四川省大地震調査報告

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vi アハ ート2 アハ ート3 アハ ート4 アハ ート5 アハ ート6 アハ ート7 アハ ート8 アハ ート9 アハ ート10 アハ ート11 アハ ート12 アハ ート13 アハ ート14 アハ ート15 アハ ート16 アハ ート17 アハ ート18 アハ ート19 アハ ート20 アハ

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3 歯科医療 ( 救護 ) 対策 管内の歯科医療機関の所在地等のリスト整理 緊急連絡網整備 管内の災害拠点病院 救護病院等の緊急時連絡先の確認 歯科関連医薬品の整備 ( 含そう剤等 ) 自治会 住民への情報伝達方法の確認 病院及び歯科診療所での災害準備の周知広報 - 2 -

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北栄町耐震改修促進計画の目的等 目的 本計画は 町民生活に重大な影響を及ぼす恐れのある地震被害から 町民の生命 財産を保護するとともに 地震による被害を軽減し 社会秩序の維持と公共の福祉に資するため 建築物の計画的な耐震化を促進することを目的とします 計画の実施期間 本計画の実施期間は 国及び県の実

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

1981 i ii ➀ ➁ 61

( 県の責務 ) 第三条県は 地震防災に関する総合的な施策を策定し 及びこれを実施する責務を有する 2 県は 市町村 自主防災組織その他防災関係機関等と連携して 地震防災対策を推進しなければならない 3 県は 地震に関する調査及び研究を行い その成果を県民 事業者及び市町村に公表するとともに 地震防

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3部第 3 部災害復興計画 ( 仮題 ) 第 4 章震災復興マニュアルのしくみ 第 4 章東京都震災復興マニュアルのしくみ 東京都震災復興マニュアル ( 以下 震災復興マニュアル という ) は 都市復興マニュアル ( 平成 9 年 ) と 生活復興マニュアル ( 平成 10 年 ) を統合し 復興

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4:10 防災科学技術研究所第 2 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 9:34 防災科学技術研究所第 3 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 11:50 防災科学技術研究所職員が熊本県庁 ( 熊本県災害対策本部 ) に到着 16:00

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東京事務所版 BCP 実施要領目次応急頁 < 第 1グループ> 直ちに実施する業務 1 事務所における死傷者の救護や搬送 応急救護を行う一時的な救護スペースの設置 運営 備蓄の設置 医療機関への搬送 1 2 事務所に緊急避難してきた県民や旅行者等への対応 避難 一次避難スペースの運営 指定避難所への

Transcription:

ADRC,DRI 四川省大地震調査先遣隊報告会 四川省大地震調査報告 平成 20 年 6 月 2 日 ( 月 ) アジア防災センター (ADRC( ADRC) 主任研究員小鹿健平主任研究研究員田中修平 人と防災未来センター (DRI( DRI) 調査研究員高橋淳夫 1

目 次 1 調査概要 (1) 調査目的 (2) 調査行程 2 調査結果 (1) 四川省大地震の概要 (2) 被災地の現状 (3) 行政機関等の対応状況 3 まとめ 2

1 調査概要 (1) 調査目的 今後の復旧 復興に対して 阪神 淡路大震災の経験と 教訓を生かしてどのように貢献できるのかを調べる 阪神 淡路大震災平成 7 年 1 月 17 日 ( 兵庫県広報課 ) 3

1 調査概要 (2) 調査行程 2008 年 5 月 25 日 ( 日 )~5 月 30 日 ( 土 ) 日付場所内容 26 日 ( 月 ) 27 日 ( 火 ) 都江堰市内 都江堰市聚源 ( じゅげん ) 鎮 綿竹市漢旺鎮 ( かんおう ) 鎮 遵道 ( じゅんどう ) 鎮 被災地調査 被災地調査 汶川県 遵道鎮 漢旺鎮 綿竹市 28 日 ( 水 ) 四川省人民政府外事弁公室 ( 成都市 ) 中国地震局震災応急救援部 ( 都江堰市 ) 情報交換 都江堰市 27 日 ( 火 ) 29 日 ( 木 ) 清華大学公共都市計画設計研究院公共安全研究所 ( 北京市 ) 情報交換 聚源鎮 30 日 ( 金 ) JICA 中国事務所 ( 北京市 ) 民政部国家減災中心 ( 北京市 ) 情報交換 26 日 ( 月 ) 成都市 被災地調査箇所図 4

(1) 四川省大地震の概要 (GLIDE:EQ-2008-000062-CHN) 5

(1) 四川省大地震の概要 ( 推定断層位置 推定断層位置 ) 漢旺鎮 遵道鎮 綿竹市 汶川県 ( 震源 ) 都江堰市 27 日 ( 火 ) 聚源鎮 26 日 ( 月 ) 成都市 断層面位置図 ( 出展 : 中国地震信息網用 ) 6

