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オフタイムワークショップ 第 5 回目 用途発明 2015 年 6 月 25 日 ( 木 ) ライフサイエンス -2 呉英燦

目 次 用途発明 (JP) 用途限定食品 化粧品分野 合金分野 用途発明 (US, EP, CN, KR) 医薬発明 (JP, US, EP, CN, KR) 2

用途発明 (JP) 特許 実用新案審査基準第 II 部第 2 章 1.5.2(2) 用途限定 ( 物の用途を用いてその物を特定しようとする記載 ~ 用 ) がある場合 1. 用途限定が付された物が その用途に特に適した物を意味すると解される場合 ( 用途限定が 明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識をも考慮して その用途に特に適した形状 構造 組成等 ( 以下 単に 構造等 という ) を意味すると解することができる場合 ) その物は用途限定が意味する構造等を有する物であると解する 引用発明と用途限定以外の点で相違しない場合であっても 新規性あり 3

用途発明 (JP) 例 : ~ の形状を有するクレーン用フック 同様の形状の 釣り用フック とは構造 ( 大きさ 強さ等 ) 等が相違するから 新規性あり 例 : 組成 A を有するピアノ線用 Fe 系合金 組成 A を有する歯車用 Fe 系合金 とは微細層状組織を有する Fe 系合金の点で相違するから 新規性あり 4

用途発明 (JP) 2. 用途限定がある場合であって 用途限定が付された物が その用途に特に適した物を意味しないと解される場合 用途発明である場合を除き 用途限定は発明特定事項としての意味を有しない 例えば ~ 用 といった用途限定が付された化合物 (Y 用化合物 ( 微生物 )Z) については このような用途限定 Y は 一般に 化合物 ( 微生物 ) の有用性を示しているに過ぎないため 用途限定のない化合物 ( 微生物 )Z そのものであると解される ( 平成 7 年 ( 行ケ ) 27) 5

用途発明 (JP) 例 : 心筋梗塞治療用の A 細胞 このような用途限定は 一般に 細胞の有用性を示しているに過ぎないため 用途限定のない細胞そのものであると解される A 細胞からなる細胞シートを含有する心筋梗塞治療用移植材料 なら新規性を有しうる ( 特許 実用新案審査基準第 VII 部第 3 章事例 2) 6

用途発明 (JP) 3. 用途限定がある場合であって 用途発明 ( ある物の未知の属性を発見し この属性により 当該物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明 ) といえる場合 その物自体が既知であっても 用途発明として新規性を有し得る 例 : 特定の 4 級アンモニウム塩を含有する船底防汚用組成物 引用発明 特定の 4 級アンモニウム塩を含有する電着下塗り用組成物 とは 船底への貝類の付着を防止するという未知の属性の発見の点で従来とは異なる新たな用途であるから 新規性あり 7

用途発明 (JP) 用途発明において ある物の属性 ( 性質 ) が未知であることが新規性の判断条件の一つとなる 用途発明の考え方は 一般に 物の構造や名称からその物をどのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野 ( 例 : 化学物質を含む組成物の用途の技術分野 ) において適用される 他方 機械 器具 物品 装置等については 通常 その物と用途とが一体であるため用途発明の考え方が適用されることはない 用途発明は 発明のカテゴリーとしては 方法の発明 又は 物の発明 として保護されうる 主に 化学物質分野 ( 医薬 食品を含む ) 合金分野か 8

食品 化粧品分野 用途発明 (JP) 例 : 成分 A を添加した骨強化用ヨーグルト 骨におけるカルシウムの吸収を促進するという未知の属性の発見に基づく発明であるとしても 成分 A を添加したヨーグルト も 成分 A を添加した骨強化用ヨーグルト も食品として利用されるものであるので 成分 A を添加した骨強化用ヨーグルト が食品として新たな用途を提供するものであるとはいえないとして 新規性なし 食品分野の技術常識を考慮すると ヨーグルトに限らず食品として利用されるものについては 公知の食品の新たな属性を発見したとしても 通常 公知の食品と区別できるような新たな用途を提供することはない 9

食品 化粧品分野 用途発明 (JP) しわ形成抑制剤 審決取消請求事件 ( 平成 18 年 ( 行ケ )10227) 本願 : アスナロ又はその抽出物を有効成分とするシワ形成抑制剤 引例 ; ヒノキ科植物の成分 ( アスナロが含まれる ) を有効成分とする美白化粧料組成物 争点 : 相違点は物の用途が シワ形成抑制作用 と 美白作用 であり 争点の一つは本願作用が新たな用途を提供したか否か 10

