審決取消判決の拘束力

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平成  年(オ)第  号

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

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平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

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主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

平成  年(行ツ)第  号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

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政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

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上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

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併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

同時期に 8 社に対し提起された大阪地方裁判所における判決 ( 大阪地裁平成 24 年 9 月 27 日判決 裁判所 HP) では, 間接侵害の成立に関し, 特許法 101 条 2 号の別の要件である その物の生産に用いる物 にあたるかが問題とされ, 1 特許法 2 条 3 項 1 号及び101 条

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

平成22年 月 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

実施可能要件を肯定した審決が取り消された事例

(イ係)

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インド特許法の基礎(第35回)~審決・判例(1)~

長澤運輸事件(東京地判平成28年11月2日)について

裁判所は, 同年 9 月, 被上告人に対し, 米国に被拘束者を返還することを命ずる旨の終局決定 ( 以下 本件返還決定 という ) をし, 本件返還決定は, その後確定した (4) 上告人は, 本件返還決定に基づき, 東京家庭裁判所に子の返還の代替執行の申立て ( 実施法 137 条 ) をし, 子

なお 本書で紹介した切餅特許事件においては 被告製品は 原告特許発明の構成要件 Bを文言上充足するともしないとも言い難いものであったが 1 審で敗訴した原告は 控訴審において 構成要件 Bの充足が認められなかった場合に備え 均等侵害の主張を追加している 知財高裁は 被告製品は構成要件 Bを文言上充足

競走馬の馬名に「パブリシティ権」を認めた事例

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

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4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

2016 年 5 月 25 日 JETRO アセアン知財動向報告会 ( 於 :JETRO 本部 ) ASEAN 主要国における 司法動向調査 TMI 総合法律事務所シンガポールオフィス弁護士関川裕 TMI 総合法律事務所弁理士山口現

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特許無効審判の審判請求書における補正の要旨変更についての一考察審判請求後の無効理由の主張及び証拠の追加等に関する裁判例の検討

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平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

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日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

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平成18年1月13日 最高裁判所は,貸金業者の過払い金の受領は違法と知りつつなされたことを推定するとした判例です

にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

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KSR判決のその後

平成  年(オ)第  号

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

Ⅰ. 事実の概要 本件は, 発明の名称を ピリミジン誘導体 とする特許 ( 第 号 ) の無効審判請求 ( 無効 ) を不成立とした審決の取消訴訟である 本件特許は, 被告特許権者等が販売する高コレステロール血症治療薬 クレストール の有効成分の物質特許である

 

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

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(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

できない状況になっていること 約 6 分間のテレビ番組中で 2 分間を超える放映を し たこと等を理由に損害賠償請求が認容された X1 X2 および Y の双方が上告受理申立て 2 判旨 :Y1 敗訴部分破棄 請求棄却 X1,X2 敗訴部分上告却下ないし上告棄却最高裁は 北朝鮮の著作物について日本国

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

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事件名

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(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

経済産業省 受託調査 ASEAN 主要国における司法動向調査 2016 年 3 月 日本貿易振興機構 (JETRO) バンコク事務所知的財産部

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

Taro-婚姻によらないで懐妊した児

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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上告理由書・構成案

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

■特許無効審判に係る審決取消訴訟の判例紹介・分析

Transcription:

(1) 審決取消判決の拘束力の範囲 - 発明の進歩性判断の場合 - 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所弁理士喜多秀樹 1. はじめに審決取消訴訟の取消判決が確定すると 従前の審決が取り消されるため事件は特許庁の審判手続に戻り 審判官は更に必要な審理を行って再び審決をしなければならない ( 特許法 181 条 5 項 ) この場合 その後の審決が 先の取消判決を無視して前審決と同じ理由で同じ結論を下すと 事件が審判と取消訴訟を往復して終局的な解決ができなくなるので 審決取消判決にはいわゆる拘束力 ( 行政事件訴訟法 33 条 1 項 ) が認められている この審決取消判決の拘束力は 高速旋回式バレル研磨法事件の最高裁判決 ( 平成 4 年 4 月 28 日第三小法廷判決 民集 46 巻 4 号 245 頁 ) において 判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものである とされている これに対して 特許庁での審判における発明の進歩性判断は 本件発明の認定 引用発明の認定 一致点と相違点の認定 及び 相違点の容易想到性の過程で行われるのが通例である しかし 取消判決の理由には審決の理由中の上記進歩性判断過程の一部だけを捕らえて結論を導いている場合が多いので 取消判決後の審判での進歩性判断の再審理において どこまでが取消判決の拘束力が及ぶ範囲である 判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断 と言えるのかを見極めるのが非常に難しい場合がある そこで 本稿では 上記最高裁判決とその後の幾つかの判決例から 発明の進歩性判断の場合に限定して 審決取消判決の拘束力の範囲を考察してみる 2. 高速旋回式バレル研磨法事件の最高裁判決について (1) 事件の概要本事件の概要は次の通りである 前審決 高速旋回式バレル研磨法に係る本件特許の特許無効審判において 回転式のバレル研磨法において断面を6 角形又は8 角形とすることは広く行われているので 第 3 引用例に記載の 多角形 の中で6 角形又は8 角形を選び これと第 2 引用例を組み合わせれば 本件発明は当業者が容易に想到しうると認定し 本件特許を無効とした 前判決 前審決を取消 主要な理由は次の通りである 審決が 作用効果の格段の相違に着目することなく第 2 引用例の研磨法と本件発明とで

