性疾患等政策研究事業 ( 難治性疾患政策研究事業 ) などの支援のもとで行われました 研究の背景 :A20 ハプロ不全症の発症メカニズム 1 ベーチェット病類似の早期発症型自己炎症性疾患として TNFAIP3 遺伝子がコードするた んぱく質 A20 のハプロ不全を病因とする A20 ハプロ不全症が

Similar documents
汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

汎発性膿庖性乾癬の解明

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

平成24年7月x日

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%


< 背景 > HMGB1 は 真核生物に存在する分子量 30 kda の非ヒストン DNA 結合タンパク質であり クロマチン構造変換因子として機能し 転写制御および DNA の修復に関与します 一方 HMGB1 は 組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合 炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増強

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02 - コピー.docx

報道関係者各位

革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究 ( 厚生労働科学研究 ) に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療 再生医学分野の小戝健一郎教授の 難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究 が 平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金 ( 難病 がん等の疾患

スライド 1

<FEFF7B2C DE5B A E BC10D7C3C40EA >

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

染色体微小重複による精神遅滞・自閉症症例

第6号-2/8)最前線(大矢)

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

Microsoft Word - todaypdf doc

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

<4D F736F F D208DC58F498F4390B D4C95F189DB8A6D A A838A815B C8EAE814095CA8E86325F616B5F54492E646F63>

第51回日本小児内分泌学会学術集会 Year Book * 成長

in vivo

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

<4D F736F F D208DC58F4994C581798D4C95F189DB8A6D A C91E A838A838A815B83588CB48D EA F48D4189C88

精神医学研究 教育と精神医療を繋ぐ 双方向の対話 10:00 11:00 特別講演 3 司会 尾崎 紀夫 JSL3 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学 親と子どもの心療学分野 AMED のミッション 情報共有と分散統合 末松 誠 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 11:10 12:10 特別講

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

_0212_68<5A66><4EBA><79D1>_<6821><4E86><FF08><30C8><30F3><30DC><306A><3057><FF09>.pdf

Microsoft PowerPoint - 新技術説明会配付資料rev提出版(後藤)修正.pp

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans


Transcription:

岐阜大学大学院医学系研究科 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の研究グループ A20 ハプロ不全症 ( 若年発症ベーチェット病 ) の新たな病像と治療法を発見 米国学会誌 Journal of Allergy and Clinical Immunology に論文が掲載 このたび 岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学の深尾敏幸教授 大西秀典准教授 大学院生の門脇朋範医師 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野の森尾友宏教授 金兼弘和准教授の研究グループは 多施設共同研究により これまで若年発症ベーチェット病と捉えられてきた TNFAIP3 遺伝子変異により発症する A20 ハプロ不全症 (HA20) の国内の小児患者 30 名について遺伝子 症状 検査結果 治療等の臨床情報を分析しました その結果 ベーチェット病の診断基準を満たす例は半数程度しかなく また一般的なベーチェット病の症状とは異なる自己免疫疾患や橋本病 ( 慢性甲状腺炎 ) を発症するなど 新たな病像を発見しました ( 図 1) さらに A20 ハプロ不全症の難治症例では 抗 TNF 療法が試みられ 効果がみられていることが判明しました この研究論文が米国のアレルギー 喘息 免疫学学会誌 Journal of Allergy and Clinical Immunology に 2017 年 12 月 11 日 ( 米国東部標準時間 ) に掲載されました 写真 1:HA20 症例でみられた消化管病変 図 1: 今回の研究で発見された病像の位置づけ 研究体制 位置づけ 本研究は岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学の深尾敏幸教授と大西秀典准教授 大学院生の門脇朋範医師 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野の森尾友宏教授 金兼弘和准教授の研究グループが 京都大学大学院医学研究科発達小児科学 横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学 かずさ DNA 研究所などとの多施設共同研究により行いました この研究は文部科学省科学研究費補助金 厚生労働省科学研究費補助金難治 1

