構造発色性の生物組織に倣い 非退色性の有機無機融合顔料や色相の変化する光学デバイスを開発 安全で安価な有機 - 無機融合材料からなる環境低負荷な色材 概要 名古屋大学大学院工学研究科竹岡敬和准教授らは 東京理科大学の吉岡伸也准教 授との共同研究で 角度依存性のない構造色を示す鳥の羽を参考にして 無機

Similar documents
架橋点が自由に動ける架橋剤を開発〜従来利用されてきた多くの高分子ゲルに柔軟な力学物性をもたらすことが可能に〜

分子マシンを架橋剤に使用することで 高分子ゲルの伸張性と靱性が飛躍的に向上 人工筋肉などのアクチュエータやソフトマシーン センサー 医療への応用も可能に 名古屋大学大学院工学研究科 ( 研究科長 : 新美智秀 ) の竹岡敬和 ( たけおかゆ きかず ) 准教授の研究グループは 東京大学大学院新領域創

偏光板 波長板 円偏光板総合カタログ 偏光板 シリーズ 波長板 シリーズ 自社製高機能フィルムをガラスで挟み接着した光学フィルター

<4D F736F F D A C5817A8E59918D8CA B8BBB89BB8A778D488BC B8BBB F A2E646F63>

Microsoft Word - 01.doc

Gifu University Faculty of Engineering

A4パンフ

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

昆虫と自然 2010年12月号 (立ち読み)

53nenkaiTemplate

untitled

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

e - カーボンブラック Pt 触媒 プロトン導電膜 H 2 厚さ = 数 10μm H + O 2 H 2 O 拡散層 触媒層 高分子 電解質 触媒層 拡散層 マイクロポーラス層 マイクロポーラス層 ガス拡散電極バイポーラープレート ガス拡散電極バイポーラープレート 1 1~ 50nm 0.1~1

Crystals( 光学結晶 ) 価格表 台形状プリズム (ATR 用 ) (\, 税別 ) 長さ x 幅 x 厚み KRS-5 Ge ZnSe (mm) 再研磨 x 20 x 1 62,400 67,200 40,000 58,000

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

王子計測機器株式会社 LCD における PET フィルムの虹ムラに関する実験結果 はじめに最近 PETフィルムはLCD 関連の部材として バックライトユニットの構成部材 保護シート タッチセンサーの基材等に数多く使用されています 特に 液晶セルの外側にPET フィルムが設けられる状態

Microsoft Word - プレリリース参考資料_ver8青柳(最終版)

メソポーラス金属の大細孔径化に成功

Microsoft PowerPoint - 山口高校資料 ppt

els05.pdf

報道関係者各位 平成 24 年 4 月 13 日 筑波大学 ナノ材料で Cs( セシウム ) イオンを結晶中に捕獲 研究成果のポイント : 放射性セシウム除染の切り札になりうる成果セシウムイオンを効率的にナノ空間 ナノの檻にぴったり収容して捕獲 除去 国立大学法人筑波大学 学長山田信博 ( 以下 筑

Pick-up プロダクツ プリズム分光方式ラインセンサカメラ用専用レンズとその応用 株式会社ブルービジョン 当社は プリズムを使用した 3CMOS/3CCD/4CMOS/4CCD ラインセンサカメラ用に最適設計した FA 用レンズを設計 製造する専門メーカである 当社のレンズシリーズはプリズムにて

ポイント 太陽電池用の高性能な酸化チタン極薄膜の詳細な構造が解明できていなかったため 高性能化への指針が不十分であった 非常に微小な領域が観察できる顕微鏡と化学的な結合の状態を調査可能な解析手法を組み合わせることにより 太陽電池応用に有望な酸化チタンの詳細構造を明らかにした 詳細な構造の解明により

研究成果報告書

記 者 発 表(予 定)

平成 30 年 1 月 5 日 報道機関各位 東北大学大学院工学研究科 低温で利用可能な弾性熱量効果を確認 フロンガスを用いない地球環境にやさしい低温用固体冷却素子 としての応用が期待 発表のポイント 従来材料では 210K が最低温度であった超弾性注 1 に付随する冷却効果 ( 弾性熱量効果注 2

