2020 Town――AI技術を活用したデバイス連携「マチナカ」サービス実現に向けて

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Transcription:

マチナカ における AI ロボットの普及 現在 マチナカ におけるサービス は, 人の手を介して提供されるものが大半ですが,AI( 人工知能 ) 技術の進展とともに徐々に人の手から離れつつあります. 米 Amazonに代表される物流サービスの商品管理から配送にいたるまでの一部業務が, すでにAIやロボットを活用して自動化されている (1) だけでなく, 最近ではソフトバンク Pepper に代表されるように, AIにより人と言葉や動作を通じてインテリジェントな対話が可能なコミュニケーションロボットを活用することで, マチナカにおける接客業務もロボットに代替されるようになってきており (2) (4), 人的コストの削減と合わせてコミュニケーションロボットが介在することによる広告効果なども期待されています. 一方, コミュニケーションロボットによる接客業務の代替は, 受付カウンターにおける商品やサービスの説明, 施設の簡単な案内など, お客さまと 1 対 1 での, 定型的なやり取りが中心となる場面において開始されていますが, その取り組みはまだ限定的である といえます. これはコミュニケーションロボットが持つ機能の主眼が, 音声や身振り手振りによる人との 対話 に置かれていることに起因していると考えられますが,NTT 研究所では, コミュニケーションロボットを含む複数のデバイスやシステムを組み合わせた デバイス連携サービス により, 1 対 1 での接客場面以外にも, コミュニケーションロボットの適用範囲を拡大させることが可能になるのではないかと考えています. ではコミュニケーションロボットを中心としたデバイス連携サービスで実現される世界とはどのようなものでしょうか. 前述のとおり, 現状のコミュニケーションロボットによる接客業務では, 銀行や百貨店, ホテルなどの受付にて, 音声によるやり取りを通じて施設内の案内やサービスの説明を実施していますが, 例えばディスプレイ上に表示される画像や映像とコミュニケーションロボットが連携することで, 情報伝達の分かりやすさが数段向上します. また血圧計などの健康モニタリングデバイスとコミュニケーションロボットが連携することにより, 適切な健康アドバイスを受けることが可能になった 2020 Showcaseの取り組みコミュニケーションロボットマルチモーダルインタラクションデバイス連携サービス集2020 Town AI 技術を活用したデバイス連携 マチナカ サービス実現に向けて NTT サービスエボリューション研究所では, コミュニケーションロボットを中心に各種デバイスと AI 関連技術を連携させることで, 人の状況を理解し, 働きかけ, 行動や気付きを促すデバイス連携サービスの実現をめざしています. その成果の一端は,NTT 事業会社を含むパートナー企業と連携した共同実験の中で, 介護施設や金融機関, 博物館や屋外の公園など, さまざまな マチナカ のシーンに適用されてきました. 本稿では, その取り組みと今後の展望について紹介します. 特もちづきたかよし 1 のろたまなぶ 2 望月崇由 / 野呂田学すがこうすけ 3 菅光介 1 NTTサービスエボリューション研究所 NTTコミュニケーションズ 2 3 NTT 東日本り (5), カラオケシステムとコミュニケーションロボットが連携することで, 司会進行などレクリエーションのサポート役を担当させることも可能です (6). さらに, 施設内や屋外の対象エリア内に複数設置されたコミュニケーションロボットを含む各種デバイスが連携し, お客さまを適切に案内 誘導することで, マチナカの利便性が向上するだけでなく, 来客数や回遊率の向上に貢献することも期待されます. このように, コミュニケーションロボットを中心に各種デバイスを連携させることで, 人の理解を助けるとともに人の行動を促し, マチナカにおける人々の諸活動を活性化することが可能になると私たちは考えています. 今回紹介する R-env: 連舞 R は, そのキーテクノロジの 1 つです. デバイス連携サービスを支える技術 R-env: 連舞 R NTTでは,40 年以上前から研究開発を行ってきた音声音響処理技術や自然言語処理技術を中心に, その他画像処理技術や知識処理技術など, 各種メディア処理技術に関して世界をリードする研究を行ってきており, これらの技術を活用してコミュニケーションロ NTT 技術ジャーナル 2016.10 21

