いじめ問題に関する法務省の人権擁護機関の取組状況について ( 別添 5) 法務省の人権擁護機関では, 学校におけるいじめ問題を含むあらゆる人権問題について人権擁護活動を行っています その活動内容としては,1 国民一人一人の人権意識を高め, 人権への理解を深めてもらうための 人権啓発活動 と,2 人権侵害の疑いがある事案については, 被害者からの申告等に基づいて調査を行い, その結果を踏まえて救済措置を講ずる 人権救済活動 があります いじめの問題など子どもの人権問題に関する平成 24 年における取組状況は, 次のとおりです 1 人権啓発活動 平成 24 年度は, みんなで築こう人権の世紀 ~ 考えよう相手の気持ち育 てよう思いやりの心 ~ を啓発活動重点目標として定めているほか, 啓発活動年間強調事項の一つとして 子どもの人権を守ろう を掲げ, 啓発活動を実施している いじめの問題など子どもの人権に関しては, 全国中学生人権作文コンテスト, 人権教室 *1, 人権の花運動 *2 などを通じて, 相手への思いやりの心や生命の尊さを体得できるような啓発活動を行っている 2 人権救済活動 (1) 動向平成 24 年中に法務局 地方法務局において取り扱った 学校におけるいじ *3 め に関する人権相談及び人権侵犯事件の動向は, 以下のとおりである 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 4,573 2,759 2,644 2,622 973 542 584 716 平成 15 年 人権相談人権侵犯事件 平成 16 年 平成 17 年 平成 18 年 学校におけるいじめ 14,374 平成 19 年 10,614 10,564 2,152 1,923 1,787 平成 20 年 平成 21 年 14,240 平成 22 年 2,714 14,282 平成 23 年 3,306 14,746 平成 24 年 3,988-1 -
(2) 人権相談法務局 地方法務局では, その職員及び人権擁護委員が人権問題に関する相談に応じており, 直接面談によるもののほか, 電話, インターネットメール, 手紙による相談にも応じている 相談窓口としては, 一般の人権相談窓口のほか, 法務局 地方法務局に設置された子どもの人権問題専用のフリーダイヤル 子どもの人権 110 番 *4 や子どものメール相談窓口 SOS-eメール を設け, また, 切手を貼 らずに最寄りの法務局 地方法務局に送ることができる 子どもの人権 SO Sミニレター を全国の小 中学校の児童 生徒に配布し, 子どもの人権問題に関する相談に応じている また, 滋賀県大津市における中学生の自殺を契機として, いじめ問題への対応の在り方について社会の関心が高まったことから, これに対応して法務省の人権擁護機関として次の取組を行った 1 相談窓口の広報強化に関する通知平成 24 年 7 月 18 日, 法務省人権擁護局から法務局 地方法務局に対し, いじめなど子どもの人権問題に関する相談窓口を積極的に広報するよう通知した 2 人権擁護委員活動の充実に関する依頼平成 24 年 7 月 19 日開催の第 60 回全国人権擁護委員連合会総会において, 法務大臣及び人権擁護局長から人権擁護委員に対し, いじめ問題への対応を含む人権擁護委員活動の一層の充実を依頼した 3いじめ問題に関する緊急メッセージの発信平成 24 年 8 月 8 日, 全国人権擁護委員連合会は, 国民の身近にいる相談相手としての人権擁護委員を活用してほしいという思いを伝える緊急メッセージを国民に向けて発信した 4 人権救済活動周知用のリーフレットの新規作成 配布いじめ問題を含む人権問題について, 法務省の人権擁護機関が取り組む人権救済活動についてわかりやすく紹介したリーフレットを新規作成し, 平成 24 年 8 月以降, これを広く配布することにより, 人権擁護機関の周知と利用促進に努めた 5 子どもの人権 110 番 取組強化の追加実施 子どもの人権 110 番 については, 通常は, 平日の午前 8 時 30 分から午後 5 時 15 分までの間で相談を受け付けているが, 例年, その取組強化として, 受付時間の延長や土 日曜日にも相談を受け付ける 強化週間 を全国一斉に年 1 回 6 月頃に実施している 平成 24 年については, いじめに対する社会の関心の高まりを受け, いじめ問題への対応を更に充実させ - 2 -
