経験を味わう = 経験学習 ふりかえり の鍵 経験学習の質を保証するための三つの原則の一つが ふりかえり です 経験学習のすすめ方を四段階とまとめたのはデービッド コルブが有名ですが わたし自身は環境教育についての学び 1 から次のような四段階でのすすめ方として整理しています 1. 体験する 2. ふりかえる 3. 原理 原則を考える / 法則を見つける 4. 応用する 単にふりかえるだけでなく そこから学びを紡ぎ出し それを次に繋げていくという再帰的なふりかえりであるので Reflective ではなく Reflexitive( 再帰的 2 ふりかえり = 省察 ) という方が適切なのですが ここでは ふりかえり としておきます 深く学ぶということは 学びを自らに帰すことによって 次の学びのスパイラルにつながり 深まっていくのです ふりかえりの鍵いくつかの ふりかえり の鍵をまとめておきます さまざまな分野で行われている ふりかえり を知ることで 応用力が高まるのではないでしょうか 大切なことは 本人にしか獲得することのできない 気づき です EIAG ACKA 感情 価値観 行動の氷山モデル 3つの省察コルトハーヘン モデルアレクサンダー テクニーク ORID ERIC 1 http://esderic.exblog.jp/7977167/ 2 再帰的 についての近代的な意味については以下を参照してください http://ericweblog.exblog.jp/3417308/ 1
EIAG 認知を作るもの 自尊感情や自分を大切にすることができる子どもを育てるために 自己意識 を育てることをカリキュラムの中核においている場合の ふりかえり につい ての説明です 4 つの要素が認知を作ります 3 1. 体験 経験そのもの 2. その体験について 重要だとわたしたちが認識するもの 3. わたしたち自身の理由づけによるなぜそれが重要かという分析 4. わたしたちの一般化 その体験が未来にとって持つ価値についてのユニークな認知 短く言うと EIAG 1. 体験 experience 体験する 2. 同定 identification 意味づける 意識化する 特定する 3. 分析 analysis 分析する 4. 一般化 generalization 原理原則を一般化する 応用できる AKCA 気づき 知識やスキル 挑戦 行動米国の環境教育指導者育成プログラム PLT 4 で使われているモデルです 環境教育は問題解決の行動に力点があること 3. の挑戦は 指導者育成プログラム参加者自身が アクティビティ実践 をやってみることです 1. 気づき Awareness 導入 すでに知っていることを共 有 2. 知識 / スキル Knowledge/Skills 新たな学び 3. 挑戦 Challenge 新たに学んだことをやってみる 4. 行動 Action 個人的行動計画 日常への応用な ど 3 Raising Self-Reliant Children In A Self-Indulgent World, GLenn, H.Stephan Nelsen, Jane, PRIMA PUBLISHING & COMMUNICATIONS 1989 4 PLT=Project Learning Trees, 木と学ぼう 日本事務局を ERIC が務めている このモデルの詳しい説明は PLT ファシリテーター ハンドブックにあります 2
感情 価値観 行動の氷山モデル 体験には感情が伴います 感情に焦点を当てて ふりかえる じっくり味わ うことも可能です 対立は 激しい感情を引き起こすものだからです ERIC の 対立から学ぼう というプログラムの中で扱われますが 対立に伴う感情は 学びにとってとても重要です 対立の場面でわき起こる感情の扱い方につい て学ぶと同時に なぜその感情が起きるのかを知ることで 自分自身 を理解 することができるからです わたしたちが互いに見ているのは 行動 という現れです 行動は感情から 引き起こされます 感情は価値観から来ているというのが この氷山モデルの 考え方です 行動に伴って 自分自身の感情が動く その感情の背景を見つめ てみると 自分のこだわりや大切にしたいもの 価値観が見えるというわけで す 行動 : 表面に見えるもの 感情 : 行動の源泉 価値観 : 感情のルーツ 対立というのは 基本的には価値観の対立があるために起こるのですが 双方の 本当に満たされたいこと に焦点をあてて解決することがウィンウィン型解決と呼ばれるものです 5 自分を大切にするということは 自分の信念や価値観を大切にするということです 5 対立は悪くない ERIC 発行 対立から学ぼう の著者によるセミナーより p.59 3
