目次 はじめに 1 Ⅰ 入浴動作時の注意点 1 1 入浴時の褥創予防に使用する用具 1 (1) 浴室用マット 1 (2) 浴室用ジェルクッション 2 (3) 特殊背もたれ 2 Ⅱ 入浴動作環境 3 Ⅲ 入浴動作 4 1 洗体具の改良 4 2 高床環境での入浴動作方法 5 (1) 入浴前の準備 5 (

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Transcription:

在宅生活ハンドブック No.32 自分で行う入浴動作 別府重度障害者センター ( 作業療法部門 2015)

目次 はじめに 1 Ⅰ 入浴動作時の注意点 1 1 入浴時の褥創予防に使用する用具 1 (1) 浴室用マット 1 (2) 浴室用ジェルクッション 2 (3) 特殊背もたれ 2 Ⅱ 入浴動作環境 3 Ⅲ 入浴動作 4 1 洗体具の改良 4 2 高床環境での入浴動作方法 5 (1) 入浴前の準備 5 (2) 体幹前面の洗体 6 (3) 背部の洗体 6 (4) 足部の洗体 7 (5) 陰部の洗体 7 (6) 高床式環境での浴槽の出入り 8 (7) 洗体後の体拭き 9 3 端座位環境での入浴動作方法 10 (1) 入浴前の準備 10 (2) 下肢の洗体 11 (3) 陰部の洗体 11 (4) 端座位環境での浴槽の出入り 12 (5) 洗体後の体拭き 13 4 床環境での入浴動作方法 14 (1) 降車 14 (2) 乗車 14 5 困難な動作を補うための自助具の紹介 15 当センターで使用している浴室関連用具の問い合わせ先 18

はじめに 入浴動作は更衣や洗体 移動など複数の動作が含まれるため最も難易度が高い日常生活の動作です そのため ADL 訓練の最終段階で行われる場合が多いです 頸髄損傷者の入浴動作は 高床 ( 浴室などの床を車いすの座面と同じ高さに上げた状態 ) 環境や端座位 ( ベッドなどの端に足を下ろして座った状態 ) 環境など環境によって動作方法が異なるため ここでは環境別の動作方法の紹介と入浴時に使用する自助具の紹介を行います Ⅰ 入浴動作時の注意点入浴動作は他の動作と異なり裸で行うため 皮膚が床などに直接触れることで褥瘡のリスクが高くなりますので 皮膚に接触する床面や背もたれ 洗体道具などの素材に配慮することが重要です また 動作面では着替えや洗体 移動を含むため疲労度が高くなり 動作のパフォーマンスが低いと転倒などによるケガや褥瘡の原因にもつながります そのため 効率の良い動作方法の習得と持久力や耐久力の向上が必要です 1 入浴時の褥瘡予防に使用する用具 当センターの浴室環境に設置してある褥瘡予防用具を紹介します (1) 浴室用マット (P18 参照 ) 当センターでは褥瘡予防のための対策 配慮としてウレタン様マットを浴室の床に敷き詰めて使用しています * 写真右はセンターの浴室 ( 例 ) です 水はけを良くするためにマットに穴を空けています 1

(2) 浴室用ジェルクッション (P18 参照 ) 頸髄損傷者は 入浴動作に健常者の倍以上の時間を要する場合がほとんどです 洗体は座って行い姿勢変換も多いことから 臀部への負担が大きく傷を創り易くなります 当センターでは殿部の負担を軽減するためにジェルクッションを敷いてその上で洗体を行います * 殿部の褥瘡のリスクが低い場合はクッションを敷かないこともあります (3) 特殊背もたれ (P18 参照 ) 入浴や着替え時に多くの姿勢変換が必要となりますが 腹筋や背筋が働かない頸髄損傷者にとって座位等のバランスを保つ事は容易ではありません そのため 写真左のグリップ部分 ( 黄枠 ) に腕をかけてバランスを保ちます 写真右の様にメッシュ素材などの濡れても良いカバーを背もたれ部分につけて使用します 2