2020 Showcase の取り組み ボットによる自然な対話を実現させる取り組みを進めてきました.2015 年からは, コミュニケーションロボットの果たす役割を広げ, その存在価値を高めるべく, 外部のデバイスやシステムとロボットを簡単につなげて制御可能にする技術 R-env: 連舞 R の研究開発を開始しています ( 図 ₁). 本技術は, コミュニケーションロボットに代表される各種デバイスを連 携させることで, 人の状態を的確に把握し, その状況に合わせて働きかけ, ユーザに行動や気付きを促す 人の可能性を広げる インタラクション技術に関する研究の一環として開発されたもので, 複数のロボットやセンサ, ガジェット, アプリ, その他前述のメディア処理技術などの機能コンポーネントを組み合わせたデバイス連携サービスを, ブラウザ 1 つで簡単に開発 デ バッグ 実行可能なクラウド環境です. ブラウザ上のGUI 画面から R-env: 連舞 R に接続された各デバイスのアクションと, 次のアクションへ遷移するための条件の組合せによる状態遷移図を作成することで, 誰でも簡単にデバイス連携サービスを開発することが可能です ( 図 ₂). またGUI 上で開発したサービスは, 実行状態に設定しておくことでブラウザを閉じた後も継続 22 NTT 技術ジャーナル 2016.10

集動作するとともに, 状態遷移図を複数 可能にします ( 図 ₃). アルを実施してきました (5),(6). 特に 並列で動作させたり再利用すること 2016 年 ₇ 月末からは,NTTグループデバイス連携サービスのマチナカで, 複雑なデバイス連携サービスも容易主要 5 事業会社と連携した合同実証への適用 ( トライアル事例 ) に作成することが可能です. さらに, 新た実験を開始し, マチナカ における なデバイスを追加する際も,WebSocket により規定の JSON(JavaScript Object Notation) フォーマットを最初に送信するだけで, 簡単に R-env: 連舞 R に認識 登録され, サービスへの組み込みを 2015 年 ₇ 月以降,NTTグループ各社と外部パートナー企業の皆様とともに, R-env: 連舞 R を活用したデバイス連携サービスについて, そのニーズや技術課題の抽出を目的としたトライ さまざまな分野 業界にて, デバイス連携サービスの有効性 受容性の検証を進めています (₇) ( 図 ₄). 本稿では, その取り組みのうち, 新宿エリア を舞台としたトライアル事例について NTT 技術ジャーナル 2016.10 23 特