(2) 研磨法が同じであるかのごとく判断しているのは誤っている 従って 本件発明は 第 2 引用例 第 3 引用例に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとした審決は 各引用例の技術内容の認定を誤り 本件発明と引用例の異同点の誤った認定に基づくものであって違法である 原審決 前判決に従い 本件特許を有効とした 原判決 原審決を取消 主要な理由は次の通りである 第 3 引用例と前判決で検討されていない第 1 引用例および周知慣用手段について検討を加えた上で バレルの形状を除いて本件発明の要件を満たす旋回式バレル研磨を行う方法を開示した第 2 引用例記載の発明において そのバレルを第 1 乃至第 3 引用例の記載に基づいて バレルを用いた研磨法において周知慣用であった正 6 角柱状又は正 8 角柱状のバレルに代えることは 格別の発明力を要しないで想到しうる程度に過ぎない 原判決に対して特許権者が上告 判決要旨は次の通りである (2) 判決要旨 特定の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとはいえないとの理由により 審決の認定判断を誤りであるとしてこれが取り消されて確定した場合には 再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果 審判官は同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたと認定判断することは許されないのであり したがって 再度の審決取消訴訟において 取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りである ( 同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができた ) として これを裏付けるための新たな立証をし 更には裁判所がこれを採用して 取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違法とすることが許されないことは明らかである (3) 本最高裁判決の射程と問題点上記判決要旨を簡単に言えば ある特定の引用例からの発明の進歩性が否定されたことによって前審決が取り消された場合には 再度の審判手続において同一の引用例から発明の進歩性を肯定する認定判断及びそのための主張立証を行うことは許されないということになり これは 事件の蒸し返しを防止するための一般論としては正論である しかし 審決取消訴訟では審決の違法性のみが審理対象であり 実際上は原告が提示する個別の取消理由だけを判断するという特殊性がある 従って 特定の引用例からの発明の進歩性判断に議論を絞っても 当該引用例からの進歩性の判断過程全般にわたって裁判所が判断したかどうかが取消判決に反映されていないことが多い 例えば 本件発明と引用発明の一致点 相違点の抽出の仕方の誤りだけを理由に審決が取り消された場合には 相違点の容易想到性 ( 例えば 課題の共通性 技術分野の関連性 作用効果の顕著性 適用阻害要因等 ) の是非に関する判断を経ないで事件が審判に戻ることがある

(3) このように 特定の引用例に対する本件発明の進歩性判断過程の流れの中で 取消判決が判断していない事項を含む場合に 取消判決後の再度の審判において 取消判決で触れていない判断事項に対してどの程度の拘束力が及ぶのか否かについては 本最高裁判決の判旨からだけでは不明である 3. 最高裁判決後の判決例そこで 前記最高裁判決後に 発明の進歩性判断に関する取消判決の拘束力が争点となった 第二次審決取消訴訟の判決例を調査してみた (1) 平成 16 年 6 月 24 日東京高裁判決平成 15 年 ( 行ケ )163 号本判決は 原告 ( 特許権者 ) 提示の拘束力違反についての取消理由について 前判決は 本件発明と引用発明の一致点の誤り及び相違点の看過を具体的な理由として前審決を取り消したものであり 引用発明からの本件発明の進歩性を一般的に否定したものではないから その後の本件審決において再度本件発明の進歩性を否定することは 前判決の拘束力に反するものではなく 原告は前判決を正解しないで拘束力を論じていると判示した 従って 本判決から 同じ引用例に基づく発明の進歩性判断過程において 特定の引用例に対する一致点 相違点の瑕疵だけを取消判決が指摘している場合には 再度の審判手続において 同じ引用例からの容易想到性をさらに審理判断する余地があり この意味において 取消判決の拘束力は 再度の審判手続で同一の引用例に関する主張立証をすべて遮断するものではないということになる 特定の引用例に基づく発明の進歩性判断過程において 一致点 相違点の抽出は引用例から容易想到性を判断する上で前提となる事実認定と解され その前提 ( 一致点 相違点の抽出 ) に瑕疵がある場合にはその後の判断 ( 容易想到性の判断 ) の仕方にも自ずと変化が生じることになるから その後の判断について拘束力が生じないのは至極当然であると解される また 特定の引用例に基づく発明の進歩性判断過程において 容易想到性の判断に至る前の前提事項としては 一致点 相違点の抽出の際の前提となる本件発明の認定と引用発明の認定がある このため 本件発明の認定又は引用発明の認定の瑕疵だけを取消判決が指摘している場合でも 本判決の場合と同様に 同じ引用例からの容易想到性をさらに審理判断することは取消判決の拘束力に反しないと解される (2) 平成 16 年 4 月 21 日東京高裁判決平成 15 年 ( 行ケ )416 号本判決は 原告 ( 特許権者 ) 提示の拘束力に関する争点について 前判決は 引用例 3 発明に相違点 2に係る構成を適用することは容易であると判断したものであるところ 原告主張の組合せを阻害する要因の有無の検討は上記判断に含まれるから 前判決にその有無の検討についての明示の説示がなくても その有無の検討は拘束力が及ぶ範囲内の事項であり 前判決の拘束力に従って本件発明を無効とした本件審決に違法性はないと判示した

