第26号 技術報告集

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浄水場の現地更新計画 中日本建設コンサルタント 環境技術本部淺野利夫 1. はじめに水道は 国民の生命の維持 生活 社会経済活動に欠かすことのできない基盤施設であるため 施設を常に良好な状態に維持し 持続可能なサービスを提供する必要がある そのため 適切な時期に補修 補強及び更新を行い 浄水施設の安定稼働を維持することが不可欠である A 市水道事業では 水道施設整備事業計画 に基づき現有敷地とは別の用地に新浄水場を建設するために新規用地を求めたが 用地取得の難航と水需要が減少し始めたことから現有敷地における全面更新 ( 現地更新 ) を検討することとなった 本報告では 現地更新における更新計画を策定した事例を基に苦心した事項とその対応策について述べる 2.A 浄水場の概要 1) 浄水能力及びフロー A 市水道事業は 平成 20 年度時点における計画給水人口 313,990 人 計画一日最大給水量 167,140m 3 / 日であり 基幹施設であるA 浄水場は ダム水を水源とし 130,000m 3 / 日の浄水能力を有する施設である A 浄水場は表 1のとおり 緩速表 1 A 浄水場の浄水能力と竣工年度 ろ過方式 高速凝集沈澱池 + 急速ろ過方式 横流式沈澱池 + 急速ろ過方式の3 種類が混在しており 建設年度が異なる また A 浄水場からは工業用水道の送水も行なっており 浄水フローを図 1に示す 浄水方法 浄水能力 竣工年度 緩速ろ過方式 20,000m 3 / 日 昭和 28 年 高速凝集沈澱池 + 急速ろ過方式 80,000m 3 / 日 昭和 42 年 横流式沈澱池 + 急速ろ過方式 30,000m 3 / 日 昭和 53 年 計 130,000m 3 / 日 工水送水系統 第 2 着水井 凝集池 横流式沈澱池 急速ろ過池 第 2 浄水池 2 号送水系統 ( 傾斜板 ) 第 3 浄水池 3 号送水系統 高速凝集沈澱池 急速ろ過池 第 4 浄水池 第 1 着水井 緩速ろ過池 第 1 浄水池 1 号送水系統 図 1 浄水フロー -7-

2) 敷地条件 現有敷地内には 図 2 のとおり多数の施設が設置されており 更新スペースの確保が困 難である 特に現有敷地の中央部には 起点となる送水ポンプ施設が集中している 送水管 図 2 現況の施設配置 3) 場内配管系統現在の場内配管系統は図 3のとおりであり 施設の建設と共に配管が整備されているため 場内配管系統は複雑化している 工水 排水処理 分水槽 2 号浄水池 1 号浄水池 3 号浄水池 天日乾燥床 横流沈澱系処理施設 地下排水池 1 号 原水ポンプ 高速沈澱池系処理施設 戻水ポンプ 1 号着水井 洗砂場 緩速ろ過系処理施設 分水槽 4 号浄水池 2 号 原水ポンプ 2 号着水井 河川放流凡例 原水浄水排水 第 5 分水槽 第 1 3 分水槽 図 3 配管系統の状況 3. 更新計画 1) 原水水質 浄水方法原水水質から除去対象物質は 濁度 鉄 マンガン 色度 有機物等及び臭気成分とし -8-

浄水方法を 凝集沈澱 + 急速ろ過方式 を採用した また 現状と同様に 色度及び臭気成分に対しては 発生が短期間であるため粉末活性 炭投入設備とするが 将来的には オゾン酸化及び粒状活性炭増設できるように計画する 2) 更新の条件 A 浄水場の更新に必要な条件は表 2のとおりである 表 2 更新に必要な条件 項目 更新条件 対象施設 3 号原水ポンプ室 研修センター 特高受変電設備 汚泥脱水機棟以外 の全てとする 浄水能力 130,000m 3 / 日 浄水方法 横流式沈澱池 + 急速ろ過方式 + 高度処理 ( オゾン 粒状活性炭 ) ただし 高度処理は将来計画とする 浄水フロー 着水井 原水ポンプ井 凝集池 横流式沈澱池 ( 将来計画 ) ( 傾斜板 ) ( 将来新設 ) オゾン処理 ( 将来新設 ) 粒状活性炭 混和池 急速ろ過池 ( マンカ ン砂 ) 浄水池 送水系統 3) 施設更新における課題 A 浄水場の更新における課題点は以下のとおりである (1) バックアップ施設の確保が困難である A 浄水場は A 市の給水能力の約 80% を担う重要な拠点浄水場であり バックアップによる対応が困難であるため 供給能力を確保した更新方法に留意する (2) 更新スペースの確保が困難である 現有敷地内には図 2のとおり施設が配置されており 更新スペースの確保が困難である また 現有敷地内に埋設物も多く存在するため施設の更新切替時には留意が必要である (3) 耐用年数 浄水能力の異なる施設が混在している 建設年度が異なるため 施設の耐用年数 老朽化度が異なる また 浄水能力も異なるため施設の更新手順に留意する必要がある (4) 将来の施設計画への対応施設計画において 粒状活性炭及びオゾン処理設備が将来位置づけられているため 高度処理施設の建設場所とともに 将来の更新スペースを確保する必要がある -9-

