広島大学病院診療棟新営機械設備工事における機械設備導入事例 キーワード / 氷 温水蓄熱氷 水熱源ヒートポンプ 新菱冷熱工業 中国支社技術部藤原忠昭 写真 -1 全景 1. はじめに 広島大学霞キャンパス再整備計画の一環として, 医科 歯科の外来機能を集約するとともに, 高度医療を必要とする患者が快適に受診できる病院をめざして, 広島大学病院診療棟が2013 年 9 月 20 日にオープンした 今回工事の診療棟新築に合わせて, エネルギー棟も増設されている 今後は, 外来棟の改修および管理部門と中央診療部門の一部移設を行う予定になっている 2. 建物概要 建物名称広島大学病院 診療棟 所在地広島市南区霞 1 丁目 2 番 3 号 発注者国立大学法人広島大学 建築面積 6,887m2 延床面積 38,600m2 階 数地下 1 階 地上 5 階 構造 規模 RC 造 用 途病院 建築施工 竹中工務店 広島支店 空調施工新菱冷熱工業 中国支社 衛生施工新菱冷熱工業 中国支社 電気施工中電工 日本電設工業 新生テクノス 特定建設工事共同企業体 3. 建物概要 新診療棟は グリーンホスピタル を基本コンセプトに, グリーン化技術, グリーンガーデンおよびグリーンアート ( 落ち着いた色彩の快適な空間 ) をめざして計画された 具体的な実施事項として, 自然エネルギーの有効活用 ( 太陽光発電, 自然採光を確保するための集光装置, 雨水利用 ), 建築的な工夫による負荷の削減 ( 屋上緑化, 壁面緑化 ), 最新の設備技術の導入 ( 氷 温水蓄熱, 水熱源ヒートポンプ ) を行っている 診療棟の全体構成は, 外来診療部門, 中央診療部門を中核とし, 診療活動をサポートする運営支援部門が付随する構成となっている 外来診療部門は1 階から3 階にほぼ集約され,1 階は内科 外来系,2 階は皮膚 運動器系, 泌尿系, 放射線系,3 階は歯科外来と小児外来,5 階は緩和ケア外来 腫瘍内科を配置している 中央診療部門は, 臨床検査センター, 手術センター, 画像診断センター, 内視鏡センター, がん治療センター, 血液浄化部門等で構成されており, 手術センターは,4 階 1フロアを使用している ( 図 -1) 25
小児科 小児歯科 屋上庭園 手術室 施 施 施 施 施 個室診療室 MRI 室 CT 室受付図 -1 診療棟構成 配置 ( 広島大学病院 News) 歯科診療室 4. 設備概要 4-1 空調設備 4-1-1 空調方式検査室, 診察室等における空調方式は, 導入外気処理空調機と水熱源マルチエアコン (AWP), 空冷式マルチエアコン (ACP) またはファンコイルユニット (FCU) の組み合わせとなっている 手術室 ( 将来手術室含む ) は各手術室ごとに空調機を有している 手術ホール, 回収廊下, 物品庫等は, 系統ごとに空調機を設けている 手術室系統空調機は冷水コイル, 温水コイルおよび蒸気加湿器を内蔵し, 各室の還気状態で温湿度制御を行っている 吹き出しは,HEPA 付き吹出口 (HEPU) を用いて室内を清浄化 (CLASS10,000) している 各階空調機による単一ダクト方式:30 系統 外調機 +ACP/AWP/FCU :29 系統 空冷マルチエアコン 138 台 水熱源マルチエアコン 775 台 FCU 203 台 クリーンファンユニット 46 台 CAV 132 台 フィルタユニット 19 台 パッケージエアコン 20 系統 4-1-2 熱源機器一般系統は, 主要熱源機器をB1 階設備機械室に設置して, 各階空調機器に冷水と温水を供給する 水熱源系統は, 主要熱源機器を5 階屋上機械置場に設置して, 各階室外機に供給している 手術室,SICU 他系統は, 主要熱源機器を5 階設備機械室に設置して, 手術室系統をはじめSICU, 血管造影室系統, 病理系統の空調機に冷水と温水を供給している 冷熱源および温熱源を表 -1に示す 4-2 換気設備 一般系統 機械室: 第一種換気 更衣室 脱衣室 便所 物品排気室: 第三種換気 給気ファン 65 台 排気ファン 190 台 4-3 排煙設備 機械排煙 5 系統 4-4 自動制御設備一般系統は6 台の台数制御装置 (DDC), 手術室系統は3 台のDDC, 水熱源 (AWP) 系統は1 台のDDCで制御を行っている 各熱源機の二次側出力系統に熱量計等を ヒートポンプとその応用 2014.11.No.88 26
