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Transcription:

委員会活動報告 自動車技術展 人とくるまのテクノロジー展 2012 及び材料フォーラム報告 ( 一社 ) 日本アルミニウム協会自動車アルミ化委員会 1. はじめに自動車技術会主催 2012 年春季大会は 5 月 23 日 ( 水 ) ~25( 金 ) の日程で毎年恒例となったパシフィコ横浜を会場として開催され 学術講演会と自動車技術展 EV 技術展 : 人とくるまのテクノロジー展とから構成されていた 今年の主催者企画 ( 自動車技術会企画展示 ) は 1 特別企画展示 人のくらしを豊にするスマート技術 ~ 人とくるまと社会をつなぐ ~ 2 その他の展示 自動車技術会賞 ドライブレコーダ 等があり 特に特別企画展示では 自動車技術はくるま単体技術開発から スマートグリッド スマートハウスなど人間の生活に溶け込む開発に変わりつつあり 将来の人 くるま 社会の輪を根源とした技術開発が重要であることをテーマに 環境技術 安心 安全技術 快適 利便性技術 についての新しい技術が紹介されていた 日本アルミニウム協会 自動車アルミ化委員会では 最新の自動車技術や部品が展示される 人とくるまのテクノロジー展 2012 ならびに 同時開催される材料フォーラム 挑戦! 時代をリードする自動車材料 ~ 地球と共存する車の実現 ~ に参加 講演し 自動車のアルミ化や競合材に関連した最新の技術動向や EV,HEV, PHV など次世代自動車の開発動向などを調査した その概要を報告する 2. 人とくるまのテクノロジー展 2012 今年 21 回目の開催となる 人とくるまのテクノロジー展 2012 は 自動車業界の技術者 研究者ための自動車技術専門展示を目的に規模が拡大されたこともあり 出展社数は 444 社 *1) (11 年は 370 社 ) また 来場者数は 3 日間の合計で 71,785 名 (23 日 19,386 名 24 日 23,148 名 25 日 29,251 名 ) と過去最高であった一昨年を 1000 名近く上回るほどの盛況ぶりであった *1) 自動車 :19 社 部品 :144 社 材料 :58 社 テスティンク :107 社 CAE ソリューション :34 社 カーエレクトロニクス :27 社 R&D 出版 団体 :51 社ト ライフ レコータ 他 4 社 2.1 概要今年は 昨年の東日本大震災により自動車業界にとって大打撃を受け 特に部品メーカには厳しい状況になったものの その影響も回復傾向にあると思われた 特に 部品メーカの参加が著しく増えた (11 年 104 社 12 年 144 社 ) その背景には HEV,EV,PHV など次世代自動車の本格的実用化による環境への対応 さらには エネルギー問題への対応 安心 安全の確保などこれからの社会に対する車の役割に対し それぞれの部品メーカが革新最先端技術により対応していることをアピールし 来場者はこれら技術に将来への期待と関心を持っていたことを表したものと思われる 2.2 展示概況今年のテーマは 人々のくらしを豊かにするスマート技術 ~ 人とくるまと社会をつなぐ ~ であり 各社が環境 安全 快適にかかわる最新技術を展示していた 環境対応車としては 新型ハイブリッド車 アクア ( トヨタ自動車 ) をはじめ 電気自動車 リーフ ( 日産自動車 ) やプラグインハイブリッド車 プリウス PHV ( トヨタ ) が展示されていた また 電気自動車に蓄えた電力を家庭用に供給するシステム LEAF to HOME ( 日産自動車 ) や MiEV パワーボックス ( 三菱自動車工業 ) の展示もされていた そのほか環境対応へ向けた車体軽量化の手段として 