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地熱発電を中核とする地熱エネルギーの活用が 我が国の安全で安定したエ ネルギー供給に貢献し 地球温暖化対策や地域経済の発展に寄与する様 以下 の施策が実施されることを要望致します 1. 固定価格買い取り制度 の恒久的な運用 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 に基づく 再

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

Microsoft Word - 1.B.2.d. 地熱発電における蒸気の生産に伴う漏出


(2) 産 学 官 民が連携した 小浜温泉エネルギー活用推進プロジェクト 小浜温泉地域では 豊かな地熱 温泉資源エネルギーの活用がこれまでも検討されており 平成 15 年から平成 17 年には民間企業による小規模バイナリーシステム実用化開発事業 平成 16 年から平成 17 年には独立行政法人新エネ

1. 火力発電技術開発の全体像 2. LNG 火力発電 1.1 LNG 火力発電の高効率化の全体像 1.2 主なLNG 火力発電の高効率化技術開発 3. 石炭火力発電 2.1 石炭火力発電の高効率化の全体像 2.2 主な石炭火力発電の高効率化の技術開発 4. その他の更なる高効率化に向けた技術開発

別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]


資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

経営指標の概要 ( 電気事業 ) 1. 経営の状況 ( 電気事業全体で算出 ) 算出式 ( 法適用事業 ) 算出式 ( 法非適用事業 ) 1 経常収支比率 (%) 1 収益的収支比率 (%) 指標の意味 経常収益 100 経常費用 総収益 100 総費用 + 地方債償還金 法適用企業に用いる経常収支

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日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

RIETI Highlight Vol.66

エネルギー規制 制度改革アクションプラン (11 月 1 日 ) の概要 重点課題と詳細リスト 現時点で政府が取り組むこととしている又は検討中の事項を 実施 検討事項詳細リスト (77 項目 ) として取りまとめ その中から 3つの柱で計 26 項目の重点課題を特定 1 電力システムの改革 (9 項

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熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

第 3 章隠岐の島町のエネルギー需要構造 1 エネルギーの消費量の状況 ここでは 隠岐の島町におけるエネルギー消費量を調査します なお 算出方法は資料編第 5 章に詳しく述べます (1) 調査対象 町内のエネルギー消費量は 電気 ガス 燃料油 ( ガソリン 軽油 灯油 重油 ) 新エ ネルギー (

対策名 1 温室効果ガスの排出の抑制等に資する設備の選択キ未利用エネルギーの活用のための設備導水 送水 配水等における管路の残存圧力等を利用した小水力発電設備の導入 概要 地形の高低差から生じる水の位置エネルギーがある場所や導水管路 送水管路 配水池入口等で余剰圧力が利用できる場所 あるいは弁の開度

電通、エネルギー自由化に関する生活者意識の変化を分析

注 1: 要件の判断に係る算定に当たっては 複数の発電用の電気工作物が同一の接続地点に接続している場合は 一つの発電用の電気工作物とみなす 注 2: 特定発電用電気工作物に該当しない電気工作物は 発電事業の要件 ( 小売電気事業用等接続最大電力の合計が 1 万 kw 又は 10 万 kw を超えるも

内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

AISIN GROUP REPORT 2011

力率 1.0(100%) の場合 100% の定格出力まで有効電力として発電し 出力できます 力率 0.95(95%) の場合は 定格出力の 95% 以上は有効電力として出力できません 太陽光発電所への影響 パワコンの最大出力が 95% になるので 最大出力付近ではピークカットされます パワコンの出

地熱発電で年間6億円の収入を過疎の町に

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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 1. 地球温暖化対策の推進 1-2 国内における温室効果ガスの排出抑制 租税特別措置等により達成しようとする目標 2030 年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を 22~24% とする 租税特別措置等による達成目標に係る測定指

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本日の内容 エネルギー基本計画における位置付け 地熱発電の現状と普及拡大に向けた取組み 環境アセスメントの早期化に向けた取組み 再生可能エネルギー熱利用の普及拡大に向けた取組み 2

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

今回の調査の背景と狙いについて当社では国のエネルギー基本計画の中で ZEH 普及に関する方針が明記された 200 年より 実 邸のエネルギー収支を調査し 結果から見えてくる課題を解決することが ZEH の拡大につなが ると考え PV 搭載住宅のエネルギー収支実邸調査 を実施してきました 205 年

