区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

Similar documents
架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

ており 公共交通機関の拡充等のインフラ整備を通じて大都市圏を中心とした混雑緩和 物流改善が必要であるとしている 本事業はこれら方針及び分析に合致する なお 我が国はこれまで対フィリピン円借款による旅客輸送 システム整備として LRT1 号線増強事業 (I) (II) (L/A 調印 :1994 年

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

政府説明資料

政府説明資料

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C D935393B990AE94F58E968BC B A816A2E646F63>

国 アメリカ ロシアに次いで世界第 4 位の電力消費国となっている (2014 年 ) 国内の電力供給に関しては 1,114,408GWh の需要に対して供給量は 1,090,851GWh と 2.1% の不足 供給能力もピーク時 153,366MW の需要に対して 148,463MW と 3.2%

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部 運輸交通 情報通信グループ第二チーム 1. 案件名国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 和名国際空港保安能力強化プロジェクト英名 The Project for Security Improvement of International Ai

政府説明資料

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

2008年6月XX日

untitled

政府説明資料

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C E8ED88ABC F288DC58F4994C5816A2E646F63>

政府説明資料

政府説明資料

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C F8BC F91BA8A4A94AD B D815B83938E968BC6816A2E646F63>

政府説明資料

豊橋市 PPP/PFI 手法導入優先的検討方針 効率的かつ効果的な公共施設等の整備等を進めることを目的として 多様なPPP/P FI 手法導入を優先的に検討するための指針 ( 平成 27 年 12 月 15 日民間資金等活用事業推進会議決定 ) に基づき 公共施設等の整備等に多様なPPP/PFI 手

政府説明資料

<4D F736F F D E968BC68E96914F955D89BF955C C90BC8C6F8DCF89F1984C816A8DC58F4994C52E646F63>

政府説明資料

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

政府説明資料

<4D F736F F D2092B789AA8E EE B193FC974490E693498C9F93A28B4B92F E378DF492E8816A2E646F6378>

事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agr

Microsoft Word - PPPPFI手法導入における優先的検討に係る指針

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

政府説明資料

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

事業事前評価表

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

政府説明資料

は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

政府説明資料

の無償資金協力で整備されたニバンガⅢ 号 (2015 年 ) 及びマヌフォラウ号 (2002 年 ) が担っているが これら定期船 2 隻は 1 回の航海で複数の離島に寄港するため 限られた時間内での離島訪問等には対応できないため マナウイ号が補完的な役割を担っている しかしながら マナウイ号は現在

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ 1. 案件名国名 : バングラデシュ国案件名 : 和名橋梁維持管理プロジェクト 有償勘定技術支援 英名 Bridge Management Capacity Development Project 2. 事業の背景と必要性

RO ( 改修 Rehabilitate- 運営等 Operate) 方式ハ民間事業者が公共施設等の設計及び建 BT( 建設 Build- 移転 Transfer) 方式設又は製造を担う手法民間建設借上方式 2 優先的検討の対象とする事業及び検討開始時期一優先的検討の対象とする事業建築物の整備等に関

ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

H28秋_24地方税財源

<4D F736F F D20815A96BC8CC389AE91E58A E EE B193FC974490E693498C9F93A297768D802E646F6378>

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部法 司法チーム 1. 案件名国名 : ブラジル連邦共和国案件名 : ( 和文 ) 地域警察活動普及プロジェクト ( 英文 )Project on Nationwide Dissemination of Community Policing 2. 事業の

PowerPoint プレゼンテーション

仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

公示番号 : 国名 : フィリピン担当部署 : 東南アジア 大洋州部東南アジア第五課案件名 : 鉄道事業形成支援 ( 経済財務分析 ) 有償勘定技術支援 1. 担当業務 格付等 (1) 担当業務 : 経済財務分析 (2) 格付 :2 号 (3) 業務の種類 : その他 2. 契約予定期

平成 29 年 4 月 1 日規程第 18-5 号国立研究開発法人国立がん研究センター PPP/PFI 手法導入優先的検討規程 ( 目的 ) 第 1 条この規程は 国立研究開発法人国立がん研究センター ( 以下 センター という ) の公共施設等の整備等における優先的検討を行うに当たって必要な手続を

Microsoft Word - H290324優先的検討規程(裁定).docx

政府説明資料

墨田区 PPP/PFI 手法導入 優先的検討指針 平成 30 年 1 月 墨田区 - 1 -

<4D F736F F D E96914F955D89BF816A836E836D83438CF68BA48CF092CA89FC D E83672E646F63>

事業事前評価表

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

政府説明資料

政府説明資料

政府説明資料

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

平成 21 年度 民活インフラ案件形成等調査 フィリピン マニラ首都圏南北連結高速道路 PPP 活用事業調査 ( フィリピン ) 報告書要約 平成 22 年 3 月 株式会社オリエンタルコンサルタンツ中日本高速道路株式会社西日本高速道路株式会社株式会社建設技研インターナショナル伊藤忠商事株式会社