材料の高強度化や材料置換 異種材料の接合技術など 各社が取り組んでいた また 自動車技術会による特別企画展示も行われ 人とくるまと社会 をつなぐスマート技術として電気自動車に関連する技術や運転支援システム 通信システムなどの展示が行われていた 館外では 最新くるまの運転教室 として制動や横滑り防止などの運転支援システムが体験できるコーナーが開設されていた 2.3 アルミ部品自動車メーカ 部品 材料メーカともに環境対応に関連する展示が多い中 アルミが持つ軽量 高強度 高熱伝導率などの特徴がそこに生かされていた 中でも EV HEV に使用される部品への適用は多く バッテリーやインバータ それを冷却するヒートシンクやパワーコントロールユニットの冷却装置 ワイヤーハーネスなどが展示されていた その他 FSW を用いたドアパネルや エンボス加工により剛性を高めた遮熱板 押出材を用いた ABS ユニット ターボチャージャー部品 2 輪車用フレームなどの展示があった また異材質との締結技術として 塑性変形の一形態である塑性流動を利用してアルミダイカスト材と鋼材とを締結させる技術や 特殊な表面処理によりアルミと樹脂を接合し

たロッカーカバー 特殊な溶加材を用いたアルミ合金材と鋼板の溶接接合技術などが展示されていた アルミ関連部品の出展内容を表 1 写真 1~15 に示す 写真 表 1 アルミニウム関連部品の出展内容 部位サンプル名材料 技術特徴展示会社 1 ドアパネル LFA 用ドアパネル板材 押出材 FSW 軽量化テクノエイト 2 熱交換器コンデンサー板材冷却性能 軽量化 小型化デンソー 3 熱交換器パワーコントロールユニット板材冷却性能 小型化デンソー 4 バッテリー 5 熱交換器 6 バッテリー 7 その他 リチウムイオンバッテリーアルミフレームインバータおよび電子機器冷却用ヒートシンクリチウムイオン電池ケース用アルミニウム合金ピアスメタルを用いた異種金属接合技術 押出材軽量化トヨタ自動車 一体ろう付け冷却性能 軽量化 小型化ティラド 板材高強度 軽量化神戸製鋼所 接合技術異種金属接合神戸製鋼所 8 その他 NMT ロッカーカバー他接合技術軽量化 一体成形大成プラス 9 基板高熱伝導アルミベース基板 Cu 箔 + 絶縁伝熱層 +Al ベース熱伝導性 放熱性電気化学工業 10 バッテリー耐振 DLCAP Module 押出材軽量化日本ケミコン 11 バッテリーアルミバッテリーケース鋳造部品軽量化 気密性日立金属 12 電線アルミ電線線材軽量化矢崎総業 13 アルミボルトボルト用高強度アルミ合金連続鋳造圧延法高強度 軽量化住友電気工業 14 ABS 二輪車用 ABS 押出材 軽量化 高機能 ( 内部品質 切削性 ) ボッシュ 15 ターボチャージャーインペラー材鋳物 押出棒 ( 切削 ) 軽量化 耐熱合金三菱重工 写真 1 LFA 用ドアパネル ( テクノエイト ) 写真 2 コンデンサー ( デンソー ) 写真 3 パワーコントロールユニット ( デンソー ) 写真 4 リチウムイオンバッテリーアルミフレーム ( トヨタ自動車 ) 写真 5 インバータおよび電子機器冷却用ヒートシンク ( ティラド ) 写真 6 リチウムイオン電池ケース用アルミニウム合金 ( 神戸製鋼所 )

