3.5.2 海鷹丸の走錨限界について林敏史 萩田隆一 小池義夫 喜多澤彰 関屋千絵子東京海洋大学海洋科学部練習船 ( 108-8477 東京都港区港南 4-5-7) Report on the limit of dredging anchor of UMITAKA-MARU Toshifumi HAYASHI, Ryoichi HAGITA, Yoshio KOIKE, Akira KITAZAWA and Chieko SEKIYA Department of Ocean Science, Faculty of Training ship, Tokyo University of Marine Science and Technology (4-5-7 Konan, Minato-ku, Tokyo 108-8477, Japan) 1. はじめに船舶が錨泊中において 台風による走錨のおそれは運航者にとって最も心配する事項の一つである 同様な規模の台風であっても 台風の通過位置の違いや海底の水深や底質の違い 停泊場所の地理的違いによって実際の影響は変化することは 富山湾での海難においても記憶の新しいところである 2000 年に運航を開始した海鷹丸 Ⅳ 世は 旧海鷹丸と比較して甲板上部構造物が大きく 3 段から 5 段と水面からの高さはほぼ 1.5 倍となった 引き渡しを受けた同年 7 月には 台風による第 2 種暴風警報のため晴海ふ頭岸壁から東京湾には避難した翌日 おりからの強風によって平均風速 25m/sec を越えた午前 4:30 頃 本船を含む数隻が走錨し 同じ錨地に停泊中の船舶に多大な迷惑をかけた 幸いにも風下の船舶との距離があったため 機関の準備が間に合い 約 0.85 マイル流されたところで機関により制御でき 錨鎖を巻き上げて 安全な水域への移動ができた これより翌年のドック入渠工事の際 錨鎖を 10 節から 12 節へと 2 節追加した 以降 台風の避難時は 通常左右舷の錨鎖による二錨泊を行い 風向の変化に応じて左右の錨鎖の長さを調整し 機関は電気推進または主機によるスクリュープロペラの推力によって走錨への対応を行っている 今回の台風 13 号により 風速 30m を越える強風を経 - 69 -
験した このときの機関を使用しないでの走錨の限界値の実測値から 自船が耐えること ができる風などの条件について若干の知見を得たので報告する 2. 方法平成 18 年 9 月 17 日乗船漁業実習航海において台風非難のため トロール実習を中途切り上げ八代海に避泊し 近傍を台風が通過する状況に遭遇した 船体モニタリング装置によって船体運動及び LAN 経由の機関状況 方位を 1 秒間隔で 気象や GPS 位置 潮流 気圧 真風向風速 相対風向風速を 5 秒間隔で測定記録し 2000 年 7 月に走錨した記録と比較を行った 3. 結果及び考察 台風 13 号接近のため 九州八代海 ( Fig. 1 ) 長島海峡底浦底港沖に台風避難のため錨泊した 最大瞬間風速は 47m/sec を観測し 台風は八代海の西側を通過 本船は台風の右半円であった Fig.1 Track of Typhoon No.13 and anchoring position( ) in Yatsushiro Sea Nagasaki 台風 13 号の中心は 八代海錨泊中の海鷹丸のほぼ真上を北北東に通過した - 70 -
Fig.2 Typhoon No.13 by Himawari at 17 th Sep.2006 13:00JST 2006 年 9 月 17 日 13:00 の人工衛星ひまわりの赤外画像 IR( 左 ) と可視画像 (VIS) から水蒸気 を含む高い雲は少なく 低層の雲が多い台風であった Fig.3 Track of Dredging anchor at 8 th July 2000 in Tokyo Bay - 71 -
Table 1 Weathe r 17 th Sep.2006(wind direction, wind speed, presser) Time Ave.Wind Wind dir Presser Speed(m/s) (deg.) (hpa) 12:00 12.9 E/S 988.8 13:00 12.1 SE/S 988.3 14:00 21.4 SE 980.7 15:00 30.7 SE 976.7 16:00 26.5 SE 972.8 17:00 35.6 SSE 973.8 18:00 22.1 SSW 978.2 Table 2 Condition of anchoring 9 月 15 日 18:15 水深 47m のところに左舷アンカー投錨 8 節 9 月 16 日 19:15 左舷アンカー投錨 11 節右舷アンカー投錨 1.5 節 9 月 17 日 12:15 左舷アンカー投錨 10 節右舷アンカースラック 6 節 10 節 9 月 17 日 16:00 機関 S/B 9 月 17 日 16:30 機関主機 on pitch 4 (1.5kt 相当 ) 走錨止まる 9 月 17 日 20:55 左舷アンカー揚錨 0 節右舷アンカー 10 節 Longitude E 32.2280 GPS position 12:30-17:30 17th Sep'06 32.2275 32.2270 32.2265 32.2260 Dredging anchor area 32.2255 32.2250 32.2245 32.2240 32.2235 130.1350 130.1360 130.1370 130.1380 130.1390 Latitude N Fig.4 Variation of ship anchoring position by typhoon - 72 -
