地方公共団体金融機構 IR 付属資料 2 地方公共団体の基金に係る 資金の性質に応じた運用手法について
目次 1. 主な基金に係る資金の性質とその運用例 2 2. 基金の一括運用による効率化 3 3. 主な基金に係る資金の性質 3-1. 財政調整基金 4 3-2. 減債基金 5 3-3. その他基金 ( 取り崩し型 ) 6 3-4. その他基金 ( 果実運用型 ) 7 4. 資金の性質に応じた運用手法例の特色 4-1. 一時的な資金運用 8 4-2. キャッシュ フロー マッチング 9 4-3. 金利予測に基づく運用及び長期債運用 10 4-4. ラダー型運用 11 5. キャッシュ フロー マッチングの構築例 12 6. ラダー型運用の構築例 6-1. ラダー型運用の構築例 1 13 6-2. ラダー型運用の構築例 2 14 6-3. ラダー型運用の構築例 1( 効果額試算 ) 15 6-4. ラダー型運用の構築例 2( 効果額試算 ) 16 7. その他の運用手法例 17-1-
1. 主な基金に係る資金の性質とその運用例 1 財政調整基金 一定額の資金は 不測の資金需要に対応するため 一時的な資金運用により流動性を確保しつつ 取り崩し時期が決まっていない資金 ( コア資金 ) は 金利予測に基づく運用やラダー型運用による運用を行う 2 減債基金 将来のキャッシュ フローを踏まえ 資金需要が見込まれる時期に債券等の満期日を合わせるよう運用 ( キャッシュ フロー マッチング ) を行うとともに コア資金がある場合は 金利予測に基づく運用やラダー型運用による運用を行う 3 その他基金 ( 取り崩し型 ) 一定額の資金は 不測の資金需要に対応するため 一時的な資金運用により流動性を確保しつつ 将来のキャッシュ フローを踏まえ 資金需要が見込まれる時期に債券等の満期日を合わせるよう運用 ( キャッシュ フロー マッチング ) を行うとともに コア資金は 金利予測に基づく運用やラダー型運用による運用を行う ( 果実運用型 ) 可能な限り償還期間が長い債券による運用 ( 長期債運用 ) を行う -2-
2. 基金の一括運用による効率化 基金の一括運用による効率化 複数の基金が設置されている場合 基金の一元的な管理を行い 同様の性質の資金については 基金を超えて 一括運用するなどの最適な運用を目指すことを検討する必要がある 埼玉県 ペイオフ全面解禁後の公金管理 より抜粋 自治体の短期の資金調達手段である一時借入金は 基金や歳計現金の残高の動きによって影響を受けるため 基金 歳計現金 一時借入金を一元的に管理することも必要 -3-
3-1. 主な基金に係る資金の性質 ( 財政調整基金 ) 資金の性質把握 1 一般会計等の財政収支見通しを踏まえ 今後の基金残高を推計 2 不測の資金需要に対応するため 過去の実績等を踏まえ 手元に確保しておきたい資金額を推計 3 上記 1 2 を踏まえ 取り崩し時期が決まっていない資金額を推計 イメージ図 基金残高 手元に確保しておきたい資金 一時的な資金運用 取り崩し時期が決まっていない資金 ( コア資金 ) 金利予測に基づく運用やラダー型運用 年限 -4-
3-2. 主な基金に係る資金の性質 ( 減債基金 ) 資金の性質把握 1 基金積立額及び取り崩し額の見通しを踏まえ 今後の基金残高を推計 イメージ図 コア資金 金利予測に基づく運用やラダー型運用 取り崩し時期が決まっている資金 取り崩し時期に合わせた運用 ( キャッシュ フロー マッチング ) 基金残高 年限 -5-
3-3. 主な基金に係る資金の性質 ( その他基金 ( 取り崩し型 )) 資金の性質把握 1 基金積立額及び取り崩し額の見通しを踏まえ 今後の基金残高を推計 2 不測の資金需要に対応するため 過去の実績等を踏まえ 手元に確保しておきたい資金額を推計 3 上記 1 2 を踏まえ 取り崩し時期が決まっていない資金額を推計 手元に確保しておきたい資金 一時的な資金運用 イメージ図 コア資金 金利予測に基づく運用やラダー型運用 基金残高 取り崩し時期が決まっている資金 キャッシュ フロー マッチング 年限 -6-
3-4. 主な基金に係る資金の性質 ( その他基金 ( 果実運用型 )) 資金の性質把握 1 基金積立額の見通しを踏まえ 今後の基金残高を推計 イメージ図 基金残高 取り崩し時期が決まっていない資金 可能な限り償還期間が長い債券による運用 ( 長期債運用 ) 年限 -7-