(4) 従って 本判決から 同じ引用例に基づく発明の進歩性判断過程において ある特定の観点 a( 例えば作用効果の顕著性 ) に基づいて相違点の容易想到性に関する結論を下した取消判決が確定した場合には その観点 aとは別の観点 b( 例えば適用阻害要因 ) に基づく容易想到性の検討も取消判決の拘束力の範囲内のものであり 再度の審判手続で当該別の観点 bに基づく容易想到性の主張立証を行うことは 取消判決の拘束力によって許されないということになる 特定の引用例に基づく発明の進歩性判断過程において 相違点の容易想到性を検討する際の観点としては 課題の共通性 技術分野の関連性 作用 機能の共通性 作用効果の顕著性 適用阻害要因など種々のものがある これらの観点は 相互に優劣があるものではなく事案に応じて柔軟に取捨選択されているのが実情であるから 最初の審判手続 ( 或いはその審決取消訴訟の手続 ) において 両当事者双方が任意に選択した自己に有利な観点がすべて主張立証し尽くされていると評価することができる 従って 相違点の容易想到性に関する結論を下した取消判決には その容易想到性の検討のためのすべての観点について明示の記載がなくても すべての観点が自ずと含まれているものと解することができるから 当該取消判決に特に明示がない観点についての認定についても 当該取消判決の拘束力の範囲内であると解される 4. 拘束力の範囲の判断基準 ( 発明の進歩性判断の場合 ) 以上の2つの判決例に基づいて 発明の進歩性判断が争点となっている取消判決の拘束力の範囲について 一応のメルクマールを導出すると次の (1)~(3) のようになる なお 以下においては 発明の進歩性判断過程を 1 本件発明の認定 2 引用発明の認定 3 一致点と相違点の認定 及び 4 相違点の容易想到性 ( 課題の共通性 技術分野の関連性 作用 機能の共通性 作用効果の顕著性 適用阻害要因など ) の順に分けた場合に そのうちの1~3の過程を上流側部分と定義し 4の過程を下流側部分と定義している (1) 判断基準 1( 前記 3.(1) の判決例より ) 取消判決が上流側部分 ( 過程 1~3) での判断の誤りを指摘して審決を取り消した場合には その後の審判手続において 下流側部分 ( 過程 4) での認定判断を更に行うことは 取消判決の拘束力の範囲外である (2) 判断基準 2( 前記 3.(2) の判決例より ) 取消判決がある特定の観点に基づいて下流側部分 ( 過程 4) での判断の誤りを指摘して審決を取り消した場合でも その後の審判手続において 別の観点に基づいて下流側部分 ( 過程 4) での認定判断を更に行うことは 取消判決の拘束力の範囲内である (3) 判断基準 3( 前記 3.(2) の判決例の変形 ) 取消判決が下流側部分 ( 過程 4) での判断の誤りを指摘して審決を取り消した場合には その後の審判手続において 上流側部分 ( 過程 1~3) での認定判断を更に行うことは

(5) 取消判決の拘束力の範囲内である なお 上記判断基準 3を挙げたのは 先の取消判決において既に下流側部分 ( 過程 4) が争点となっている以上 その前提となる上流側部分 ( 過程 1~3) については両当事者も争っていなかったと解され これを後の審判手続で争点とすることは事件の蒸し返しとなるからである 以上