( 考慮すべき視点 ) 内管について 都市ガスでは需要家の所有資産であるがガス事業者に技術基準適合維持義務を課しており 所有資産と保安責任区分とは一致していない LPガスでは 一般にガスメータの出口より先の消費設備までが需要家の資産であり 資産区分と保安責任区分が一致している 欧米ではガスメータを境

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FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

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2018年度第1四半期 決算説明資料

地熱 ( 温泉熱 ) 利用事業のリスクとその対策 の構成 表 に示す本節を構成する各項は 独立した内容となっています そのため 知り たい情報について それぞれ個別に読むことも可能です 表 地熱 ( 温泉熱 ) 利用事業の本節構成 構成情報頁 当該事業の流れや法

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平成 30 年度地方税制改正 ( 税負担軽減措置等 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 その他 ) No 8 府省庁名環境省 対象税目個人住民税法人住民税事業税不動産取得税固定資産税事業所税その他 ( ) 要望項目名 要望内容 ( 概要 ) 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の延長

利水補給

資料3-1 温室効果ガス「見える化」の役割について

技術資料 387 F 社東京都 H21.05 Hフーズ北海道 H21.05 N 流通センター佐賀県 T 物流センター千葉県 I 社福岡県 H21.09 M 食品山形県 H21.09 T 物流センター千葉県 Q 流通香川県 N 冷蔵新潟県 I 食品福岡県 S 社埼玉県 Kフーズ愛媛県 S 冷蔵宮城県

2017(平成29)年度第1四半期 決算説明資料

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目次 1. 実施内容について 背景と目的 2. 海外 P2G 事例 3. FSの中間報告 システム機能概要図 主要設備仕様案 主要設備面積試算と水素量試算 想定スケジュール 技術的要件 送電線 FSにおける今後の検討スケジュール 2017 Toshiba Corporation / Tohoku-E

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Q 切り替えする手続きが面倒じゃないの? A 新しく契約する電力会社へ申し込みをするだけで 今の電力会社へ連絡はせずに切り替えができます また Web でも簡単に申し込み手続きができるようになります Q 停電が増えたり 電気が不安定になったりしないの? A 新電力と契約した場合でも 電気を送る電線や

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(2) ベースラインエネルギー使用量 それぞれの排出起源のベースラインエネルギー使用量の算定方法は以下のとおり 1) 発電電力起源 EL BL = EL ( 式 1) 記号定義単位 ELBL ベースライン電力使用量 kwh/ 年 EL 事業実施後のコージェネレーションによる発電量 kwh/ 年 2)

1. 各省の最近のポテンシャル調査の一覧 省庁名調査名委託先公表年月日ホームページアドレス 株式会社エックス都市研 究所 平成 22 年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査 アジア航空株式会社パシフィックコンサルタンツ株式会社 2011/4/21 ea

( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

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1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

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(2) 地震発生時の状況地震発生時の運転状況ですが 現在 20 清掃工場で40 炉が稼動していますが 地震発生当日は32 炉が稼動しており 8 炉は定期補修や中間点検のため停止していました 地震後は設備的な故障で停止したのが2 炉ありまして 32 炉稼動していたうち2 炉が停止したというのが地震発生

(2) 太陽熱 太陽光発電同様に 設置効果について検討を行いました 太陽熱集熱器設備規模 120m 2 50m 2 3m 2 *1 設備 工事費 2,870 万円 1,196 万円 30 万円 補助率 1/2(NEDO) *2 3 1/2(NEDO) - *1: 新エネルギーガイドブック及び市資料よ

大規模災害等に備えたバックアップや通信回線の考慮 庁舎内への保存等の構成について示すこと 1.5. 事業継続 事業者もしくは構成企業 製品製造元等の破綻等により サービスの継続が困難となった場合において それぞれのパターン毎に 具体的な対策を示すこと 事業者の破綻時には第三者へサービスの提供を引き継

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(2) ベースラインエネルギー使用量 それぞれの排出起源のベースラインエネルギー使用量の算定方法は以下のとおり 1) 発電電力起源 EL BL = EL ( 式 1) 記号定義単位 ELBL ベースライン電力使用量 kwh/ 年 EL 事業実施後のコージェネレーションによる発電量 kwh/ 年 2)

