2015 年前期 無線通信システム 第 1 回講義概要 阪口啓 <sakaguchi@mobile.ee.> 2015 年 4 月 15 日
無線通信システム 身の周りの無線通信身の周りのディジタル無線通信を2つ挙げよ? そのシステムの特徴 ( 周波数 通信方式 ) は? 無線通信システム 送信機 無線伝搬路 受信機 2
講義の目的 目的無線 LAN などの無線通信システムを設計するための基礎知識として 電波伝搬 通信方式 干渉回避技術 フェージング対策技術などを学習する 手段無線 LAN である IEEE802.11a を題材に その使用環境 要素技術 システム技術を学習し その知識をもとに IEEE802.11a 無線 LAN の送受信機の構成およびその仕様を読み取る 結果本講義を履修することによって無線通信システムの構成およびその動作原理を理解できるようになる 3
関連科目 応用確率統計 ( 第 4 学期 ) 確率分布 最尤推定 情報量 波動工学 ( 第 5 学期 ) 平面波 反射 電磁波の放射 通信伝送工学 ( 第 6 学期 ) 情報理論 信号空間解析 基底帯域ディジタル伝送 ディジタル信号処理 ( 第 6 学期 ) 周波数領域解析 適応信号処理 電気電子工学実験第 3( 第 6 学期 ) 通信伝送システム MATLAB シミュレーション 無線通信システム ( 第 7 学期 ) 4
教科書 教科書松江英明 守倉正博 佐藤明雄 渡辺和二 高速ワイヤレスアクセス技術 電子情報通信学会 2004 年 参考書 S.Haykin, Communication Systems, 5 th Edition International Student Version, Wiley, 2013. 5
教科書目次 章内容備考 1 ワイヤレスアクセスの概要 2 ワイヤレスアクセスの電波伝搬 深くは言及しない 別途資料を配布 3 ディジタル変復調主要範囲 4 システム劣化要因と補償技術主要範囲 5 アンテナ範囲外 6 アクセス方式主要範囲 7 無線 LAN システム技術主要範囲 8 IEEE802.11 以外の無線 LAN システム技術範囲外 9 固定ワイヤレスアクセス (FWA) 技術範囲外 6
講義スケジュール ( 前半 ) 日付教科書内容 第 1 回 4 月 15 日 1 7 無線通信システムの概要 ~IEEE802.11WLANを例に~ 第 2 回 4 月 22 日 2 5 他無線アクセスの回線設計 第 3 回 4 月 30 日変復調と等価低域表現 第 4 回 5 月 13 日 3.3 3.4 ディジタル変調と波形整形 第 5 回 5 月 20 日 MATLAB 演習 第 6 回 5 月 27 日 3.5 復調方式と誤り率特性 第 7 回 6 月 3 日 4.4 フェージングとダイバーシチ 第 8 回 6 月 10 日理解度確認 7
講義スケジュール ( 後半 ) 日付 教科書 内容 第 9 回 6 月 17 日 4.6 誤り訂正符号 第 10 回 6 月 24 日 適応符号化変調 第 11 回 7 月 1 日 4.3 符号間干渉と適応等化器 第 12 回 7 月 8 日 MATLAB 演習 第 13 回 7 月 15 日 3.6 4.5 スペクトル拡散と符号分割多重 (CDMA) 第 14 回 7 月 22 日 3.7 直交周波数分割多重 (OFDM) 8
成績評価 演習レポート (40 点 ) 日程 : 5 月 20 日 ( 水 ) および 7 月 8 日 ( 水 ) に出題内容 : MATLAB を用いた演習を行い その結果を用いてレポートを作成する 中間試験 (60 点 ) 日程 : 6 月 10 日 ( 水 ) を予定内容 : 無線通信の基礎 ( 第 7 回までの内容 ) の修得具合を評価する 9
MATLAB シミュレータ デモ講義の理解を深めるために MATLAB シミュレータを用いた演習を行う (MATLAB は http://tsubame.gsic.titech.ac.jp/matlab-tah から入手可能 ) 10
2015 年度前期 無線通信システム 第 1 回無線通信システムの概要 ~IEEE802.11a 無線 LAN を例に ~ 阪口啓 <sakaguchi@mobile.ee.> 2015 年 4 月 15 日
講義スケジュール ( 前半 ) 日付教科書内容 第 1 回 4 月 14 日 1 7 無線通信システムの概要 ~IEEE802.11WLANを例に~ 第 2 回 4 月 21 日 2 5 他無線通信システムのモデルとフェージング 第 3 回 4 月 28 日電波伝搬の統計的性質 第 4 回 5 月 12 日 3.3 3.4 ディジタル変調と波形整形 5 月 19 日休講 第 5 回 6 月 2 日 3.5 復調方式と誤り率特性 6 月 9 日休講 第 6 回 6 月 16 日 4.6 誤り訂正符号 12
講義内容 無線通信システムの概要 無線通信システム設計の概略 システム劣化要因と対策技術の概略 IEEE802.11a 無線 LAN デモ 13