6 3つの省察 どのように なぜ なんのために? 教師教育学で使われるふりかえりです 教えるということは 学習者の反応 を見ながら 手だてや対応を変更していく 省察的実践 であると言われます ファシリテーターの 柔軟な対応 というのも 参加者 学習者のニーズや理 解の状況に従って プログラムや時間管理などに変更を加えることを意味しま す ERIC ではファシリテーター育成のための セッション 3 ふりかえりと参加 型学習の特徴 の時に 技術的 実践的 見通し的 の 3 つの視点でふりかえ ることで アクティビティ やファシリテーターの行動 HOW の背景にある意 図 WHY に気づく そして その手だてが教育的な目標達成のために有効であ ったかという 見通し をもってふりかえつてもらいます ( アクティビティ実 践評価表参照 ) 詳しくはそちらを参照してください アレクサンダー テクニーク 7 演劇指導において 表現力を高めるためのトレーニング手法が アレクサンダー テクニーク です ゲシュタルト心理学の手法でも同じですが 自分の行動をふりかえることで意図に気づくというのが いずれも基本にあります わたしたちがついつい無意識に はっきりと意図して行っているわけではない行動に気づくこと そのために 待ったをかける (Inhibition 禁止する ) そして どんなことをやったか どうやったか なぜそうしたかをふりかえることで意識にスペースが生まれます ふと我に帰るというような すると 何もその方法だけが正解ではないこと 選択肢はたくさんあることに気づく 手当たり次第の選択肢 (Means Whereby) を知る さらに それらの選択肢の中から 自分の意図をもっと適切に表現する方法を選ぶことで 自分を育てることができる 他人には 結果としての行動しか見えない 意図とプロセスを知ることができるのは本人だけなのです 6 新しい時代の教職入門 秋田喜代美 佐藤学 有斐閣アルマ 2006 7 アレクサンダー テクニーク 小野ひとみ 春秋社 2007 4
コルトハーヘン省察モデル オランダのユトレヒト大学の教師教育学の教授 フレット コルトハーヘン 教授の省察モデル 8 は まさしくゲシュタルト心理学 アレクサンダー テクニ ークの応用です 1. 授業場面 2. 行為のふりかえり 3. 本質的な諸相への気づき 4. 行為の選択肢の拡大 5. 試行 本質への気づきがもっとも大切であることを 氏は協調しています そのために 表のように 感情 をふりかえることで 本当に満たされた いこと に迫る手だても行っています 教師について 生徒について 自分は何をしていたのか? 相手は何をしていたのか? 自分は何を考えていたのか? 相手は何を考えていたのか? 自分はどんな感情をもっていたのか? 相手はどんな感情をもっていたのか? 自分は何をしたいのか 相手は何をしたいのか 8 http://ericweblog.exblog.jp/11342025/ また コア リフレクション アプローチについては以下参照 http://ericweblog.exblog.jp/23262282/ 5
ORID 事実 感情 解釈 意思決定 カナダのファシリテーション研究所が行っている実践 9 です ORID の四段階 それぞれに 100 ほどの質問があり それらの質問によって ふりかえりを深め る方法です 1. 客観的事実 Objective 事実 行動 データ 覚えていること 印 象 2. ふりかえり Reflective 反応 心 感情 感動したこと 気分が乗 ったこと 3. 解釈 価値観 Interpretive 解釈 クリティカル シンキング 学んだ こと 4. 意思決定 Decision 明日取り組みたいこと ERIC 体験 ふりかえり 解釈 つなぐさまざまなふりかえりの手だてを学び 試してきて なんだ ERIC という私たちの団体名そのものが経験学習の四段階を表しているじゃないかと気づいたのは最近です Experience( 経験する ) Reflect( ふりかえる ) Interpret( 解釈する ) Connect( つなげる ) 学んだことを現実とつなぐ 学んだことを日常生活につなぐ 学んだことを回りの人々の学びとつなぐ 応用力 認知的流動性 適応的熟達化 さまざまな言い方が学者 専門家によってなされていますが 学びの主体は学習者本人なのです 9 http://ericweblog.exblog.jp/22504403/ ( 参考サイト ) http://valuesandvisions.blog.jp/archives/7603244.html http://betterevaluation.org/evaluation-options/orid 6