上回るルミノシティでの過酷な実験環境でも 95% 近い効率でデータ収集を行うことができた結果 H bb 事象の初の証拠を掴み クォーク質量の起源がヒッグス機構である ことを解明している また 世界最高精度でのWボソン質量測定結果 を得ている High Luminosity LHC 計画 (HL-LHC) に向けたATLAS 検出器アップグレードの一環として シリコン検出器とミューオントリガーエレクトロニクスの開発を行い 実機製造の段階に到達している 産学官連携の推進 TIA5 機関の研究 技術の 種 を探し 連携によって 芽 を育てるTIA 連携プログラム探索事業 かけはし に積極的に参加して産学連携を推進している また 構造生物学研究センターでは 日本医療研究開発機構 (AMED) による創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業の一環である 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム (BINDS) を基盤として 統合的な構造生物学研究の支援環境を構築し 製薬企業とのコンソーシアムを形成するとともに 産学と連携して共同研究を推進し 共同研究の相手先機関から研究員や学生を受け入れている - 5 -