平成 20 年度マナビスト自主企画講座支援事業 - 日常の生活を科学の目で見る - 2008 年 11 月 13 日 ( 木 )~12 月 4( 木 ) 18:30-20:30 アバンセ 村上明 1
第 1 回 現代科学から見た星占い ー星占いの根拠って何? - 2008 年 11 月 13 日 ( 木 ) 村上明 2
内容 1. 西洋占星術の誕生から現在まで 2. 科学の目で見た西洋占星術 3. 西洋占星術の非科学性 4. まとめ 3
はじめに - このセミナーの目的 - 西洋占星術を科学的に検証し 西洋占星術は科学的根拠を持たないことを学びます 4
1. 西洋占星術の誕生から現在まで -1 占星術は紀元前 30 世紀ごろメソポタミヤ地方の古代バビロニアで生まれました 星座は当時その地方に住んでいた人々の生活の中から生まれ ギリシャを経てヨーロッパへ伝えられました ルネッサンス時代にコペルニクス ガリレオ ニュートンなどにより天体の観測と実験 理論的な考察を通して新しい宇宙観が生まれ 近代科学が誕生しました 5
1. 西洋占星術の誕生から現在まで -2 太陽 月 惑星は星座の間を動いて行きます 天球上で太陽の動く道 ( 黄道 ) に沿って1 年を1 2 等分し12の宮を考え その宮に近い星座の名前を宮の名前に使います ( 黄道 12 宮 ) 西洋占星術では 人間が生まれた瞬間に 太陽 月 5つまたは8つの惑星が天球上のどの黄道 12 宮にいたかその位置によってその人の性格や運命が決まると考えます ( 図 1 黄道 12 星座と誕生日 を参照 ) 6
図 1 黄道 12 星座と誕生日 星座と誕生日藤井旭著 宇宙大全 より 7
1. 西洋占星術の誕生から現在まで -3 そしてそれらの相互の位置関係と 人間に関する過去の膨大な出来事を関連付けて解釈し その解釈に基づいて個々の人間の運命を予言します 特に 人が生まれた時に太陽が黄道 12 星座のどの星座に位置していたか その星座がどういう性格であるかが その人の基本的な運勢 性格を決めると考えます 8
1. 西洋占星術の誕生から現在まで -4 天球上での星の位置決めの基準は春分点 ( 春分のとき太陽がいる点 ) ですが 地球の歳差運動 ( 地球の自転軸の首振り運動で周期は約 25 800 年 ) のため その春分点は年とともに移動しています 西洋占星術は 紀元前 140 年頃の春分点を基準にして黄道 12 宮を定め 個人の生まれた日がどの黄道 12 宮 ( 黄道 12 星座 ) に当たるかでその人の運命を決めます 9
1. 西洋占星術の誕生から現在まで -5 しかし 歳差運動のため 約 2000 年前はおひつじ座にあった春分点は現在 隣の魚座に移動しています そのため現在は 誕生日に実際に太陽が位置する星座は 星占いで誕生日によって決まる星座より 1 ヶ月ほどのズレが生じて 1 つ前の星座になっています ( 表 1 占星術の星座と太陽の真の位置 を参照 ) 10
表 1 占星術の星座と太陽の真の位置 占星術の12 星座 誕生日 太陽が位置する本当の星座 おひつじ座 3 月 -4 月 うお座 ふたご座 5 月 -6 月 おうし座 かに座 6 月 -7 月 ふたご座 しし座 7 月 -8 月 かに座 しし座 おとめ座 8 月 -9 月 しし座 おとめ座 てんびん座 9 月 -10 月 おとめ座 さそり座 10 月 -11 月 おとめ座 てんびん座 いて座 11 月 - 12 月 さそり座 蛇使い座 いて座 うお座 2 月 - 3 月 みずがめ座 うお座 11
2. 科学の目で見た西洋占星術 -1 天王星 海王星 冥王星等が発見されるとそれらを取り入れて占星術も複雑化したが 200 6 年に冥王星が惑星の定義から外れました 科学者が発見したり 定義を変更すると占星術の基盤が影響を受けています 現代は 宇宙の観測手段の飛躍的な発達により全く新しい宇宙像が誕生しています 西洋占星術は現代科学で得られた新しい宇宙像とは多くの点で矛盾しています 12
2. 科学の目で見た西洋占星術 -2 現代の天文学 宇宙物理学により遠くの星までの距離を測ることができるようになりました ( 表 2 星座までの距離 参照 ) その結果 今私たちが見ている黄道 12 星座の星は 何万光年 何千光年も離れていることがわかりました さらに黄道 12 星座はバラバラの距離にあり 同じ星座の中の星でさえばらばらに離れていることがわかりました 昔は 光や情報は長い距離でも一瞬のうちに伝わると考えられていましたが アインシュタインの相対性理論の発見により 光より早く伝わるものはないことがわかりました 情報を最も早く伝えるのは光です その光でも 星まで到達するには何千年 何万年もかかるのです 13