4-1. 資金の性質に応じた運用手法例の特色 ( 一時的な資金運用 ) 預金 ( 特徴 ) 一般的な預金である定期預金は 定期的に利子が支払われ 満期日に元本が返還される 運用期間は10 年以内であるのが一般的 ( 種類 ) 普通預金 : いつでも払戻しが可能であるが 金利は他の預金と比べて低い定期預金 : 預金金利は普通預金と比べて高いが 自由に払い戻しができない譲渡性預金 : 定期預金の一種で他人に譲渡可能だが 預金保険の対象にならない ( 定期預金金利例 ) 短期国債 期間 1 か月 6 か月 1 年 2 年 5 年 10 年 預金金利 0.025% 0.025% 0.030% 0.040% 0.080% 0.250% 平成 24 年 1 月 16 日現在 : みずほ銀行 ( 大口定期預金 1,000 万円以上 ) ( 特徴 ) 額面より低い価格で発行され 償還日 ( 満期日 ) に額面価格で償還される 償還期間は1 年以内で 償還日前に売却することも可能 ( 債券の利回り例 ) 期間 3か月 6か月 1 年 利回り 0.100% 0.100% 0.100% 平成 24 年 1 月 16 日現在 :Bloomberg データ -8-
4-2. 資金の性質に応じた運用手法例の特色 ( キャッシュ フロー マッチング ) キャッシュ フロー マッチングとは 将来発生する取り崩し時期及び金額に 債券等の償還を合わせるよう運用 イメージ図 取り崩し額 保有債券等の償還 償還年度 特色 取り崩し時期及び金額に合わせて運用を行うため 資金が必要な時期に資金を確保することができる -9-
4-3. 資金の性質に応じた運用手法例の特色 ( 金利予測に基づく運用及び長期債運用 ) 債券 ( 特徴 ) 定期的に利子が支払われ 償還日 ( 満期日 ) に元本が返還される仕組みは定期預金と類似している 運用期間は 10 年以上も可能で 償還日前に売却することも可能 なお 償還日前に売却する場合 元本を下回る金額しか返還されないリスク ( 中途解約リスク ) がある ( 債券の利回り例 ) 期間 2 年 5 年 7 年 10 年 20 年 30 年 利回り 0.129% 0.342% 0.543% 0.955% 1.729% 1.938% 金利予測の方法例 平成 24 年 1 月 13 日基準 : 財務省 ( 国債金利情報 ) 短期金利 : 一般的に 景気が良い時には 景気の過熱によるインフレを防ぐため 政策当局による金融引き締めが行われ 金利が高くなる傾向 一方 景気が悪い時には 景気の悪化を防ぐため 政策当局による金融緩和が行われ 金利が低くなる傾向 長期金利 : 一般的に 経済指標等により今後の経済の見通しを予測することとなる ( 経済指標例 ) 政策当局の景気判断 : 月例経済報告 ( 内閣府 ) 金融経済月報 ( 日銀 ) 景気動向の把握 : 景気動向指数 ( 内閣府 ) 景気ウォッチャー調査 ( 内閣府 ) 等 -10-
4-4. 資金の性質に応じた運用手法例の特色 ( ラダー型運用 ) ラダー型運用とは 毎年償還となる金額が一定となるように債券を保有 償還分を再投資することにより 満期構成を維持 イメージ図 償還金額 特色 年限 毎年一定額の債券を購入するため 毎年の金利変動を長期的に中立化できる 運用開始後も毎年一定額の償還があるため 債券償還金への対応など将来の資金需要にも計画的かつ柔軟に対応できる -11-
5. キャッシュ フロー マッチングの構築例 FLIP 債の活用 地方公共団体金融機構が運用期間のニーズに応じて発行する FLIP 債を活用することにより より有利かつ容易にキャッシュ フロー マッチングによる運用を行うことが可能 ( 例 1)6 年後に 100 億円を取り崩す必要がある場合 ( 例 2)14 年後に 100 億円を取り崩す必要がある場合 運用債券運用金額収益合計 FLIP 債 (6 年債 ) 100 億円 3 億円 5 年債 +1 年債 ( 1) 100 億円 2.1 億円 運用債券運用金額収益合計 FLIP 債 (14 年債 ) 100 億円 21 億円 10 年債 +2 年債 +2 年債 ( 2) 100 億円 11.6 億円 1 新発 5 年債により 100 億円を運用し 償還する 5 年後に新発 1 年債により同額を運用 2 新発 10 年債により 100 億円を運用し 償還する 10 年後に新発 2 年債により同額を運用し 償還する 2 年後に再度 新発 2 年債により同額を運用 試算の前提条件 利回り :1 年債 0.10% 2 年債 0.15% 5 年債 0.40% 6 年債 0.50% 10 年債 1.10% 14 年債 1.50% 購入時期に関わらず 利回りは一定と仮定 例 1 の場合は残存 6 年の既発債を 例 2 の場合は残存 14 年の既発債を証券会社等を通じて購入することもできるが 既発債購入の場合 希望する残存年限の債券を希望する額購入できない可能性や オーバーパーの購入となる可能性がある (FLIP 債はパー発行 ) -12-