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参考 :SWITCH モデルの概要 SW ITCH モデル は既存の発電所 系統 需要データを基にして 各地域における将来の自然エネルギーの普及 ( 設備容量 ) をシミュレーションし 発電コストや CO 排出量などを計算するモデルです このモデルでは さらに需要と気象の時間変動データから 自然エネ


業務用空調から産業用まで 圧倒的な効率で省エネやCO2排出量削減に 貢献するKOBELCOのヒートポンプ ラインナップ一覧 業界最高効率の高い省エネ性 シリーズ 全機種インバータを搭載し 全負荷から部分 機 種 総合COP 冷房 供給温度 暖房 熱回収 冷温同時 製氷 冷媒 ページ HEMⅡ -10

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1. 背景 目的 -1- CO2 排出量 の削減 地球温暖化防止 電力消費の削減と平準化 電力不足への対応 グローバルな要求事項 今後の電力供給体制への影響が大きい 地球温暖化が叫ばれる中 グローバルな要求事項として CO2 排出量の削減が求められている 加えて震災後の電力供給体制に対し 電力消費そ

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住宅部分の外壁 窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準 ( 平成 28 年国土交通省告示第 266 号 ) における 同等以上の評価となるもの の確認方法について 住宅部分の外壁 窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準 (

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10kW 以上の太陽光 風力 水力 地熱 バイオマス発電の場合 1. 再生可能エネルギー発電事業計画書 みなし認定用 様式第 19 1 経済産業大臣殿 再生可能エネルギー発電事業計画書 みなし認定用 (10kW 未満の太陽光発電を除く ) 年 5 月 1 日 ( ふりがな ) とうきょ

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Transcription:

シリーズ 再生可能エネルギー 地熱利用の展望 第4回 温泉バイナリー発電の試み 秋田 涼子 一般財団法人日本経済研究所 国際局 主任研究員 我が国が豊富に有する資源である地熱をどう利用 上昇する間に沸騰して発生する蒸気を気水分離器 すべきなのか 財団法人日本経済研究所では推進で セパレーター によって蒸気と熱水に分離し 蒸 も反対でもない中立の立場から6回に分けて考察し 気でタービンを回すという仕組みが基本である シ ている ングルフラッシュ方式という 蒸気でタービンを 第4回である今回は 前回ご紹介した大規模地熱 発電以外の 地熱発電の開発の試みとして 温泉地 回して発電機で電気を起こすという点は 火力発電 や原子力発電の仕組みと同じである での活用が注目されているバイナリー発電につい 最近 従来発電に利用されてこなかった温度帯の て 現状と課題 今後の可能性について考察する 高温熱水の発電利用への道が大きく展開している 1 バイナリー発電について ① バイナリー発電の特徴 それは高温熱水を用いて 水より沸騰温度が低い媒 体 例 ペンタンやアンモニアなど を加熱し こ れによって作られた高圧の蒸気によりタービンを回 地熱発電は地下1000 3000m程度の場所にある高 して発電を行うバイナリー発電という仕組みであ い温度の熱水や蒸気が溜まっている地熱貯留層に向 る 我 が 国 で も 九 州 電 力 八 丁 原 発 電 所 に 設 備 けて井戸を掘る 地下の熱水は地中の圧力がかかっ 2000kW の熱交換媒体としてペンタンを使ったバイ ているために 沸点が高くなっており 200 以上 ナリー発電システムがある 熱源としてはタービン であっても蒸気になっていない この熱水が井戸を に導入できない圧力の低い蒸気を活用 図1 蒸気発電 出典 資源エネルギー庁 HP1 1 http://www.enecho.meti.go.jp/energy/ground/ground02.htm バイナリー発電

