Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) Title Sub Title Author 好酸球性気道炎症におけるTh2サイトカインとTLR3 受容体のクロストーク Crosstalk between Th2 cytokines and Toll-like 3 receptor in the pathophysiology of eosinophilic airway inflammation 新美, 京子 (NIIMI, KYOKO) Publisher Publication year 29 Jtitle 科学研究費補助金研究成果報告書 (28. ) Abstract RNAウイルス複製時に生じる二本鎖 RNA を認識する膜受容体 Toll-like receptor 3 (TLR3) の気管支平滑筋における発現を確認し Th2サイトカイン優位な微小環境下では dsrna 刺激により好酸球遊走性ケモカイン (eotaxin-1,rantes) が産生され 強力な好酸球遊走活性が認められることを確認した また 培養ヒト気道上皮細胞 (BEAS2B)/ 気管支平滑筋細胞 (BSMC) にRNAウイルスであるヒトコロナウイルス株 CoV229Eが感染 増殖することを確認した さらにBEAS2B にはウイルスレセプター aminopeptidase Nが構成的に発現しており その発現は合成二本鎖 RNAであるpolyI:CとIL-4により相乗的に増強された Th2サイトカイン優位な環境下ではTLR3シグナルを介してウイルスレセプターの発現が亢進し ウイルス感染 増殖を増幅する可能性があると考えられた Notes 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26~28 課題番号 :1879546 研究分野 : 医歯薬学 Genre URL 科研費の分科 細目 : 内科系臨床医学 呼吸器内科学 Research Paper http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=kaken_1879546seika
様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 6 月 16 日現在研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26~28 課題番号 :1879546 研究課題名 ( 和文 ) 好酸球性気道炎症における Th2 サイトカインと TLR3 受容体のクロストーク研究課題名 ( 英文 ) CrosstalkbetweenTh2cytokinesandToll-like3receptorinthe pathophysiologyofeosinophilicairwayinflammation 研究代表者新美京子 (NIIMIKYOKO) 慶應義塾大学 医学部 助教研究者番号 :933846 研究成果の概要 : RNA ウイルス複製時に生じる二本鎖 RNA を認識する膜受容体 Toll-likereceptor3(TLR3) の気管支平滑筋における発現を確認し Th2 サイトカイン優位な微小環境下では dsrna 刺激により好酸球遊走性ケモカイン (eotaxin-1,rantes) が産生され 強力な好酸球遊走活性が認められることを確認した また 培養ヒト気道上皮細胞 (BEAS2B)/ 気管支平滑筋細胞 (BSMC) に RNA ウイルスであるヒトコロナウイルス株 CoV229E が感染 増殖することを確認した さらに BEAS2B にはウイルスレセプター aminopeptidasen が構成的に発現しており その発現は合成二本鎖 RNA である polyi:c と IL-4 により相乗的に増強された Th2 サイトカイン優位な環境下では TLR3 シグナルを介してウイルスレセプターの発現が亢進し ウイルス感染 増殖を増幅する可能性があると考えられた 交付額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 26 年度 1,4, 1,4, 27 年度 1,, 1,, 28 年度 1,, 3, 1,3, 年度年度総計 3,4, 3, 3,7, 研究分野 : 医歯薬学 科研費の分科 細目 : 内科系臨床医学 呼吸器内科学 キーワード : アレルギー 喘息 ウイルス 免疫学