03マイクロ波による光速の測定

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

<4D F736F F F696E74202D AC89CA95F18D9089EF975C8D658F F43945A A CC8A4A94AD298F4390B394C5205B8CDD8AB B83685D>

SP8WS

Microsoft Word - _博士後期_②和文要旨.doc


1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

平成 30 年 8 月 6 日 報道機関各位 東京工業大学 東北大学 日本工業大学 高出力な全固体電池で超高速充放電を実現全固体電池の実用化に向けて大きな一歩 要点 5V 程度の高電圧を発生する全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現 14 ma/cm 2 の高い電流密度での超高速充放電が可能に 界面形

AlGaN/GaN HFETにおける 仮想ゲート型電流コラプスのSPICE回路モデル

平成 28 年 10 月 25 日 報道機関各位 東北大学大学院工学研究科 熱ふく射スペクトル制御に基づく高効率な太陽熱光起電力発電システムを開発 世界トップレベルの発電効率を達成 概要 東北大学大学院工学研究科の湯上浩雄 ( 機械機能創成専攻教授 ) 清水信 ( 同専攻助教 ) および小桧山朝華

Microsoft Word - ★3_プラチナコロイド_ docx

PowerPoint2007基礎編

微粒子合成化学・講義

と呼ばれる普通の電子とは全く異なる仮説的な粒子が出現することが予言されており その特異な統計性を利用した新機能デバイスへの応用も期待されています 今回研究グループは パラジウム (Pd) とビスマス (Bi) で構成される新規超伝導体 PdBi2 がトポロジカルな性質をもつ物質であることを明らかにし

Microsoft Word - バイオマスプラ・ポジティブリスト作成基準(正)

フィードバック ~ 様々な電子回路の性質 ~ 実験 (1) 目的実験 (1) では 非反転増幅器の増幅率や位相差が 回路を構成する抵抗値や入力信号の周波数によってどのように変わるのかを調べる 実験方法 図 1 のような自由振動回路を組み オペアンプの + 入力端子を接地したときの出力電圧 が 0 と

新技術説明会 様式例

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

記者発表資料

酸化グラフェンのバンドギャップをその場で自在に制御

生物時計の安定性の秘密を解明

木村の有機化学小ネタ セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニア

SPring-8ワークショップ_リガク伊藤

放射線照射により生じる水の発光が線量を反映することを確認 ~ 新しい 高精度線量イメージング機器 への応用に期待 ~ 名古屋大学大学院医学系研究科の山本誠一教授 小森雅孝准教授 矢部卓也大学院生は 名古屋陽子線治療センターの歳藤利行博士 量子科学技術研究開発機構 ( 量研 ) 高崎量子応用研究所の山

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

ロナ放電を発生させました これによって 環状シロキサンが分解してプラスに帯電した SiO 2 ナノ微粒子となり 対向する電極側に堆積して SiO 2 フィルムが形成されるという コロナ放電堆積法 を開発しました 多くの化学気相堆積法 (CVD) によるフィルム作製法には 真空 ガス装置が必要とされて

リチウムイオン電池用シリコン電極の1粒子の充電による膨張の観察に成功

<4D F736F F D20B6B0CEDEDD8C6E93B ABCCA8D7B02E646F6378>

「世界初、高出力半導体レーザーを8分の1の狭スペクトル幅で発振に成功」

< F91E F1835C D835E815B8CA48B8689EF5F8FE396EC2E786477>

塗料の研究第147号本体.indd

PowerPoint2003基礎編

マスコミへの訃報送信における注意事項

支援財団研究活動助成 生体超分子を利用利用した 3 次元メモリデバイスメモリデバイスの研究 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科小原孝介

< E89BB A838A834C D E786C73>

<4D F736F F D B494F797B18E AA8E558DDC8B7982D195AA8E CC8A4A94AD2E646F63>

氏 名 田 尻 恭 之 学 位 の 種 類 博 学 位 記 番 号 工博甲第240号 学位与の日付 平成18年3月23日 学位与の要件 学位規則第4条第1項該当 学 位 論 文 題 目 La1-x Sr x MnO 3 ナノスケール結晶における新奇な磁気サイズ 士 工学 効果の研究 論 文 審 査

平成 2 9 年 3 月 2 8 日 公立大学法人首都大学東京科学技術振興機構 (JST) 高機能な導電性ポリマーの精密合成法を開発 ~ 有機エレクトロニクスの発展に貢献する光機能材料の開発に期待 ~ ポイント π( パイ ) 共役ポリマーの特性制御には 末端に特定の官能基を導入することが重要だが