11

奈良県 PPP/PFI 手法導入優先的検討規程 厳しい財政状況の中で 本県の公共施設等の整備や運営を効率的かつ効果的に進めるとともに 奈良県公共施設等総合管理計画の着実な進捗のためには これまで以上に民間との連携を図り その資金 能力 ノウハウ等を積極的に取り入れていくべきである そこで 本県におけ

事業事前評価表

事業事前評価表

事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

政府説明資料

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 SATREPS) 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名 ( 科学技術 ) 食料安全保障を目指した気候変動対応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装英名

事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Pres

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

活動指標及び 活動指標標準仕様書 導入手順書策定数 ( 改定を含む ) 活動見込 31 活動見込 2 活動指標及び 活動指標 RPA 補助事業の完了数 活動見込 31 活動見込 5 活動指標及び AI 実証地域の完了数 活動指標 活動見込 31 活動見

<4D F736F F F696E74202D A F95BD90AC E31308C8E8AFA5F8C888E5A90E096BE89EF81408DC58F4994C530362E70707

Microsoft Word - 【外務省】インフラ長寿命化(行動計画)

DDL12Prnt001

政府説明資料

CÔNG TY CỔ PHẦN KẾT NỐI ĐẦU TƯ ViỆT NAM

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

4-(1)-ウ①

Microsoft PowerPoint - _Presentation Tokyo Seminar July 2014 final without video.pptx

Microsoft Word _01鉄道料金班最終報告書.docx

ブレンディングを実施しているドナー 13 機関 30 プログラムについて その制度の概形を 各種文献並びに各機関へのアンケートやインタビューを通じて調査した その結果 ブレンディングの実施形態は 自ら直接実施する形態と 他のドナー機関等を通じて実施する形態の 2 形態が存在することが判明した 前者の

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

〈参考〉

504 特定事業等に係る外国人の入国 在留諸申請優先処理事業 1. 特例を設ける趣旨外国人研究者等海外からの頭脳流入の拡大により経済活性化を図る地域において 当該地域における特定事業等に係る外国人の受入れにあたり 当該外国人の入国 在留諸申請を優先的に処理する措置を講じることにより 当該地域における

国際協力銀行 (JBIC) の海外インフラ支援事業に関する要望 わが国政府は 成長戦略の重要な柱の 1 つとしてインフラシステム輸出を位置づけており 2016 年 5 月に公表した 質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ においても 今後 5 年間にインフラ分野に対して 約 2,000 億ドルの資金

参考資料 5 用語集 SPC( 特別目的会社 ) SPC(Special Purpose Company) は特別目的会社ともいわれ プロジェクトファイナンスにおいては 特定のプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを親会社の信用とは切り離す事がポイントであるが その独立性を法人格的に担保すべく

西アフリカ 3億人ビジネス市場マップ ―2035年5億人市場に向けて―

コンパクト プラス ネットワークの形成 1

第 2 章日本の政府開発援助 (ODA) 実績第 7 節有償資金協力 1. 実績 図表 36 円借款実績 1. 地域別 ( 債務救済を除く ) ( 交換公文ベース 東欧向けを含む 単位 : 億円 ) 地域 年度 金額構成比 (%) 金額構成比 (%) 金額構成比 (%) 金額構成比 (%) 金額構成

<4D F736F F F696E74202D F43444D838D815B D B988C493E089F090E08F91816A5F8CF68EAE94C5>

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

<4D F736F F D B834E90568B4B C48C8F8E96914F955D89BF955C979D8E9690E096BE8DC58F492E646F63>

2 採用する受注者選定方式の検討について廃棄物処理施設整備事業で一般的に採用されている受注者選定方式は表 -2のとおりです 受注者選定方式の検討に際しての論点を下記に整理しましたので 採用する受注者選定方式について審議をお願いいたします 本施設に求められる5つの整備基本方針に合致した施設の整備運営に

Transcription:

円借款 案件概要書 2017 年 6 月 27 日 1. 基本情報 (1) 国名 : フィリピン共和国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : マニラ首都圏 ラグナ州 (3) 案件名 : 南北鉄道計画南線 ( 通勤線 )(North-South Railway Project-South Line (Commuter)) (4) 事業の要約 : 本事業は マニラ首都圏中心部のマニラ市ツツバンと首都圏近郊南方のラグナ州ロスバニョスを結ぶ鉄道 ( 約 72 km ) の改修 ( 複線化 電化 ) を行うことにより メガマニラ圏の交通ネットワークの強化とその深刻な交通渋滞の緩和を図り もってマニラ首都圏の経済圏の拡大 大気汚染や気候変動の緩和及び投資環境の改善に寄与するもの 2. 事業の背景と必要性 (1) 本事業を実施する外交的意義フィリピンは我が国にとって 民主主義や市場経済といった共通の価値観 多くの戦略的利益を有する 東アジアにおける重要なパートナーである 多くの日系企業が進出しており 我が国にとって重要な経済活動の基盤 2017 年 1 月の安倍総理大臣のフィリピン訪問の際 ODA 及び民間投資を含め 今後 5 年間で 1 兆円規模の支援を実施し フィリピンの国造りに官民挙げて協力していくことを表明した 本事業は この協力の旗艦事業の1つである フィリピン政府は 本事業の早期開業を望んでおり また 本事業と我が国が既に 2015 年円借款事業として実施中の 南北通勤鉄道計画 ( ツツバン-マロロス ) 及び マロロス-クラーク鉄道計画 と併せて一体的な運行 運営を目指していることから 本事業に対する我が国による協力への期待は高い さらに 本事業は 我が国がすすめる 質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ ( 平成 28 年 5 月政府発表 ) に合致している (2) 当該国におけるメガマニラ圏鉄道セクターの開発の現状 課題及び本事業の位置付けマニラ首都圏は 人口が 1990 年の 792 万人から 2015 年には約 1.6 倍の 1,287 万人に急増しており国全体の人口の 13% GDP の 36% が一極集中する 国内最大の経済活動集積拠点となっている また マニラ首都圏に近接する州を加えたメガマニラ圏についても 1990 年から 20 年間で人口が 1,293 万人から 2,740 万人に急増しており マニラ首都圏の発展に伴い都市としての規模が拡大している しかしながら 大量輸送手段としての軌道系公共交通の整備状況は遅れており 首都圏内の高架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏北方は 中心部から北方のマロロス市までの区間 さらにはその北方にも居住エリアが拡大している 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの

区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には日系製造業が集中しているほか マニラ首都圏とのアクセスが大幅に改善されうる極めて重要な路線である このような状況に対し フィリピン共和国 ( 以下 フィリピン という ) 政府は JICA が策定を支援し フィリピン政府が承認した マニラ首都圏の持続的発展に向けた運輸交通ロードマップ (2014 年 ) において マニラ首都圏の南北方向の近郊を結ぶ大規模公共交通網の整備を最優先課題としている フィリピンにて 2016 年 6 月 30 日に発足した新政権は 新政権スタート早々にインフラプラン Build Build Build を発表し 過去 50 年間のインフラ投資が平均で GDP の 2.4% であったところ 2017 年のインフラ投資額を GDP の 5.4% に増額することを目指している 本事業は その優先プロジェクトにも記載されており フィリピン政府の政策上 高い優先度が付されている (3) メガマニラ圏における鉄道セクターに対する我が国及び JICA の協力方針等と本事業の位置付け対フィリピン共和国国別開発協力方針 (2012 年 4 月 ) において 重点目標として 投資促進を通じた持続的経済成長 が定められており 具体的には 大首都圏を中心とした運輸 交通網整備等に対する支援を実施するとしている また JICA は対フィリピン共和国 JICA 国別分析ペーパー (2012 年 3 月 ) において 大首都圏を中心としたインフラ整備 が重点課題であると分析しており 公共交通機関の拡充等のインフラ整備を通じて大都市圏を中心とした混雑緩和 物流改善を図ることが必要としており 本事業はこれら方針 分析に合致する 我が国はこれまで マニラ首都圏の軌道系交通網の開発について有償資金協力にて マニラ首都圏大量旅客輸送システム拡張事業 (2013 年 ) や 南北通勤鉄道事業 ( マロロス ツツバン ) (2015 年 ) 等を実施してきた (4) 他の援助機関の対応アジア開発銀行は 国別事業展開計画 (2017~2018 年 ) において 持続可能な都市交通の促進による人 モノの移動可能性の向上を主要プログラムの一つとして掲げ 具体的には道路維持管理能力の改善や運輸交通インフラへの投資促進のための PPP 政策の実施支援等を行っている 世界銀行は 国別パートナーシップ戦略 (2015~2018 年 ) において 重点分野の一つである 急速且つ包括的 持続的な経済成長 においてマニラ及びセブにおける都市内交通の改善支援を掲げている (5) 本事業を実施する開発政策上の意義 : 本事業はメガマニラ圏の渋滞緩和とそれに伴う投資促進のための環境整備という課題に対応し また日本が優位性を持つ技術の活用による STEP 条件の適用が予定されていることから フィリピンの開発政策 我が国及び JICA の援助方針等に合致するものであり さらに SDGs のゴール 9 に貢献すると考えられ JICA が本事業の実施を支援することの必要性は高い

