5 第 2 部 : 市町村合併を考える ❶ NEXT 初版発行 :2010 年 6 月 11 日
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 2 第2部では 暮らしの視点から 県内の 市町村合併 を考えます 中山間地の暮らし 揺れる地域医療 地域づくりと住民自治の動きなどを共同取材 活字と映像のメディアミックスで 平成の大合併 の周辺を伝えます 二〇〇三年九月二十六日第2部 市町村合併を考える
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 3 中津江村に戻って一年 緑に囲まれた村営住宅の暮らしがすっかり体になじんだ 日田市まで車で四十分 そこで働いていたけど 長男だし いずれは親の面倒もみらないかんと考えたしね おやじも左官で 戻ってきてから一緒に仕事をしている 生まれ育った村はいい 久野義博さん(23 )は妻のえりかさん(19 ) 八カ月の長女優衣ちゃんと三人家族 えりかさんは 福岡県で生まれ 中津江は初めての土地ですが 若い隣人もいるし 暮らしが楽しい と話す 昨年のサッカー ワールドカップで カメルーンチームのキャンプ地となり 心温まる交流から 日本一有名な村 となった日田郡中津江村 村を支えた鯛生金山の閉山(一九七二年)から村民が減り続け 現在の人口はピーク時の四分の一に当たる千三百五十七人 村民の十人に四人が六十五歳以上の高齢者になった 過疎の波に洗われ 地域存続の危機さえ伝えられる中山間地の村1 落だ 久野さん夫婦の定住は明るい話題だ 村の将来は若い人にかかっている 何はさておき 村民を増やすこと 地域に力をつけることが村の重要施策 一人でも多くの人に住んでほしいと 定住条例を制定し 結婚や出産に祝い金を出してきた 二〇〇三年九月二十八日過疎に揺れる日本一有名な村定住促進策縮小の方向中津江村
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 4 同村の武原勇一郎総務課長の頭には 高齢化で地域の担い手がいなくなれば農林業が危うい 役場を支える人も税金を納める人もいなくなり 自治体を維持していくこと自体が危うくなる といった思いもよぎる 結婚祝い金二十万円 出産祝い金 第一子十万円 第二子二十万円 仲人報奨金十万円 住宅建築補助金百万円 久野さん夫婦は昨年 結婚し その後 長女を出産したばかり 村に 結婚祝い金 出産祝い金を申請しているところだ 村の住民課の担当者は 十月中に交付する予定です その後は と話す 協議中の日田市郡の合併が実現すれば 結婚祝い金は廃止されることになる ほかの過疎 定住促進策の廃止や縮小も合併協議で決まっている 中津江村栃野の村営住宅には 新婚夫婦たちが暮らす 合併により 結婚祝い金が廃止されるなど 過疎 定住促進策が変わる
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 5 平成の大合併 平成の大合併 とされる市町村合併は 合併特例法 (市町村の合併の特例に関する法律)に基づいている 県内では十地域で法定の合併協議が進み 佐伯市 南海部郡九市町村は新佐伯市への合併を議決 東国東郡と玖珠郡が十月に法定協議会に移行するなど活発となっている 合併特例法は 二〇〇五年三月三十一日までの合併 を条件に1合併後十年間の地方交付税は 旧市町村が受けていた合計額を下回らないよう保証2特例債(借金)を認め 返済の七割に地方交付税を充て 合併市町村の返済は三割ですむようにする などの合併支援の優遇策が主な内容 国が合併を進める理由には財政危機がある 地方自治体の財政(歳入)は主に国が交付する地方交付税と国 県からの補助金 地方税で構成されているが 二〇〇三年現在 国と地方自治体の借金は合わせて約七百兆円に達し 国も地方自治体も深刻な財政危機に直面している 財政の破たんを避けるには 借金を増やさず 財政運営を効率化するほかなく 地方交付税の減額や地方財政の改善が求められている 平成の大合併は1複数の自治体が一つになり 財政規模を大きくする2不要 不効率な事業の廃止と人件費削減 など企業の合併 リストラとよく似た側面を持っている