(Microsoft PowerPoint - \201\232\203|\203X\203^\201[)


有機化合物の磁気キラル二色性を初めて観測! - 生命のホモキラリティー起源の候補の一つを有機化合物で初めて実証 - 1 東京大学生産技術研究所第 4 部物質 環境系部門 2 東京大学先端科学技術センター 1 石井和之 1 北川裕一 2 瀬川浩司

理学研究科 ( 生命理学専攻の大学院生には開放科目の対象外 ) 生命理学特別講義 0 大学院開講科目 生命理学特別講義 大学院開講科目 生命理学特別講義 大学院開講科目 生命理学特別講義 3 大学院開講科目 生命理学特別講義 4 大学院開講科目 生命理学特別講義 5 大学院開講科目 生命理学特別講義

3_プラチナコロイド_

31608 要旨 ルミノール発光 3513 後藤唯花 3612 熊﨑なつみ 3617 新野彩乃 3619 鈴木梨那 私たちは ルミノール反応で起こる化学発光が強い光で長時間続く条件について興味をもち 研究を行った まず触媒の濃度に着目し 1~9% の値で実験を行ったところ触媒濃度が低いほど強い光で長

<4D F736F F D FB89BBBAC8B8C0B082CC FB964082C982C282A282C45F F2E646F63>

FT-IRにおけるATR測定法

Microsoft Word - P doc

n_csr_H1_H4_fix.ai

生物は繁殖において 近い種類の他種にまちがって悪影響を与えることがあり これは繁殖干渉と呼ばれています 西田准教授らのグループは今まで野外調査などで タンポポをはじめとする日本の在来植物が外来種から繁殖干渉を受けていることを研究してきましたが 今回 タンポポでその直接のメカニズムを明らかにすることに

率 九州 ( 工 -エネルギー科学) 新潟 ( 工 - 力学 ) 神戸 ( 海事科学 ) 60.0 ( 工 - 化学材料 ) 岡山 ( 工 - 機械システム系 ) 北海道 ( 総合理系 - 化学重点 ) 57.5 名古屋工業 ( 工 - 電気 機械工 ) 首都大学東京

Transcription:

角度依存性のない鮮やかな構造色を示す生き物に倣い 非退色性の構造発色性顔料 光学デバイスを構築 - 安全で退色性のない有機 - 無機融合顔料や表示材料への応用に期待 - 名古屋大学大学院工学研究科 ( 研究科長 : 新美智秀 ) の竹岡敬和 ( たけおかゆきかず ) 准教授の研究グループは 東京理科大学の吉岡伸也 ( よしおかしんや ) 准教授との共同研究で 角度依存性のない構造色を示す生物の組織を参考にして 退色性の少ない構造発色性顔料および色相が変化する光学デバイスを開発しました 例えば ある種のカケスのように 鮮やかな角度依存性のない構造色を示す羽を持つ鳥がたくさんいることが知られています その多くが 羽枝の中に多数存在するサブミクロンサイズの網目が短距離秩序を有するために 特定の波長領域の可視光が干渉性の散乱を引き起こし 角度依存性が小さい構造色を示す可能性があります しかし そのような微細構造の存在だけでは 鳥の羽の見た目は白っぽく 決して鮮やかな色を発現しません 鮮やかな角度依存性のない構造色を示す羽枝には その微細構造の背景に黒色物質が存在することが必要なのです 本研究では 鳥の羽肢の微細構造と類似の構造を有機 - 無機融合材料を用いて人工的に精密に作ることで その組織構造と光学的性質との因果関係を調べた結果 鮮やかな角度依存性のない構造色を示すためには 干渉性散乱を生じる構造体の膜厚の制御と黒色背景の両方の存在が重要であることを明らかにしました 得られた知見を元に 様々な鮮やかな角度依存性のない構造色を示す退色性の少ない有機 - 無機融合顔料を シリカ微粒子などの安価 安全 安定な無機材料と高分子電解質を利用して作ることができることを示しました また 膜厚を精密に制御して調製した干渉性散乱を生じる構造体の背景にクロスニコルを配置し 背景からの光の透過性を制御することにより 構造発色性を切り替えることのできるシステムの構築にも成功しました 本研究成果は 2017 年 4 月 27 日午前 10 時 ( 独国時間 : 日本時間 27 日 17 時 ) 発行のドイツ国際学術雑誌 Advanced Materials 誌に掲載されました