性疾患等政策研究事業 ( 難治性疾患政策研究事業 ) などの支援のもとで行われました 研究の背景 :A20 ハプロ不全症の発症メカニズム 1 ベーチェット病類似の早期発症型自己炎症性疾患として TNFAIP3 遺伝子がコードするた んぱく質 A20 のハプロ不全を病因とする A20 ハプロ不全症が 2015 年末に報告されています A20 ハプロ不全症においては TNFAIP3 遺伝子のヘテロ接合性変異により A20 の半量が喪失す ることで TNF-α シグナル伝達の異常が起こり 種々の炎症性サイトカインが過剰産生され炎 症が惹起されます この原因遺伝子は優性 ( 顕性 ) 遺伝することが知られています A20 は TNF-α シグナル伝達経路上で その機能を抑制的に制御しています 体内で免疫シ ステムが作動すると 免疫細胞からサイトカインが分泌されます サイトカインの一種 TNFα の働きによって遺伝子転写因子 NF-κB が活性化され DNA の転写を促進し 標的遺伝子であ る炎症応答や免疫応答に関与する遺伝子の機能を有効にして炎症反応を誘導します A20 は NFκB のシグナルを抑制し 過剰な活性化を起こさないよう制御する役割があります ( 図 2) A20 に異常があると NF-κB 炎症反応を抑える機能が働きにくくなり 過剰な炎症が促進されます 図 2: 免疫システムにおける TNF-α シグナル伝達経路上の A20 の働き 2

1: ベーチェット病とは 口腔粘膜のアフタ性潰瘍 皮膚症状 眼のぶどう膜炎 外陰部潰瘍を主症状とし 関節炎 副睾丸炎 血管炎 消化器症状 神経症状などを副症状とする慢性再発性の全身炎症性疾患であり 急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とし 原因は不明です 患者には 4 つの主症状がすべて見られる人もいれば いくつかの主症状 副症状の組み合わせからベーチェット病と診断される人もいます 20 代 ~40 代を好発年齢とします 患者は日本 韓国 中国 中近東 東地中海沿岸に集中分布します 日本では難病指定されており 約 2 万人の患者が認められています 研究成果の概要 本研究グループが A20 ハプロ不全症の患者について Primary immunodeficiency database in Japan (PIDJ) 及び厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業( 難治性疾患政策研究事業 ) の自己炎症性疾患研究班と連携して情報を収集したところ 国内で 9 家系 30 症例 ( 30 名の小児及びその家族内の患者 ) の症例が判明しました 従来 TNFAIP3 遺伝子変異は若年発症ベーチェット病の原因であると報告されていました ところが これらの症例の臨床情報を分析したところ TNFAIP3 遺伝子変異を原因とする ベーチェット病には当てはまらない 新しい病像が確認されました ( 図 1) 症例には ベーチェット病様の反復性口内炎 発疹 消化管潰瘍などの症状も見られましたが ベーチェット病の診断基準を満たさない症例が詳細に分析できた 22 名中 13 名存在しました さらに ベーチェット病には通常見られない自己免疫疾患の合併が多く認められました また 橋本病 ( 慢性甲状腺炎 ) を併発している例 口内炎だけの例 口内炎はないが下血する例 ( クローン病と診断されていた ) なども見られました また これらの症例のうち難治患者 5 例に抗 TNF 療法 (TNFα 阻害薬 2 の投与 ) を試みたところ 有効性が確認されました 2:TNFα 阻害薬は TNFαと結合したり TNFαと TNF レセプターとの結合を阻止したりすることで TNFαのシグナルを抑える働きがあります <TNFAIP3 遺伝子変異の試験管内 (in vitro) 機能解析 > 9 家系で同定された TNFAIP3 遺伝子の変異はそれぞれの家系で固有のものであり 試験管内 (in vitro) 機能解析で全て病的変異であることが確認されました 既報告文献と同様 国内症例においても TNF-α IL-1β 等の前炎症性サイトカイン産生の増加を認め Th17 細胞への分化過剰が認められました 図 3 は遺伝子変異のある対象症例の血液を用いて IL-17A と IL-4 をそれぞれ産生する細胞の量を比較測定した結果です 正常な細胞においては点線枠部分の IL-17A はわずかにしか検出されませんが 遺伝子変異がある症例の細胞では点線枠で示す部分の IL-17A が一定程度検出され IL-17A 産生細胞 (Th17) の過剰が示されました 3

図 4 は今回同定された遺伝子変異を形質転換した細胞 ( 例として変異 1~3) と正常な遺伝子を形質転換した細胞を培養し TNF-αの刺激による NF-κB の転写活性を実験した結果です 20ng/ml の TNF-αの刺激に対して 正常な遺伝子の細胞では A20 の働きにより NF-κB の活性が制御されますが 遺伝子変異がある細胞 ( 変異 1~3) では NF-κB が制御されにくいことが示されました 図 3: 患者血液細胞における IL-17A と IL-4 の測定 図 4: 遺伝子変異を形質転換した転写活性実験 図 3: 今回同定された変異遺伝子のある患者由来血液細胞の IL-17A と IL-4 の量を測定した結果 点線枠で示す IL-17A が一定程度検出され IL-17A 産生細胞 (Th17) の過剰が示された 図 4: 今回同定された遺伝子配列を形質転換した転写活性実験 変異配列では 正常配列ほど転写活性が抑制できないことが示された 論文情報 タイトル :Haploinsufficiency of A20 causes autoinflammatory and autoimmune disorders. 論文著者 : 門脇朋範 1( 筆頭著者 ) 大西秀典 1( 筆頭著者 ) 森尾友宏 2 深尾敏幸 1( 論文責任者 ) 金兼弘和 2( 論文責任者 ) 1 岐阜大学大学院医学系研究科分子構造学講座小児病態学分野 2 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻生体環境応答学講座発生発達病態学分野掲載雑誌 : Journal of Allergy and Clinical Immunology, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2017.10.039 論文公開 URL:http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(17)31885-7/abstract 4