写真 7 ピアスメタルを用いた 異種金属接合技術 ( 神戸製鋼所 ) 写真 8 NMT ロッカーカバー ( 大成プラス ) 写真 9 高熱伝導アルミベース基板 ( 電気化学工業 ) 写真 10 耐振 DLCAP Module ( 日本ケミコン ) 写真 11 アルミバッテリーケース ( 日立金属 ) 写真 12 アルミ電線 ( 矢崎総業 ) 写真 13 ボルト用高強度アルミ合金 ( 住友電気工業 ) 写真 14 二輪車用 ABS ( ボッシュ ) 写真 15 インペラー材 ( 三菱重工 ) 2.4 各種競合材関連部品競合材としては 炭素繊維強化プラスティック (CFRP) 製のトランクリッドや 鋼板と樹脂を重ね合わせたドアパネル ハイテンバンパーとテーラードブランク鋼板製クラッシュボックスを組み合わせたバンパーシステムなどが展示されていた その他 鋼管素 材から 1470MPa 以上の高強度で複雑な 3 次元形状の部材を製造する技術や それを使用したパーソナル EV のボディ骨格などが展示されていた 競合材関連部品の出展内容を表 2 写真 16~24 に示す 写真 表 2 各種競合材関連部品の出展内容 部位サンプル名材料 技術特徴展示会社 16 その他ポリマールマット CZ 炭素繊維強化成形材料高比強度 高比剛性 軽量化 17 トランクリッドトランクリッド 炭素繊維強化熱硬化性樹脂製自動車外板 18 その他 3 次元熱間曲げ焼入れ 3 次元熱間曲げ焼入れ 19 その他パーソナル EV のボデー骨格 3 次元熱間曲げ焼入れ 20 ドアパネル軽量高剛性サンドウィッチ鋼板 21 バンパー軽量高性能バンパー R/F Assy 鋼板と樹脂のサンドウィッチパネル 980MPa ハイテンバンパー +テーラードブランク鋼板製クラッシュ Box 軽量化 耐遅れ破壊 軽量化 溶接レス耐遅れ破壊 軽量化 溶接レス普通鋼板より軽く アルミニウムより廉価 軽量高効率エネルギー吸収 ジャパンコンポジット 三菱レイヨン 住友金属工業 豊田鉄工 ティッセン クルップ 22 オイルパンオイルパン樹脂軽量化旭化成 豊田鉄工 23 ドアインナ ドアインナ ガラス繊維強化樹脂軽量化三井化学

24 フロントモジュール CFRP クラッシュボックス炭素繊維強化樹脂軽量化 エネルギー吸収東レ 写真 16 ポリマールマット CZ ( ジャパンコンポジット ) 写真 17 トランクリッド ( 三菱レイヨン ) 写真 18 3 次元熱間曲げ焼入れ ( 住友金属工業 ) 写真 19 パーソナル EV のボデー骨格 ( 豊田鉄工 ) 写真 20 軽量高剛性サンドウィッチ鋼板 ( ティッセン クルップ ) 写真 21 軽量高性能バンパー R/F Assy ( 豊田鉄工 ) 写真 22 オイルパン ( 旭化成 ) 写真 23 ドアインナ ( 三井化学 ) 写真 24 CFRP クラッシュボックス ( 東レ ) 3. 材料フォーラム 地球 と 共存 というキーワードを切り口に 環境 エネルギー カーボンニュートラル CO 2 資源 電気など これらからの材料技術への取り組みに焦点をあて今後の自動車材料技術の方向性を共有することを目的として 材料フォーラムが企画された 自動車アルミ化委員会は本年も 挑戦! 時代をリードする自動車材料 ~ 地球と共存する車の実現 ~( 企画 : 材料部門委員会 ) に協力し アルミニウム業界から 2 件の話題提供を行った 講演内容の概要を以下にまとめる 3.1 Sustainable Mobility 社会を目指したトヨタの取り組み : 間瀬清芝氏 ( トヨタ自動車 ) トヨタ自動車が目指すサステナブルな社会に適用した自動車のあり方について 同社材料技術統括部の間瀬氏より説明がなされた 自動車がサステナブルであるためには 環境 エネルギー問題に関する課題 特に CO 2 削減が最重要な課題である この対応として 電気自動車をはじめとした次世代自動車の開発があるが トヨタではプラグインハイブリッドカーを主軸に開発を進め これを適宜応用して電気自動車 燃料電池自動車等に展開する方向で開発を進めている また CO 2 削減のための個々の技術的課題については 車体の軽量化 電池 モーターなどの小型 高性能化が必要であり 素材メーカの更なる技術開発に対する強い期待が改めて示された なお車体の軽量化については コスト面での優位性から鉄でできることを徹底的に進めるという方針が示された 