構造発色性の生物組織に倣い 非退色性の有機無機融合顔料や色相の変化する光学デバイスを開発 安全で安価な有機 - 無機融合材料からなる環境低負荷な色材 概要 名古屋大学大学院工学研究科竹岡敬和准教授らは 東京理科大学の吉岡伸也准教 授との共同研究で 角度依存性のない構造色を示す鳥の羽を参考にして 無機微粒子と 高分子電解質を用いた退色性の少ない構造発色性顔料および色相が変化する光学デバ イスを開発しました ステラ - カケスなどの鮮やかな構造色を示す羽には サブミクロンサイズの特定の 大きさの細孔が短距離秩序を持って等方的に分布 ( アモルファス状態 ) しています 各 細孔によって散乱した光は 秩序構造があることで干渉して強め合う結果 羽は構造色 を示す可能性を持ちます ただし このような構造があるだけでは 羽からは鮮やかな 構造色は観測されません このような構造を有するものからは非干渉性の多重散乱が可 視光の全域に生じう るため その影響が 強ければ 羽は白っ ぽく見えてしまうの です ( 図 1 右 ) しか し 青いステラ - カ ケスの羽は 可視光 の波長の長さで屈折 率の変化に短距離秩 序を有する微細構造 とその背後に存在す る黒色のメラニン顆 粒の利用により 鮮 図 1 青い色の羽を持つステラーカケス ( 左 ) とそのアルビノ種 ( 右 ): 両鳥の羽には短距離秩序を有する細孔構造があるが 左の種にはその裏にメラニン顆粒が存在する Reproduced with permission from nature s pic s (www.maturespicsonline.com)( 左 ) Reproduced with permission from Mr. Bill Schmoker(http://www.schmoker.org/BirdPics/Whitey.html)( 右 ) やかな角度依存性のない構造色を示す ( 図 1 左 ) ことが知られています 同じようなメ カニズムを利用した構造発色性の生物が他にも沢山います 本研究では まずは 上述した青い鳥の羽の構造を模倣することで 短距離秩序を有

する微細構造から生じる角度依存性のない構造色に対する背景の黒色物質の影響について調べました その青い鳥の羽を参考にした構造発色性材料は 黒色の石英基板上に粒径の図 2 透明なガラス基板 ( 上 ) および 黒色基板( 下 ) 上に LbL 揃ったサブミクロン法を用いて調製した短距離秩序を有するシリカ微粒子集合体の光学サイズの球形シリカ写真 : 背景が黒いと鮮やかな構造色を示すようになる ( 上に示した粒子からなるコロイ数字は LbL 法による積層回数ドアモルファス集合体を 高分子電解質と Layer-by-Layer 法 (LbL 法 ) によって融合することで作製しました ( 図 2) 黒色のガラス基板上に作製したコロイドアモルファス集合体は 膜厚の増大と共に角度依存性のない鮮やかな構造色を示すようになり 膜厚が約 1 2μm の場合にその構造色は最も鮮やかに見えるようになることが分かりました また この発色メカニズムを利用した顔料を作製するために 粒径が 5 μm の黒色微粒子を図 3 黒色微粒子をコアにして LbL 法にて調製した短距離秩序を芯材として利用し そ有するシリカ微粒子と高分子電解質の融合体 : シリカ微粒子の粒径の周りに LbL 法によに応じて 様々な色を示す って 同様のコロイドアモルファス集合体を形成しました その結果 用いたコロイド粒子の大きさに応じて異なる色合いを示す構造発色性顔料が得られることを明らかにしました ( 図 3) さらに この発色メカニズムを利用して 構造色の発色性が切り替えられる光学デバイスの構築にも取り組みました コロイドアモルファス集合体の背景として 二枚の偏光板を