6-1. ラダー型運用の構築例 1 ラダー型運用 (10 年 ) 平成 27 年度に向けて 1,000 億円債券運用する場合 償還年度 H23~H27:5 年債 10 年債各 100 億円購入 10 年ラダーの完成 H28~: 償還資金を 10 年債に再投資 メンテナンスの容易性 H32~:10 年債のみのラダーに 利回りアップ ( 単位 : 億円 ) H24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 残高計購入額 新規購入 償還額 H23 100 100 200 200 200 0 24 100 100 100 100 400 200 200 0 購入年度 25 100 100 100 100 100 100 600 200 200 0 26 100 100 100 100 100 100 100 100 800 200 200 0 27 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 1,000 200 200 0 28 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 1,000 100 0 100 29 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 1,000 100 0 100 10 年ラダー完成 30 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 1,000 100 0 100 31 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 1,000 100 0 100 10 年債のみのラダー完成 32 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 1,000 100 0 100-13-
6-2. ラダー型運用の構築例 2 ラダー型運用 (20 年 ) 平成 29 年度に向けて 1,000 億円債券運用する場合 償還年度 H23~H27:5 年債 10 年債 20 年債各 50 億円購入 H28:H23 購入の5 年債の償還 14 年債 50 億円の購入資金に H23 購入の10 年債が残存 5 年を迎えたため 昨年度までの5 年債購入資金で13 年債 50 億円購入引き続き10 年債 20 年債を各 50 億円購入 H29:H24 購入の5 年債の償還 11 年債 50 億円の購入資金に引き続き10 年債 20 年債を各 50 億円購入 20 年ラダーの完成 H30~: 償還資金を20 年債に再投資 メンテナンスの容易性 H42~:20 年債のみのラダーに 利回りアップ ( 単位 : 億円 ) H24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 残高計購入額 新規購入 償還額 (H28)13 年債及び14 年債 (H29)11 年債購入でラダー構築を補完 H23 50 50 50 150 150 150 0 24 50 50 50 50 50 50 300 150 150 0 25 50 50 50 50 50 50 50 50 50 450 150 150 0 26 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 600 150 150 0 27 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 750 150 150 0 購入年度 28 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 900 200 150 50 29 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 150 100 50 30 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 31 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 32 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 33 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 20 年ラダー完成 10 年ラダー完成 FLIP 債の活用 20 年債のみのラダー完成 34 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 35 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 36 