3.2 自動車用超高強度鋼板の開発状況と今後の動向 : 藤田展弘氏 ( 新日本製鐵 ) 最近の自動車に求められる軽量性と衝突安全性を両立するには 使用する鋼板の強度上昇 ( ハイテン化 ) が有効であり ここでは冷間プレス用の 980MPa 級鋼板およびホットスタンプ材の開発状況について説明がなされた 冷間プレス用 980MPa 級鋼板では 張り出し成形に有効な全伸びを向上させると 伸びフランジや曲げ成形に有効な穴拡げ性が低下するという傾向がある そこで 全伸びを重視する場合は 軟質で延性に優れ

たフェライト組織をベースに硬質な焼入れ組織であるマルテンサイトを分散させた複合組織化が有効であり 一方 穴拡げ性を重視する場合には 単一 均一組織化することが有効であり 必要とされる成形性に応じて 材料の作り分けがなされている ホットスタンプ材については 加熱後にホットスタンプを行うまでに材料表面に生成するスケールが問題となることから めっき処理の最適化が重要であり また成形後の冷却で焼き入れできるよう成分 組織の最適化も必要である 3.3 最近の熱間プレス技術動向 : 小嶋啓達氏 ( 住友金属工業 ) 自動車のピラー類などに引張強さが 1500MPa 以上の部品を 良好な寸法精度で製造する方法として熱間プレス ( ホットスタンプ ) 工法の普及が進んでいる ここでは 熱間プレス技術に関して最近の技術動向が報告された 強度面では 従来の 1500MPa 級からさらに高強度化が進み 耐遅れ破壊性の対策がなされた 1800MPa 級の部材製造が実用化されている 表面処理では 表面のスケール発生の防止と耐食性の改善から 溶融アルミニウムめっきの開発 実用化が進んでおり また従来の溶融亜鉛めっきを改善する技術開発も進められている さらにプレス部品の高機能化として テーラードプロパティと呼ばれ 種々の工夫によって プレス部品に強度差や板厚差を付与する技術の開発も積極的に進められている 3.4 省エネルギー 省資源に貢献する自動車部品用焼結材料 : 宇波繁氏 (JFE スチール ) 鉄系焼結材料は 最終製品形状に近い部品が安価に大量生産できるため 自動車部品に広く適用さているが 昨今の燃費向上の要求に伴って 鉄系焼結材料も高強度化や複雑形状化による小型 軽量化が指向されている ここでは 最近の技術開発事例として 以下の紹介がなされた 1 比較的低温の焼結温度での焼結が可能でかつ高疲労強度を有するハイブリッド型 Mo 系合金鋼粉 2 高強度かつ優れた被削性を有する Ni フリー合金鋼粉 3 高速切削に適した切削改善剤 3.5 Al-Mg-Si 合金の組織と機械的性質に及ぼす添加元素の影響 : 加藤良知氏 ( 昭和電工 ) 求められる特性のアルミニウム合金開発のために第一原理計算の援用の可能性を検討するために Al-Mg-Si 系合金押出材について 計算による知見と実験結果の突合せを行って検証した結果について報告がなされた 過剰 Si 型の合金において 伸び値が Si 添加量とともに減少し 粒界破壊が支配的になる傾向が認められ これは第一原理計算の結果として得られた Si が粒界に偏析して粒界の結合力を低下させるという結果に一致が認められた 一方で Cu Fe 添加は 析出物形態 結晶粒サイズの変化を通じて 伸び 破断形 態に影響を与えた これよりアルミニウム合金の材料設計への第一原理計算の部分的な援用の可能性が示されたと考えられる 3.6 自動車部品へのアルミニウム摩擦圧接接合の適用 : 水口興氏 ( 日軽金アクト ) アルミニウム合金材についての信頼性の高い接合方法としては 溶接や摩擦攪拌接合 摩擦圧接接合などがあるが これらの接合法では接合部近傍が高温になるため 熱影響部 (HAZ) が存在する アルミニウム合金材は一般的に熱軟化しやすいため