利用した黒色の度合いを可変できるシステムを用いると その黒色の度合いに応じた構造色の鮮やかさの制御ができることも明らかにしました ( 図 4) 本研究成果は 2017 年 4 月 27 日午前 10 時発行 ( 独国時間 : 日本時間 27 日 17 時 ) ドイツの国際学術雑誌 Advanced Materials 誌に掲載されます 図 4 粒径の異なるシリカ微粒子からなる短距離秩序を有する集合 背景 膜の背景を 2 枚の偏光フィルターによって 白と黒に変えると 集長期間屋外に貼合膜の色調が変化する られたポスターが 色あせた状態になっているのを目にした人は多いでしょう このようなポスターは 紫外線によって分解しやすいイエローやマゼンダの染料 ( 有機色素 ) が使われており 長い時間を太陽光に晒されたことで それらの染料は元の色合いを失ってしまったのです 他にも 水分や化学物質により反応して退色する場合もあります それに比べて 顔料の中には 耐光性 耐水性 耐薬品性 抗酸化還元性などを有するもの ( 特に無機顔料 ) が多く 様々な用途に利用されています しかし 無機顔料は毒性の高い重金属を使用した化合物からできているものも多いため 化粧品など 人に直接触れるような用途には使用できる種類が限定されています 染料に関しても 化粧品などへの配合に関して 規制が厳しくなっています とりわけ ヨーロッパを中心に広がる環境に対する配慮から その他の用途への染料や顔料に使用する材質についても 今後 ますます規制が強化されると考えられます しかし 我々が豊かな生活を送る上で 様々な鮮やかな色を示す退色しない染料や顔料 ( 色材 ) の存在は欠かせなくなっているのです さらに 低毒性 低環境負荷性を備えた色材が安価に大量に得られるようになれば 今後の我々の暮らしが永続的に発展可能で快適になることを後押しするでしょう そのためには 自然界に豊富に存在し 環境負荷の低い自然調和性に優れた化合物を利用した色材作りが求められると考えられます 構造発色性材料はそのような色材の候補と考えられ 研究が取り組まれています また 従来の構造発色性材料のイメージである ギラギラ感や角度依存性を無くすことに関しても 我々の過去の研究 ( 例えば Angewandte Chemie International Ed. 52, 7261 (2013) など ) をきっかけに世界中で取り組まれるようになりました さらに より機能性の高い構造発色性材料の開発も取り組まれており 環境の変化や刺激に応じて色の変わるような構

造発色性材料の研究が進んでいます ポイント 構造色の紹介として 光の波長サイズで異なる屈折率の物質からなる周期構造が存在することに起因する光の照射角度や見る角度によって変化する色 であると説明されることが多く見られます しかし この説明は必ずしも正確ではありません まず 生物や人工物の両系において 周期構造がなくとも短距離秩序があるだけで構造に基づく色が観測され しかも その色には角度依存性がほとんどないことが 最近の多くの研究によって明らかになっています また 光の波長サイズの微細構造があっても 必ずしも明確な色相の色が観測される訳ではないのです 鮮やかな構造色を示すには黒色物質の助けが必要となることが分かってきました 例えば 鮮やかな青色を示すモルフォ蝶の羽は 微細構造の背後に黒や焦げ茶色の色素が存在します そのような色素がない種のモルフォ蝶の羽は 特定の方向のみで青い反射が強く見え 全体的には白っぽくなります 黒い色素を抜くことで 白いストライプ模様を作り出している蝶も知られています 生物だけではなく 多くの構造発色性材料とされるものを示した写真を見れば その背景には黒色の紙などをおいて撮影することで 色鮮やかに見せる工夫を施しています つまり 鮮やかな色相の構造色発現には 光の波長サイズの微細構造が原因で生じる干渉色に加えて 可視光領域の他の波長の光の散乱を抑えるために 黒色背景の存在が重要になるのです このことを理解した上で 我々は人工の鮮やかな構造発色性材料を構築するために 黒色の背景を利用した材料研究に取り組みました 成果の意義 光の波長サイズの秩序構造の膜厚の制御とその背景に黒色物質を置くことの組み合わせにより 安全安価で非退色性の有機 - 無機融合顔料の調製や 色相の可逆な変化ができる光学デバイスの構築が可能となります 用語説明 構造色 : 光の波長サイズの微細構造が原因で生じる干渉色 論文名 出典 : Advanced Materials (2017): DOI:10.1002/adma.201605050

タイトル : Bio-inspired Bright Structurally Coloured Colloidal Amorphous Array Enhanced by Controlling Thickness and Black Background 著者名 : 岩田政典 1 手島翠 1 関隆広 1 吉岡伸也 2 竹岡敬和 1 所属 : 1 名古屋大学大学院工学研究科有機 高分子化学専攻 2 東京理科大学理工学部物理学科