(2) 被災地の現状 ( 市内の状況 ) 成都市の状況 建築物等の物的被害は見受けられない 市民生活は平穏で 商店等も通常どおり営業 都江堰市 ( 市内 ) の状況 成都市 成都市からの移動ルートは4ルート確保 建築物は被害を受けているが 倒壊に至っているものは一部 ほとんどの商店は閉店 都江堰 都江堰市内 都江堰市内 7

(2) 被災地の現状 都江堰市聚源 ( じゅげん ) 鎮の状況 ほとんどの建築物は被害を受けているが 倒壊に至っているものは一部 住民は住居に戻るのを嫌がり テント等で生活 ほとんどの商店は閉店し 街中は閑散としている 仮設住宅の整備が急ピッチで進む 被害の大きかった聚源中学校 閑散とした街中 座屈した鉄筋コンクリート柱 テントに避難する住民 8

(2) 被災地の現状 綿竹市漢旺 ( かんおう ) 鎮の状況 綿竹市内のほとんどの建築物は 被害が見られない 漢旺鎮では 多くの建築物が激しく倒壊し 街は壊滅的な被害を受けている 漢旺鎮政府庁舎は 完全に倒壊している 漢旺中心小学校 漢旺鎮の被害状況 漢旺鎮の被害状況 完全に倒壊している漢旺鎮政府庁舎 9

(2) 被災地の現状 綿竹市遵道 ( じゅんどう ) 鎮の状況 木造 レンガ造の古い住宅が倒壊している 公的避難所及びレントゲン施設の整った野戦医院 仮設小学校が開設している 古い住宅が倒壊 野戦病院 仮設小学校 携帯電話を充電する店 10

(2) 被災地の現状 被災地の現状 ( 耐震設計について ) 中国の耐震基準 1974 年 : 耐震基準を制定 1978 年 : 改訂 海城地震 (1975) 唐山地震(1976) 1989 年 : 改訂 アメリカ (ATC-3) 日本(1981 年耐震基準 ) (1990: 震度分布マップ 加速度分布マップ公表 ) 2001 年 : 改訂 日本の震度と中国の震度 日本 : 震度計により計測震度 10 階級 (0 1 2 3 4 5-5+ 6-6+ 7) 中国 : 12 階級 階級 I II III IV V VI VII VIII IX X XI XII 判定 無感 個別 有感 少数有感 屋内有感 屋外有感 1 類建築被害 2 類建築被害 1 類建築倒壊 中国震度分布図 2 類建築倒壊 3 類建築倒壊 大部全壊 全壊 11

(2) 被災地の現状 被災者の状況 ( 聞き取り調査等 ) 1 被災者の意識 今の状況では支援不足は仕方がない 政府は頑張っている 自分たちで頑張る との声が多数 どうすればよいか途方に暮れている との声は少数 子供を失った親たちの心の傷 2 救援物資 支援について テントで過ごす被災者 行政機関からテントと 1 人 1 か月 15kg の米と 300 元の現金 ボランティアから水 食料 生活物資などを支給 農村部では農業に要する借入金の返済を免除 テント 毛布 薬 重機が不足 薬は外国からの支援が難しい 12

(2) 被災地の現状 被災者の状況 ( 聞き取り調査等 ) 3 避難所ア避難所の形態 a 行政機関が設置する公的避難所 ( 田畑を埋めて作ったテント村や体育館 ) b 被災者が空き地などに集合 c 自宅近くの路上などに個別に避難 整備中の公的避難所( 聚源鎮 ) イ避難所の状況 ( 特に上記 b cの状況 ) 資材不足 風呂 トイレ 水の確保が困難 昼は30 を超え 衛生保持が重要 2 週間の避難生活で高齢者に疲労 避難者名簿は見あたらない 救援物資の配給を受けられない人も 粉塵がひどいがマスク装着者は少ない 自主的に集合した被災者 ( 都江堰 ) 13

(2) 被災地の現状 仮設住宅の状況 大規模な仮設住宅が既に建設中 田畑に震災ガレキ等を埋め 用地を確保 1 戸の床面積は約 20m2 ( 都江堰 ) ボランティア 建設中の仮設住宅 ( 都江堰市 ) 都江堰市では 地元の共産主義青年団が募集 数千人が登録 災害対策本部との情報交換をしながら配置 貧困や環境対策の経験を持つボランティアもいる 企業のボランティア組織も活動中 主な業務は 被災者への物資支給 グループ同士の調整が課題 心のケアに関する専門知識を持つボランティアの確保が ボランティア( 都江堰市 ) 14 求められている