1. 研究開始当初の背景 ウイルス 特にライノウイルス コロナウイルスなどの RNA ウイルス感染は喘息 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) の急性増悪誘因の 4-8% を占めている その際しばしば好酸球性気道炎症を呈し エオタキシンなどの好酸球遊走性ケモカインの喀痰中濃度も増加していることが報告されている RNA ウイルス複製時に生じる二本鎖 RNA (dsrna) を認識する膜受容体 Toll-like receptor3(tlr3) は 樹状細胞 気道構成細胞 ( 気道上皮細胞 線維芽細胞 ) での発現が確認されている しかし これらの細胞を dsrna で刺激しても 抗ウイルス作用に関連するサイトカイン ケモカインが主に誘導され 好酸球性炎症に重要なエオタキシンなどのケモカインの産生は誘導されない 喘息患者の気道のように Th2 サイトカイン優位な微小環境下では TLR3 を介したシグナルが気道構成細胞からの好酸球遊走因子放出を誘導することで好酸球性気道炎症を成立 悪化させるのではないか との仮説に基づき研究を行うこととした 2. 研究の目的 二本鎖 RNA を認識した TLR3 シグナルが Th2 サイトカインと相互作用して TLR3 シグナル単独の場合と異なる生体反応をひきおこす可能性 およびそのクロストークにより生じる反応を検討する さらにコロナウイルス感染モデルを確立し 喘息患者においてウイルス気道感染が好酸球優位な気道炎症を誘導する機序を明らかにする 3. 研究の方法 (1) 細胞培養 3~5 名のドナーから採取された初代培養 BSMC を購入し 使用した また 上皮細胞と してはヒト気管支上皮細胞株 BEAS2B を使用 した (2) ケモカイン測定 BSMC BEAS2B を 24 穴プレートに培養し インターロイキン4(IL-4) もしくは IL-13 の存在下 非存在下で合成 dsrna である poly inosinic-cystidicacid[poly(i:c)] で刺激した 培養上清中の CCL5 CCL11 CXCL8 CXCL1 IL-6 産生を ELISA 法で検討し CCL11 と TLR3 発現は定量 RT-PCR 法で検討した また TLR3 特異的中和抗体 (24 時間培養 ) TLR3 特異的 sirna(72 時間培養 ) エンドソーム酸性化阻害薬 BafilomycinA1(24 時間培養 ) で処理した後に IL-4 と poly(i:c) で刺激したときの CCL11 発現についても定量 RT-PCR 法で検討した (3) ケモカインによる好酸球遊走能の検討末梢血好酸球は 4 名の健常成人から CD16 マイクロビーズを用いた negativeselection 法で分離採取した BSMC を poly(i:c) IL-4 もしくはその両者で刺激し 24 時間後に採取した細胞上清中のケモカインによる好酸球遊走能をボイデンチャンバー法で測定した また 抗 CCL11 中和抗体 抗 CCL5 中和抗体もしくはその両者で培養上清を1 時間インキュベーションし 好酸球遊走能が抑制されるかについても検討した (4) 気道構成細胞における TLR3 の発現とその細胞内局在の検討 BEAS2B BSMC を抗 TLR3 抗体で標識し さらに FITC 標識二次抗体で染色した後フローサイトメトリー法で TLR3 の発現を検討した 細胞内の TLR3 発現についてはサポニン処理をおこない細胞透過性を亢進させて検討した TLR3 と poly(i:c) の BSMC 内での局在は poly-l-lysine でコーティングしたカバーグ
ラスに BSMC を培養し フルオレセインでラ ベリングした poly(i:c) を投与した後 パラ フォルムアルデヒドで固定した 同時に TLR3 earlyendosomeag-1(eea1) に対する抗体 を用い 共焦点顕微鏡でその局在を検討した (5) 気道構成細胞への CoV229E 感染国立感染症研究所より供与を受けた RNA ウイルスであるヒトコロナウイルス 229E (CoV229E) を使用した BEAS2B BSMC にウイルスを接種し 34 /CO2 5% で 45 分インキュベーションの上感染させた ウイルス接種後 24-48 時間後に細胞を固定し 免疫蛍光法 (rabbit 抗 229E 抗体 ) で感染を確認した 感染後 24 時間 48 時間の細胞でのウイルス蛋白の増殖をウエスタンブロット法で検討した また 感染細胞とその上清中のウイルス titer を Hela 細胞を用いたウイルス量定量 ( タイトレーション ) 法で検討した A) RANTES (pg/ml) B) Eotaxin-1 (pg/ml) 3 3 2 2 1 2 2 1 BEAS2B poly(i:c) IL-4 + poly(i:c).1 