食品 化粧品分野 しわ形成抑制剤 審決取消請求事件 ( 平成 18 年 ( 行ケ )10227) 審決 : 用途発明 (JP) 引用例 A の組成物を皮膚に適用した場合 同じ有効成分を同程度含有する以上 美白と同時にシワ形成抑制作用も奏しているはずのものであって 表現上の相違にすぎない 本願発明は 引用例 A のアスナロの抽出物を含有する美白化粧料組成物について シワ形成抑制の効果を新たに発見したにすぎないものであり これにより格別新たな用途が生み出されたものではない 11

食品 化粧品分野 しわ形成抑制剤 審決取消請求事件 ( 平成 18 年 ( 行ケ )10227) 裁判所 : ( 出願当時の技術常識から ) シワ と 皮膚の黒化 とでは : 1. 現象が異なる 2. 発生機序が異なる 用途発明 (JP) 3. 多くの異なる予防 治療法がある 4. 市場分析の結果から異なる種類の製品であるとの認識がある 異なる新たな用途を提供し 新規性あり 12

食品 化粧品分野 用途発明 (JP) 例 : 成分 A を有効成分とする肌のシワ防止用化粧料 成分 A を有効成分とする肌の保湿用化粧料 が 角質層を軟化させ肌への水分吸収を促進するとの整肌についての属性に基づくものであり 一方 成分 A を有効成分とする肌のシワ防止用化粧料 が 体内物質 X の生成を促進するとの肌の改善についての未知の属性に基づくものであって 両者が表現上の用途限定の点で相違するとしても 両者がともに皮膚に外用するスキンケア化粧料として用いられるものであり また 保湿効果を有する化粧料は 保湿によって肌のシワ等を改善して肌状態を整えるものであって 肌のシワ防止のためにも使用されることが 当該分野における常識である場合には 両者の用途を区別することができるとはいえない 裁判例と齟齬との意見も 13

食品 化粧品分野 用途発明 (JP) 機能性食品や機能性化粧品について 医薬に近い領域にあるため 医薬発明と同様に扱うべきとの意見もある 特許庁としては 機能性食品や機能性化粧品はあくまで医薬分野とは異なるため 同様に扱わないとしている 出願人の対応として 機能性食品や機能性化粧品について 物の発明 としてではなく 有効成分の機能が発現される過程を 方法の発明 としてクレームする手法も考えられるが 現行では 治療方法 として産業上利用可能性が否定される 14

食品 化粧品分野 用途発明 (JP) 医薬発明のような 剤 形式 ( 有効成分 X を含む疾患 Y 治療剤 ) でクレームする 食品として実施している第三者の行為に対して侵害といえるか? ( 明細書の記載から食品と解釈できるか ) 方法の発明に 非治療用 などの治療的用途でない旨の限定を明示する 請求項 1~4 のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に局部的に施すことを特徴とする皮膚をコンディショニングする非治療的な化粧方法 ( 特許 3667937 号 : 下線追記 ) 皮膚 頭皮 毛髪 睫毛 眉毛 つめまたは粘膜の 非治療用で美容的なトリートメント方法であって 請求項 1 ないし 22 のいずれか一項に記載の組成物を 前記基質上に適用することを特徴とする方法 ( 特許 3211876 号 : 下線追記 ) 15

合金分野 慣習上 ~ の組成を有する耐熱性合金 のように用途限定を用いたクレーム表現がされる 問題点 用途発明 (JP) 権利範囲が不明確となる可能性がある 性質や機能のみが異なる用途特許が複数成立する可能性がある 16

用途発明 (US) 用途限定記載を用いた物の発明について 用途限定記載が 発明の目的又は意図した用途 (purpose or intended use) を述べているにすぎない場合には 用途限定記載はクレーム解釈において考慮されない クレーム解釈においてクレームの前提 (preamble) 部においてクレーム発明の構造を限定する用語は クレームを限定するものとして扱われなければならない (MPEP 2111.02 I.) クレームの実体部 (body) が完全かつ本質的にクレーム発明の限定の全てを述べており 前提部が クレーム発明の何らかの限定の明確な規定というよりは 例えば 当該発明の目的又は意図した用途を述べているにすぎない場合 その前提部は限定とみなされず クレーム解釈に何ら意味を有しない (MPEP 2111.02 II.) 17

用途発明 (US) 公知物質 A を用途で限定する物の発明のクレーム ( プロダクト バイ ユース クレーム ) は純粋に物質 A として審査され 新規性なし 既知物質 A からなる組成物は 物の発明として物質 A と同一であり新規性なし A pharmaceutical composition for treating disease Y, comprising Compound X. 化合物 X を含む疾患 Y 治療用組成物 は 単なる A pharmaceutical composition, comprising Compound X. とクレーム解釈上同範囲 (X が新規でなければ新規性なし ) 治療方法クレームにする : "A method of treatment of disease Y, comprising administering a therapeutically effective amount of Compound X to a patient in need thereof." 18