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 6 に縮小 住宅建築補助金(百万円)=金額を減らして継続 日田市郡合併協議会によると 合併が計画通りに実現した場合 中津江村の過疎 定住策はこんなふうに変わる 同村の武原勇一郎総務課長は 合併の目的は効率的な行政運営 それを基に 制度に検討が加えられた結果だが 過疎 定住対策はみんなで運動会の練習をする中津江村の小学生 子どもたちは大人になって この地域に残るのか それとも都市へ行くのだろうか 結婚祝い金(二十万円) 仲人報奨金(十万円)=廃止 出産祝い金(第一子十万円 第二子二十万円)=県の少子化対策の基準額(第一子三万円 第二子十万円)二〇〇三年九月二十八日温かい歓迎うれしかったシンボル消えないで1
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 7 がんばっていこうという村のシンボル 廃止や縮小は何ともさびしい と話す 過疎 定住対策の評価はさまざまだ 久野義博さん(23 )と同じ村営住宅に住む麻生久由さん(27 ) 晴美さん(26 )夫婦 安岡佳克さん(35 ) 優子さん(25 )夫婦は結婚祝い金を受け取っている 麻生さんは愛知県から帰郷し 父親の運送業を手伝う 安岡さんは茨城県からUターンした村職員 新婚生活に必要なものを買った ひとまず貯金した 祝い金が出るから 定住したわけではないけど 村が温かく迎えてくれると うれしかった と言う 日田市郡は日田市 大山町 天瀬町 中津江村 前津江村 上津江村の六市町村 日田市を除く五町村は定住促進条例を制定し 結婚祝い金と住宅建築補助金などがある いずれも廃止や縮小の対象 市町村の制度はすべて 調整 の対象となる 国民健康保険税 介護保険 一つの自治体になるのだから 町村間で格差があるものがどうなるか と同合併協議会 たとえば 国保税 二〇〇二年度の税額は 日田市二十四万六千円 前津江村三十万三千八百円 中津江村二十五万四千五百円 上津江村二十五万六千五百円 大山町二十四万四千円 天瀬町二十一万九千八百円(いずれも家族四人 所得金額百五十万円 固定資産税六万円の場合) 最高額の前津江村と最低額の天瀬町の間には八万四千円の格差がある 同合併協議会は 一元化を図る必要がある とする 過疎 定住策はどうなるのか 国保税や介護保険はどうなるのか 結婚祝い金の支給を待つ久野さんは これから村はどうなるのか 合併は暮らしにどうかかわってくるのか と考える
大分を創る 第 2 部 : 市町村合併を考える 1 p. 8 オオイタデジタルブックとはオオイタデジタルブックは 大分合同新聞社と学校法人別府大学が 大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げたインターネット活用プロジェクト NAN-NAN( なんなん ) の一環です NAN-NAN では 大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要な さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します そして 読者からの指摘 追加情報を受けながら逐次 改訂して充実発展を図っていきたいと願っています 情報があれば ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください NAN-NAN では この 大分を創る 以外にもデジタルブック等をホームページで公開しています インターネットに接続のうえ下のボタンをクリックすると ホームページが立ち上がります まずは クリック!!! 大分合同新聞社 別府大学 デジタル版 大分を創る その5 編集大分合同新聞社初出掲載媒体大分合同新聞 (2003 年 6 月 29 日 ~ 2005 年 11 月 5 日 ) デジタル版 2010 年 6 月 4 日初版発行編集大分合同新聞社制作別府大学メディア教育 研究センター地域連携部 / 川村研究室発行 NAN-NAN 事務局 ( 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社企画調査部内 ) c 大分合同新聞社 デジタル版 大分を創る について 大分を創る は 大分合同新聞社が NHK 大分放送局との共同企画として 2003 年 6 月から 2005 年 11 月まで 同紙に掲載した連載記事 今回 デジタルブックとして再構成し 公開する 登場人物の年齢をはじめ文中の記述内容は 新聞連載時のもの 2010 年 5 月 14 日 NAN-NAN 事務局