設置して, 一次側 ( ガス量, 補給水量, 電力量 ) の計測とともに, 中央監視装置 ( 別途工事 ) にエネルギー状態を表示する 空調機は動力回路, 制御回路 (DDC 制御 ) および制御弁を組み込んだシステム空調機であり, 分散型制御を行っている AWP,ACPは集中管理装置にて管理 ( 中央監視には一括警報表示 ),FCU は専用インターフェイス ( バックネット方式 ) で中央監視装置に接続している 4-5 衛生設備 上水: エネルギーセンターから送水による高架水槽方式 中水: エネルギーセンターから送水による高架水槽方式 表 -1 冷熱源および温熱源 系統名 冷熱源または冷却熱源 ガス 収式冷温水発生機 1,055kW 1 基 空気熱源氷蓄熱熱回収型 一般系統 スクリューヒートポンプチラー 914kW 1 基 水熱源エアコン系統 手術室, SICU 他系統 氷蓄熱 式冷却 4,684kW(1,335R /H) 1,196kW 2 基 空冷式ヒートポンプチラー 100kW 12 基 ( シー ンにより冷水 機 更 6 9 12 台 ) 給湯: エネルギーセンターからの直接送水と返送 雨水: 雨水槽から入院棟を経てエネルギーセンターに送り中水として利用 排水: 屋内合流 ( ボイラ系, 感染系, 検査系, 透析系, 洗濯系は処理設備まで単独配管 ) 消火: スプリンクラ消火設備, 連結送水管設備, N2ガス消火設備 4-6 特殊設備 医療ガス設備 歯科設備 排水処理設備( ボイラ系, 感染系, 検査系, 透析系, 洗濯系 ) 搬送設備( リニア ) 特殊空調設備( クリーンルーム, 細胞培養室 (P3)) 温熱源または加熱源ガス 収式冷温水発生機 1,059kW 1 基 ガス 流式蒸気ボイラ 気熱源氷蓄熱熱回収型スクリューヒートポンプチラー 熱交換器 蒸気熱交換器 1,200 / 4 基 845kW 1 基 710kW 2 基 空冷式ヒートポンプチラー 100kW 12 基 ( シー ンにより冷水 機 更 6 3 台 ) 802kW 2 基 設置位置 地下 1 階 5 階屋上 5 階機械室 写真 -2 地下設備機械室 写真 -4 5 階屋上機械置場 写真 -3 5 階設備機械室 写真 -5 地下設備機械室 27
5. 水熱源ヒートポンプシステム概要 当建物のエアコンは,85% が水熱源ヒートポンプエアコンで冷暖同時タイプのマルチエアコンとしている 総数は, 室内機は775 台, 水熱源室外機は45 台で, 系統は各階東西南北の4エリアに分割し, 各エリアの水熱源室外機は各階最寄りの機械室に設置している そして, メンテナンス性を考慮して, 水熱源室外機の冷房能力は56.0kWを上限とし, 最大 8 台設置可能なスペースを確保している 冷却水管は, 室外機 グループ エリアごとにそれぞれバルブを取り付け, トラブル時のリスク最小限化を, また冷却水温度制御をグループごとに行って省エネルギー化をはかっている 各機器の設置状況を, 写真 -6 7に示す 写真 -6 水熱源ヒートポンプ用冷却塔 写真 -7 水熱源ヒートポンプ室外機 6. 氷蓄熱システム概要 当システムは, スタティック式氷蓄熱システムで, 熱源は熱回収型スクリューヒートポンプ冷凍機が採用されている 最下部ピットに冷水蓄熱槽と温水蓄熱槽, 地下 1 階に冷凍機,R 階に空気熱交換器が配置され, それぞれの機器は冷媒配管で接続されている 氷システム蓄熱フローを図 -2に, 各機器の設置状況を, 写真 -8 10に示す 蓄熱運転は, 深夜電力時間の開始とともに関連機器が稼働し, 熱回収した温水は温水蓄熱槽に蓄えられ, 日中, 水熱源ヒートポンプシステムと再熱負荷のある系統の温熱源として利用されている 図 -2 氷システム蓄熱フロー ヒートポンプとその応用 2014.11.No.88 28
写真 -8 R 階設備機械置場 ( 空気熱交換器 ) 写真 -10 免震階冷水蓄熱槽上部 ( 搬送ポンプ配管 ) 写真 -9 地下 1 階設備機械室 ( 冷凍機 ) 7. おわりに 契約工期 42カ月の長丁場現場でありながら, 設備の実質工事は16カ月と短工期の中,2カ月短縮して竣工させることができました これも関係者各位のご指導ならびに協力業者の協力と努力の賜物と心から感謝しております 誌面をお借りいたしましてお礼申しあげます 29