1 1 BEAS2B poly(i:c) IL-4 + poly(i:c).1 1 1 poly(i:c) ( g/ml) Eotaxin-1 (pg/ml) RANTES (pg/ml) 3 2 2 1 2 2 1 BSMC.1 1 1 BSMC.1 1 1 poly(i:c) ( g/ml) (6) ウイルスレセプターの発現 BEAS2B における CoV229E のレセプター aminopeptidasen の発現をリアルタイム RT-PCR 法で確認し poly(i:c) 投与による変化を IL-4 の存在下 / 非存在下で検討した さらに IL-4 の存在下での CoV229E 感染によるレセプターの発現も検討した 4. 研究成果 (1) dsrna によるケモカイン産生 IL-4 の有無にかかわらず poly(i:c) 刺激により BSMC BEAS2B から多量の CCL5 が産生された CCL11 については BSMC でのみ産生が認められ IL-4 の存在下で CCL11 産生はさらに増強した またリアルタイム RT-PCR 法による検討ではIL-4 と poly(i:c) の両者による刺激で CCL11mRNA の発現が相乗的に増加していた これらの反応は 1 本鎖 RNA 2 本鎖 DNA による刺激では認められず dsrna に特異的な反応であると考えられた (2) ケモカインによる好酸球遊走能の検討 BSMC を IL-4 と poly(i:c) で刺激した細胞上清では好酸球遊走能の亢進が認められ その作用は抗 CCL5 抗体では抑制されず 抗 CCL11 抗体により優位に抑制された
(3) 気道構成細胞における TLR3 の発現とその役割 BSMC と BEAS2B では TLR3mRNA 蛋白を発現していることを RT-PCR 法で確認した フローサイトメトリー法により BEAS2B では細胞内のみに BSMC では細胞細胞表面にも TLR3 が発現していることが確認された (4)BSMC における TLR3 と dsrna の局在 BSMC に蛍光標識した poly(i:c) を投与し さらに TLR3 を蛍光標識したものを共焦点顕微鏡で検討したところ poly(i:c) の投与後約 5 分で細胞内での凝集を認め この時 (poly(i:c) と TLR3 は共局在していた また エンドソームマーカーである EEA1 と TLR3 も共局在が確認された Poly(I:C) (-) Poly(I:C) TLR3 Poly(I:C) (+) merge TLR3siRNA は controlsirna に比較して TLR3 の発現を 8% 以上抑制したが TLR4 の発現には影響を認めなかったことから TLR3 特異的と考えた この TLR3siRNA の存在下では IL-4 と poly(i:c) による BSMC からの CCL11mRNA 発現は有意に抑制された しかし 抗 TLR3 中和抗体で前処理した BSMC では poly(i:c) と IL-4 による CCL11 産生は抑制されなかった 一方 エンドソームの酸性化抑制剤である BafilomycinA1 は IL-4 単独による CCL11 の産生は抑制しなかったが poly(i:c) と IL-4 による CCL11 産生を有意に抑制し poly(i:c) の作用にはエンドソーム酸性化が必要であると考えられた 以上より 喘息気道のように Th2 サイトカイン優位な環境下では ウイルス由来二本鎖 RNA が気管支平滑筋細胞に作用し エンドソーム内の TLR3 と会合することで eotaxin-1 などの好酸球性ケモカインの産生を誘導し 好酸球性気道炎症を悪化させる可能性が示唆された (6) 気道構成細胞への CoV229E 感染免疫蛍光法 (rabbit 抗 229E 抗体 ) により BEAS2B BSMC 両者で感染細胞を確認した 感染後 24 時間 48 時間の細胞ではウイルス同様の N 蛋白 M 蛋白が増殖していることをウエスタンブロット法で確認した 感染細胞とその上清中のウイルス titer は 感染後 24 時間の時点で接種ウイルス量を超えており 感染後ウイルスが細胞内で増殖していることが確認された