2020 Showcase の取り組み 紹介します. 新宿エリア の活性化に向けて 2016 年 3 月 30 日に開催された 明 日の日本を支える観光ビジョン構想会議 ( 議長 安倍晋三首相 ) において, 2020 年の訪日外国人観光客数の目標が2000 万人 / 年から4000 万 / 年に倍増された (₈) ことからも分かるとおり, 海外からの観光客が急速に増えています. その原動力になっているのは中国からの観光客の激増で,2015 年の中国からの訪日客は前年から倍増して, それまでトップだった台湾からの観光客数を大きく抜いて 1 位となっています (₉). 彼らの目的は 爆買 という言葉に象徴されるように ショッピング が中心で, 人気の高いエリアもいわゆる観光地以外に銀座や新宿などの, ショップが数多くあるエリアになっています (10). 特にショップ以外にも, 歌舞伎町界隈をはじめとして新宿ゴールデン街など, 外国人観光客に (11) 好まれるスポットを数多く有する新宿では, 地域振興の観点からも, 彼らを 含めたエリア外から新宿を訪れる方たち向けのサービスが求められています. そこで今回の合同実証実験では, 新宿エリアを対象に, デバイス連携サービスを活用した 2 つの実証実験を実施しています. まず 1 番目は, 小売業を営む髙島屋とNTTコミュニケーションズ,NTT 研究所の 3 社による共同実験です. 本実験では, 商業施設 ( 百貨店 ) 内に設置された複数のロボットにより, イベント会場までお客さまを案内 誘導するのに, デバイス連携サービスを活用しました ( ₈ 月 3 日 14 日 ). 具体的には, お客さまの導線などを考慮して, 1もっとも人通りの多い2FのJR 新宿駅側の入り口付近,2 今回のイベントのメインターゲットとなるお客さま ( 子ども連れのご家族 ) が集まる₉Fエスカレーター踊り場付近,3イベント会場のある11Fエスカレーター踊り場付近に, それぞれコミュニケーションロボットと外部センサを連携させたデバイス連携サービスを設置し, 百貨店 内の売り場案内やお客さまとの対話を通じて, イベントに対する興味 関心を訴求するとともに, 会場までのスムースな誘導を実現しています ( 図 ₅ ) 2 番目は, 施設内という限定的な 屋内 空間ではなく, より広い 屋外 を対象とした取り組みです. 本実験は, 東京商工会議所新宿支部, 新宿観光振興協会とともに,NTT 東日本とNTT 研究所が共同で実施しているトライアルで, 新宿駅を中心としたおよそ 1 kmのエリア内の複数個所に設置された, ロボットやデジタルサイネージなどによるデバイス連携サービスを提供しています. 具体的には, 新宿区内で提供中の公衆無線 LANサービス Shinjuku Free Wi-Fi も活用しながら, エリア内の店舗や観光施設など, 複数のスポットに設置されたコミュニケーションロボットが, 店舗への誘導や施設内の案内, エリア内で開催されるイベントの紹介など個別の役割を担うだけでなく, ロボットどうしが連携したアトラクションを用意すること 24 NTT 技術ジャーナル 2016.10

なく回遊率向上の効果を検証しています ( 図 ₆). 今後の展開 前述の合同実証実験の中では, 今回紹介した事例以外にも, 介護施設向けや観光案内施設などにおけるトライアルも実施しており, 多様な分野 業界へのデバイス連携サービスの適用を推進しています. さらに合同実証実験と並行して, ハードウェアメーカやサービス開発者を対象に, R-env: 連舞 R を軸とした 仲間づくり と コトづくり を実施しています (12). そこでは,1ロボットをはじめとする最新デバイスのハンズオンイベント,2 個人開発者からプログラミング経験のないサービス事業者の方までを対象としたハッカソンイベントを定期開催,3 サービス事業者と連携したフィールドトライアル,4ビジネストライアルを実施し, これら 4 つの取り組みを循環させることでデバイス連携サービスの 普及と改善に取り組んでいます. 今後は本稿で紹介した合同実証実験の検証結果も踏まえ, 関連する要素技術の性能向上を図るとともに, デバイス連携サービスを通じた マチナカ の価値向上につとめながら, 新たなロボットビジネスの創出をめざしたいと考えています. (1) http://gigazine.net/news/20160₇01-amazonrobot-arms-race/ (2) http://www.sankei.com/economy/news/150₇1₇/ ecn150₇1₇0013-n1. (3) http://dentsu-ho.com/articles/2₈43 (4) http://www.nikkei.com/article/ DGXMZO₈₉644350T20C15A₇000000/ (5) http://www.ntt.co.jp/news2015/150₇/150₇2₈a. (6) http://www.ntt.co.jp/news2015/1511/151125a. (7) http://www.ntt.co.jp/news2016/160₇/160₇25a. (8) http://www.sankei.com/politics/news/160330/ plt160330003₉-n1. (9) http://www.d2c-smile.com/201604066₈60 (10)http://blogos.com/article/14₉₈₈1/ (11)http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/ pickup/15/100₈4₉₈/060₈00312/ (12)http://www.ntt.co.jp/news2016/1602/160216c. 特, 当該エリアの来客数の増加だけで集で菅光介 NTT 技術ジャーナル 2016.10 25 ( 左から ) 望月崇由 / 野呂田学 /