る必要があると考え, 強化週間と同様又はこれに準じた強化策を, 同年 9 月中旬を中心に追加実施した なお, 平成 24 年中に実施した強化週間及び追加実施の結果の概要は, 別紙 1 及び別紙 2のとおりである (3) 調査救済 ( 人権侵犯事件の調査処理 ) 法務局 地方法務局では, 人権相談等により人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には, 人権侵犯事件として調査救済手続を開始し, 被害者の実効的救済に取り組んでいる いじめに関する事案についても, 被害者からの申告等に基づき, いじめに対する学校の対応が不十分であって人権侵害の疑いがある場合には, 学校関係者等に対する事情聴取等の調査を行って事実関係の把握に努め, 事案に応じて, 学校と保護者との関係の調整を行うほか, 調査の結果を踏まえ, 事案に応じた適切な措置を講じている なお, 平成 24 年中に人権侵犯事件として立件し, 救済措置を講じた具体例は, 別紙 3のとおりである *1 人権教室人権擁護委員が講師となって, 主に小学生や幼稚園児などを対象に, 啓発ビデオや紙芝居などを利用して, 子どもたちが いじめ などの人権問題について考える機会を作り, 思いやりの大切さなどを伝えるもの *2 人権の花運動人権擁護委員等が主に全国の小学校等を訪問して, 花の種子, 球根等を児童が協力して育てることによって, 生命の尊さを実感し, その中で, 豊かな心を育み, やさしさと思いやりの心を体得することを目的とするもの *3 学校におけるいじめに関する人権侵犯事件いじめに対する学校側の安全配慮義務を問い, 学校長等を相手方とするものであって, いじめを行ったとされる児童 生徒を相手方とするものではない *4 SOSミニレター全国の小中学校の児童 生徒を対象に配布している便箋兼封筒付きのミニレター 便箋部分に悩みごとを記入し, 切り取った封筒の中に便箋を入れポストに投函すると, 最寄りの法務局に郵送される SOSミニレターを受け取った法務局では, 人権擁護委員と法務局職員が子ども達の抱える様々な悩みごとに対し, 一通一通返事を書いている - 3 -
( 別添 5/ 別紙 1) 全国一斉 子どもの人権 110 番 強化週間の実施結果 ( 概要 ) 1 実施期間 : 平成 24 年 6 月 25 日 ( 月 ) から 7 月 1 日 ( 日 ) までの 7 日間 2 相談受付 (1) 6 月 25 日 ( 月 )~29 日 ( 金 ) は, 午前 8 時 30 分から午後 7 時まで (2) 6 月 30 日 ( 土 ) 7 月 1 日 ( 日 ) は, 午前 10 時から午後 5 時まで 3 実施場所 : 全国 50 か所の法務局 地方法務局 4 相談員 : 法務局職員及び人権擁護委員 5 結果概要 : 以下のとおり 強化週間期間中の相談件数推移 2000 1500 1,258 1,284 1,272 1,783 1,881 1,978 1000 500 0 494 18 年 19 年 20 年 21 年 22 年 23 年 24 年 初年 フリーダイヤル化 現行実施時期へ変更 強化週間中に寄せられた相談は全国で1, 978 件あり, このうち主な相談は, いじめに関する相談が260 件 (13.1%), 体罰に関する相談が229 件 (11.6%), 暴行 虐待に関する相談が95 件 (4.8%) であった 参考/ 平成 23 年 いじめに関する相談 210 件, 体罰に関する相談 195 件, 暴行 虐待に関する相談 91 件 強化週間中は, 平日の相談受付時間を延長し, また閉庁日にも開設したところ, 昨年の同強化週間中と比較して97 件 (5.2%) 増 通常時と比較して約 3.4 倍 ( 注 ) の相談が寄せられ, 強化週間中の相談件数としては, 昨年に続いて過去最高を更新した ( 注 ) 通常時 ( 平成 24 年 1 月から5 月における110 番の平均件数 ) 件数 8,568 件 開庁日 102 日 当該期間中の1 週間の平均件数 8,568 件 102 日 7 日 588 件