通信速度 無線通信システムの分類 Body Area Network Local Area Network Personal Area Network BAN PAN LAN 通信距離 MAN Metropolitan Area Network 14
携帯電話 無線 LAN の現状 携帯電話出荷台数 無線 LAN 対応端末数 ( 出展 : MM 総研 ) ( 出展 : ICT 総研 ) 15
国際的規律と周波数割当て ITU (International Telecommunication Union) 国際的周波数管理 3kHz ~ 300GHz WRC (World Radio Conference) 国際電気通信条約の改正 4 年に 1 度開催 最近は 2012 年 1~2 月 国内の周波数割当て状況 ミリ波 60GHz 帯超高速無線 LAN 準ミリ波 38GHz 帯 26GHz 帯 22GHz 帯 19GHz 帯 加入者系無線アクセス (FWA) 超高速無線 LAN マイクロ波 5GHz 帯高速無線 LAN 準マイクロ波 2.5GHz 帯高速無線 MAN (WiMAX) 2.4GHz 帯 (ISM バンド ) 2GHz 帯 1.9GHz 帯 1.5GHz 帯 900MHz 帯 800MHz 帯 小電力データ通信 ( 無線 LAN) 第 4 世代携帯電話 (LTE) PHS 第 3 世代携帯電話 (WCDMA) 16
無線通信システム レイヤ構造 無線通信システム 7 アプリケーション 3 2 ネットワーク アクセス制御 (MAC) 送信機 電波伝搬 物理層 (PHY) 受信機 1 0 物理層 (PHY) 電波伝搬 送信機 電波伝搬 受信機 アクセス制御 (MAC) 17
無線通信システムの設計 ある無線通信システムを設計したい! 周波数? アンテナ? 帯域幅? 送信機 受信機 通信方式? 送信電力? アクセス方式? 18
伝搬損失 システム設計 ( 周波数 帯域幅 電力 ) 1. 環境屋内 屋外 通信距離 データレート 2. 周波数と帯域幅 ITU の勧告に従い政治的に決定 屋内伝搬損特性の例 3. 伝搬特性伝搬損失 ( 環境に依存 周波数に依存 ) 4. 送信電力所要ビットレート 所要最小電力所要最小電力 + 伝搬損失 = 送信電力必要以上の送信電力は他局への干渉 通信距離 19
システム設計 ( アンテナ ) 5. アンテナアンテナ設置位置 アンテナ指向性伝搬損失を補うことが可能 衛星通信の例 衛星局 30dB 利得 移動通信の例 基地局 10dB( 垂直面 ) 利得 30dB 利得 地球局 端末 0dB 利得 20
システム設計 ( 通信方式 ) 6. 通信方式最大通信距離 信号対雑音電力 (SNR) 比最小データレートを犠牲にした誤り率の最小化 ( 信頼性最大 ) 誤りを許容したデータレートの最大化 10 0 10-1 誤り率特性 BPSK QPSK 16QAM 64QAM スループット特性 Bit Error Rate 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 0 5 10 15 20 25 30 Average SNR per antenna [db] 21
システム設計 ( アクセス方式 ) 7. アクセス方式複数の端末に対する無線リソースの割当てルール予約型 : FDMA TDMA CDMA 競合型 : ALOHA CSMA( キャリアセンス ) 周波数分割時間分割符号分割 アクセス方式 CSMA, TDMA, CDMA 22
システム劣化要因と対策技術 無線通信特有の特性劣化要因? 基地局 フェージング ( 定存波 ) 複数の電波が重なり合うことに起因 符号間干渉 データレートと同程度の遅延波に起因 端末 他システムからの干渉 電波の同報性に起因 (ISM バンドなど ) 23
フェージングとダイバーシチ 1. ダイバーシチフェージングに起因する電力変動複数アンテナの受信信号を合成空間 時間 周波数ダイバーシチ 送信機 受信機 フェージング特性 cumulative distribution 10 0 10-1 SNR の累積確率 SISO SIMO 2 br. SIMO 3 br. SIMO 4 br. 10-2 -20-10 0 10 20 時間または場所信号対雑音電力比 normalized SNR [db] 24
符号間干渉と等化器 2. 等化器遅延波に起因する符号間干渉伝搬路と逆特性を持つフィルタ 等化器 送信機 等化器 受信機 符号間干渉特性 遅延波なし 等化前 等化後 遅延波あり 等化器周波数特性 25
他局間干渉と CDMA 3. CDMA 電波の同報性に起因する他局間干渉送受共通の符号 ( 鍵 ) を用いた拡散と逆拡散 (CDMA) 他局からの干渉を抑圧 送信スペクトラム 拡散符号 受信スペクトラム 他局干渉 拡散後 逆拡散前 拡散前 逆拡散後 送信機 拡散 逆拡散 受信機 26
符号間干渉と OFDM 4. OFDM 遅延波に起因する符号間干渉 等化器 遅延時間が大きい場合はフィルタの次数が膨大 送信周波数特性 フィルタを周波数軸上で実現 直交周波数分割多重 (OFDM) 受信周波数特性 送信機 IFFT FFT 受信機 27