Ⅱ 入浴動作環境 頸髄損傷者の入浴動作環境は機能レベルや獲得動作に合わせて設定する必要が あります 入浴動作環境には大きく分けて 高床環境 端座位環境 床環境があります 高床環境前方移乗動作が行える事が条件です 洗体動作を長座位姿勢 ( 両足を伸ばして座った状態 ) で行えるよう特殊背もたれの設置やスペースを広くしています 前方移乗 ( 直角移乗とも言う 詳細は在宅生活ハンドブック No.30 移乗動作 移乗 介助の方法 を参照のこと ) 端座位環境側方移乗が可能であり 端座位での動的バランスが良いことが条件です 高床環境と比較して不安定な環境であるため難易度が高くなります 側方移乗 ( 在宅生活ハンドブック No.30 移乗動作 移乗介助の方法 を参照のこと ) 床環境車椅子から床への移乗が行える事が条件です 床での洗体動作は長座位で行うため移乗さえ可能であれば一般家庭の浴室での入浴も可能になります 3

Ⅲ 入浴動作 1 洗体具 ( 体等を洗う時に使用する道具 ) の改良頸髄損傷者は手指機能の低下により ものを掴む事が困難なため 洗体具を改良して使用します 洗髪ブラシ 手指機能の低下により 洗髪が難しい場合は洗髪ブラシを使用します 洗髪ブラシを掴む事が困難な場合は ブラシを手に固定するためのベルトを装着する改良を行います ループ付きタオル タオルを掴む動作が困難な場合 タオルの両 端にループを付けます 背部 ( 背中側 ) などは ループ部分に腕を通して洗います 長柄ブラシ及び太柄加工 体を洗う際に 足元や頭部などへ手が届かない場合は長い柄が付いたものを利用します また 握力が弱い方や洗体具を掴むことが困難な場合は 太柄を加工して握りやすくしたり ブラシを手に固定するためのベルトを取り付けます 4

2 高床環境での入浴動作方法 高床式環境での入浴は C6BⅠ 程度の機能レベルの方から動作が可能です 高 床式環境での入浴方法を紹介します (1) 入浴前の準備 1バスタオルを敷く洗体後は着衣のために脱衣場まで移動しますが 脱衣場が濡れてしまうことを防ぐため事前にバスタオルを敷いておきます 脱衣後 バスタオルを大腿の上に置いて洗い場まで移動します 洗体後はバスタオル上に乗るため 洗い場と脱衣場の間にバスタオルを敷 きます 2 扉を閉める脱衣場と洗い場の仕切りは 一般的な浴室用の扉では出入りのための幅が狭く移動スペースが確保できないため 三枚引き戸など開口部が広い扉に替えます 開口部の広い扉の設置が困難な場合はカーテン ( シャワーカーテンなど防水性のもの ) で代用できます 扉を掴むことが難しい場合は 扉にループなどを付けて引っ張ることで開閉できるようにします 5

(2) 体幹前面の洗体 タオルを手に巻き付け 体の前面を洗います (3) 背部の洗体 ループ付きタオルのループ部分に手を通します ループに手を通すことで タオルが手から抜けずに背部の洗体を行 うことができます 6

(4) 足部の洗体 足部の洗体を行うために足を持ち上げます 体が前に倒れないように 特殊背もたれのグリップに腕をかけて体を固定して 足を持ち上げ下腿部を抱え上げます 抱え上げた足をもう片方の足に組むように乗せる事で 写真左の様に足の裏まで洗うことができます * 不安定な姿勢になるため 転倒に注意が必要です (5) 陰部の洗体 陰部を洗う場合には体を横に倒して殿部を床面から浮かさなければなりません 一旦体を前方に倒してから 片肘で上体を支えながら体を起こし 写真のように体を側方に倒し臀部を浮かせた状態にして 反対側の手に洗体具を持ち陰部を洗います 7