15 2 調査結果調査結果 (3) (3) 行政機関等の対応状況行政機関等の対応状況 ( 中央政府対応体制中央政府対応体制 ) 救援組救援組予報監測予報監測組医療衛生医療衛生組生活安定生活安定組基礎施設基礎施設組生産回復生産回復組治安組治安組宣伝組宣伝組水利組水利組解放軍 解放軍 地震局等地震局等地震局 地震局 気象局気象局衛生部等衛生部等民政部等民政部等工業と情工業と情報部等報部等工業と情工業と情報部等報部等公安部等公安部等廣播テレ廣播テレビ総局ビ総局水利部水利部救援 人救援 人命救助命救助余震観測 余震観測 被害評価被害評価医療 衛医療 衛生 防疫生 防疫救援物質 救援物質 仮設住宅仮設住宅ライフライライフライン復旧 ン復旧 物価監視物価監視再建に関再建に関する計画 する計画 復旧 復復旧 復興予算興予算治安管理治安管理情報発信情報発信水道 ダ水道 ダム 河川ム 河川の修復の修復災害対策総指揮部 ( 総指揮 : 温家宝首相 )

(3) 行政機関等の対応状況 緊急 救援物資の受け入れ 四川省人民政府外事弁公室唐宏副主任 ( 成都市 ) 海外からの支援物資の受け入れを担当 責任者は黄彦蓉四川省副省長 支援物資は 40 カ国から 2000t 以上 兵庫県からのお見舞い 物資の手配などの支援に対し 四川省政府として 井戸知事と兵庫県民の皆様に大変感謝している 引き続きご支援をお願いしたい 他国に先駆け 緊急援助隊救助チームは 被害の大きかった場所で活躍いただいた 医療チームにも活躍いただき 日本国と兵庫県に感謝している 四川省人民政府外事弁公室と情報交換 16

(3) 現地政府機関の対応状況 中国地震局被災地指揮センター ( 都江堰市 ) 中国地震局震災応急救援部苗崇剛副部長 建築物の耐震基準の確認は 1 構造設計 2 施工図面 3 施工管理 の 3 段階で行っている 1000 棟の建築物を詳細に調査中 中国地震局震災応急救援部と情報交換 設計耐震基準を定める震度分布図の見直しに着手 17

(3) 現地政府機関の対応状況 民政部国家減災中心 ( 北京市 ) 方志勇副主任 民政部としての現在の優先課題は 被災者の医療活動 生活支援 防疫 仮設住宅建設 復旧 復興については検討の段階 訪問いただいた皆様の関心と協力の意思表明に感謝する 必要な仮設住宅戸数は 300 万戸 被災者 1000 万人に相当 当面の必要テント数は 300 万張であるが 中国内で調達できたものは 40 万張 仮設住宅については 中国沿海部の豊かな省毎に担当被災地を決め 支援 例えば 広東省は汶川県を支援 地震直後から死者数 6 万人程度と想定し 対応をすすめている 民政部国家減災中心と情報交換 18

(3) 行政機関等の対応状況 復旧 復興計画の策定 顧林生教授清華大学公共都市計画設計研究院公共安全研究所長 ( 北京市 ) 顧教授 : 名古屋大で博士号取得 元国連地域開発センター勤務 政府建設部が被災地を 4 地区に分け 行政機関と北京や上海の大学などが協力して 復興計画を策定 既に 阪神 淡路大震災等を参考として 復旧 復興計画に盛り込むべき課題をまとめ 政府に提案 日中間のボランティア同士の草の根的交流にも期待 顧教授との情報交換 19

(3) 行政機関等の対応状況 JICA 中国事務所の取り組み 古賀重成所長 松本高次郎副所長 小島元所長代理 ( 北京市 ) 四川省大地震の復旧 復興に当たっては 日本の震災復興の知見 ノウハウを中国と共有することが重要 震災経験のある地方自治体の経験が重要な役割を担うので 兵庫県の積極的な協力の申し入れに感謝する 被災者のメンタルケアや被災者同士の交流を進めたいと考えている 兵庫県の協力を期待する JICA との情報交換 20

3 まとめ 調査した地域では 公的避難所や野戦病院 医療 防疫 仮設小学校 仮設住宅建設や耐震基準の見直しなど多方面で対応が進められている 今後の支援としては 阪神 淡路大震災などの経験と教訓が生かせる以下のような分野での貢献が考えられる 震災復興計画策定に対する助言 (3 ヶ月以内 ) 仮設住宅の運営とコミュニティーの維持 被災者の心のケア 中山間地の復興 産業の復興 文化財の修復 21

ご清聴ありがとうございました アジア防災センター (ADRC( ADRC) http://www.adrc.or.jp/top_j.php 人と防災未来センター (DRI( DRI) http://www.dri.ne.jp www.dri.ne.jp/ 22