Year of approval IEEE802.11 無線 LAN 屋内環境における ISM バンドを想定した無線システム 802.11b 802.11a 802.11g 802.11n 802.11ac 1999 1999 2003 2009 2014 RF band 2.4GHz 5GHz 2.4GHz 2.4 & 5GHz 5GHz Channel bandwidth Modulation Max data rate 20MHz 20MHz 20MHz 20/40MHz 20/40/80/ 160MHz DSSS, CCK OFDM, AMC OFDM, AMC, CCK MIMO-OFDM, AMC, CCK MIMO-OFDM, AMC256Q, MU-MIMO 11Mbps 54Mbps 54Mbps 600Mbps 6.93Gbps MAC CSMA/CA CSMA/CA CSMA/CA CSMA/CA CSMA/CA+ MU-MIMO 28
IEEE802.11a 送信機 送信データ 6~54 Mbit/s 1 2 3 4 5 畳込み符号化 インタリーブ処理 サブキャリア変調 同期信号付加 ( フレーム処理 ) IFFT ガードインターバル付加 シンボル整形 6 7 8 9 D-A D-A 直交変調 ~ ~ HPA 1 畳込み符号器 + パンクチュア誤り訂正 適応的なパリティビット 2 インターリーバサブキャリアランダマイザ 3 サブキャリア変調 BPSK~64QAM 適応変調 4 IFFT+ ガードインターバル付加 OFDM 変調 6 D-A デジタルアナログ変換 7 直交変調器複素シンボルの IF 信号への変換 8 ミキサ RF 周波数 (5GHz 帯 ) への変換 9 電力増幅器 + アンテナ大電力信号への変換と放射 5 シンボル整形帯域外漏洩電力の削減 29
10 ビタビ復号 復号データ 9 デインタリーブ処理 IEEE802.11a 受信機 8 サブキャリア検波 位相回転補正 7 1 アンテナ + 低雑音増幅器受信 + 受信機熱雑音の最小化 6 2 ミキサ IF(70MHz など ) 周波数への変換 3 直交復調器複素 BB 信号への変換 4 A-D アナログデジタル変換 5 AFC タイミング検出時間 周波数同期 チャネル等価 チャネル推定 FFT ガードインターバル除去 5 タイミング検出 4 直交検波 6 FFT+ ガードインターバル除去 OFDM 復調 7 チャネル等化周波数軸等化器 3 ~ 8 サブキャリア検波 BPSK~64QAM 復調 AGC 9 デインターリーバインターリーバの逆変換 2 ~ 10 ビタビ復号計算量の小さい誤り訂正復号 30 AFC A-D A-D 1 LNA
変調方式 IEEE802.11a の主要諸元 OFDM 方式 ( 各サブキャリアの変調方式 :BPSK, QPSK, 16QAM, 64QAM) サブキャリア数 52 サブキャリア (4 パイロット信号を含む ) 64 ポイント FFT の利用を想定 誤り訂正方式畳み込み符号化 ( 拘束長 :K=7, 符号化率 :R=1/2, 2/3, 3/4) ビタビ復号方式シンボル内インタリーブ 伝送レート OFDM シンボル長 ガードインターバル 占有周波数帯域幅 6 Mbit/s (BPSK, R=1/2) 必須 9 Mbit/s (BPSK, R=3/4) オプション 12 Mbit/s (QPSK, R=1/2) 必須 18 Mbit/s (QPSK, R=3/4) オプション 24 Mbit/s (16QAM, R=1/2) 必須 36 Mbit/s (16QAM, R=3/4) オプション 48 Mbit/s (64QAM, R=2/3) オプション 54 Mbit/s (64QAM, R=3/4) オプション 4.0 μs 0.8 μs 16.6 MHz チャネル数 4 ( 周波数帯域 :5.150~5.250 MHz [ 日本 ]) チャネル間隔 :20MHz 31
IEEE802.11a デモ 32
IEEE802.11a デモ ( 送信機 ) 1 次変調器 1 2 3 畳込み符号器インターリーバ QAM 変調器 33
IEEE802.11a デモ ( 送信機 ) 適応符号化変調器 BPSK+ レート 1/2 畳込み符号 6Mbps 1 2 BPSK+ レート 3/4 畳込み符号 9Mbps 64QAM+ レート 2/3 畳込み符号 48Mbps 3 4 64QAM+ レート 3/4 畳込み符号 54Mbps 34
IEEE802.11a デモ ( 遅延波なし ) 35
IEEE802.11a デモ ( 遅延波あり ) 36
まとめ 無線通信システムの概要 BAN, PAN, LAN, MAN, ITU, PHY, MAC 無線通信システム設計の概略周波数, 帯域幅, 電力, アンテナ, 通信方式 システム劣化要因と対策技術の概略フェージング, 符号間干渉, 他局間干渉 IEEE802.11a 無線 LAN OFDM と適応符号化変調を用いた W-LAN 37