( 別添 5/ 別紙 2) 子どもの人権 110 番 取組強化の追加実施結果 ( 概要 ) 1 実施期間 : 平成 24 年 9 月 10 日 ( 月 ) から 9 月 16 日 ( 日 ) までの 7 日間を中心として, 各法務局 地方法務局の実状に合わせて実施 2 実施場所 : 全国 50 か所の法務局 地方法務局 3 相談員 : 法務局職員及び人権擁護委員 4 結果概要 : 以下のとおり 追加実施期間中に寄せられた相談は全国で1,242 件あり, このうち主な相談は, いじめに関する相談が262 件 (21.1%), 体罰に関する相談が1 61 件 (13%), 暴行 虐待に関する相談が51 件 (4.1%) であった 期間中は, 平日の相談受付時間を延長し, また閉庁日にも開設する等したところ, 通常時と比較して約 2.1 倍 ( 注 ) の相談が寄せられた
( 別添 5/ 別紙 3) 事例 1( 小学校におけるいじめ ) 小学生から, 仲間はずれにされる, 上履きを隠される, 今は保健室登校をし ている, などといった内容の SOS ミニレターが法務局に送付され, 調査を開 始した事案である 法務局は, 被害者の要望を踏まえて同人に電話をかけ, 詳しい状況を被害者 やその親から事情聴取をし, いじめが始まった経緯のほか, 被害者が小学校の 卒業を間近に控え, 中学校でもいじめが継続するのではないかといった不安を 抱いていることを確認した そこで法務局は, 被害者の親に対し, 中学校進学に当たって, いじめ防止の ため, 加害者と被害者を別のクラスにするような配慮を行うよう小学校側から 中学校側に働きかけてもらうことを助言した その後, 親から被害者の状況を確認したところ, 中学校入学後は, 被害者と 加害者は別クラスとなり, 通常どおり教室で授業を受けていることが確認され, 親からも謝意が示された ( 措置 : 援助 ) 事例 2( 中学校におけるいじめ ) 中学生から,4 月の新学期からいじめを受け始め, 夏休み中には自分を誹謗 中傷する内容の携帯メールが送信されて困っている, などといった内容の SO S ミニレターが法務局に送付され, 調査を開始した事案である 法務局は,SOS ミニレターの返信で, 被害者を励ますとともに, 善処のた めの方策を法務局と共に考えていくことを促し, 様々な助言や提案を行った 併せて, 学校にも情報提供をし, 調査を促したところ, 被害者に送信されたメ ールが同人を著しく誹謗中傷する内容のものであることが明らかとなった 法 務局は, 学校とも協力し, 被害者と親の意向をも踏まえ, 今後同様の行為があ れば警察に被害届を提出することを助言した 学校側も臨時集会を開催し, 本 件事案の発生とその対処を説明するなどの再発防止を図ったほか, 被害者への 声かけや複数の教諭での見守り体制を構築するに至った その後, 被害者から 新たな被害を訴える相談は寄せられていない ( 措置 : 援助 ) 事例 3( 小学校におけるいじめ ) 小学生になる自分の子どもが学校で悪口を言われたり, 悪口が書かれた手紙 - 1 -
を渡されるなどのいじめを受けているとして, 保護者から法務局の人権相談窓 口に相談がされた事案である 法務局は, 小学校から事情を確認したところ, 学校としてはいじめの状況を 把握し, 加害者への必要な指導と被害者の保護者への説明を行っていたとする ものの, 保護者への説明を電話で行うのみで, 意思疎通が十分に行われていな いことがうかがわれたため, その旨を指摘した 小学校側はこれに応じ, 法務 局の仲介の下, 改めて保護者に説明を行うなどの話し合いの場が設けられた その結果, 保護者は, 学校側がこれまで行ってきたいじめへの対応に理解を示 すとともに, 学校側も保護者の希望をも考慮して今後の対応を行うこととなり, 両者の間に信頼関係が回復された その後, 法務局は, 小学校からの依頼に基 づき, 保護者参観授業において人権擁護委員による 人権教室 を実施するな ど, アフターフォローを行った ( 措置 : 調整 ) 事例 4 中学生に対するインターネット上のいじめ 中学生になる自分の娘がインターネット上の掲示板で誹謗中傷されている書 き込みがあるとして, 法務局の人権相談窓口に電話相談がされた事案である 相談者によると, 学校も独自に書き込みの削除依頼をしてくれたが, 削除され なかったとのこと 法務局で調査した結果, 当該掲示板の情報は, 被害者の名誉を毀損するもの と認められたため, 法務局から本件掲示板上の問い合わせフォームにより削除 要請を行った しかし, 当該対応では削除されなかったため, 掲示板の管理者 に対し, 文書で削除要請を行ったところ, 当該情報は, その後に削除されるに 至った ( 措置 : 要請 ) - 2 -