(6) 高床式環境での浴槽の出入り ここでは 肘を伸ばす筋力が十分に働かない C6BⅠ~Ⅱ の機能レベルの方 の浴槽の出入り動作の方法を紹介します 1 2 3 4 5 6 浴槽に対して垂直方向に向いて長座位姿勢を取り 膝下を浴槽内まで垂らします その後うつ伏せになりながら上肢で上体を支え 浴槽内へ降りていきます * 長座位姿勢時に前屈位となり頭から落ちて溺れる危険性があるため注意が必要です 1 2 3 4 5 6 浴槽からうつ伏せ状態で上半身を引き上げていきます 膝下まで浴槽から出た後に上体を仰向けに返して長座位姿勢に戻ります * うつ伏せから仰向け状態に姿勢を変える際は両肘で上体を支えて背中が地面とくっつかないように気をつけます 完全な仰向けになってしまうと起き上がりづらくなるので注意が必要です 8

(7) 洗体後の体拭き洗体後は体が濡れているため そのまま脱衣場に移動すると着替えの衣類も濡れてしまいます 事前にバスタオルを敷いておき その上に乗ります * 体の各部分の体拭き動作は洗体動作と同様です 1 2 3 4 長座位のまま後退しながら臀部からバスタオルに乗ります その後 下肢までバスタオル上に乗せ 体についた水滴がある程度落ちたところ でバスタオルを引き抜きます 9

3 端座位環境での入浴動作方法 端座位環境での入浴は側方移乗が可能な C6BⅢ 程度の機能レベルの方から動 作が可能です 端座位環境での入浴動作を紹介します (1) 入浴前の準備 1 バスタオルを敷く 高床環境と同様に脱衣場にバスタオルを敷きます 脱衣場のスペースがなく 車椅子上または ベッドまで戻って更衣をする場合は 車椅子上に直接バスタオルを敷きます 2 扉を閉める 脱衣場と洗い場の仕切りは 扉以外にカーテンを設置する方法もあります カーテンにループなどを取り付けて開閉し易くします 10

(2) 下肢の洗体 * 頭部や体幹の洗体動作は高床環境の場合と同様です 上体を軽く前に傾けて 片方の上肢で体重を支え 反対側の上肢は膝下に 入れ込み 足を持ち上げます 次に 持ち上げた足を反対側の大腿に乗せ て 足を洗います (3) 陰部の洗体 高床環境での陰部の洗体動作同様に殿部を床面から浮かせるために足を持 ち上げて 足を組んだ姿勢を作ります 次に 上体を傾けて体を上肢で支 え 反対側の手に洗体具を持ち陰部を洗います 11

(4) 端座位環境での浴槽の出入り 端座位環境での浴槽の出入りはプッシュアップが必要になるため肘を伸ばす筋 力が十分に発揮できることが条件となります 浴槽の縁へ座り 両足とも浴槽内へ入れて 端座位姿勢を取ります その後 両上肢で上体を支えながら浴槽内へと降りていきます 浴槽から出る際は 両上肢で上体を支えながらプッシュアップを行い 後方へと臀部を引き上げ浴槽の縁に座ります プッシュアップを行う際は 手が滑って頭から浴槽の中に落ちる危険性があるため注意が必要です 12

(5) 洗体後の体拭き 洗体後 脱衣台に敷いたバスタオル上に乗り 臀部や大腿裏の水滴を取っ た後にバスタオルを外して着替えを行います 車椅子上にバスタオルを敷いた場合は 車椅子上で体拭きを行った後 ベッドもしくは車椅子上で着替えを行います 13

4 床環境での入浴動作方法床環境での洗体動作は 高床環境と同様ですが異なる点は 床への移乗動作が必要なため 動作パフォーマンスの高さが求められます そのため ここでは床環境の移乗動作のみ紹介します * 洗体と更衣動作は他の動作を応用します (1) 降車 両足をフットプレートから地面に降ろします 次に 上体を倒して片手を地面に付き 反対側の手はフレームを掴み体重を支えながら殿部を床へと降ろしていきます * 殿部が地面へと急に落ちないように注意しましょう (2) 乗車 車椅子に対して 横向きに座り車椅子側の足を立てます その後 片手は地面に手を付き 反対側はフレームを掴み 上体は倒したまま床から殿部を持ち上げて車椅子に乗ります そして 上体を起こして 足をフットプレートに乗せます 14

