平成 24 年度相談支援従事者指導者養成研修 地域定着支援 日本相談支援専門員協会松下義雄
地域定着支援とは 居宅で一人暮らししている障害者等に対する夜間も含む緊急時における連絡 相談等の支援を行うものである 地域での暮らしの中でのさまざまなリスクに対する支援 安心安全な暮らしの実現 地域での生活には様々なリスクがあります たとえば 不安 病気 犯罪 等 +24 時間の緊急連絡対応
事例 :M さん (50 代男性 ) M さん 地域での暮らしについて しんどい でも 毎日自由な時間があるし 気をつかわなくていい 生きがい あります ひとり暮らしは楽しい M さんの概要 M さん (50 歳 男性 ) 知的障害 (B) アパートでの一人暮らし 心臓病があり 服薬中であるが 体調は 安定している 本人のストレングス やさしい 思いやりがある よく気がつく 人がいい 素直 憎めない性格 真面目で会社での仕事の評価も高い 筋肉質 自転車ならどこまでも 絵がうまい 教えたらできる 無駄遣いはしない ( コツコツと貯める性格 ) 友だちが多い 会社が協力的 弟がよく面倒をみている など
事例の要約 50 歳になる知的障害の男性 M さん 20 年間授産施設での入所生活後 就職が決まり施設を退所 グループホームへ入居し職場へ通う生活となった その後 自分だけの自由な暮らしをしたいと アパートでの一人暮らしを決意し生活することとなった しかし 知人に詐欺に合い 地域生活を断念せざるを得ない危機的状況が生まれた為 サービス等利用計画 地域定着支援により緊急時の支援も含め生活全般の支援が開始された 地域で暮らしたいとの本人の願いを実現するため 地域の様々な関係機関が協力し 安心した日々の生活を取り戻すことができた 相談のきっかけ グループホームから アパートでの一人暮らしをすることとなった しかし それまで一人暮らしの経験がなく 調理や洗濯等の日常生活面や 金銭の管理など 十分できないまま どこからの支援も受けることなく 生活を送っていたそのような中詐欺グループの知人に年金や預金など数百万円を脅されだまし取られていたそのような状況を不審に思った友人を通じて 当センターの相談へとつながり 生活支援に関わることとなった 施設グループホームアパート
支援の経過 1 地域定着支援 ( 深夜の緊急相談 対応 ) 2 モニタリング ( 計画の見直し 支援の強化 ) 1 相談受付 ( 友人からの相談 ) 2 自宅訪問 ( アセスメント ) 3 個別支援会議開催 ( 役場にて ) 1 個別支援会議開催 ( 役場にて ) 2 サービス等利用計画 ( 案 ) の作成 申請 地域定着支援申請 3 サービス等利用計画作成 実施 4 支援開始 モニタリング 1 会社訪問 ( 弟への報告 ) 2 調査 ( 社会保険事務所 銀行訪問 ) 3 地域自立支援協議会 課題検討会議開催
支援の経過 1 友人が相談に来所 M さんがお金がないと言って困っている 友人に同行して M さんの自宅を訪問 預金は全て会社が管理 会社や弟がグルになって使い込んでいる と話す 市役所にも入ってもらい 一緒に支援介入を依頼 市障害福祉担当に支援の協力と個別支援会議の開催を依頼した 市役所で M さんや友人を含めて個別支援会議を開催 市障害福祉担当と会社を訪問することとなる 本人のニーズ確認 問題の背景にある情報や課題の整理 支援の方向性 どのような支援が必要か どの機関との関わりを持って連携していくことが有効か解決に向けたプロセスを描く
支援の経過 2 市障害福祉担当と会社を訪問 社長と面談 以前 M さんが恐喝や詐欺にあったことがあり それ以降 預金や年金等の書類を預かる しかし年金証書が何者かによって再発行されている事実が判明した 後日 M さんに同行して社会保険事務所で確認したところ 年金証書が再発行され 振込口座の変更も行われていたことが分かった 地域自立支援協議会で課題提議 検討 他の相談支援事業所においても同じような金銭被害に遭う事例が増えていることが判明した 専門部会 ( 課題検討会議 ) で対策を検討することする 課題検討会議にて 金銭被害対策について検討する 弁護士 警察等から防止策と対応についての助言があった また 地域で生活する人の支援において 今後の協力を依頼した