4 課題の解決策 課題の解決策は以下のとおりである 1 スクラップ ビルド方式による更新計画 A浄水場の供給能力を低下させずに既存施設を稼動しながら施設の全面更新 スクラ ップ ビルド方式 を行う計画とした 更新方法は 既存施設において浄水処理施設が 点在しており 維持管理性を向上させるために図4に示すゾーニング計画により施設機 能の集約化を図る また 更新施設の基本方針を表3のとおりとした 送水管接続場所 水の流れ 図4 敷地のゾーニング計画 表3 配置計画の基本方針とその内容 基本方針 内容 ①敷地の有効利用 敷地を有効利用するために 平面的な配置だけでなく建物地下部を利用 した計画とする また 傾斜板沈澱池 高速ろ過設備 複層ろ過 を採 用し浄水施設の面積を極力小さくした施設計画とする ②配管経路の集約 配管の経路を極力集約し 同じ目的の配管を同じ場所に埋設が可能なよ うな計画とする また 耐震性を確保するためNS形ダクタイル鋳鉄管 の採用を基本とし 施設との接続部には可とう管を計画する ③維持管理の効率化 効率的な維持管理を行うため 敷地の中央に管理棟を設ける計画とす る さらに早期に管理棟を建設し 更新後の設備の切替を計画的に行 い 管理設備の増設等を極力削減する また 適切な維持管理動線を確 保する計画とする 2 更新スペースの確保 前述のスクラップ ビルド方式を 計画するにあたり 更新スペースを 確保する必要がある 更新スペースを確保する方法とし 表4 既設能力の増強方法 対象設備 緩速ろ過池 施設能力の増強方法の検討し 面積 が広く浄水能力が小さい緩速ろ過池 採用可否 ろ過面積の増加 ろ過面積の増加 ろ過速度の増加 高速沈澱池 傾斜管 板 の設置 横流式沈澱池 傾斜管 板 の設置 設置済み 薬品混和池 池容量の増加 急速ろ過池 て 仮設浄水施設の設置スペースが 確保できないため 表4に示す既設 増強方法 10

を更新スペースとして確保した 表 4の結果から 高速凝集沈澱池の能力増強を図り 緩速ろ過池を更新スペースとして確保した なお 高速凝集沈澱池の能力増強方法は 過去に実施された実証試験 ( 傾斜管の設置 ) により 傾斜管を設置する計画とした また 高速凝集沈澱池は建設年度が昭和 42 年と建設後約 45 年が経過しているため 機器類の荷重条件から構造計算を行い安全性の検証も行った 高速凝集沈澱池の増強と共に 急速ろ過池のろ材改修も計画し ろ過速度の適正化 ( 複層ろ過の採用によるろ過速度の上昇 ) により浄水処理の安定性の向上も図った また 高速凝集沈澱池及び急速ろ過池の増強 改修は 供給能力を確保するため 順次実施する計画とした (3) 耐用年数 浄水能力の異なる施設が混在している 施設更新では建設年度が早い施設 ( 耐用年数が残り少ない ) あるいは 浄水能力が小 さく面積の広い施設から更新することが望ましい 本計画においては 最も建設年度が 早く 面積の広い緩速ろ過池を撤去するものとして計画した 各施設の撤去及び建設を 表 5に示すとおり計画した 表 5 各施設の撤去及び建設時期 施設名称既設緩速ろ過池 撤去 建設時期撤去 高速凝集沈澱 + 急速ろ過池 改修 撤去 横流式沈澱池 + 急速ろ過池 撤去 新浄水処理施設 建設 高度処理施設 建設 (4) 将来の施設計画への対応高度処理施設 ( オゾン処理施設 粒状活性炭処理施設 ) の建設スペースは図 5 に示すとおり 新 2 号浄水池左側に確保した また 次期施設建設スペースは 新着水井側に浄水施設 1 系列分の面積を確保し 1 系列づつの更新が可能な計画とした 図 5 高度処理設備及び次期施設建設予定地 -11-

5) 配置計画案 以上の検討結果から 配置計画は図 6 に示すとおりである 図 6 配置計画 ( 案 ) 4. おわりに本計画は 更新スペースの確保が困難な敷地条件であるが 面積が広く 浄水能力の小さい緩速ろ過池の存在 水の需要量が減少傾向にありA 浄水場の施設能力に余裕があったため 現地更新の計画立案が可能となった しかし 現地更新としたために 非常に複雑な更新手順となり 全面更新が完了するまで約 25 年間を要する計画となった また 事業期間が長いことから わかりやすい更新手順の作成が重要であり 文章だけでなく可能な限り図化し 簡潔にわかりやすく策定することが必要である なお 事業実施の際には 当初計画からの計画条件の変化等を確認し 必要に応じて細部の見直しを実施していき継続的に更新計画を見直しながら事業を実施することが現地更新事業を成功させるためには重要である -12-