HAZ 部は母材の強度に比べて低下する傾向にある ここでは 6061 合金押出材について摩擦圧接接合した場合の 接合条件と機械的性質の関係が報告された 摩擦寄り代 摩擦推力 アップセット推力等の接合条件を最適化して 摩擦発熱による温度上昇等を制御することによって 信頼性の高い接合条件が存在することが確認された 3.7 自動車上中塗り塗装系の CO 2 削減への取り組み : 安達尚人氏 ( 関西ペイント ) 自動車の塗装においては 生産性 ( 一台あたりの塗装コスト削減 ) 環境対策 (CO 2 排出量の削減 有害物質の使用制限 ) 品質 ( 仕上がり 耐久性 ) の改善が求められている ここでは 環境対策として CO 2 削減のための工程短縮の取り組みが紹介された 従来の塗装工程として 水性 3wet2PH 工程 と呼ばれるプレヒート (PH) が中塗り塗装後とベース塗装後の 2 回実施されるものが標準であったが この工程から中塗り後のプレヒートを省略した 水性 3wet1PH 工程 をベースとして 各種の工程短縮が検討され実用されている 工程を短縮すると色むら等の塗装品質が劣化するため それを補う代替技術の開発が工程省略実用化の鍵となっている 3.8 新規無塗料材料の提案 : 下鵜瀬正史氏 ( 日本ポリプロ ) 自動車用の樹脂材料として ポリプロピレン (PP) は植物由来樹脂を含めた全ての自動車用素材の中で最軽量 かつ環境適合性については 比重 CO 2 原単位の観点でも最も優れた性能を有している ここでは 製造時の CO 2 削減を目的として無塗装化に対応した PP 材料の開発動向が紹介された 外装材としては 無塗装白原着バンパー材を開発して実用化している この開発では 単に素材に着色しただけでなく 外観性能 傷付性 耐汚れ性など素材面での改善が図られている 一方 内装材の無塗装化については 要求される耐受傷性 ウエルドライン シボ転写性などの外観品質に対応する新規の材料開発を行っており その特性が紹介された 特に新材料ではウエルドラインが出にくいため種々の成形加工方法に対応可能で今後の適用拡大が期待される

4. まとめ世界規模でエネルギー問題に対する関心が高まる昨今 安心 安全性の向上とともに快適性や利便性をさらに要求される中 社会に対する くるま のかかわりが重要視されている 部品メーカを含めた自動車産業はこのような中 枯渇化する化石燃料への代替技術に対応する開発を進め 石油燃料を主とした現行車に変わる HEV,EV,PHV など次世代自動車のための革新的技術への取組みが本格化してきた 電気自動車の課題は 一回の充電での航続距離の延長や車両製造コストの低減などであろう これらの解決策の重要な役割を担うものとして バッテリーがあり バッテリーの性能向上と高効率化 低コスト化などが上げられる また 車両の軽量化も電気自動車にとって大きな課題であり 各種部品の小型軽量化はもとより軽量化素材の適用を進めている 素材としての軽量化は 従来の鉄からアルミ化することで可能とはなるものの 近年の素材開発が進む中 CFRP など樹脂材料の開発が急速に進み 様々な材料置換を考える必要がある よって 単純な軽量化だけでなく 素材の持つ特徴を生かすことも重要となろう アルミニウム合金はこれらの素材の中でも リサイクルという点では優れた素材であると考えられる ただし 様々な部品や素材が組み合わされて作られている くるま にとって いかにリサイクルするかは自動車 素材業界全体としての大きな課題である 日本アルミニウム協会では アルミニウムのリサイクルを検討し 素材の選別技術なども進めてきたものの 自動車への適用については大きな課題となっている 次世代自動車に適用した素材のあり方を考慮し アルミニウムの自動車への適用を拡大する技術を今後も追求していく