用途発明 (EP) Apparatus for などの物の発明における用途限定記載は 当該用途に実際に適した装置 ( 物質又は組成物も同様 ) を意味すると解釈すべきである 既知の物が クレームされた用途に実際に適する態様であれば その用途についての記載が従来存在しなくとも その用途限定記載を用いた物のクレームの新規性は否定される 一方 Method for などの方法の発明における用途限定部分は 当該方法の工程の一つを規定するものと解釈すべきである (Guidelines for Examination in the EPO, Nov. 2014, Part F, Chapter IV-16, 4.13) 19

用途発明 (US, EP) 用途限定を用いた物の発明に対する考え方 基本的に 欧米で同じ 物としての構成に影響を与えない限り 用途限定記載を無視して新規性が判断される 20

用途発明 (CN) 用途限定を含む製品クレームについて 用途限定が 製品自体の構造や固有の特性に影響を与える場合には その用途が新規性等の判断材料となる 公知物の用途限定は その当該用途には製品 ( 物 ) の構造及び / 又は組成上の変化を示すこととなるものは その特徴を考慮し別の物として新規性がある ( 審査指南第二部第三章 3.2.5 用途限定 ) 新しい用途は 公知となった製品の新規に発見された性質を利用し かつ予測できない技術的効果を得ている場合 この用途発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し創造性を具備する ( 審査指南第二部第四章進歩性 4.5) 一方 用途限定が 製品そのものに影響を与えることなく 単に製品の用途や使い方を記述しているだけの場合には 当該用途は 新規性等の判断には役目を果たさない 21

請求項に用途を特定する記載が含まれている場合には 当該用途で使用するのに特に適した物のみを意味していると解釈する ( 審査指針第二章 4.1.2.(2)) 審査基準上 JP と同様 用途発明 (KR) 22

医薬発明 (JP) 特許 実用新案審査基準第 VII 部第 3 章 医薬発明は ある物の未知の属性の発見に基づき 当該物の新たな医薬用途を提供しようとする 物の発明 である JP では医薬発明は 方法の発明 としては認められないことから 剤 形式クレームで認められている 使用 のクレームは実務上 産業上利用可能性なしとされることが多い そこで いわゆるスイスタイプ USE クレーム ( 疾患 Y 治療用薬剤の製造のための物質 X の使用 ) が用いられている 23

第一医薬用途 医薬用途が公知でない物質についての最初の医薬用途をいい 当該物質が公知であるか否かを問わない 有効成分として新規化合物及び公知化合物の両方を含む医薬組成物などに有用 ( 適応症の限定なし ) 第二医薬用途 医薬発明 (JP) すでに医薬用途が公知の物質 ( 物質自体も当然公知 ) についての新規な医薬用途をいい 二番目以降に発見された医薬用途も含む 医薬用途が公知の物質について 新規な医薬用途を見出した場合に用いる 特定の用法又は用量で特定の疾病に適用するという医薬用途において相違する場合 新規性あり 24

医薬発明 (US) AIPPI Reports Q238 (Sep. 2014) 有効な工程 (active, positive steps) を引用した A method of treatment の形式で認められる (MPEP 2173.05(q)) EPC 2000 形式 (purpose-limited product) や有効な工程を引用しない場合 許可されない 既知の医薬化合物又は医療機器の新規な用途を保護可能 既知薬物の既知疾患への新規な投与計画は 結果が予測不可能であれば許可されうる 25

医薬発明 (EP) 第一医薬用途 Article 53(c) EPC で非特許対象 ( ヒト又は動物の治療 診断方法 ) の例外として認められており Article 54(4) EPC で新規性が否定されない旨規定されている A medicament comprising Compound X. 欧米では X そのものとして特許性が判断され X が公知の場合には新規性なし A pharmaceutical composition comprising Compound X and a pharmaceutically acceptable diluent/carrier/excipient. 担体などを構成要件として含むことが規定されていれば その点について構成要件として考慮される 例外的に Substance X for use as a medicament. の形式であれば医薬用途として認めている (EPC 2000: Purposelimited product claim) 26

第二医薬用途 医薬発明 (EP) 第二医薬用途についても Article 53(c) EPC で非特許対象 ( ヒト又は動物の治療 診断方法 ) の例外として認められており Article 54(5) EPC で新規性が否定されない旨規定されている 従前は いわゆるスイスタイプ USE クレーム (Use of compound X in the manufacture of a medicament for the treatment of disease Y.) の形式が認められていたが G 2/08 により否定された Substance X for use in a method of treatment of disease Y. (EPC 2000: Purpose-limited product claim) Substance には通常 医療機器は含まれない T 2003/08 (column having a specific ligand: 治療効果が活性物質の分子的な相互作用に基づく ) 27