② バイナリー発電のメリット リー発電の開発に有望な資源量 53 120 の熱資 バイナリー発電のメリットは 低温でも発電でき 源量 は833万kW とされている2 このうち 開発 ることである 従来の地熱発電より浅い熱源を利用 可能と考えられる あまりにも小規模な源泉を除 できることから その探査 掘削が容易になり 初 く 温泉についてカリーナサイクル アンモニアを 期投資負担が軽減される また 一度発電や熱供給 媒体とするバイナリー発電の仕組み を前提として に使った熱を二次利用する 熱供給で使いきれない 設備容量の算定を行うと 我が国の温泉の熱を利用 熱水を利用することもできる 一般にバイナリー地 した発電の導入ポテンシャルは72.2万kW と推計さ 熱発電といった場合は そのための探査 掘削を伴 れている3 う新規開発事業を意味するが 我が国では 当初か らバイナリー発電を目的とした地熱開発は現状 ほ 近年 我が国で注目されているのが温泉バイナ リー発電である とんど行われておらず 既存の温泉源や地熱発電所 既存の温泉を活用してのバイナリー発電は すで 内の未利用エネルギーを活用することから始められ に噴出している熱源があるため 開発リスクもな ている く その探査 掘削コストがかからない点 蒸気と 独立行政法人産業技術総合研究所によると 温度 熱水を分離し 熱交換後の温水は還元する仕組みと 150 以上の地熱資源量は 約2,347万kW と試算さ すれば温泉の枯渇懸念も少ない 何よりも既存の温 れている一方 より低い温度領域での温泉バイナ 泉と共存できることから 地熱発電開発の大きな課 図2 温泉バイナリー発電の仕組み 出典 再生可能エネルギー事業の基礎知識 5 地熱 環境省 平成23年度再生可能エネル ギー地域推進体制構築支援次行第一回研修会資料 をベースに自然エネルギー財団作成 自然エネルギー財団 HP http://jref.or.jp/energy/geothermal/basic.html 2 3 独立行政法人産業技術総合研究所の地熱資源量評価による 平成22年 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書 環境省 https://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/

題である地元の反対も少ない等の利点がある 温泉旅館など熱利用設備が存在する温泉地では 電熱併給 ( コジェネレーション ) による熱の有効利用も可能となる 温泉事業者側では すでに噴出している温泉を活用し 温水を還元するので枯渇の懸念が少ないこと 噴出する源泉の温度が高温で 温泉の成分を薄めずに浴用温度に下げる苦慮をしているところでは 高い温度のエネルギーをバイナリー発電に活用し 泉温を低下させ その後浴用に使うことができるというメリットが考えられる 3 制度や規制緩和バイナリーサイクルの地熱発電は2008 年の新エネルギー法の政令改正により 新エネルギーに指定され国の補助事業として導入が推進されることとなった さらに 経済産業省は 再生可能エネルギー固定価格買取制度 の平成 24 年度価格で 地熱発電の買取り価格が1 万 5000kW 以上で27.30 円 /kw( 税込 ) 比較的小規模なバイナリー発電の多くが該当する 1 万 5000kW 未満で42.0 円 /kw( 税込 ) と高水準に設定している また バイナリー発電に関しては 規模等に関わらず火力発電設備として 技術基準の適合維持 保安規定の届出 主任技術者の選任 工事計画の届出等の義務がある上に 液化ガス設備があることから 離隔距離を設ける必要が省令によって規定されていたが 経済産業省が平成 23 年に規則改正を行い 代替フロン等の不活性ガスを媒体としたバイナリー発電で300kW 以下のものについては ボイラー タービン主任技術者の選任工事計画届出 溶接事業者検査及び定期事業者検査を不要とした また 媒体に不活性ガスを用いる液化ガス設備については 離隔距離の規制を適用しないこととするなど バイナリー発電導入のコスト削減につながる規 制緩和がなされている 4 温泉地側のメリット温泉地から見ると 噴出する温泉の温度が高温すぎる場合 温泉の成分を薄めずにお湯を適温まで冷ます工夫が必要となる これを 湯もみ として観光資源にしている温泉地もあるが お湯の高温部分をエネルギーとして活用できることは 温泉地側からのメリットであろう 温泉旅館など熱利用設備が存在する温泉地では 電熱併給 ( コジェネレーション ) による熱の有効利用も可能となり 融雪や暖房に熱を活用することもできる 前回 ( 第 3 回 大規模地熱発電の現状 ) でも述べたように 全国の温泉地はこの10 年の間に合計で 宿泊施設数や延宿泊利用人員を約 1 割減らしている 長引く不況や 旅行形態や趣向の変化等に対応しきれず 顧客を減らしている温泉地も多い こうした温泉地の苦境の中で 地域分散型エネルギーとして CO 2 の排出の少ないバイナリー発電の導入は エネルギーコストの削減はもちろん イメージアップや PR に繋がり 温泉への悪影響の懸念がなければ歓迎される可能性がある 2. バイナリー発電の現状 これまで我が国で商業運転している地熱バイナリーは 九州電力の八丁原地熱発電所 (2,000kW) だけであったが ( 平成 18~21 年度に鹿児島県霧島観光ホテルで地熱バイナリー発電の実証実験が行われた 実証実験終了後は 蒸気フラッシュ方式の 100kW の地熱発電に戻している ) 規制緩和と固定価格買取り制度の導入を受けて 各地で検討が始まっている 新潟県松之山温泉では 環境省委託事業で 定格出力 :87kW( 年間発電量は一般家庭 100 世帯分程度の使用電力量に相当 ) の温泉バイナリー発電装置を設置して 2011 年 12 月から実証実験が行