(7) ウイルスレセプターの発現 BEAS2B に CoV229E のレセプターである aminopeptidasen が構成的に発現していることをリアルタイム RT-PCR で確認した また その発現は合成二本鎖 RNA である polyi:c により有意に亢進した polyi:c による aminopeptidasen 発現誘導は IL-4 の存在下でさらに相乗的に増強されたことから IL-4 で 24 時間インキュベーション後に CoV229E を感染させたところ ウイルスレセプターの発現亢進と 感染細胞および上清中のウイルス量の増加傾向が確認された 以上の実験結果から Th2 サイトカイン優位な環境下では気管支平滑筋細胞では TLR3 シグナルを介してウイルスレセプターの発現が亢進し ウイルス感染 増殖をさらに増幅する可能性があると考えられた 学会発表 ( 計 7 件 ) 1 新美京子 Toll-Like Receptor 3-Mediated Synthesis ofeotaxin-1fromhumanbronchialsmooth Muscle Cells Stimulated with Double- StrandedRNA WorldAsthmaMeeting 27 年 6 月 22 日 ~25 日 IstanbulTurkey 2 新美京子ヒト気管支平滑筋細胞 気道上皮細胞へのヒトコロナウイルス 229E 感染第 47 回日本呼吸器学会総会 27 年 5 月 1~12 日東京国際フォーラム 3 新美京子 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 3 件 ) 1 鈴木雄介, 浅野浩一郎, 新美京子, 以下 8 名 TP-receptor-mediatedreleaseof eosinophilchemotacticactivityfrom humanbronchialsmoothmusclecells. EurJPharmacol 査読あり 6(1-3):133-139, 28. 2 白石良樹, 浅野浩一郎, 新美京子, 以下 17 名 Cyclooxygenase-2/prostaglandin D2/CRTH2pathwaymediates double-strandedrna-inducedenhancement ofallergicairwayinflammation. J Immunol 査読あり 18(1): 541-549, 28. 3 新美京子, 浅野浩一郎, 白石良樹, 以下 15 名 TLR3-mediatedsynthesisandrelease ofeotaxin-1/ccl11fromhumanbronchial smoothmusclecellsstimulated withdouble-strandedrna. JImmunol 査読あり 178(1):489-495,27. Toll-like receptor 3-mediated synthesis ofeotaxin-1fromhumanbronchialsmooth muscle cells stimulated with doublestrandedrna 16th Annual Congress of the European RespiratorySociety 26 年 9 月 2 日 ~6 日 Munich Germany 4 新美京子二本鎖 RNA と Toll 様受容体 3の会合によるヒト気管支平滑筋細胞からの好酸球遊走活性誘導と eotaxin-1 産生 26 年 7 月 21 日 RMCB 研究会 5 新美京子 Toll-likereceptor3-dependentsynthesis of eosinophil chemotactic activity in double-stranded RNA-stimulated human bronchialsmoothmusclecells RCAI(RegulationofImmuneResponsesin AllergyandInflamation)International Symposium26 26 年 6 月 16 日 ~18 日横浜浜銀ホール 6 新美京子二本鎖 RNA によるヒト気管支平滑筋細胞からの eotaxin 産生と Toll-like 受容体 3
第 46 回日本呼吸器学会総会 26 年 6 月 1-3 日東京国際フォーラム 7 新美京子 Toll-like receptor 3 and chemokine synthesisinhumanbronchialsmoothmuscle cells 12nd International Conference of the AmericanThoracicSociety 26 年 5 月 19 日 ~24 日 SanDiego, USA 図書 ( 計 件 ) 産業財産権 出願状況 ( 計 件 ) 取得状況 ( 計 件 ) その他 6. 研究組織 (1) 研究代表者 新美京子 (NIIMIKYOKO) 慶應義塾大学 医学部 助教 研究者番号 :933846 (2) 研究分担者 (3) 連携研究者