治療用途としての新規性が認められる場合 新たな治療対象群の選択 新たな投与用量 新たな投与経路 医薬発明 (EP) 異なる技術的効果を有する場合 単なる目的や効果を記載するのみでは新規性は認められない (Case Law of the Board of Appeal of the European Patent Office (Sep. 2013), I-C-6.2.3) 既知の薬剤を同じ疾病の治療に使用する際に投薬方法のみが新規であっても 医薬用途発明として新規性を有する (G 2/08) 28

EP における 治療対象群の選択 T 233/96 など多くの審決例によれば 既知化合物を既知の治療用途に用いる場合 患者群が生理学的状態又は病態によって 既知の患者群と区別されていれば 新規な治療用途とされる すなわち : 医薬発明 (EP) 1. 患者群が重複していないこと 2. 患者群が偶然の選択でないこと 最近の審決例 (T 1399/04) は よりフレキシブル 1. 患者群と薬学的効果に機能的な関係があること 2. 患者群が発明に係る治療効果の利益を最も受けること 29

EP における 治療対象群の選択 仮想クレーム : 医薬発明 (EP) Compound X for use in a method of treating disease Y wherein the patient has genetic marker Z. EPO は 疾患 Y の治療のために X が投与される患者が遺伝子マーカー Z を持つことは通常想定できるため 新規性の問題があるとの見解 (EP 代理人 ) 30

EP における 治療対象群の選択 対応 1: 医薬発明 (EP) "Compound X for use in a method of treating disease Y wherein the patient has the genetic marker Z and the method of treating disease Y comprises the step of determining whether or not the patient has genetic marker Z. 診断工程により新規性の問題はクリア しかし 侵害立証場面では 通常 診断行為と治療行為は別個に行われるため特許権者には不利と思われる 31

EP における 治療対象群の選択 対応 2: 医薬発明 (EP) Compound X for use in a method of treating disease Y in a patient assessed positive for genetic marker Z. 患者群と薬学的効果に機能的関係性を立証すれば 新規性の問題は解消しうる さらに 侵害立証場面における問題も解消できるかもしれない (EP 代理人 ) 32

医薬発明 (CN) 物質の医薬用途は 疾病の診断や治療に利用される場合には不特許事由ではあるが 例えば 化合物 X を Y 疾病の治療薬の製造としての応用 ( スイス型クレーム ) 薬品の製造に特許が付与される ( 審査指南第二部第十章 2.2, 4.5.2; 下線追記 ) 医薬用途は スイスタイプ USE クレームの形式でのみ認められ 投与対象 投与方式 経路 用量及び時間間隔等の使用に関する技術特徴は 医薬用途を限定する特定事項とはみなされない ( 審査指南第二部第十章 5.4) 33

医薬発明 (KR) 医薬発明については 物自体が公知であっても 用途が異なる場合は新規性を有する 医薬発明は 治療剤の形式 ( 医薬用途は物の形式 ) で認められる 化合物 X を有効成分とする疾病 Y 治療用薬学組成物 第一医薬用途発明は 医薬用途を限定しない 医薬 治療剤 という包括的記載であるため不明確となり認められない ( 特 42 条 4 項 2 号, 審査基準第 9 部第 2 章 1.2) EPC 2000 型の用途限定化合物クレーム (A compound X for use in therapy.) は化合物 X と同一と解釈される 健康機能食品を限定する用途は構成要件として認められる ( 食品分野審査実務ガイド ) 34

参考資料 日本弁理士会 e- ラーニング ( 医薬及び化学の分野における用途発明の理論と実務 ) 知財管理 Vol.57 No.5 2007 741 頁 ( 医薬分野及び食品分野における 用途発明 の在り方 ) 用途発明の審査 運用の在り方に関する調査研究報告書 ( 平成 17 年 3 月 ) 財団法人知的財産研究所 パテント 2009 Vol.62 No.1 43 頁 ( 試練に立つ用途発明を巡る新規性論 ) 特許性判断におけるクレーム解釈に関する調査研究報告書 ( 平成 25 年 2 月 ) 一般財団法人知的財産研究所 知財管理 Vol.64 No.12 2014 1826 頁 ( 医薬 バイオテクノロジー分野発明における明細書作成のための指針の提供 ( その 1)) AIPPI Reports Q238 (Sep. 2014) Life Science IP Seminar 2015 (Hoffmann Eitle) 35

ご清聴ありがとうございました 2015 年 6 月 25 日 ライフサイエンス -2 呉英燦 Email: go@aoyamapat.gr.jp