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 37 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 38 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 10 年債のみのラダー完成 39 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 40 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 41 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50 42 (50) 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 1,000 50 0 50-14-
6-3. ラダー型運用の構築例 1( 効果額試算 ) ラダー型運用 (10 年 ) ( 単位 : 億円 ) 5 年債 10 年債 合計 H23 100 100 200 24 200 200 400 25 300 300 600 26 400 400 800 27 500 500 1,000 28 400 600 1,000 29 300 700 1,000 30 200 800 1,000 31 100 900 1,000 32 1,000 1,000 収益 ( 年間利息 ) 試算 H23 1.5 H24 3.0 H25 4.5 H26 6.0 H27 7.5 H28 8.2 H29 8.9 H30 9.6 H31 10.3 H32 11.0 試算の前提条件 利回り :5 年債 0.40% 10 年債 1.10% 購入時期に関わらず 利回りは一定と仮定 -15-
6-4. ラダー型運用の構築例 2( 効果額試算 ) ラダー型運用 (20 年 ) 5 年債 10 年債 11 年債 13 年債 14 年債 20 年債 合計 H23 50 50 50 150 24 100 100 100 300 25 150 150 150 450 26 200 200 200 600 27 250 250 250 750 28 200 300 50 50 300 900 29 150 350 50 50 50 350 1,000 30 100 350 50 50 50 400 1,000 31 50 350 50 50 50 450 1,000 32 350 50 50 50 500 1,000 33 300 50 50 50 550 1,000 34 250 50 50 50 600 1,000 35 200 50 50 50 650 1,000 36 150 50 50 50 700 1,000 37 100 50 50 50 750 1,000 38 50 50 50 50 800 1,000 39 50 50 50 850 1,000 40 50 50 900 1,000 41 50 950 1,000 42 1,000 1,000-16- ( 単位 : 億円 ) 収益 ( 年間利息 ) 試算 H23 1.7 H24 3.4 H25 5.0 H26 6.7 H27 8.4 H28 11.1 H29 13.0 H30 13.7 H31 14.4 H32 15.1 H33 15.5 H34 15.9 H35 16.3 H36 16.6 H37 17.0 H38 17.4 H39 17.8 H40 18.1 H41 18.3 H42 18.5 試算の前提条件 単位未満四捨五入利回り :5 年債 0.40% 10 年債 1.10% 11 年債 1.15% 13 年債 1.40% 14 年債 1.50% 20 年債 1.85% 購入時期に関わらず 利回りは一定と仮定
7. その他の運用手法例 外債 為替リスクや投資した国の政治情勢 経済情勢などの変化により損失を被るカントリーリスクなどのリスクが存在する 為替リスクは先物為替予約等によりリスクをヘッジすることができるが 一般的に言えば 国内で運用しても海外で運用しても同じ収益となるように為替の先物レートが調整されるため 先物為替予約等を行う場合 国内の債券と比べて収益性が高くならない可能性がある 仕組債 利率や償還額などが特定の条件により変動する仕掛け等が内包された債券である仕組債は 一般的な債券等による運用より高い収益性を期待できる反面 条件の変動により 一般的な債券等による運用より低い収益性となる可能性がある また 仕組債によっては損失を被る可能性があるものもあり 複雑な条件であるほどリスクへの対応が難しい -17-
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