3. 事業概要 (1) 事業概要 1 事業の目的本事業は マニラ首都圏中心部のマニラ市ツツバンと首都圏近郊南方のラグナ州ロスバニョスを結ぶ鉄道 ( 約 72 km ) の改修 ( 複線化 電化 ) を行うことにより メガマニラ圏の交通ネットワークの強化とその深刻な交通渋滞の緩和を図り もってマニラ首都圏の経済圏の拡大 大気汚染や気候変動の緩和及び投資環境の改善に寄与するもの 2 事業内容ア ) 土木 建築工事 ( 本線 ( 約 72 km ) 及び車両基地 )( 国際競争入札 ( タイド )) イ ) 鉄道システム 軌道工事 ( 国際競争入札 ( タイド )) ウ ) 車両調達 ( 国際競争入札 ( タイド )) エ ) コンサルティング サービス ( 入札補助 施工監理 鉄道運営維持管理能力強化等 )( ショート リスト方式 ) 3 他の JICA 事業との関係 2015 年 11 月に円借款契約を調印した 南北通勤鉄道事業 ( マロロス ツツバン ) においては 南北通勤鉄道事業のうち マニラ首都圏近郊北方のブラカン州の州都マロロス市とマニラ首都圏中心部のマニラ市ツツバンとを結ぶ区間 ( 約 38 km ) の整備を行う予定であり 本事業は右区間の南方への延伸である なお本事業は 有償勘定技術支援による詳細設計 入札図書 ( 案 ) 策定を想定している (2) 事業実施体制 1 借入人 : フィリピン共和国政府 (Government of the Republic of the Philippines) 2 事業実施機関 / 実施体制運輸省 (Department of Transportation 以下 DOTr という ) 3 他機関との連携 役割分担 : 調査にて確認 4 運営 / 維持管理体制 : 調査にて確認 (3) 環境社会配慮 1カテゴリ分類 : A B C FI 2カテゴリ分類の根拠 : 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) に掲げる鉄道セクター及び影響を受けやすい特性に該当するため (4) 横断的事項 : 1 気候変動対策 : 公共交通機関の改善による温室効果ガスの削減が期待できるため 気候変動対策 ( 緩和 ) に資する可能性がある 温室効果ガス削減量の推計を調査で行う 2 その他 : エイズ等感染症対策 貧困対策 配慮等 調査で確認を行う (5) ジェンダー分類 : ジェンダー主流化ニーズ調査 分析案件 (6) その他特記事項 : : 本事業では 日本独自の技術を活用予定 詳細は 調査にて確認

4. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用フィリピン向け 国鉄通勤南線活性化事業 の事後評価等では 不法居住者の移転を伴う場合 実施機関による対応策の現実性と移転関連機関の役割分担の十分なチェック 対応に要する期間を十分に織り込んだ実施計画の作成の必要性が指摘されている 本事業においても大規模な不法居住世帯の移転を予定していることから JICA 支援により DOTr が作成する住民移転計画に基づき 関係機関との十分な連携を確保の上で 詳細設計終了後に速やかに住民移転が実施されるよう留意する また フィリピン向け メトロマニラ大都市圏交通混雑緩和事業 の事後評価等では 初期投資額が大きい都市交通システム建設事業においては 事業形成の段階で詳細な財務分析 財政計画の実施と それを反映した政府支援の行動計画策定の必要性が指摘されている 本事業でも 大規模な初期投資を想定していることから 実施機関 運営 維持管理機関の財政 財務状況の詳細を調査にて確認し 政府支援及び運営維持管理機関の行動計画を策定し 審査にて合意を予定している 以上 [ 別添資料 ] 地図

南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) 地図 別添 クラーク グリーン シティ マロロス - クラーク鉄道事業 マロロス 南北通勤鉄道事業 ( マロロス ツツバン ) (2015 年度円借款契約締結 ) ツツバン マニラ首都圏地下鉄事業 ( 協力準備調査実施中 ) 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 本事業 ) 凡例南北通勤鉄道 ( マロロス ツツバン ) メガマニラ圏地下鉄 ( フェーズⅠ) マロロス - クラーク鉄道南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ママティッド ロスバニョス