図3 松之山温泉バイナリー発電実証実験設備 われている また 福島県福島市土湯温泉 鹿児島 県指宿市内の九州電力山川発電所内等で バイナ リー発電の実証実験への準備が進められている ① 温泉バイナリー発電の採算性 地熱技術開発 が 固定価格買取制度の下での温 泉バイナリー発電事業の事業性を検討している 温泉バイナリー発電の採算は 使う媒体により設 置が義務づけられるボイラー タービン主任技術者 の要不要 温泉の湯量によってきまる発電規模によ 実証施設内部の発電システム り異なるが 温泉バイナリー発電事業の設備投資単 価が kw あたり100万円台になれば ボイラー タービン主任技術者の必要なアンモニアやペンタン を媒体とした発電も 一定の採算が取れると試算さ れている 内部利益率15年間の IRR を6.0 として 設定 温泉バイナリー発電は 太陽光や風力と比べる と 発電機だけでなく 図2でわかるように蒸発 器 再生器 凝縮器等 周辺機器が多い また 温 泉地は山あいなどが多く 源泉の場所に即して高低 差のある場所や 狭隘な用地に設置する場合の設置 費用等も必要である これら設置費用等を含めた全 体の設備投資費用が100万円台 kw になれば 発 電事業として固定価格買取制度の下で事業の採算性 図4 温泉バイナリー発電の採算性の試算 設備投資 100万円 引 き 後 内 部 収 益 率 固定価格買 kw 工 事を含む の IRR 15年間 6 時 必要な温泉の湯量 送電端出力 年間売電電 取制度によ 場合の税引き後内部収 の設備投資単価 万円 95 の場合 kg min 発電機出力 kw 力量 kwh る売電収入 益率 IRR 15年間 kw kw 発電機出力 利用率 90 万円 75 ボイラータービン主任技術者 ボイラータービン主任技術者 アンモニア水 他の媒体の 40円 kwh の実績平均 実績平均 あり なし あり なし 50 37.5 295,650 1,183 17.2 44 121 239 551 100 75.0 591,300 2,365 7.7 18.3 86 125 478 1,103 150 112.5 886,950 3,548 6.0 18.7 100 125 718 1,654 200 150.0 1,182,600 4,730 10.2 18.8 107 126 957 2,205 250 187.5 1,478,250 5,913 12.3 18.9 111 126 1,196 2,757 300 225.0 1,773,900 7,096 13.7 114 1,435 3,308 400 300.0 2,365,200 9,461 15.2 117 1,913 4,411 500 375.0 2,956,500 11,826 16.1 119 2,392 5,514 出典 地熱技術開発 資料