研究者プロフィール 深尾敏幸 (FUKAO, Toshiyuki) プロフィール岐阜大学大学院医学系研究科分子構造学講座小児病態学分野教授 医学博士 1985 年三重大学医学部卒業 1989 年岐阜大学大学院医学研究科修了 1993 年岐阜病院新生児センター部医長 岐阜大学医学部助手 2000 年クイーンズランド医学研究所研究員 2002 年岐阜大学医学部講師 2004 年岐阜大学医学部助教授 2007 年岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科教授 2013 年岐阜大学医学系研究科分子構造学講座小児病態学分野教授 大西秀典 (OHNISHI, Hidenori) プロフィール岐阜大学大学院医学系研究科分子構造学講座小児病態学分野准教授 医学博士 1998 年岐阜大学医学部医学科卒業 1999 年 1 月 ~2000 年 7 月高山赤十字病院小児科医師 2003 年 3 月岐阜大学大学院医学系研究科修了 2003 年 4 月 ~2007 年 3 月横浜市立大学大学院総合理学研究科生体超分子システム科学専攻共同研究員 2004 年 7 月 2006 年 3 月財団法人日本予防医学協会リサーチレジデント 2006 年 4 月 2008 年 3 月岐阜大学医学部附属病院小児科医員 2008 年 4 月 ~2011 年 3 月岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学助教 2011 年 4 月 ~2014 年 12 月岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学併任講師 2015 年 1 月 ~2017 年 9 月岐阜大学医学部附属病院小児科講師 2017 年 10 月 岐阜大学医学部附属病院小児科准教授 門脇朋範 (KADOWAKI, Tomonori) プロフィール岐阜大学大学院医学系研究科分子構造学講座小児病態学分野 2004 年 2010 年島根大学医学部医学科 2010 年 4 月 2012 年 3 月松江赤十字病院初期研修医 2012 年 4 月 2013 年 6 月島根大学医学部附属病院小児科後期研修医 2013 年 7 月 2015 年 6 月益田赤十字病院小児科 2015 年 7 月 2017 年 9 月岐阜大学医学部付属病院小児科医員 5

2016 年 4 月 岐阜大学大学院医学系研究科大学院生 2017 年 10 月 松江赤十字病院小児科 森尾友宏 (MORIO, Tomohiro) プロフィール東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野教授 医学博士 1983 年東京医科歯科大学医学部医学科卒業 1989 年東京医科歯科大学医学研究科博士課程終了 1991 年 ~1995 年ハーバード大学ボストン小児病院研究員 instructor 1996 年 ~1999 年東京医科歯科大学医学部助手 2000 年東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科助手 2001 年 ~2004 年東京医科歯科大学医学部附属病院助教授 2004 年 ~2013 年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科准教授 2014 年 ~ 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授 2016 年 ~ 東京医科歯科大学筆頭副理事 ( 研究 ) 学長特別補佐 金兼弘和 (KANEGANE, Hirokazu) プロフィール東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野准教授 医学博士 1986 年 3 月金沢大学医学部医学科卒業 1991 年 3 月金沢大学医学研究科博士課程修了 1998 年度 ~1999 年度富山医科薬科大学附属病院助手 2001 年度富山医科薬科大学医学附属病院講師 2001 年度 ~2004 年度富山医科薬科大学附属病院講師 2006 年度 ~2011 年度富山大学附属病院講師 2014 年度 ~ 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻生体環境応答学講座発生発達病態学分野准教授 本リリースは文部科学記者会 厚生労働記者会 厚生日比谷クラブ 本町記者会 科学記者会および各社医療科学担当等に配信しております 本件に関する問い合わせ先 岐阜大学総務課広報室担当 : 佐藤 伊藤 Tel:058-293-3377/2009 Fax:058-293-2021 E-mail:kohositu@gifu-u.ac.jp 東京医科歯科大学総務部総務秘書課広報係担当 : 佐藤 Tel:03-5803-5833 Fax:03-5803-0272 E-mail:kouhou.adm@tmd.ac.jp 6