表 2 星座までの距離 藤井旭著 宇宙大全 より星座 星距離 ( 光年 ) さそり座アンタレス 550 ふたご座ボルックス 32 カストル 52 おうし座プレアデス星団 ( すばる ) 408 かに座プレセベ星団 515 おとめ座おとめ座銀河団 M87 5900 万 黄道 12 星座がバラバラの距離にある 同じ星座の星でも距離はバラバラ 14
2. 科学の目で見た西洋占星術 -3 今私たちが見ている黄道 12 星座の星は 何万年 何千年前の星ですが 何万年 何千年前の星が現在の地球上の人間の運命を決定するというのは論理的に極めておかしな話です また もともと西洋占星術では 星座は天球に貼りついていると考えられていましたが 現代天文学の観測によりこの考えは完全に否定され 星は宇宙空間にばらばらに分散して存在することが分かりました 15
2. 科学の目で見た西洋占星術 -4 さらに現在は次のようなことも分かっています 1. 長い年月では星の位置や星座の形は変わる ( 図 2 星座の形は変わる を参照 ) 2. 星は生成 消滅している 3. 宇宙は変化している 4. 肉眼で見えない天体が無数にある 中性子性 ブラックホール 暗黒物質 ( 表 3 参照 ) など * たとえばさそり座やいて座にもブラックホール候補がある 16
図 2 星座の形は変わる 時間と共に形が変わる北斗七星 国立科学博物館ホームページ 宇宙の質問箱 より引用 20 万年後現在 20 万年前 17
2. 科学の目で見た西洋占星術 -5 西洋占星術は 昔の人が見た星座の形からその星座の性格を考えそれを人の性格や運命に関連づけたものです その星座の形も時間と共に変化するのですから占星術による性格付けそのものが根拠を持たなくなります 18
表 3 宇宙の見えない天体 宇宙を構成する物質 エネルギー 目に見える物質 4 % 暗黒物質 23 % 暗黒エネルギー 73 % 19
3. 西洋占星術の非科学性 -1 西洋占星術では 人が生まれたときに太陽が位置する星座の性格がその人の基本的な性格や運命を決めます 星座の性格は 大昔の人がつけたその星座の名前から連想される性格です しかも大昔と今では 太陽の位置が星座ひとつ分くらいずれています このような占星術に科学的な根拠を見つけることは非常に困難です 20
3. 西洋占星術の非科学性 -2 以下で 詳しく占星術の非科学性を見て行きます 今私たちが見ている黄道 12 星座の星は 何万年 何千年前の星ですが 何万年 何千年前の星が現在の地球上の人間の運命を決定するというのは論理的に極めておかしな話です 21
3. 西洋占星術の非科学性 -3 例えばおとめ座銀河は地球から約 6000 万光年 現在私達が見ているおとめ座は 恐竜が絶滅した頃のおとめ座なのです その頃の星が現在の私達の運命を決定するという占星術にはそれを説明する根拠がありません 22
3. 西洋占星術の非科学性 -4 占星術は 一人一人の生まれた時の太陽 月 5つ又は8つの惑星の位置と過去の個人の生涯に関する膨大なデータを関連付けてある解釈を出しているが そのプロセスにおいて統計学的 科学的な処理は全くされていません 恣意的な解釈に基づき人の一生を予言するもので そこには科学的な根拠は全くありません また 科学であるためには 解釈には論理的な説明が必要ですが それもありません 23
3. 西洋占星術の非科学性 -5 それでも占星術の占い 予言は当たっていることが多いと感じる人がいますがどうでしょうか? 24
3. 西洋占星術の非科学性 -6 占星術の予言が当たっているかどうかを判断するためには 統計学的に十分なデータを客観的に調査することが必要です 例えば 天秤座生まれの人はバランスをとる性格であるという占いが正しいかどうかを判断するためには 天秤座以外のすべての星座の人の性格を調べ また バランスをとる性格を持つ多数の人の誕生星座を調べ 統計学的に検討することが必要です ( バーナム効果 二重盲検法を参照 ) 25
3. 西洋占星術の非科学性 -7 占星術にはこのような科学的な検証が欠けています 西洋占星術は天文学や宇宙物理学の進展で分かったことを全く考慮していません 26
4. まとめ 西洋占星術では 数千年前の太陽と星座の位置関係が現在のものとは異なっているのに 昔のままの位置関係をもとにして人の運命を占っています 数千万年前 ~ 数千年前の星が現在地球上にいる人間の運命を決定するという西洋占星術には論理的な根拠がありません 西洋占星術は過去のデータの解釈について科学的な処理がなされていないし 論理的な説明も全くありません したがって 西洋占星術の予言には 科学的な根拠がありません 27
付録 1 太陽と 8 つの惑星 占星術に使われる太陽と 8 つの惑星 28
参考文献等 参考文献 1. 宇宙大全 : 藤井旭 2. 国立科学博物館ホームページ 3. 29