金銭被害の現状 ( 相談支援事業所アンケートより抜粋 ) 会社の先輩や同僚から 数か月にわたり息子と母が共にお金を脅し取られていた 暴力や脅しもあり 返済のために 消費者金融からお金を借りていた 女の子からの電話で約束した場所に行ったら 知らない男性がきて 資格をとるための教材の話であり 安いなと思い 名前と印鑑を押したら 後日 教材と多額の請求が届いた タクシーを使って 頻繁に外出するようになり 使途不明金が月数十万円以上出てくるようになる 高額なタクシー運賃を請求されていた可能性あるが 本人理解できていない 携帯電話を契約させられ その支払いを自分がしている ( お財布携帯 ) 携帯を自分名義で作られ 勝手に売却及び解約され 本体代金のみ支払いが残っている 年金を担保に 借り入れさせられ そのお金は自分には入ってこず 使われている 海外からのメール便で あなたは今 とても運が良くなっている と言った内容の手紙が届き お金を振り込むと更に運気が上がると書かれており 数年振り込み続けていた 個別支援会議を通じて関係者がチームを組んで 支援の方向性について統一を図る 個人の生活課題を 地域自立支援協議会 専門部会を通じて 地域の福祉課題として関係者が共有し 共通の問題として認識を持つことで より強固な連携したチームプレイが可能
支援の経過 3 深夜に詐欺グループがやってきて脅されると 訴えがあった 市役所で 緊急の個別支援会議を開催した 地域で生活を続けたい というに M さんの強い希望があり 当面 24 時間緊急時の連絡体制 警察へ夜間の巡回協力 友人 民生委員への見守り協力等を依頼 銀行へ不審者の情報提供依頼 警察に事件としての立件 成年後見制度の活用なども進めていく 総合的 計画的支援を行う必要があるため サービス等利用計画 ( 地域定着支援を含む ) 利用申請する サービス等利用計画 ( 地域定着支援を含む ) 支援が開始された ( 日常生活支援のためのヘルパー支援 危機管理のため 深夜の警察の巡回協力と緊急時の連絡体制づくり ヘルパー 友人 民生委員による日々の見守り支援等 ) 当面は 継続サービス利用支援 として 月に 1 回程度訪問してモニタリングを実施し 日常生活の現状について把握する
M さんの暮らしを支援する支援チーム ヘルパー 銀行 相談支援専門員 安心した自宅での暮らし 警察 民生委員 会社 弟 役場 司法書士 M さん 友人
サービス等利用計画作成のポイント 地域での生活を継続するためのトータルプランとして サービス等利用計画 ( 地域定着支援を含む ) の作成する 計画作成 実施にあたっては 本人の自立支援 エンパワメント 権利擁護を基本的柱として フォーマル インフォーマルの支援を含めて チームワークによる支援を意識する 計画作成にあたっては サービス等利用計画は誰のものか を認識し 本人にわかりやすい計画づくりを意識する ケアマネジメントの重要な視点である 1 個別性 ( 個別支援 ) 2 本人中心 ( ニーズ中心 ) 3QOL( 質の高い生活 ) 3 エンパワメント 4 自立支援 ( 自己選択 自己決定 ) 5 アドボカシー ( 権利擁護 ) を意識する
抜粋
台帳 民生委員 相談支援専門員 ヘルパー 台帳 会社 弟 司法書士
支援の経過 4 深夜に本人より電話があり 詐欺グループから 誰かに話したら殺す との置手紙が留守中ポストの中に入っており 心配で眠れない どうしたらいいか との相談が入る 様子確認のため自宅へ相談員が訪問する ( 緊急的な支援 計画の見直し ) 警察への情報提供及び夜間の巡回の強化 通報があった場合の対応をお願いする また ヘルパー 民生委員についても不審な人物や出来事があれば連絡してもらうことの協力を依頼する 日常生活は大きく改善され 本人の QOL 生活能力も向上 成年後見制度の活用も図られ司法書士が保佐人となり 金銭管理 ( 権利擁護 ) も確立でき 本人も安心している