Fig.5 Change of wind direction, wind speed and presser when pass the typhoon No.13 Heading direction (degree) 360 270 180 90 0 Fig.5 Variation of ship s heading before and after dredging anchor Dredging anchor 方位変化が 30 秒で 180 度もしくは 20 秒で 150 度方位変化があった Table 3 Engine condition during pass the typhoon - 73 -
Fig.6 Condition of Rate of turn, Yawing and Rolling angle at Dredging anchor 1. 風速と海鷹丸船首正面における風圧計算は以下の式を利用した 風圧 =1/2 ρ V 2 CD S ここで v: 風速 CD: 抗力係数 S: 風圧面積 ( 向風を船首正面とする ) ρ=1/8 CD=1.2 とする *CD 抗力係数 : 車が 0.3-0.8( トラック ) 平均風速 32m/sec としたとき風圧 =1/2 1/8 (32) 2 1.2 (15 15) =17280 17 ton また最大瞬間風速 50m/sec とすると風圧は 42 トンと算出した - 74 -
2. 海鷹丸アンカーと錨鎖の把駐力海鷹丸のアンカーおよび錨鎖の概要 AC14 型ストックレスアンカーの重量 1,856kg で底質が砂地としてアンカーの把駐力係数を 4とした アンカーチェーン 1 節の長さは 25m である また一般式として錨鎖 1m の重量は =d 2 2.08(kg) であり 錨鎖 1 連の重量 =d 2 52(kg) 但し d= 鎖環の径 (cm) である なお NIPPON CHAIN & ANCHOR CO.,LTD では 第 3 種直径 40mm における本船の錨鎖の 1m 当りの重量は 35.04kg である 把駐力の計算概要把駐力は W C(kg) w c l( チェーンの長さ )(kg) 一般的な底質による把駐力係数は泥 2-3 砂 4-6 走錨 1.5 として計算に要した 計算例 1): アンカーチェーン 11 節の場合把注力 =1.856 ton 4+(25m 11 節 0.35 ton) 0.8=7.424+96.25=22.3 ton 計算例 2): 水深 50m( ヘ ルマウスまでの距離 ) で着底していない分を 2 節 カテナリー曲線部を 1 節とした場合アンカーチェーン 8 節として考慮すると把注力 =(1.856 ton 4+(25m 8 節 0.72 ton) 0.8=18.2 18 ton となる 以上の関係式を EXCELL において 水深 風速 底質から風圧力と係駐力を用意に算出できる簡易式を設定した この計算式より今回の水深 底質では 風速 32m/sec( 平均 瞬間 ) を超える場合 風圧は 17ton となり 機関を用いなければ走錨することになる 瞬間風速では風圧 42 トンとなり 二錨泊 (18 2=36 トン ) の把駐力を超え走錨する数値であった - 75 -
Table 1 Wind pressure table of UMITAKA-MARU Surge 方向と Sway 方向における船体受風角度別風圧力 Table 3 Relation of Holding power and Wind speed - 76 -
まとめ今回の走錨限界調査によって EXCELL においての簡易式を設定できた しかし 瞬間最大風速や底質など計算式への誤差要因を考慮すると運航者にとって補助的なものである 初期の走錨において急激な方位変化が認められた 初期走錨を知る方法として Yow rate の可能性を示した 各船において運航者として風圧と係駐力を算出しておく必要がある しかし本船の完成図書には ギ総数からのアンカーの重さやチェーンの径は表示があるものの 錨鎖の重さや風圧面積や風圧係数は 造船所における資料が頼りであった 安全を考慮するとこれらの数値の掲載は義務化が必要と思われる 参考文献 1) 藤井勉 大澤輝夫 石田廣史. 台風 0423 号による海王丸海難時の気象解析. 日本航海学会講演集 2007;114:Ⅱ-16. 2) 海王丸台風海難事故に関する報告書海王丸事故原因究明 再発防止等委員会 2006 年 9 月. 3) 台風と海難 ( 海難審判庁ホームページから ) http://www.milt.go.jp.maia/05boushi/bunseki/bunsekikohosiryo/taifutokainan/gaiy o/gaiyo.htm - 77 -