が確保されるということである 温泉バイナリー発 ている組合の構成員でありながら 宿泊客等を争奪 電用の国産の小型発電機はまだ開発途上であり コ するライバルの関係にあり 一部で温泉の熱を暖房 ンパクトで オールインワン構造の製品開発が進ん 等に利用している場合もある 1つの温泉に源泉が でいるところである 複数ある場合も多く それぞれに利害関係が異なる 場合も多い ② 温泉との共存の問題 また 温泉バイナリー発電事業を行うとすれば 温泉バイナリー発電は 新たな掘削をする必要が 温泉事業者 発電事業者 またそれに出資する者と なく既存の高温温泉を活用するため温泉の枯渇の懸 いう3つの立場が生じるが すべてを温泉事業者が 念がないこと また そのままでは高温で浴用に適 単独で行う場合もあれば 温泉を提供するだけの場 さない温泉の熱エネルギーを活用することになるの 合もあり 様々な事業の構造が想定できる で 温泉地側にも湯を冷ます必要がなくなることか ら 温泉地のメリットもあると考えられる 温泉バイナリー発電を行う場合には 固定価格買 取制度でも15年が設定されているように 長期的な 一方 温泉バイナリー発電は 太陽光や風力と比 事業となる 事業期間中には 温泉井や配管の老朽 べて すでに活用されており複雑な権利関係にある 化による修繕費の増大 あるいは温泉井の減衰や損 温泉という資源を使うという点が特徴であり この 傷による温泉供給量の減少 温泉関連事業者の破綻 ため複数の利害の異なる温泉事業者間の調整が不可 など 様々な事業上のリスクも想定される 温泉地での発電事業の実現のためには 各々の温 欠となる 温泉には 源泉所有者と温泉供給事業者がおり 泉地の権利関係や利害関係を把握した上で それら 自治体や温泉管理組合 または会社 等が該当す の事情にふさわしい事業の分担とリスクの分担を実 る また 温泉の供給を受ける個別のホテル 旅館 現できるような事業スキームを作り上げることが必 等の温泉利用者があり それらは同じ温泉を利用し 要である 図5 温泉バイナリー発電事業のステークホルダー 出典 地熱技術開発 資料

3 導入のための課題温泉を活用したバイナリー発電を 温泉地に導入していくためには 技術面での課題と事業実施面での課題が考えられる 技術面については 環境省の委託事業で実施されている実証実験等で徐々に明らかになると想定されるアンモニア水を媒体とした発電の長所 短所等などを踏まえ 温泉の湯量や温度により適切な発電規模と媒体を計画できるような データやノウハウの蓄積という課題である 事業実施面では 温泉地の権利関係や利害関係 源泉の所有 利用状況 熱利用状況等を踏まえた上で その温泉地の事情にふさわしい事業やリスクの分担の仕方 事業実現のために必要な手続き等についてのノウハウが求められている 4 温泉バイナリー発電の発展のために我が国には 多くの温泉地があり 温泉旅館やホテル 日帰り入浴施設等が経営されているが 利用客の減少で厳しい経営状況にある事業者も多い 温泉バイナリー発電の導入については 源泉の湧出量や泉温の精密な調査 権利関係や源泉の利用方法 利用状況の把握を踏まえた上での 当該温泉地にふさわしい発電システム ( 規模や媒体 ) の検討 事業手法や事業スキームの検討が必要である 現状 厳しい経営状況にある温泉地で 自らの費用でこれらの検討を行うことを期待することは現実的ではないと思われる 温泉バイナリー発電は 電気事業用の掘削型の地 熱発電とは別に 地域の地熱資源を有効活用し 地域分散型のエネルギー供給の一端を担うものであり 地産地消の有力な発電源ともなり得るものである 温泉バイナリー発電の可能性のある地域の多くは 山間地で日照時間が少なく積雪もある地域であり 国が積極的に導入を図っている太陽光発電の導入には不利な地域も多い 温泉バイナリー発電は そのような山間部や寒冷地等でも導入が可能な再生可能エネルギーの一つであることを踏まえ 国や地方自治体が 高温の源泉のある温泉地についての 温泉バイナリー発電の導入可能性の検討の費用を負担し 技術面での検討と合わせて事業化のための手法の検討を進めていくことが 温泉バイナリー発電事業の実現と そのためのデータや手法の蓄積に有効と考える また 温泉地にとっても 温泉バイナリー発電の導入を検討することは 歴史的な経緯から複雑になっていた権利関係や 温泉の共有状況を見直し より効率的な温泉利用や熱利用を検討することに繋がることになると考えられる また 温泉関係者が温泉バイナリー発電の導入を検討することは すなわち温泉地の将来 魅力づくりの面 地域のエネルギー問題 災害時のエネルギー確保の面などについて 真剣に考えることであり 温泉地の再生 再活性化の契機になる可能性もあろう 温泉バイナリー発電は 地域の貴重なエネルギー資源である温泉を活用し 地域の活性化を図り 温泉とともに共存共栄していく1つの手段となる可能性があり 今後の普及が期待される