5 困難な動作を補うための自助具の紹介 Ⅲ 入浴動作 で紹介した洗体動作が 可動域制限や筋力低下などの問題により困難な方でも 自助具を使用することで可能になる場合があります ここでは動作を補う自助具の紹介をします (1) 足上げの自助具 足を持ち上げる動作を補うために 足上げベルトを使用する場合があります 足上げベルト ナイロン製のベルトとアルミ板を湾曲させたものを繋げて両端に面ファスナー ( 両面で着脱できるファスナーのこと ) を取り付けたものです 使用方法 足上げベルトのアルミ板側を大腿の下に差し込みます その後 大腿の上で面ファスナー同士をくっつけて輪を固定します 輪の中に手を入れて引き上げる事で足上げ動作が行いやすくなります 15

(2) 陰部を洗う姿勢を保持する自助具陰部の洗体を行う場合は殿部を床から浮かせるために 片肘立ちという姿勢を保持しなければなりませんが 筋力や関節可動域の制限があるため 姿勢の保持が困難な場合があります その場合は 下図にある頭部支持枕を使用して姿勢を保持することができます 頭部支持枕 スポンジ状のマット ( お風呂マットを適当なサイズに切って使用 ) を重ねたものを立方体にカットしたものです 手指が機能しない頸髄損傷者が持ちやすいように ベルトをループ状に取り付けています また 上面から出ているベルトは 両腕で体重を支持している時などに頭部支持枕を口で咥えて動かしやすいように工夫しています ( 下写真参照 ) 使用方法 頭部支持枕を口で咥える またはループに手を通して移動させます その後 殿部を浮かせた姿勢を保持するために 頭部支持枕に上体を預け て片肘立ちと同様の姿勢を取ることができます 16

(3) 足指を洗う自助具足指の間は狭いため手指機能が低下している頸髄損傷者は十分に洗うことが困難な場合があります 足指間が不衛生であると水虫などになる可能性もあり また そこから菌が体内に入り二次的合併症を引き起こす可能性があるため 清潔を保つことが重要です 改良足指ブラシ 足指ブラシにカフを取り付けたものです 写真の様に足指間を洗うことができます (4) 陰部洗体用の清拭具の例 陰部に手が届かない場合は 陰部を洗体するための清拭具を使用すること で陰部の洗体が可能になります 清拭具 カフとアルミの支柱を作製して 支柱部分 にタオルを巻きつけた自助具です 使用方法 手に清拭具を装着 ( ベルトで固定 ) し 足を組んで上体を側方に傾け 殿部 を浮かせて清拭を行います 17

当センターで使用している浴室関連用具の問い合わせ先 用具会社名連絡先 (1) 浴室マット酒井医療株式会社 162-0801 東京都新宿区山吹町 358-6 TEL:03-5227-5779 (2) 浴室用クッション株式会社加地 699-1511 島根県仁多郡奥出雲町三成 1295-3 TEL:0854-54-2288 FAX:0854-54-2282 (3) 特殊背もたれ大分タキ有限会社 874-0011 大分県別府市内竈 1392-2 TEL:0977-67-6538 FAX:0977-66-5910 参考文献 1) 頸髄損傷者のための自己管理支援ハンドブック : 国立別府重度障害者センター, 中央法規出版,2008 2) 頸髄損傷のリハビリテーション改訂版第 2 版 : 二瓶隆一 木村哲彦 牛山武久 陶山哲夫 飛松好子, 協同医書出版社,2006 3) 重度肢体不自由者のための支援マニュアル : 国立別府重度障害者センター 国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局 別府重度障害者センター ( 支援マニュアル作成委員会編 ) 874-0904 大分県別府市南荘園町 2 組電話 :0977-21-0181 HP:http://www.rehab.go.jp/beppu/ 初版平成 28 年 3 月発行 18